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草鞋
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わらじ
ふりがな文庫
“
草鞋
(
わらじ
)” の例文
それで、一般に町人の若い者たちは、心掛けの好いものは、
手鍵
(
てかぎ
)
、差し子、
草鞋
(
わらじ
)
、
長提灯
(
ながぢょうちん
)
に
蝋燭
(
ろうそく
)
を添えて
枕頭
(
まくらもと
)
に置いて寝たものです。
幕末維新懐古談:16 その頃の消防夫のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そのほか、野袴の者もあれば立っ付きをつけた者あり、下駄唐傘や、菅笠に股引と
草鞋
(
わらじ
)
など、まことに異形の姿の者ばかりであった。
『七面鳥』と『忘れ褌』
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
この雨にふり籠められたばかりでなく、旅絵師の澹山は千倉屋の奥の離れ座敷に閉じ籠って、当分は再び
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
きそうもなかった。
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
笠を被り、泥まびれでガワガワになったもんぺを穿いた彼女が、
草鞋
(
わらじ
)
がけでたくさんな男達を指揮し出すのを見ると、近所の者は皆
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
旅人
(
たびにん
)
だよ、この通り、旅路だから
草鞋
(
わらじ
)
脚絆
(
きゃはん
)
という足ごしらえだあな、まずゆるゆるこれを取らしておくれ——それ、お
洗足
(
すすぎ
)
の用意用意
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
とたんに
崖
(
がけ
)
の両側からバラバラと飛び下りて来た
野袴
(
のばかま
)
の武士、前をふさいで十人あまり、いずれも厳重な
草鞋
(
わらじ
)
がけ、
柄頭
(
つかがしら
)
をそろえて
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを見ていた白山方の人が、急いで自分の
草鞋
(
わらじ
)
をぬいで、それを樋の端にあてがったところが、それでちょうど双方が平になった。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「宿屋きめずに
草鞋
(
わらじ
)
を脱ぐ」……母がこんな事を葉子の小さい時に教えてくれたのを思い出したりして、葉子は一人で
苦笑
(
にがわら
)
いもした。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そのほかに二人、一人は初めて見る顔で、旅の者らしい、
手甲
(
てっこう
)
脚絆
(
きゃはん
)
に
草鞋
(
わらじ
)
をはき、
合羽
(
かっぱ
)
を着て、頭に
塵
(
ちり
)
よけの手拭をかぶっている。
夜の蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もうお
午
(
ひる
)
を少しすぎた。木之助の袂はずしんずしんと横腹にぶつかるほど重くなった。
草鞋
(
わらじ
)
ばきの足にはうっすら白い
砂埃
(
すなぼこり
)
もつもった。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
足袋
(
たび
)
草鞋
(
わらじ
)
脱
(
ぬ
)
ぎすてて、出迎う
二人
(
ふたり
)
にちょっと会釈しながら、廊下に上りて来し二十三四の洋服の男、
提燈
(
ちょうちん
)
持ちし若い者を見返りて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
旅の人だか何だか、
草鞋
(
わらじ
)
も
穿
(
は
)
かないで、今時そんな、見たばかりで分りますか。それだし、この土地では、まだ半季勘定がございます。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僕は朝早く弟と共に
草鞋
(
わらじ
)
脚絆
(
きゃはん
)
で元気よく熊本を
出発
(
た
)
った。その日はまだ日が高いうちに
立野
(
たての
)
という宿場まで歩いてそこに一泊した。
忘れえぬ人々
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「岡っ引に脅かされて獲物を吐き出したとあっちゃ、この東作の名折れだ。今すぐ長い
草鞋
(
わらじ
)
をはくまでも、そいつは御免蒙ろうよ」
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
旅行せんとする人はその出発にさきだち、新
草鞋
(
わらじ
)
をうがちて一度わが家の便所へ行き、しかるのち旅程につくときは無難に帰宅すべし。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そうこうするうちに日暮れに近かったので、
浪花講
(
なにわこう
)
の看板を出した旅人宿を両国に見つけ、ひとまず彼はそこに
草鞋
(
わらじ
)
の
紐
(
ひも
)
を解いた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
序でに酒屋へ行って酒を二升、
味淋
(
みりん
)
を一升ばかり、それから帰りに半紙を十
帖
(
じょう
)
ばかりに、煙草を二玉に、
草鞋
(
わらじ
)
の良いのを取って参れ
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「子犬」といわれて取ってあげるのは、
草鞋
(
わらじ
)
に子犬が二つむつれている形でした。大きさも
程
(
ほど
)
よく、ほんとに可愛らしいのでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
村を逃げだした由平は、足のむくままに
吉田
(
よしだ
)
へ往って、其処の旅宿へ
草鞋
(
わらじ
)
を解いた。宿の
婢
(
じょちゅう
)
は物慣れた調子で由平を二階の一間へ通した。
阿芳の怨霊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一時は長え
草鞋
(
わらじ
)
をはいても、いつかはこの土地へ取って返し、縄張りを切り拓いて俺の天下をつくってみせらあ。さあ、行こう。
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
遍路のはいている
護謨底
(
ごむそこ
)
の
足袋
(
たび
)
を
褒
(
ほ
)
めると「どうしまして、これは
草鞋
(
わらじ
)
よりか倍も
草臥
(
くたび
)
れる。ただ草鞋では金が
要
(
い
)
って
敵
(
かな
)
いましねえから」
遍路
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
藤橋十一時昼食をなし、
草鞋
(
わらじ
)
を買い出発、川を渡りて急峻を攀じ高原へ出でブナ小屋にて休む。弘法、追分小屋等を過ぎ地獄を見物せり。
単独行
(新字新仮名)
/
加藤文太郎
(著)
吉良は、
穿
(
は
)
き古した
草鞋
(
わらじ
)
のような感じの、細長い顔をまっすぐ立てたまま、平茂のことばは、聞こえていて聞こえていなかった。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私は階下で遅れて夕飯を食べていたが、万年屋はいかにも疲れきった様子で、ドッカリ上り框に腰を下ろすと、もう
草鞋
(
わらじ
)
を解く勢もない。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
往来は
埃
(
ほこり
)
が二寸も
積
(
つも
)
つてゐて、其上に下駄の歯や、
靴
(
くつ
)
の底や、
草鞋
(
わらじ
)
の
裏
(
うら
)
が奇麗に出来上つてる。車の輪と自転車の
痕
(
あと
)
は幾筋だか分らない。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
家鶏
(
にわとり
)
などが飼ってあり、壁には
簑
(
みの
)
、笠、合羽、
草鞋
(
わらじ
)
、そんなものが掛けてあり、隅には鋤だの鍬だのの、道具が寄せて立てかけてあった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この茗荷谷を小日向
水道町
(
すいどうちょう
)
の方へ出ると、今も往来の真中に
銀杏
(
いちょう
)
の大木が立っていて、
草鞋
(
わらじ
)
と
炮烙
(
ほうろく
)
が沢山奉納してある小さなお宮がある。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
両足がまったくだめで、手に
草鞋
(
わらじ
)
のようなものをはいている上に、顔じゅうが腐れただれて、ほとんど眼鼻もわからないむごたらしさだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
脚絆に
草鞋
(
わらじ
)
がけという
実誼
(
じつぎ
)
な
装
(
なり
)
で一年の半分は山旅ばかりしているので、画壇では「股旅の三十郎」という
綽名
(
あだな
)
をつけている。
生霊
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
次の朝は綺麗に
霽
(
は
)
れた。雨に洗われた山の空気は、まことに清浄それ自身であった。Mさんはよろこんで、早速
草鞋
(
わらじ
)
をはいた。
可愛い山
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
紺の
脚袢
(
きゃはん
)
、
蒲
(
がま
)
はばきは、ゲートルに、
草鞋
(
わらじ
)
は、ネイルドブーツに、
背負梯子
(
しょいな
)
は、ルックサックに、羚羊の着皮は、レーンコートに移り変る。
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
一束にした
草鞋
(
わらじ
)
と一歩一歩踏み昇る場合の足場を掘るためのスコップとを鞍の一端に結びつけて来たのであるが、今、それが私の眼の先で
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
そこへ
往
(
ゆ
)
かんとて
菅笠
(
すげがさ
)
いただき
草鞋
(
わらじ
)
はきて出でたつ。車前草おい重りたる
細径
(
こみち
)
を下りゆきて、
土橋
(
どばし
)
ある処に至る。これ魚栖めりという流なり。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
貧家に人となった尊徳は昼は農作の手伝いをしたり、夜は
草鞋
(
わらじ
)
を造ったり、大人のように働きながら、
健気
(
けなげ
)
にも独学をつづけて行ったらしい。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
最後に
涼葉
(
りょうよう
)
十七句を調べてみた。「牛」が二頭いる。「
草鞋
(
わらじ
)
」と「
蓆
(
むしろ
)
」と「
藁
(
わら
)
」、それから少しちがった意味としても「
籠
(
かご
)
」と「
駕
(
かご
)
」がある。
連句雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
船中の混雑は中々容易ならぬ事で、水夫共は皆
筒袖
(
つつそで
)
の着物は着て居るけれども
穿物
(
はきもの
)
は
草鞋
(
わらじ
)
だ。草鞋が何百何千
足
(
そく
)
も貯えてあったものと見える。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ナラの樹のかたい葉が土地の低みに吹き
溜
(
たま
)
って、ざくりと踏み入ると、千万本の針のような霜柱が
草鞋
(
わらじ
)
の先に蹴あげられた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
夜が明けますと太郎と二郎と二人して、弁当を腰に下げて、杖を
持
(
もっ
)
て、
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
いて、同じ、
扮粧
(
いでたち
)
で出掛たのであります。
迷い路
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そして
鎧
(
よろい
)
や
兜
(
かぶと
)
は
笈
(
おい
)
の中にかくして、
背中
(
せなか
)
に
背負
(
せお
)
って、
片手
(
かたて
)
に
金剛杖
(
こんごうづえ
)
をつき、
片手
(
かたて
)
に
珠数
(
じゅず
)
をもって、
脚絆
(
きゃはん
)
の上に
草鞋
(
わらじ
)
をはき
大江山
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
その旅中伊豆の三島から一葉の写真を余の下宿に送ってくれた。それは菅笠を下に置いて
草鞋
(
わらじ
)
の
紐
(
ひも
)
を結びつつある姿勢で
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
朝の
手水
(
ちょうず
)
を済ませ、
浴衣
(
ゆかた
)
がけにパッチ、
紺足袋
(
こんたび
)
に
草鞋
(
わらじ
)
ばきという、どんなに汗をかいても心配のない、気楽な身ごしらえの出来上ったところへ
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
地球の緯度線が
草鞋
(
わらじ
)
の爪先に引っかかるわけである、しかも争う
可
(
べか
)
らざるは朝の神秘なり、一たび臨むとき、
木偶
(
でく
)
には魂を、大理石には血を
与
(
あたえ
)
る。
奥常念岳の絶巓に立つ記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
草鞋
(
わらじ
)
ばきの古トンビや、市の学校へゆく学生や、大きな風呂敷を
脊負
(
せお
)
った行商人たちや、そんなのがウルさそうに電車を見送ってはあるいていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「木瓜薊、旅して見たく野はなりぬ」
忙
(
せわ
)
しくなる前に、此花の
季節
(
きせつ
)
を、
御岳詣
(
みたけまいり
)
、三峰かけて
榛名詣
(
はるなまいり
)
、汽車と
草鞋
(
わらじ
)
で遊んで来る講中の者も少くない。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
翌朝五時半には、私どもは粉奈屋を
発
(
た
)
った。空は薄く曇っているが、月があるので明るい。新しい
草鞋
(
わらじ
)
に、少しく湿った土を踏んでゆく心持はよい。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
ラムプを吹消して、手探りで
草鞋
(
わらじ
)
を穿いて、
地面
(
じべた
)
へジカに置いた座布団の上にドッカリと坐って、潜り戸に
凭
(
よ
)
りかかりながら腕を組んで眼を閉じた。
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
こういいながら、男の方は、市九郎の店の前で、
草鞋
(
わらじ
)
の紐を結び直そうとした。市九郎が、返事をしようとする前に、お弓が、台所から出てきながら
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
霰
(
あられ
)
の如き
間投詞
(
かんたうし
)
の互に
交
(
かは
)
されたる後、
灑
(
すゝ
)
ぎの水は汲まれ、
草鞋
(
わらじ
)
は
脱
(
ぬ
)
がれ、其儘奧の
室
(
へや
)
に案内せられたるが、我等二人は
先
(
まづ
)
何を語るべきかを知らざりき。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
具
(
そな
)
えたる少年、
齢
(
とし
)
二十に余ることわずかなれば、新しき
剃髪
(
ていはつ
)
の
相
(
すがた
)
傷
(
いた
)
ましく、いまだ古びざる僧衣を
纏
(
まと
)
い、
珠数
(
じゅず
)
を下げ、
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
うが
)
ちたり。奥の方を望みつつ
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
警察でも不審をもち、東京の地から
草鞋
(
わらじ
)
をはいて地方へ出たのかと思って、それぞれに問いあわせてみたが、千太郎はどこにも草鞋をぬいでいなかった。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
“草鞋”の意味
《名詞》
わらぐつ。わらじ。わらをあんでつくったはきもの。
挿鞋。
(出典:Wiktionary)
“草鞋”の解説
草鞋または鞋(わらじ)は、稲藁で作られる伝統的な履物の一つ。
技術的には草鞋は編物の一種と考えられてきたが、楕円状の織物の一種として位置付けるべきという見解がある。なお、草履とは異なり草鞋には足首を縛る紐がある。
(出典:Wikipedia)
草
常用漢字
小1
部首:⾋
9画
鞋
漢検1級
部首:⾰
15画
“草鞋”で始まる語句
草鞋穿
草鞋銭
草鞋虫
草鞋掛
草鞋脚絆
草鞋代
草鞋作
草鞋喰
草鞋履
草鞋懸