童子どうじ)” の例文
もしあの童子どうじけましたらば、それこそ詐欺師さぎし証拠しょうこでございますから、さっそくくらいげて、かえしていただきとうございます。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
後ろからそっと近づいて見ると、まだ、四、五歳ぐらいな童子どうじが、梅の老樹の下に坐って余念なく、土いじりをしているのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてもちろんそこにはその童子どうじが立っていられましたのです。須利耶さまはわれにかえって童子にむかってわれました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
南無成田山不動明王なむなりたさんふどうみやうわうをはじめたてまつり、こんがら童子どうじ、せいたか童子どうじ甲童子かふどうじ乙童子おつどうじ丙童子へいどうじ、いばらぎ童子どうじ酒呑童子しゆてんどうじのほか數々かず/\二十四童子にじふしどうじ
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
藤かずらをじ、たにを越えて、ようやく絶頂までたどりつくと、果たしてそこに一つの草庵があって、道人は机にり、童子どうじは鶴にたわむれていた。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
僕はいまだ童子どうじで、生れた家の庭隈にわくまでひとり遊んでいると、「茂吉、じょうめが通るから、ちょっと来てみろまず」
玉菜ぐるま (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「昔、晋に王質という木樵きこりがあった。或日、山へ行ったら、童子どうじが数名碁を打っていた。王質はおのを置いて勝負を見物し始めた。あの絵は然うだろう?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ミコは神に仕える女性もしくは童子どうじの名で、山人をそう呼んだことの当否は別として、少なくとも当時なおこの地方には、彼らと山神とのなんらかの関係を
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
母狐に殘された幼い阿部あべ童子どうじのあはれさが、おなじ年頃のものの心へ働きかけたのはいふまでもないが、あの芝居の舞臺面はいかにも美しく情趣がこまやかだ。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
あれは本宮ほんぐう、これは新宮しんぐう、一の童子どうじ、二の童子とかりに所をめ、谷川の流れを那智の滝と思い、そこに飛滝権現ひりゅうごんげんを形ばかりにまつりたてまつったのでございます。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ちいちゃい童子どうじはいつも一人で歩き、持ちきれぬほど色彩のはげしい笛や太鼓や兎や犬を抱え、菅で編んだ笠をかむり、足にはおぼえのある毛糸の靴下をはいていた。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
蜘蛛は薄紅色の乳房を二本の足でとらえて居るのだ。むっちりと、粘着する様な下腹の白い餅肌もちはだには一人の唐子からこがその乳房を求めて、小さな両手を差し上げて居る。童子どうじも裸であった。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
顔は同じような機械的な円い同じ目鼻をつけた顔であったが、博士の作った機械人間は、滑稽こっけいでとぼけた童子どうじのような顔つきをしていた。だから村人たちから親しみの目で見られた。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
途中泊まったのは蔦屋つたやという狩野家の従来の定宿であったが、余儀ない亭主の依頼によってほんの席画の心持ちで融川は布へ筆をふるった。童子どうじ採柿さいしの図柄である。雄渾の筆法閑素の構図。
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
色とりどりな秋の小径こみちを森の古巣ふるすへ走って行く一ぴき白狐びゃっこの後影を認め、その跡をしとうて追いかける童子どうじの身の上を自分に引きくらべて、ひとしお母恋いしさの思いに責められたのであろう。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
野を散歩すうららかにして小春の季節なり。櫨紅葉はじもみじは半ば散りて半ば枝に残りたる、風吹くごとにひらめき飛ぶ。海近き河口に至る。潮退きてあらわれ鳥のぐん、飛び回る。水門をろす童子どうじあり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
メシアの出現をおそれるために、ヘロデ王の殺した童子どうじたちのことを、ヨハネの洗礼を受けられたことを、山上の教えを説かれたことを、水を葡萄酒ぶどうしゅに化せられたことを、盲人の眼を開かれたことを
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
曰く、暮春ぼしゅん春服既に成り、冠者かんじゃ五、六人、童子どうじ六、七人を得て、(水の上)に沿(浴)い舞雩ぶう(の下)にいたり詠じて帰らん。夫子喟然きぜんとして嘆じて曰く、吾は点にくみせん。三子者出でて曾皙そうせきおくる。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
たけひくき向日葵ひまはり童子どうじうちならびただす日におもあげて
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
わがために仙人台の岩のもと山寒ければ火を吹く童子どうじ
童子どうじ斷落きりおとされしわが片腕かたうでをも
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼女はそこにっていた。熊太郎というのは、半兵衛が栗原山に閑居していた頃から召使の童子どうじとして年来側近く育てて来た家来である。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
童子どうじはいつものとおり一間ひとまはいって、天文てんもんほんをしきりにんでいますと、すぐまえにわかきの木に、からすが二、かあかあいってんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
川は急流でところどころに瀬を作り、またたんを作つてゐる。潭のところで若者らは童子どうじをも交へて泳ぎ、寒くなると川原の砂に焚火たきびしてあたつてゐる。
南京虫日記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
それから果樹かじゅがちらちらゆすれ、ひばりはそらですきとおったなみをたてまする。童子どうじは早くも六つになられました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
所によっては沖縄でもいろいろによぶが、童子どうじと見ている点と、それから九州と同じように、たくさん集まっていたずらをするという点はよく似ているのである。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夕方になると、一人の童子どうじが門の前の、表札の剥げ落ちた文字を読み上げていた。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
あきらかなる時、花のおぼろなるゆうべ、天女が、この縁側えんがわに、ちょっと端居はしいの腰を掛けていたまうと、経蔵から、侍士じし童子どうじ払子ほっす錫杖しゃくじょうを左右に、赤い獅子にして、文珠師利もんじゅしりが、悠然と、草をのりながら
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たけひくき向日葵ひまはり童子どうじうちならびただす日におもあげて
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
などと叫んでいるところは、いかにも、子供っぽく、ちょうど、火炎不動かえんふどう脇座わきざから躍り出したこんがら童子どうじそのままだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
童子どうじはこういって、おおぜいの腰元こしもと家来けらいにいいつけて、さけさかなをはこばせました。酒呑童子しゅてんどうじはそれでもまだ油断ゆだんなく、六にん山伏やまぶしためしてみるつもりで
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
岸のところに石で畳んだ散歩道が出来ていて、恰も石の廻廊のようになっている。両側の石壁も可なりの厚みがあるから、童子どうじ等はその上をも歩いている。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
童子どうじはやっと歩き出されました。そして、はるかにつめたいしまをつくる雲のこちらに、蘆がそよいで、やがて童子の姿すがたが、小さく小さくなってしまわれました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
日に向ふ向日葵ひまはり童子どうじ前なるがいといとさしおもてただにあげぬ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
童子どうじ。」
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「や、ふしぎな! あのわしには、竹童ばかりでなく、ほかの童子どうじも乗っている。たしかにふたりの人間が乗っている」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
からすの言葉ことばいて、童子どうじ早速さっそくうらないをててみると、なるほどからすのいったとおりにちがいありませんでしたから、おとうさんのまえへ出て、そのはなしをして
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
私から少し離れたところに童子どうじがゐてしきりにこだまおこしてゐる。童子が、ハルロー! といふと、それが五つも六つものこだまになつてはるかの方に消える。童子が、イイヤー、ホホー! といふ。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
日に向ふ向日葵ひまはり童子どうじ前なるがいといとさしおもてただにあげぬ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かくて巨大きょだい黒鷲くろわしの背には、いまやたがいに、てきたりあだたるふたりの童子どうじが、ところもあろうに、飛行する大空において、ひとつつばさの上に乗りあってしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
童子どうじはそのときおうへいな調子ちょうし
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
宮内は、この独楽をもって、仲のわるい二童子どうじの手をむすぼうとしたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、二人の青衣せいい童子どうじが左右から自分を呼んでいるのであった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
童子どうじの方から、声をかけた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)