突込つッこ)” の例文
あ「いゝえおっかさんは今日は五度いつたび御膳をあがって、しまいにはお鉢の中へ手を突込つッこんであがって、仕損しそこないを三度してお襁褓しめを洗った」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
果して遣った! 意地にも立ったきりじゃ居られなくなって、ままよ、とたんを据えて、つかつかと出ようとすると、見事に膝まで突込つッこんだ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と丈助がうっかりして居る処を、おしのは手早く小脇差の鞘を払い、丈助の横腹よこッぱらを目掛け、一生懸命力に任せてウーンと突込つッこむ。
あの、樹の下の、暗え中へ頭突込つッこんだと思わっせえまし、お前様、苦虫の親仁おやじ年効としがいもねえ、新造子しんぞっこが抱着かれたように、キャアと云うだ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何か、直ぐに連れてここへ来る手筈てはずじゃった、猿は、留木とまりぎから落ちて縁の下へ半分身体からだ突込つッこんで、斃死くたばっていたげに云う……嘘でないな。」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云われてまご/\して彼方あっちぶッつかり、此方こっちへ突当って滑ったり、たらいの中へ足を突込つッこんで尻もちをつくやら大騒ぎで
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
といいながら突込つッこむように煙管きせるれた、仕事にかか身構みがまえで、かしらは素知らぬ顔をしてうそぶきながら、揃えて下駄を掻掴かいつかめり。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下女「何うでございますか私は只台所のおへッついの下へ首を突込つッこんで居りましたから、しっかりとは分りませんでしたが、多分お怪我をなさいましたろう」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ずんずんずんと沈んでな、もう奈落かと思う時、釣瓶つるべのようにきりきりと、身体からだを車に引上げて、髪のしずくも切らせずに、また海へ突込つッこみました。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
としけ/″\枕の紋を視詰めて居ましたが、火鉢の中へ黒檀柄こくたんえの火箸を突込つッこみ是を杖にして居た故、力が這入って火の中へ這入り、真赤まっかに焼けてる火箸を取って
と膳の下へ突込つッこむようにり寄った。膝をばたばたとやって、歯をんでおののいたが、寒いのではない、脱いだはだには気も着かず。太息といきいて
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其のうちにお瀧が中央に居るから、情実わけが有ればソレ夜中に向うの床の中へ這入るとか、男の方からお瀧の方へ足でも突込つッこめば、貴方が跳起はねおきて両人ふたりをおさえ付け
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでも、板屋漏るともしびのように、細くともして、薄く白い煙をなびかした、おでんの屋台に、車夫わかいしゅが二人、丸太を突込つッこんだように、真黒まっくろに入っていたので。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
拾ったとこを云わなければならないが、御迷惑が掛っちゃア済まねえから、売りてえのを我慢して、何うか御当人にお渡し申してえと思って、今まで腹掛のかくし突込つッこんでいた所が
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小児衆こどもしゅう小児衆、わしとこへござれ、と言う。はや白媼しろうばうちかっしゃい、かりがなくば、此処ここへ馬を繋ぐではないと、馬士まごは腰の胴乱どうらん煙管きせるをぐっと突込つッこんだ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と考えて居りますと、片方かたっぽでは片手でさぐり、此処こゝあたり喉笛のどぶえと思う処を探り当てゝ、懐から取出したぎらつく刄物を、逆手さかてに取って、ウヽーンと上から力に任せて頸窩骨ぼんのくぼ突込つッこんだ。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
眉の太い、いかばなのがあり、ひたいの広い、あごとがった、下目しためにらむようなのがあり、仰向あおむけざまになって、頬髯ほおひげの中へ、煙も出さず葉巻を突込つッこんでいるのがある。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
器量はたぎっていと云うのではありませんが、何処どこ男惚おとこぼれのする顔で、愛敬靨あいきょうえくぼが深く二ツいりますが、ものさし突込つッこんで見たら二分五厘あるといいますが、たれか尺を入れたと見えます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(やあ、)と言って、十二、三の一番上のが、駈けて返って、橋の上へ落して行った白い手巾ハンケチを拾ったのを、懐中ふところ突込つッこんで、黙ってまた飛んで行ったそうで。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
笑うとえくぼと申してちょいと頬に穴があきますが、どういう器械であくか分りませんけれども、その穴は余程深く、二分五厘有ったと云います、誰が尺を突込つッこんで見たか、髪の毛のつやが好く
……案ずるに我が家の門附かどづけ聞徳ききどくに、いざ、その段になった処で、くだんの(出ないぜ。)をめてこまそ心積りを、唐突だしぬけに頬被を突込つッこまれて、大分狼狽うろたえたものらしい。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
胴金造りの長いやつを抜き放し、丹治の脇腹目掛けてウーンと力に任せて深く突込つッこまれ、丹治はウンとそっくり反って身をふるわす所を足を踏みかけ、なおも再びごじられて其の儘息は絶えました。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小さな銀貨を一個ひとつにぎらせると、両手で、頭の上へ押頂いて、(沢山に難有ありがと、難有、難有、)と懐中ふところあご突込つッこんで礼をするのが、何となく、ものの可哀あわれが身に染みた。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
徳「どゝゝゝ懐に突込つッこんじゃいけません、懐に突込んじゃア」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれども何の張合もなかった、客は別に騒ぎもせず、さればって聞棄ききずてにもせず、なん機会きっかけもないのに、小形の銀の懐中時計をぱちりと開けて見て、無雑作に突込つッこんで
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と富五郎の咽喉のど突込つッこむ。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
店の客人が、飲さしの二合びんと、もう一本、棚より引攫ひっさらって、こいつを、丼へ突込つッこんで、しばらくして、婦人おんなたちのあとを追ってぶらりと出て行くのに、何とも言わねえ。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その怨念の胸の処へ手を当てて、ずうと突込つッこんだ、思いますと、がばと口がいて、こぶしが中へ。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
縁側えんがわへやって来て、お嬢様面白いことをしてお目にけましょう、無躾ぶしつけでござりますが、わたしのこの手をにぎって下さりますと、あの蜂の中へ突込つッこんで、蜂をつかんで見せましょう。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出家のことばは、いささか寄附金の勧化かんげのように聞えたので、少し気になったが、煙草たばこの灰を落そうとして目にまった火入ひいれの、いぶりくすぶった色あい、マッチのもえさしの突込つッこ加減かげん
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「つい突込つッこんで置いたもんですから。」と袖の下に、葛木はその名刺入を持っている。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……邪魔だらば、縁の下へ突込つッこまりょうで。柱へうしろ手に縛られていながらでも、お孝の顔を見ていたいで、便所の掃除でも何でもするだ。活動写真で見たですが、西洋はうらやましい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
年倍としばいなる兀頭はげあたまは、ひものついたおおき蝦蟇口がまぐち突込つッこんだ、布袋腹ほていばらに、ふどしのあからさまな前はだけで、土地で売る雪を切った氷を、手拭てぬぐいにくるんで南瓜とうなすかぶりに、あごを締めて、やっぱり洋傘こうもり
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
よろしい、と肥った監督がおおき衣兜かくしへ手を突込つッこんで、のみ込んでくれました。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紙に乗せて、握飯にぎりめし突込つッこんでくれたけれど、それが食べられるもんですか。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水へ突込つッこんでるように、うねったこの筋までが蒼白く透通って、各自てんでの顔は、みんなその熟した真桑瓜まくわうりに目鼻がついたように黄色くなったのを、見合せて、呼吸いきを詰める、とふわふわと浮いて出て
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と片手を袖へ、二の腕深く突込つッこんだ。片手でねらうように茶碗をおさえて
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
国民皆堕落だらく、優柔淫奔いんぽんになっとるから、夜分なあ、暗い中へ足を突込つッこんで見い。あっちからも、こっちからも、ばさばさと遁出にげだすわ、二疋ずつの、まるでもって螇蚸ばった蟷螂かまきりが草の中から飛ぶようじゃ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
持ってあがって、伝がとこの帳場格子の中へ突込つッこんで見せたというぜ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何かないか、と考えて、有る——台所に糖味噌が、こりゃ私に、と云って一々運ぶも面倒だから、と手の着いたのじゃあるが、おけごと持って来て、時々爺さんが何かを突込つッこんでおいてくれるんでした。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蒲団の下へ突込つッこんで置いた、白鞘しらさやの短刀が転がって出たですが。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じっと灰吹を見詰めてから、静かに巻莨まきたばこ突込つッこみながら
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「さよう、」と突込つッこんで応ずる竜田の声は明快である。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一際ひときわ首を突込つッこみながら
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と吸口をもっと突込つッこむ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爾時そのとき、袂へ突込つッこんで
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)