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糧
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かて
ふりがな文庫
“
糧
(
かて
)” の例文
或
(
ある
)
者は商家に嫁ぎ、ある者は良人に従って海を越えた遠い国へ移住し、
或
(
あるい
)
は又
漸
(
ようや
)
くその日を送るだけの
糧
(
かて
)
を得る為に営々と働いていた。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
常に人間の血が
号泣
(
ごうきゅう
)
に出逢うのを忍ばなければ生きてゆく
糧
(
かて
)
が得られないとすると、……これはすこし意気地がないぞとも考えた。
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鉱蔵
其奴等
(
そいつら
)
騙賊
(
かたり
)
じゃ。また、騙賊でのうても、華族が何だ、学者が何だ、
糧
(
かて
)
をどうする!……命をどうする?……万事俺が引受けた。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
糧
(
かて
)
と
味噌
(
みそ
)
と
鍋
(
なべ
)
とをしょって、もう銀いろの
穂
(
ほ
)
を出したすすきの野原をすこしびっこをひきながら、ゆっくりゆっくり歩いて行ったのです。
鹿踊りのはじまり
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼は家中の若
武士
(
ざむらい
)
と槍を合わし、剣を交じえ、彼らを散々に打ち負かすことによって、自分の誇りを養う日々の
糧
(
かて
)
としていたのであった。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
いったい裏飛騨の漁師は、岩魚を釣っても売り場がないから
糧
(
かて
)
に代えるわけにいかぬ。そこで岩魚や山女魚は
顧
(
かえり
)
みないのである。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
いかなる欲念も、
畢竟
(
ひっきょう
)
お前の個性の生長の
糧
(
かて
)
となるのであるが故に、お前はそれに対して臆病であるべき必要がなくなるだろう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この
聖譚曲
(
オラトリオ
)
の
敬虔雄麗
(
けいけんゆうれい
)
な美しさは、古今、ヘンデルの「
救世主
(
メシア
)
」と比較されるだけで、幾多の人の心の
糧
(
かて
)
となったかわからないのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
我はひとりの大いなる貴き君が他のかゝる君に迎へられ、かれらを
飽
(
あ
)
かしむる天上の
糧
(
かて
)
をばともに
讚
(
ほ
)
め
稱
(
たゝ
)
ふるを見き 二二—二四
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
正しい藝術を、みんなの
心
(
こゝろ
)
の
糧
(
かて
)
のたしに——
心
(
こゝろ
)
の
糧
(
かて
)
といふほどにならずとも、せめて
肥
(
こや
)
しぐらゐにでもなるやうに——それが望ましいのだ。
むぐらの吐息
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そんなにまで自分にとつてはもはや命の
糧
(
かて
)
にも等しく思へるほどな貴重な苦しみを、男は自ら與へながらそれには一向氣づかうともしない
七つの手紙:或女友達に
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
日々の
糧
(
かて
)
の心配なく、専心に書物の中のことと、実験室の成績と突き合せながら、使える部分を自分の工夫の中へ
鞣
(
なめ
)
し取って
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
おれには精神的な
糧
(
かて
)
がほしいんだ——それでもつて魂を養ひ、心を慰めてもらはうと思へば、何だい、こんな馬鹿々々しいことばかり……。
狂人日記
(旧字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
たといわたくしのからだは、毒薬で養われていても、心は神様に作られたもので、日にちの
糧
(
かて
)
として愛を熱望していたのです。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
所詮
(
つまり
)
周三がお房を
懌
(
よろこ
)
ぶ意味が違つて、一
個
(
こ
)
の
物
(
ぶつ
)
體が一
人
(
にん
)
の婦となり、
單純
(
たんじゆん
)
は、併し
價値
(
かち
)
ある製作の資
料
(
れう
)
が、意味の深い心の
糧
(
かて
)
となつて了つた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
中には霊の飢餓を訴うるものがあっても、霊の空腹を
充
(
み
)
たすの
糧
(
かて
)
を与えられないで、かえって空腹を鉄槌の
弄
(
なぶ
)
り物にされた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
我々は心の爲めに他の
糧
(
かて
)
を探せばいゝのです、味ひたいと願つた禁制の食物と同じ位に腹ごたへのする——そして多分もつと
淨
(
きよ
)
らかなものを。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかしそのおかげで一般消費者は日々の
糧
(
かて
)
に不自由を感ぜざることを
得
(
う
)
る、鉱夫の石炭を採掘するもまた自己の生活のためにほかならざれども
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
われむかし年わかくして今おいたれど義者のすてられ或はその
裔
(
すえ
)
の
糧
(
かて
)
こいあるくを見しことなし。(詩篇三十七の二十五)
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
イギリスが数世紀来それを
糧
(
かて
)
としてるのを思うと、僕はおののかざるを得ない。イギリスと僕との間に海峡の
溝渠
(
こうきょ
)
が感ぜられるのは仕合わせだ。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その金は、天竜寺の和尚とやらの手許の金であったというではないか、生仏を地獄に落したほどの女が、人の恋愛の
糧
(
かて
)
を盗み得ないと誰が言う。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一方に支那の利源を
糧
(
かて
)
として東洋の覇権を握らむと焦慮しつつある日本の死命を制して、全世界を米国資本の植民地化し
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
知ることは一つの
糧
(
かて
)
であり、考えることは第一の要件であり、真理は小麦のごとき栄養物である。理性は学問と知恵とを断食する時やせてゆく。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ものの五町とも
距
(
へだ
)
たらぬのだが、
齷齪
(
あくせく
)
と
糧
(
かて
)
を爭ふ十萬の市民の、我を忘れた血聲の喧囂さへ、浪の響に消されてか、敢て此處までは傳はつて來ぬ。
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そして浄瑠璃は無学な父の心の
糧
(
かて
)
であったのだ。父はこの中から何でも引き出して、生活と心ばえとの準拠としたのだ。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
イエスは罪の
赦
(
ゆるし
)
による永遠の生命の
糧
(
かて
)
を与えようとするのに、群衆は朽つる肉の糧を求めてイエスを王としようとする。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
稽古を積めば積むほど
娯
(
たの
)
しみが深くなってゆきまして、
大業
(
おおぎょう
)
に申せば、私どもの生活のすぐれた
糧
(
かて
)
となって居ります。
無表情の表情
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
せっかく貴方の墓と思い、引き揚げた『
鷹の城
(
ハビヒツブルグ
)
』も、ついには私たちの生計の
糧
(
かて
)
として用いねばならなくなりました。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
私は犬でもねこでもないのだから、
糧
(
かて
)
で飼われているのでは、いかにも空しい気がする、という意味なのであった。
奥の海
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
住むに家なく、口に
糊
(
こ
)
する
糧
(
かて
)
もない難民は大路小路に
溢
(
あふ
)
れております。物とり強盗は日ましに
繁
(
しげ
)
くなって参ります。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
小圓太の耳に入る噺の、講釈の、一木一草——ほんのかりそめのいと片々たる
雑艸
(
ざっそう
)
までが立派に明日の
糧
(
かて
)
となった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「さだめて
空腹
(
ひもじ
)
いことでござろう。わたくしが
糧
(
かて
)
を求めてまいります。そのあいだ、しばらくここに休息なされ。」
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
『グリム童話』は「
久遠
(
くおん
)
の若さ」に生きる人間の心の
糧
(
かて
)
である。『グリム童話集』を移植するのは、わが国民に世界最良書の一つを提供することである。
『グリム童話集』序
(新字新仮名)
/
金田鬼一
(著)
定めし男の方でも自分の言葉を思出して「説法は有難いが、朝飯の方が尚有難い。」とかなんとか
独語
(
ひとりごと
)
を言い乍ら、其日の
糧
(
かて
)
にありついたことであろう。
朝飯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
されば農家は三年耕して一年の
糧
(
かて
)
を
贏
(
あま
)
し、政府も租税の取り
心
(
ここ
)
ろよく、わが三府六十県の人民、すなわち当今猫も
杓子
(
しゃくし
)
も
唱
(
となえ
)
おる、わが三千五百万の
兄弟
(
けいてい
)
は
禾花媒助法之説
(新字新仮名)
/
津田仙
(著)
娘はもう三十六七の
上
(
かみ
)
さんであつた。そこは穀物を
商
(
あきな
)
ふやうな店で、街道に面した家の前には、馬に
糧
(
かて
)
をやるために、運送の荷車などがよく来てはとまつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
抑
(
そも/\
)
われは
寄辺
(
よるべ
)
ない
浮浪学生
(
ふらうがくしやう
)
、
御主
(
おんあるじ
)
の
御名
(
みな
)
によりて、
森
(
もり
)
に
大路
(
おほぢ
)
に、
日々
(
にちにち
)
の
糧
(
かて
)
を
乞
(
こ
)
ひ
歩
(
ある
)
く
難渋
(
なんじふ
)
の
学徒
(
がくと
)
である。おのれ
今
(
いま
)
、
忝
(
かたじけな
)
くも
尊
(
たふと
)
い
光景
(
けしき
)
を
観
(
み
)
、
幼児
(
をさなご
)
の
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いた。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
栄養食とは口に美味で人間を楽しませ、精神の
糧
(
かて
)
ともなるもの。栄養薬とは病人をいよいよ病人にするばかりの不愉快極まりないもの。もう一度言ってみよう。
不老長寿の秘訣
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
じっさい、彼は当然生徒たちと仲よくしなければならなかった。学校からあがる収入はわずかだったし、とても毎日の
糧
(
かて
)
をもとめるにも足りないくらいだった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
燕将
張武
(
ちょうぶ
)
悪戦して敵を
却
(
しりぞ
)
くと
雖
(
いえど
)
も、燕軍遂に
克
(
か
)
たず。
是
(
ここ
)
に於て南軍は
橋南
(
きょうなん
)
に
駐
(
とど
)
まり、北軍は橋北に駐まり、
相
(
あい
)
持
(
じ
)
するもの数日、南軍
糧
(
かて
)
尽きて、
蕪
(
ぶ
)
を採って食う。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
参って門に立ちませねば……明日の
糧
(
かて
)
さえ、いいえ今日の……今日の糧さえござりませぬ。……あなた様を
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
無論、世に神聖な戀愛などはない——あつても、ただの空想で、現世に活動する人間の
糧
(
かて
)
にはならない。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
……しだいに、家のことだの、世の中のことだのを一切わすれて、その日その日の
糧
(
かて
)
と宿りとを求める以外には、ひとへにたゞ、大師の恩徳をのみ思ふやうになつた。
にはかへんろ記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
これによって慰安を得、心の
糧
(
かて
)
を得、
以
(
もっ
)
て
貧賤
(
ひんせん
)
と
闘
(
たたか
)
い、病苦と闘う勇気を養う事が出来るのである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
この種の尼は最初の狂熱が
醒
(
さ
)
めた時何を感じなくてはならなかったか。彼らは国家の権力によって物質的生活を保証せられた。仏教芸術によって心の
糧
(
かて
)
を与えられた。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
元より養ふ人なければ、食物も思ふにまかせぬにぞ、心ならずも鷲郎は、
慣
(
なれ
)
し
業
(
わざ
)
とて野山に
猟
(
かり
)
し、小鳥など
捉
(
と
)
りきては、
漸
(
ようや
)
くその日の
糧
(
かて
)
となし、ここに幾日を送りけり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
さればその日の
糧
(
かて
)
を
猟
(
あさ
)
らうにも、鹿熊なんどのたぐひをとりひしぐは、指の先の一ひねりぢや。
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分には猫の事をかくのがこの上もない
慰藉
(
いしゃ
)
であり安全弁であり心の
糧
(
かて
)
であるような気がする。
備忘録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
換言すれば、われ等の教訓が、正しき理性の判断に
堪
(
た
)
えるか?
精神
(
こころ
)
の
糧
(
かて
)
として
何
(
ど
)
れ丈の価値を有するか?——われ等の教訓の存在理由は、これを
以
(
もっ
)
て決定すべきである。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
文化の中心から遠く隔絶している私達に取って、外国の文学は無くてはならない心の
糧
(
かて
)
です。
亜米利加の思出
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
糧
常用漢字
中学
部首:⽶
18画
“糧”を含む語句
糧食
兵糧
飼糧
馬糧
食糧
銭糧
糧秣
腰兵糧
糧米
糧秣廠
兵糧方
斎糧
糧餉
糧草
飼糧切
馬糧小屋
腰糧
糧道
食糧品
兵糧倉
...