しやが)” の例文
泥濘ぬかるみ捏返こねかへしたのが、のまゝからいて、うみ荒磯あらいそつたところに、硫黄ゆわうこしけて、暑苦あつくるしいくろかたちしやがんでるんですが。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三吉は三升樽をブラ下げて、ともしやがみました。五十六七、すつかり月代さかやきが色付いて、鼻も眼も口もしなびた、剽輕へうきんな感じのする親爺です。
薄野呂奴うすのろめ。もうあそこに墓が見えてるぢやねえか。袈裟けさを着た坊主がしやがんでるやうな恰好をしてよ。」
そのかほの向いた方の少し先の畑で、子供が一人しやがんで居たがやがて女の方へ走り出した。夕日はもう裏手の山へかくれて居た。向の山は頂が少しあかるいばかり、全体が黒ずんで来た。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
しやがんで居たる四十恰好かつかうの男
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
このしづくに、横頬よこほゝたれて、腕組うでぐみをして、ぬい、とつたのは、草鞋わらぢつたみせ端近はぢかしやがんだ山漢やまをとこ魚売うをうりで。三まいざる魚鱗うろこひかつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
江戸開府以來と言はれた名御用聞、錢形平次ともあらう者が、早春の庭にしやがんで、この勤勉な昆蟲こんちうの活動を眺めて居たのです。
そのかほの向いた方の少し先の畑で、子供が一人しやがんで居たがやがて女の方へ走り出した。夕日はもう裏手の山へかくれて居た。向の山は頂が少しあかるいばかり、全體が黒ずんで來た。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
などと、猫撫聲ねこなでごゑで、仰向あふむけにした小兒こども括頤くゝりあごへ、いぶりをくれて搖上ゆりあげながら、湯船ゆぶねまへへ、トこしいたていに、べつたりとしやがんだものなり。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ガラツ八の八五郎がヌツと入ると、見通しの縁側にしやがんで、朝の煙草にして居る平次は、氣の無い顏を振り向けるのでした。
つぎをんなは、こしからかげつち吸込すひこまれさうに、悄乎しよんぼりこしをなやしてしやがむ……びんのはづれへ、ひよろりとつゑさきけてあをい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
友次郎は少し獅子ツ鼻をうごめかし氣味に、下水の端つこにしやがんだ八五郎の、あまり賢こくなささうな顏を見上げました。
さがさう、たづねようとおもまへに、土塀どべいしやがんで砂利所じやりどころか、石垣いしがきでも引拔ひきぬいて、四邊あたり八方はつぱう投附なげつけるかもわからなかつたんです。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は庭下駄を突つかけて降りると、足跡を踏まないやうに死骸に近づき、しやがんだまゝそつと死骸の顏を覗きました。
道中だうちうつかひふるしの蟹目かにめのゆるんだ扇子あふぎでは峠下たふげした木戸きどしやがんで、秋田口あきたぐち観光客くわんくわうきやくを——らはい、と口上こうじやうひさうで、照覧せうらんあれはことをかしい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は榮吉の心持を落着かせるつもりでせう、疊の上にしやがんだまゝ、靜かな調子で斯う訊ねるのでした。
……馴染なじみなるすゞめばかりでけた。金魚きんぎよつた小兒こどものやうに、しかゝつて、しやがんでると、げたぞ! 畜生ちくしやうたゞ一匹いつぴきも、かげかたちもなかつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それを知つた主人の五郎次は、そつと追つかけて行つて、背後うしろから脇差で突いて殺した。しやがんで居るところをやられたから、香之助の傷は腰から胸へ突き上げた」
をんなは、とると、それは、夥間なかまはなしくらしく、しやがんだなりに、くるりと此方こつち向直むきなほつた、おびひざも、くな/\とたゝまれさうなが、咽喉のどのあたりはしろかつた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
平次は裏木戸の外の一寸人目につかぬ物蔭にしやがむと、泥と血にまみれた、匕首あひくちを一ふり持つて來ました。
「をかしなやつ一人ひとり此方側こちらがは土塀どべいまへに、砂利じやりうへしやがみましてね、とほるものを待構まちかまへてるんです。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
平次は不思議な空氣の壓迫を感じながら板の間にしやがみました。南の奉行所を追はれたお美乃は、最後の頼みの錢形平次を訪ねて、お勝手口から肩身狹く入つたのでせう。
宝塔ほうたふごときにせつしたときは、邪気じやきある凡夫ぼんぷは、手足てあしもすくんでそのまゝにしやがんだ石猿いしざるらうかとした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
してゐた場所——その流しの中へ入つて、盥の前へしやがんでくれ、皆んな井戸端から離れるのだ。——俺は叔母さんがゐたあたり、窓とはあべこべの方に斯うたらひの中に手を
平次は病人の枕元にしやがむと、柄にもなく脈などを取りました。痩せてはゐるが美しい腕です。
今度こんどくらまない。背後うしろはうえるから、振返ふりかへつて背後うしろると、むすめ何故なぜか、途中みちしやがんでてうごかない。さうして横腹よこばらかゝへながら、もうしておくれ/\とつてる。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八五郎は取散らした自分の二階へ案内するよりはと思つた樣子で、狹い店先にしやがみました。
うへ大屋根おほやねひさしぐらゐで、したは、ればちやう露地裏ろぢうら共同水道きやうどうすゐだうところに、よその女房かみさんがしやがんで洗濯せんたくをしてたが、つとあたまぐらゐ、とおもところを、スツ/\といてとほる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
妹のお梅は、提灯の灯から遠く、ぼろをつくねたやうにしやがんだまゝ泣き濡れて居ります。
「おいた。」と氣輕きがるしやがむ、をとこかたへ、づかとると、たちまおこつた。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「椽側の外の手水鉢てうづばちの前へしやがんで、柄杓ひしやくを取つたところを、下から突き上げられたのだ」
この邊を持場にしてゐる石原の利助の子分達に挨拶されながら、平次と八五郎は、死骸を引場げてある、河岸かしの石疊の上にしやがみ込んで、わびしくも上へ掛けた、荒筵あらむしろを剥ぎました。
源吉は物馴れた調子で疊みかけ乍ら、縛られた金次郎の前にしやがみました。
要屋山右衞門はたうとう古道具屋のむしろの前にしやがみ込んでしまひました。
そのガラクタの中に、八五郎は僅かの隙間すきまを見付けてしやがみました。と間もなく二階に灯が入つて、下には少し權柄けんぺいづくの人聲、それは、昨夜ゆうべも此處へ訪ねて來た、旗本大野田仁左衞門がたつた一人
川岸つぷちにしやがんで、平次は頭から浴びせました。