身上しんしやう)” の例文
「親分の思ひものだが、全く良い女でしたよ、あれが手一杯に働けるところに居ると、一生のうちに良い身上しんしやうを六つ七つ潰しますね」
ことながあひだ野田のだ身上しんしやうつて近所きんじよくら親方おやかたをしてるのが郷里きやうりちかくからたので自然しぜん知合しりあひであつたが、それが卯平うへい引退いんたいすゝめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
翌日あくるひ手伝の娘を一人附けて呉れた。矢張やつぱりミハイロ同様な貧乏人で、古ぼけた頭巾づきんに穴のいた腰巻に、襯衣しやつと、それで身上しんしやう有りツたけだといふ。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
てう恵王けいわうが夜光の玉を、しんせう王がしろ十五を以てかへんといひしは、加嶋屋が北国の明玉めいぎよく身上しんしやうつくしてかはんとやくせしにるゐせり。
入給いれたまひては如何いかゞもつとも外に男の子も御在おはさぬ事ゆゑ熊殿くまどの年のふけぬうちに聟養子むこやうしをなし持參ぢさん金子きんすを以て山方やまがた問屋とひやかり償却つぐなひくらし方もを付て身上しんしやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おれかはりにくんだ。弥「ハヽヽそれぢやアわたし身上しんしやうもらふのだ。女房「御覧ごらんなさい、馬鹿ばかでも慾張よくばつてますよ。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
隱居は十八歳で身上しんしやうを受け取り、蜂谷の名跡みやうせきをつぎ、馬籠宿の年寄役を勤め、二十八九の頃に八幡屋の普請をしたが、困窮の際であつたから農業にも精出してやつた。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
怒鳴どなつた。うちてきありとて、ぐにいのしゝごと飛込とびこまないのが、しかし色男いろをとこ身上しんしやうであるとおもへ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
助八 地獄の沙汰も金次第といふが、身上しんしやうふるつても二百の錢しかねえ。これでも何かの役に立つかも知れねえから、持つて行くがいゝぜ。(助十のふところに押込む。)
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
見たら吃驚びつくりでござりませう色の黒い背の高い不動さまの名代といふ、では心意気かと問はれて、こんな店で身上しんしやうはたくほどの人、人のいばかり取得とては皆無でござんす
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その礼としてはその方身上しんしやう良くなり、奉公をせずともすむやうにしてやらんと言ひたり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
身上しんしやうも持てないくせにけちんばうで御近所へのつき合ひもろくに出来ないこと、それから思ひ出して子供が毎度遊びに行つて御邪魔するといふやうなこと、あなたの商売は何だといふ質問
もう私なんぞ、こんなにひゞの入つた身上しんしやうだし。
疵だらけのお秋 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
第一身上しんしやうが違ふ、三河町の吉田屋へ轉がり込めば、相手が佛樣になつて居ても、まさか唯ぢや投り出されない——先づ慾得づくだらうな
てう恵王けいわうが夜光の玉を、しんせう王がしろ十五を以てかへんといひしは、加嶋屋が北国の明玉めいぎよく身上しんしやうつくしてかはんとやくせしにるゐせり。
いまからこく用意よういもしなくてはらぬとおもふと自分じぶん身上しんしやうから一ぺうこめげんじては到底たうていけぬことをふか思案しあんしてかれねむらないこともあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たら吃驚びつくりでござりませういろくろたか不動ふどうさまの名代めうだいといふ、では心意氣こゝろいきかとはれて、此樣こんみせ身上しんしやうはたくほどのひとひといばかり取得とりえとては皆無かいむでござんす
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
成し罪滅つみほろぼしと自分の身には榮耀ええうは止め人にほどこす事而已のみす故受取金も多けれども夫故こまる我が身上しんしやう現在げんざいおとゝが外成ぬ年貢の金に差支へ手風てかぜいとうてそだてし娘を苦界へ沈める急場の難儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いか。よした。どん、すとん、と身上しんしやうかるい。けれども家鳴やなり震動しんどうする。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この女のために、身上しんしやうをいけなくしてしまつた男は、何人あるかわからず、この女のために、命を失つた男も何人かはある筈です。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
箆棒べらぼう家賃やちんでもとゞこほつたにや、辨償まよはなくつちやりやすめえし、それこさあらが身上しんしやうなんざつぶれてもにやえやしねえ、だにもなんにも
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お恨みなさるゝな此久八めが申すこと今一通り御聞下され此間より度々たび/\に御異見いけん申上たる通りねがふ事では御座りませんが今にも萬一ひよつと大旦那がお目出度めでたくなられたなら其時こそは此大このだいまいの御身上しんしやう悉皆若旦那の物となる假令たとへ然樣さやうに成すともわづかの事には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三十年前、赤塚の娘と、その身上しんしやうを爭つた戀と慾との怨みが、まだ續いて居るといふことは、常人には一寸想像もつかない事です。
兼次は深い心配な顏で綽名がまたで通つて居る男の所へ來た。四つ又は豚の仲買をして小才が利くので豚での儲は隨分大きい。あれで博奕が好きでなければ身上しんしやうが延びるのだと評判されて居る。
芋掘り (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
佐原屋の身上しんしやうがどうなつて居るか、現金かね融通ゆうづう、材木、山元との取引など、仲間にいたら判るだらう。出來るだけくはしく調べてくれ。
「それに違ひありません。でも、年に三兩や四兩の身上しんしやうぢや、小町娘は振り向いてもくれません。半次さんは口惜くやしがつて居ましたよ」
手に取つて見ると十善具足の名器で、茶に凝つて居る要屋山右衞門などは、一と身上しんしやう投げ出しても惜しくない氣になる品物です。
二人がどんなに仲が惡かつたか、お菊が死ねば、この越前屋の身上しんしやうは誰の手に入るか、たつたそれだけ申上げただけでも澤山だ。
これも娘一人の跡取りだが、まだ婿もきまつてゐないさうで、身上しんしやうの爲には、その方が良いかも知れませんね。お蔭で巴屋は繁昌するばかり
櫻屋の身上しんしやうに未練のない證據を見せたら、主人も氣が落着くでせうから、私は今晩中に八王子在の田舍へ歸ることにしました。——この通り
私と妹は日本橋の大きい商人あきんどの子に生れました。親の名は勘辯して下さい、——私が七つの時兩親に死に別れ、親類に惡いのがあつて、身上しんしやう
「奉公人達には思ひのほか評判がよかつたやうです。どうせ俵屋の身上しんしやうは主人のものだと思つたか、隨分パツパとき散らしたやうですから」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
して、引越してしまつたさうだ。殿松は押しが強いから、良い身上しんしやうを拵へるだらう。お鈴は自害といふことで濟んでしまつた
藤屋彌太郎はこの時丁度五十歳、札差の株を買つての一代身上しんしやうで、あぶらぎつた顏——太い眉、厚い鼻、角張つたあごに、戰鬪力が溢れて居りました。
言つて居ますが、實は一代に仕上げた身上しんしやうで、慈悲善根をほどこしながら、萬といふ金を溜めたんだから、大したものでせう
「これだけありや、小判にすると大した身上しんしやうだよ、——怪しいのが來たら、投げ出して、命乞ひをするが宜い。——命だけはお助け下さいとな」
「呆れた野郎で、世間では、田代屋の身上しんしやうに未練があつて、古巣を見張り旁々かた/″\戻つて來たに違げえねえつて言ひますぜ」
清太郎の道樂を叩き直してお筆と娶合めあはせ、何んとかこの身上しんしやうを繼いでもらひたさに、つい無理なことも申したのです。
好い男の若旦那を達引たてひかうといふのが、男も女も事を缺かない筈。庄司家の身上しんしやうが後ろだてになつて居るから、少しもとを入れても損のしつこはない
千兩箱が精々一貫目や一貫五百目そこ/\では、鐚錢びたせんか、石つころを詰めたくらゐの重さもなく、これが大黒屋の身上しんしやうとはどうしても受取れません。
行く/\はをひの善介と娶合めあはせ、この身上しんしやうを讓るつもりだつたが、お絹さんはもう一人の甥の伊三郎とねんごろになつて、可哀想にこの家を追ひ出され
ところが、榮三郎はお吉を殺して貰つたのは、多之助の女房のお若に氣があるからで、多見治は、兄の身上しんしやうも欲しいが、それよりも兄嫁あによめが欲しかつた
したが、清水の旦那はすつかり殘して尾久に引込んであの身上しんしやうを拵へ、お夏さんの父親は、商賣の縮尻しくじりから、二三年前首を釣つて死んだといふ話ですよ
感心してゐるんだ。尤も近頃では新六郎も、板倉屋の身上しんしやうが欲しくなつたか、お幾のところへは、滅多に近寄らない。お幾はそれでヤキモキして、しやく
貸して儲けた身上しんしやうに、目でもつけると思はれちや正直な商人の耻だ、今度勘十郎でも死んだら、その時は顏を出す
この娘も、前の晩殺された荒物屋のお今と同じ十七、身上しんしやうへだたりはありますが、負けずおとらず美しい娘でした。
佐渡屋は兩替淺草組世話役で、身上しんしやうはざつと五萬兩。地所や家作も相當で、それに眼をつける惡者があれば隨分大袈裟げさなこともたくまないとは限りません。
「好い娘には違ひないが、諦らめろ。相手は身上しんしやうが大き過ぎるし、智惠が廻り過ぎて、お前には釣り合はないよ」
私は伯父殺しに違ひありませんが、あの伯父といふ人はお北さん姉妹にどんな仕打をしたか、これだけの身上しんしやうを拵へるのに、何百人の人を泣かせたか——
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「お由良は恐しい女でした。あいつを殺さなきや、私が殺されるか身上しんしやうられたに違ひありません。親分、どうぞお見逃しを願ひます。そのお禮には」