しづ)” の例文
佐久間玄蕃さくまげんば中入なかいり懈怠けたいのためか、柴田勝家しばたかついへしづたけ合戰かつせんやぶれて、城中じやうちう一息ひといき湯漬ゆづけ所望しよまうして、悄然せうぜんきたさうへとちてく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
詩人ウオルズウオルスも、またライダルのしづに愛妹ドロセヤと共に見るかげもなき生活を営みて、しかも安らかに己が天職に奮進したりき。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あたかも彼七本やりを以て有名なるしづたけ山下余吾湖をるにたり、陶然とうぜんとしては故山の旧盧きうろにあるが如く、こうとして他郷の深山麋熊の林中にあるをわす
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
しづの身なればいろには出さぬ、ただこころのうちにこがるる〽たちよりむすぶ山の井のあかれずあかぬうちはな
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
織田家の宿将たる柴田勝家や滝川一益かずますは、心中甚だ平かでない。やがて勝家は、しづたけで秀吉と戦つたが惨敗し、越前の北庄きたのしやうの本城に逃げこみ、遂に滅亡した。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
持つしづも、柔和で華奢でしやんとして、京の田舎の中国の、にがみ甘みをこきまぜて、恋の重荷に乗せてやる伝馬町筋十八丁、其他町の数々を語り申さん聞き玉へ
名古屋スケッチ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
伊吹山、金糞ヶ岳、それから若狹、越前の國境に繞らしてゐる蜒蜿とした連山も段々明かに認められて來た。しづヶ岳、淺井長政の居城とした小谷山なども指ざされた。
湖光島影:琵琶湖めぐり (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
たとひ賤しう育つても、色好紙の色よくば、關白大臣將軍家のおそばへも、召出されぬとは限るまいに、しづがなりはひの紙砧、いつまで擣ちおぼえたとて何とならうぞ。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
都大路みやこおほぢに世の榮華をつくすも、しづ伏屋ふせやあぜ落穗おちぼひろふも、暮らすは同じ五十年の夢の朝夕。妻子珍寶及王位さいしちんぱうおよびわうゐ命終いのちをはる時に隨ふものはなく、野邊のべより那方あなたの友とては、結脈けちみやく一つに珠數じゆず一聯のみ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「暁近くなりにけるなるべし、隣の家々、あやしきしづの声々めざましく、あはれ、いと寒しや、ことしこそ、なりはひに頼む所少く、田舎のかよひも思ひがけねば、いと心ぼそけれ、北殿きたどのこそ聞き給へや」
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
ああ君よ、しづなれば我はもや自然の巣へと
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
二つ三つ越えつまのおしづは是も又四十を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さよふけて月をもめでししづ
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
思へ名も無きしづながら
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しやちくぢらなかへ、芝海老しばえびごとく、まれぬばかりに割込わりこんで、ひとほつ呼吸いきをついて、橋場はしば今戸いまど朝煙あさけむりしづ伏屋ふせや夕霞ゆふがすみ、とけむながめて、ほつねんと煙草たばこむ。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
み慣れし軒端がもとに、いこひゐるしづおきな
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
花なく香なきしづの胸
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
流し斯るいやししづ腰折こしをれも和歌のとくとて恐多おそれおほくも關白殿下くわんぱくでんかへ聽えしも有難さ云ん方なきに況てや十ぜんじようの君より御宸筆しんぴつとはと云つゝ前へがツくり平伏へいふく致すと思ひしに早晩いつしか死果しにはてたりしとぞ依て遺骸なきがら洛外らくぐわい壬生みぶ法輪寺ほふりんじはうむり今におかち女のはか同寺どうじにありて此和歌わかのこりけるとかや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞ山深やまふかしづが、もすれば、伐木ばつぼくこだまにあらぬ、あやしく、ゆかしくかすかに、ころりん、から/\、とたへなる楽器がくきかなづるがごときをく——其時そのときは、もりえだ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
み慣れし軒端がもとに、いこひゐるしづおきな
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
茂れるしづ春草はるぐさ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
云へ御殿場迄ごてんばまで旦那殿だんなどの讓合ゆづりあう中何時か我家のおもてへ來りしが日は西山へ入て薄暗うすくらければ外より是お里遠州ゑんしうの兄が來たと云にお里はあいと云出る此家のかまへ昔は然るべき百姓とも云るれど今はかべおちほねあらはかや軒端のきばかたむきてはしらから蔦葛つたかづら糸瓜へちまの花のみだ住荒すみあらしたるしづが家に娘のお里は十七歳縹致きりやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やうぢやな。)といつたばかりでべつめず、あふいでそらやうともしない、此時このときかぎらず、しづたけが、といつて古戦場こせんぢやうしたときも、琵琶湖びはこ風景ふうけいかたつたとき
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)