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空屋
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あきや
ふりがな文庫
“
空屋
(
あきや
)” の例文
猶
(
なお
)
其袂
(
そのたもと
)
から
手巾
(
はんかちーふ
)
を
取出
(
とりだ
)
して、声立てさせじと口に
喰
(
は
)
ませた。
斯
(
か
)
くして冬子は、
彼
(
か
)
の
空屋
(
あきや
)
まで
手取
(
てど
)
り
足取
(
あしど
)
りに担ぎ去られたのであった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……
川
(
かは
)
も
此
(
こ
)
の
邊
(
あたり
)
は
最
(
も
)
う
大溝
(
おほどぶ
)
で、
泥
(
どろ
)
が
高
(
たか
)
く、
水
(
みづ
)
が
細
(
ほそ
)
い。
剩
(
あまつさ
)
へ、
棒切
(
ぼうぎれ
)
、
竹
(
たけ
)
の
皮
(
かは
)
などが、ぐしや/\と
支
(
つか
)
へて、
空屋
(
あきや
)
の
前
(
まへ
)
は
殊更
(
ことさら
)
に
其
(
そ
)
の
流
(
ながれ
)
も
淀
(
よど
)
む。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
隣家は津田という小児科の医者、その隣りが
舟大工
(
ふなだいく
)
、その隣りが
空屋
(
あきや
)
であったが、近頃其所へ越して来た
母娘
(
おやこ
)
の人があった。
幕末維新懐古談:20 遊芸には縁のなかったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
K市街地の
町端
(
まちはず
)
れには
空屋
(
あきや
)
が四軒までならんでいた。小さな窓は
髑髏
(
どくろ
)
のそれのような真暗な眼を往来に向けて開いていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
研究するのが好きだからさ。だからあの
空屋
(
あきや
)
を買ってみたくなったんだよ。そんな犯罪事件のあった
遺跡
(
あと
)
を買って、落付いて調べてみると、意外な事実を
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
強
(
た
)
ってというので、音助に言付け万事出立の用意が整いましたから立たせて遣り、
漸
(
ようや
)
く五日目に羽生村へ
着
(
ちゃく
)
致しましたが、聞けば
家宅
(
うち
)
は
空屋
(
あきや
)
に成ってしまい
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
でも、もう、久しい間
空屋
(
あきや
)
になっていましたので、敷石のあいだから雑草が
萌
(
も
)
えだし、庭の花圃も荒れほうだいに荒れて、見るかげもないようになっていました。
キャラコさん:08 月光曲
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
或る一つの部落では全部がすでに
空屋
(
あきや
)
となって、まだ倒壊してしまわずにいた。また他の村では老人が一人おって、物うげに何ともしようのない窮状を告げたともある。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
同勢は
空屋
(
あきや
)
へ寄って来てほしいままに酒を
呷
(
あお
)
ったり、
四辺
(
あたり
)
憚
(
はばか
)
らぬ高声で流行唄を
謳
(
うた
)
ったりした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
廊下口から上つて行くと、家の中がからんとしてゐて、なんだか
空屋
(
あきや
)
に入つたやうであつた。
湖水めぐり
(旧字旧仮名)
/
野上豊一郎
(著)
これが盛りの時であったなら、戸をたたいたり、案内を
乞
(
こ
)
うたりするまでのことはないはずなのが、
空屋
(
あきや
)
同然の今の場合では、それでも容易に応ずる者が無いものですから
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
また今の旧下士族が旧上士族に向い、旧時の
門閥
(
もんばつ
)
虚威
(
きょい
)
を
咎
(
とが
)
めてその
停滞
(
ていたい
)
を今日に
洩
(
も
)
らさんとするは、
空屋
(
あきや
)
の門に
立
(
たち
)
て案内を
乞
(
こ
)
うがごとく、
蛇
(
へび
)
の
脱殻
(
ぬけがら
)
を見て
捕
(
とら
)
えんとする者のごとし。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
今少しは引いてもいいと言われるほど長く
空屋
(
あきや
)
になっていた古い家で、造作もよく、古風な中二階などことにおもしろくできていたが、部屋が多過ぎていまだに借り手がないとのこと。
嵐
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「そりゃお客さん、何かの間違いでしょう。東隣は私の兄の別宅で、三年ほど前に貸してあった者が、時とすると怪しいことがあったので、引移して
空屋
(
あきや
)
になっておる。どうして爺さんや婆さんがおるものかね。」
阿繊
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「
空屋
(
あきや
)
とは驚いたな」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
其
(
それ
)
もお
値段
(
ねだん
)
によりけり……
川向
(
かはむか
)
うに二三
軒
(
げん
)
ある
空屋
(
あきや
)
なぞは、
一寸
(
ちよつと
)
お
紙幣
(
さつ
)
が
一束
(
ひとたば
)
ぐらゐな
處
(
ところ
)
で
手
(
て
)
に
入
(
はひ
)
る、と
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この
茅葺
(
かやぶき
)
は隣に遠い一軒家であった。
加之
(
しか
)
も
空屋
(
あきや
)
と見えて、内は真の闇、
鎮
(
しずま
)
り返って物の
音
(
おと
)
も聞えなかった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
F市外の公園の入口に在る
檜御殿
(
ひのきごてん
)
と呼ばれた××教の教会堂が、先年の不敬事件に関する信者の大検挙以来、
空屋
(
あきや
)
同然になっていたのを自分の名前で買い取らせて
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこであっちの村から五本、こっちの村から三本、と続々届け出るものがある。役人らは毎日それを取り上げ、一軒の
空屋
(
あきや
)
を借り受け、そのなかに積んで置いて、厳重な戸締まりをした。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
生徒散じ教員
去
(
さっ
)
て塾が
空屋
(
あきや
)
になれば、残る者は
乃公
(
おれ
)
一人だ、ソコで一人の根気で教えられる
丈
(
だ
)
けの生徒を相手に自分が教授して
遣
(
や
)
る、ソレも生徒がなければ
強
(
し
)
いて教授しようとは
云
(
い
)
わぬ
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
処
(
ところ
)
で、
私
(
わたし
)
が、お
浦
(
うら
)
を
救
(
すく
)
ふ
道
(
みち
)
として、
進
(
すゝ
)
むべき
第一歩
(
だいいつぽ
)
は、
何処
(
どこ
)
でも
可
(
い
)
い、
小家
(
こいへ
)
を
一軒
(
いつけん
)
探
(
さが
)
す
事
(
こと
)
だ。
小家
(
こや
)
でも
可
(
いゝ
)
、
辻堂
(
つじだう
)
、
祠
(
ほこら
)
でも
構
(
かま
)
はん、
何
(
なん
)
でも
人
(
ひと
)
の
居
(
ゐ
)
ない
空屋
(
あきや
)
が
望
(
のぞ
)
みだ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
が、
咫尺
(
しせき
)
も弁ぜざる
冥濛
(
めいもう
)
の雪には彼も少しく
辟易
(
へきえき
)
して、
逃
(
にぐ
)
るとも無しに
彼
(
か
)
の
空屋
(
あきや
)
の
軒前
(
のきさき
)
へ転げ込んだ。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
縁辺の話を
決定
(
とりき
)
めたいという親類の意見から、暫く役目のお預りを願って、その
空屋
(
あきや
)
同然の古屋敷に落付く事になると、賑やかな霞が関のお
局
(
つぼね
)
や、
気散
(
きさん
)
じな旅の空とは打って変った淋しさ不自由さが
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
此處
(
こゝ
)
は
空屋
(
あきや
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
を
)
ります……
昨年
(
さくねん
)
住
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
ましたつて
最
(
も
)
う
何
(
なん
)
の
縁
(
えん
)
もありませんものが、
夜中
(
やちう
)
、
斷
(
ことわ
)
りもなしに
入
(
はひ
)
つて
參
(
まゐ
)
りましたんですもの。
知
(
し
)
れましては
申譯
(
まをしわけ
)
がありません……
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
美人を絞殺して
空屋
(
あきや
)
の天井に吊しておく。
書けない探偵小説
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
木下闇
(
こしたやみ
)
、其の
横径
(
よこみち
)
の
中途
(
なかほど
)
に、
空屋
(
あきや
)
かと思ふ、
廂
(
ひさし
)
の
朽
(
く
)
ちた、
誰
(
たれ
)
も居ない店がある……
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「心得てるさ、ちっとも気あつかいのいらないように万事取計らうから可いよ。向うが
空屋
(
あきや
)
で両隣が
畠
(
はたけ
)
でな、
聾
(
つんぼ
)
の婆さんが一人で居るという家が一軒、……どうだね、」と
物凄
(
ものすご
)
いことをいう。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
影法師
(
かげぼふし
)
も
露
(
つゆ
)
に
濡
(
ぬ
)
れて——
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
は
夏帽子
(
なつばうし
)
も
單衣
(
ひとへ
)
の
袖
(
そで
)
も、うつとりとした
姿
(
なり
)
で、
俯向
(
うつむ
)
いて、
土手
(
どて
)
の
草
(
くさ
)
のすら/\と、
瀬
(
せ
)
の
音
(
おと
)
に
搖
(
ゆら
)
れるやうな
風情
(
ふぜい
)
を
視
(
なが
)
めながら、
片側
(
かたかは
)
、
山
(
やま
)
に
沿
(
そ
)
ふ
空屋
(
あきや
)
の
前
(
まへ
)
を
寂
(
さみ
)
しく
歩行
(
ある
)
いた。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
宜
(
よろし
)
いかね、
此
(
これ
)
を
要
(
えう
)
するに、
少
(
すくな
)
くとも
空屋
(
あきや
)
に
限
(
かぎ
)
る……
有
(
あ
)
りますか、
人
(
ひと
)
の
居
(
ゐ
)
ない
小家
(
こや
)
はあるか。
有
(
あ
)
れば、
其処
(
そこ
)
へ
行
(
ゆ
)
く。これから
此
(
こ
)
の
足
(
あし
)
で
直
(
す
)
ぐに
行
(
ゆ
)
きます。——
宿
(
やど
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
一先
(
ひとま
)
づ
落着
(
おちつ
)
け? ……
呑気
(
のんき
)
な
事
(
こと
)
を。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たしかに、
其家
(
そのいへ
)
は
空屋
(
あきや
)
の
筈
(
はず
)
。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
空
常用漢字
小1
部首:⽳
8画
屋
常用漢字
小3
部首:⼫
9画
“空屋”で始まる語句
空屋敷