)” の例文
「暮にる金はたった五両、わけがあって、私は知っております。手取り三十五両も入ったら、また博打ばくちの元手になることでしょう」
「ああ、アルバートか」と、弁護士は言い、この訪問客には何も取繕うことはらないというように、布団の上にぐったりと倒れた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
後生ごしょうだから貢がしてくださいよ。ねえ、いいでしょう、いいよう! うんとお言いよ。構うものかね、遠慮も何もるものじゃない。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玉江さん暑い時分に唐辛とうがらしのような刺戟物がるのは暑くなると人の身体からだは皮膚へ熱の刺撃を受て内部の血液が皮膚の方へあつまります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「……ま、ご意見もいろいろ出たが、こんどは一州一県の田舎城いなかじろみつぶすのとは、ちとわけが違う。熟慮を要そう。慎重がる」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主義も、思想も、へったくれもらない。男はうそをつく事をやめて、女は慾を捨てたら、それでもう日本の新しい建設が出来ると思う。
(新字新仮名) / 太宰治(著)
おかしていた。それで自信がなかったせいもあるが、そのころは半分は本気で、自分には女なんからないと信じていたのである。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
勿論お金は沢山にるのだったが、今ではもうモデスト・アレクセーイチがちっとも怖くないので、夫の金を遠慮なく撒き散した。
『早くけえつて寢るこつた。恁麽こんな時何處ウ徘徊うろつくだべえ。天理樣拜んで赤痢神が取附とつつかねえだら、ハア、何で醫者藥がるものかよ。』
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
地方的の利益をことごとく満足させるには巨額の金がる。故にかくのごとき約束の実行は条件付きであることを知らねばならぬ。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
勿論これには多額の費用がるので、金持だけが之をするのだが、大してゆたかでないギラ・コシサン夫婦はまだ之をしていなかった。
南島譚:02 夫婦 (新字新仮名) / 中島敦(著)
金も少しは入るだろうがそれも私がどうなりとしてらちあけましょう、親類でも無い他人づらがらぬ差出さしでた才覚と思わるゝか知らぬが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
らない、という風に相手は首をうごかした。鷲尾は赤ン坊を自分の背にくくりつけ、腕木に腰かけながら、フッと窓外を見ようとした。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
父さんはこの花を売って、いくらお金をもうけてどうするという細かい勘定かんじょうをしていらしったのだからそれはずいぶんお金がるようよ
国から旅費を送らせる手数てかずと時間を省くため、私は暇乞いとまごいかたがた先生の所へ行って、るだけの金を一時立て替えてもらう事にした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御馳走なぞがらずか。この節では、お前さん、一週間に一度ずつ森彦の旅舎やどやへ行って、新聞を読んで、お風呂に入れて貰って、夕飯を
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
教師になりたい、役人になりたいと、位地をチャンと狙ってやっている。かようかようの位地を得たい、それにはこれだけの学問がる。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
遍路のはいている護謨底ごむそこ足袋たびめると「どうしまして、これは草鞋わらじよりか倍も草臥くたびれる。ただ草鞋では金がってかないましねえから」
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「おい、お前は時計はらないか。」丸太で建てたその象小屋の前に来て、オツベルは琥珀のパイプをくわえ、顔をしかめて斯ういた。
オツベルと象 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自然科学の法則で、すべての物体は慣性をもっていて、一旦動き出したものは、それを止めるに力がることが立証されている。
硝子を破る者 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
なお他にもるボタンがあった。彼はつづけて捜そうとした。しかし彼女はその手から箱をひったくって、自負心から自分で捜し始めた。
そんな馬鹿げた事があるものか、酒を飲みに行けば金のるのは当然あたりまえの話だ。ればかりの金のないはずはないじゃないかと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それは現世げんせですることで、こちらの世界せかいでは、そなたもとおり、衣服きものがえにも、頭髪おぐし手入ていれにも、すこしも人手ひとでらぬではないか。
これはきたる観世音菩薩かんぜおんぼさつに仕えるのである、供養くようするのであるという観念をもって心服しんぷくして居りますから、兵隊は沢山らない訳です。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
実は、この甲野八十助は探偵小説家に籍を置いてはいるものの、一向にえない万年新進作家だった。およそ小説を書くにはタネがった。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
分家させるには相当の金がる。こんなことから貰い娘をだんだん邪魔にし始めて……。といっても、世間の眼に立つようなことはしない。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「男には子供というものは要がないのだ。……俺は子はいらない。一生涯、何でそんなものがろう。一人も要らない。……」
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
「ソレニ、ドウセ自動車ガルト思ッタノデ、ヤットノヿデつかマエテ来マシタ」彼女ハ独得ノ意地ノ悪イ眼デ僕ノ眼ヲ覗イタ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ははあ、では、やっぱりこの筆が気に入ったのだな。絵はらないが、筆が欲しいというのか。そんならこの筆を上げよう」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
林「出てくもかねえもらねえ、えやならえやで訳は分ってる、突然えきなり頭部あたまにやして、本当に呆れてしまう、何だってったよ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此奴こやつ、たびたびらんところに現れるくせがある。以後そのようなことのないように、ここでこの世から吹ッ消してしまうからそう思え!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それでもいくら舵だって相応な熟練はる。一刻でも早く定まれば勝味が増すわけである。窪田は艇の経験ある学生を二三人心で数えて見た。
競漕 (新字新仮名) / 久米正雄(著)
印形いんぎょうる。名誉もかけなければならない。万が一のときは、おれは見そこなったのだなんていう事は逃口上にげこうじょうにしかならない。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
稽古けいこ引取ひきとつてからでも充分じうぶんさせられるから其心配そのしんぱいらぬこと兎角とかくくれさへすれば大事だいじにしてかうからとそれそれのつくやう催促さいそくして
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
乳がありあまるほどあったのでアグリを取戻そうという話も出たがどちらになってもアグリにはもう乳はらないはずだと
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
そうして物の一時間と経たない中にもう親も子もノコ/\歩いて行ってしまいます。産婆も何もったものでございません。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
れがというたとて、自由自儘じいうじまゝるならば、今日けふ巫女あづさるまいにい……」ばあさんはおなじやうな反覆くりかへした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あなたは嫉妬しつとなんぞなさることはりませんわ! 私、あなたの悲しみをまぎらさうと思つて、ちよつと、からかはうと思つたゞけなんです
実は切迫せっぱつまった事で、金はる、借りるところはなし。君がいると、一も二もなく相談するのだが、叔母さんには言いにくいだろうじゃないか。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
始終お前のすぐそばにおいて、もし助けのる時には、おういと大声で呼んでくれ。そしたら私はお前に加勢しに行ってやろう。私がでたらめを
今はこうして半分だけ借りて行っても、すぐ又はあ、伜から金がるって言って来れば、残りの半分を借りて、売り切りになるかも知れませんで。
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
靴の底で踏みつぶしてしまったよ。空ではあんなもの必要がないのだ。命がらなかったら、この飛行機が殺してくれるんだからね。ハハハハハハ
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おかげで少々くたびれたから今度は一ツ「御座います」抜きの「説明らず」という映画を御覧に入れる。否……「説明要らず」どころではない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だつて、これみんな、るものばかりぢやないの、お神さんが、いくらで買ひ取つたか知らないけど、あたしに云へば、掛合ひ方だつてあるわ……。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
だからして必ずしも大きなものにたのむことはらん。その事柄は平俗なことであっても、そのうちにひそむ主観が大きければそれでよいのである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
笠原は始め下宿から其処そこへ通った。夜おそく、れない気苦労のる仕事ゆえ、疲れて不機嫌な顔をして帰ってきた。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「困ってしまうねえ、そんなことでは……小さいお金はうちでるんだから、これからは自分勝手に、ただで替えてやったりなんかしないで頂戴!」
侮られしが口惜しさに、石筆を折り、墨を捨て、書物も十露盤もらぬものに、中よき友と埓も無く遊びし美登利。
ぜひにも二人三人手がるゆえ、一両をえさにして人足共を狩り集めたのじゃ。小判を投げたは早乙女流の人選みよ。
櫛がるようなれば、おごってやっても好い、大した櫛でも無さそうだから、これはここへ頼んで置こう、無くなったところでかまわないと思いだした。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)