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漉
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こ
ふりがな文庫
“
漉
(
こ
)” の例文
近い岸より、遠い山脈が
襞目
(
ひだめ
)
を
碧落
(
へきらく
)
にくつきり刻み出してゐた。ところどころで
落鮎
(
おちあゆ
)
を
塞
(
ふさ
)
ぐ
魚梁
(
やな
)
の
簾
(
す
)
に
漉
(
こ
)
される水音が白く聞える。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
先
(
ま
)
ず米一合と
糯米
(
もちごめ
)
一合と混ぜて
能
(
よ
)
く洗って三日ほど水へ漬けておきます。それからその水ともに
擂鉢
(
すりばち
)
へ入れてよく摺って
水嚢
(
すいのう
)
で
漉
(
こ
)
します。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
玉虫色の笠に
漉
(
こ
)
されて来る、言いようの無い美しい光の中に秀子は足の勇と並んで、長椅子の上へ深々と坐って居るのでした。
流行作家の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
藤棚を
漉
(
こ
)
して来た初夏の陽が、藤の花房の揺れるごとに、乱れた縞のような
斑
(
ふ
)
をなして、続いて捨て石に腰を下ろした若い娘の肩をさした。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
売り勝とう、売り勝とうと、調子を競って、そりゃ高らかな冴えた声で呼び交すのが、空気を
漉
(
こ
)
して井戸の水も澄ますように。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
お銀や子供のこと以来、いろいろの苦労に
漉
(
こ
)
されて来た笹村は、そうは口へ出さなかったが、衷心から友を理解したような心持もしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
むこうの山の上にたぐまっていた墨を
刷
(
は
)
いたような雨雲がだんだんさがってきて、雲に
漉
(
こ
)
された光の陰翳が、氷河をずっと大きく感じさせる。
白雪姫
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
磨硝子
(
すりがらす
)
に
漉
(
こ
)
さるる日の光が、室の中を温室のようにした。窓を開くと、隣家の軒に遮られて僅かではあるが、蒼空が見えた。
溺るるもの
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
かねて
釈迦牟尼如来
(
しゃかむににょらい
)
が戒法をお立ちになった中にもし水の中に虫が居たならばその虫を
切布
(
きれ
)
で
漉
(
こ
)
して飲めというお教えのあった事を思い出して
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
しばらく待つと、黄筋入黒塗の
椀
(
わん
)
が運ばれてきた。なかは信州味噌を
漉
(
こ
)
した味噌汁である。
不躾
(
ぶしつけ
)
ながら、箸のさきで椀のなかを
掻
(
か
)
きまはしてみた。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そこへ持つて
往
(
ゆ
)
くと、
売酒郎噲々
(
ばいしゆらうくわい/\
)
が、所謂七
重
(
へ
)
の絹で七
度
(
たび
)
漉
(
こ
)
した酒を飲ませたといふ、東山の竹酔館は、表の
招牌
(
まねきかんばん
)
も
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
多分塩を多く使い、また目の粗い布の袋で
漉
(
こ
)
すのであろう。都会では近い頃まで絹漉し豆腐の名があった。今の
葛湯
(
くずゆ
)
に近い豆腐は新らしい現象である。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
文明を刺激の袋の底に
篩
(
ふる
)
い寄せると博覧会になる。博覧会を鈍き
夜
(
よ
)
の砂に
漉
(
こ
)
せば
燦
(
さん
)
たるイルミネーションになる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
直方の町は明けても暮れても
煤
(
すす
)
けて暗い空であった。砂で
漉
(
こ
)
した鉄分の多い水で舌がよれるような町であった。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
ここは大津の宿、唐崎屋という
旅籠
(
はたご
)
の下座敷で、
簾
(
すだれ
)
の目より細かい琵琶湖のさざ波をなでてくる涼風が、中庭の
篠
(
しの
)
を
漉
(
こ
)
して、座敷のむし暑さを絶えず吹き
掠
(
かす
)
めてくれる。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
禍害
(
わざはひ
)
なるかな、偽善なる学者、なんぢらは人の前に天国を閉して、自ら入らず、入らんとする人の入るをも許さぬなり。
盲目
(
めしひ
)
なる手引よ、汝らは
蚋
(
ぶよ
)
を
漉
(
こ
)
し出して
駱駝
(
らくだ
)
を呑むなり。
如是我聞
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
且
(
か
)
つその砂糖を
清浄
(
しょうじょう
)
にするには
骨炭
(
こったん
)
で
漉
(
こ
)
せば清浄になると云うこともチャント
知
(
しっ
)
て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
明治十八年十二月頃には、嫌疑者それよりそれと増し加わりて、総数二百名との事なりしが、多くは予審の
笊
(
ざる
)
の目に
漉
(
こ
)
し去られて、公判開廷の当時残る被告は六十三名となりたり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
この最後の物質は豆を煮て、皮を取去るために
漉
(
こ
)
し、それを糊状のかたまりに製造するのである。このスープは確かに養分に富んでいたし、すこし練習すれば好きになれそうである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
今朝
(
けさ
)
より君が来宅までわが近郊の散歩は濁水暫時地を
潜
(
くぐ
)
りし時のごとし。こはわが荒き感情の
漉
(
こ
)
されし時なり。再び噴出せし今は清き甘き泉となりぬ。われは勇みてこの行に上るべし。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
篠田は
例
(
いつも
)
の如く早く起き出でて、一大
象牙盤
(
ざうげばん
)
とも見るべき
後圃
(
こうほ
)
の雪、いと惜しげに下駄を
印
(
いん
)
しつゝ
逍遙
(
せうえう
)
す、日の光は
尚
(
な
)
ほ
遙
(
はる
)
か地平線下に
憩
(
いこ
)
ひぬれど、夜の神が
漉
(
こ
)
し成せる清新の空気は
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
雪解の水に
漉
(
こ
)
されて沈澱した砂は、粒が美しく揃って、並の火山礫などとは、容易に区別が出来る。また富士山の「御中道めぐり」と称して、山腹の五、六合目の間を
一匝
(
いっそう
)
する道がある。
高山の雪
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
日かげは
漉
(
こ
)
されて新しく、わがインバネスに、ノートの罫に、径を超えて
空木
(
うつぎ
)
の幹にて衰へ、キンギンボク、毒ウツギの青き葉は暮れやらぬ陰影のなかにありて小砂利のあかりに鋭く嘆く。
春の暗示
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
この場合、大気が
漉
(
こ
)
して通し、森のすべての葉と針と交流した旋律——鐘の音のうちで自然が採りあげ変化を加え、谷から谷へとこだまさせた、その部分がわたしの耳につたわったのである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
その中の滋養分だけを
漉
(
こ
)
し取って、卵の中へ込めて産むのであるから、これを似我蜂にくらべると一は粗製のままの滋養物、一は精製したる滋養物を子に供給するのであって、その間の相違は
動物の私有財産
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
人々が勇敢に征服していった
泥土
(
でいど
)
の中には、至る所に、金銀細工物や宝石や貨幣などの貴重品が満ちていた。もし巨人があってその泥土を
漉
(
こ
)
したならば、
篩
(
ふるい
)
の中に数世紀間の富が残ったに違いない。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
これを一遍
漉
(
こ
)
せば非常に清浄な水が得られるそうである。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それを
漉
(
こ
)
して味加減をして出しますが多くの病人にはこういうスープよりも色々の品物を混ぜた濁ったスープの方が滋養分も多いし味も結構です。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
旅客機はまだ雲の中にいて、脇窓の外には、乳白色の溷濁したものが、薄い陽の光を
漉
(
こ
)
しながら模糊と漂っていた。
雲の小径
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
この中に五百グラムの小麦粉と、百五十グラムの粉砂糖と、一摘みの塩を入れて攪きまぜる。最後にシャンパン半デシリットルを加えモスリンの布で
漉
(
こ
)
す。
食魔に贈る
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
座敷牢の中は
掃除
(
さうぢ
)
が屆かないものか、いくらか
埃
(
ほこ
)
りつぽくなつて居り、雨戸を開けると、頑丈な格子を通して、青葉に
漉
(
こ
)
された光線が、無氣味な青さを漂はせます。
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その実というのはちょうど
豆腐
(
とうふ
)
を
漉
(
こ
)
したようなものでチベット語でチューラというおから(
豆腐滓
(
とうふかす
)
)よりはまだ柔かく全く豆腐の
砕
(
くだ
)
けたようなもので非常にうまい。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
なかは信州味噌を
漉
(
こ
)
した味噌汁である。
不躾
(
ぶしつ
)
けながら箸のさきで椀のなかを掻きまわしてみた。さつま芋の賽の目に切ったものが、菜味としてふんだんに入っている。
たぬき汁
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
そこでは
雲雀
(
ひばり
)
が啼いていた。そうして片雲が帆走っていた。絹糸のような水蒸気に
漉
(
こ
)
され、油のように質の細かな、午後三時頃の陽の光りは、屋根や往来を照らしていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
背後
(
うしろ
)
に三段ばかり棚を釣りて、ここに
鍋
(
なべ
)
、
釜
(
かま
)
、
擂鉢
(
すりばち
)
など、勝手道具を
載
(
の
)
せ置けり。
廁
(
かわや
)
は井戸に列してそのあわい遠からず、しかも
太
(
いた
)
く濁りたれば、
漉
(
こ
)
して飲用に供しおれり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絹に
漉
(
こ
)
されるほのかな灯が、あたりを柔らかに照らしてはいるが、さすがに夜、ましてや地の底——、部屋の調度の
美
(
うる
)
わしさも、若い女性の住む所にある明るさも、すべてが
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
液は二度ばかり
漉
(
こ
)
してモー一度火へかけて二十分間も煮て壜へ詰めて栓を
確
(
しっか
)
りしておくと一年でも二年でも持ちます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
神将のB ——して見ると阿難の美しさは感情を
攪
(
か
)
きまわす器械でお釈迦さまの美しさは感情の水
漉
(
こ
)
し器械だ。阿難の器械はそこらにざらにあるが、世尊の器械は専売特許だ。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
庭一パイの青葉は、初夏の陽を
漉
(
こ
)
してグルリと廻り縁を辿るのが、丁度水の底を行くやうな感じです。土地の人がそれを『青葉の寮』と呼び慣してゐるのも無理のないことです。
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
木立ちを通して
田圃
(
たんぼ
)
を越して、雨に
漉
(
こ
)
されて色を増したはるかの町に燈火が見える。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
棗
(
なつめ
)
などを塗らせるため、折々、
訪
(
おとな
)
ううちに、いつも見馴れない男が、
漆粕
(
うるしかす
)
を
漉
(
こ
)
したり、木地の
下拭
(
したぶ
)
きをしたりしています。仕事の手すじはなかなかよい。気もねれているし、人なつこい男。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然
(
さ
)
うしますとね、
苦
(
くる
)
しい
中
(
なか
)
にも、
氣
(
き
)
が
澄
(
す
)
むつて
言
(
い
)
ふんでせう……
窓
(
まど
)
も
硝子
(
がらす
)
も
透通
(
すきとほ
)
つて、
晴切
(
はれき
)
つた
秋
(
あき
)
の、
高
(
たか
)
い
蒼空
(
あをぞら
)
を、も
一
(
ひと
)
つ
漉
(
こ
)
した、それは
貴方
(
あなた
)
、
海
(
うみ
)
の
底
(
そこ
)
と
云
(
い
)
つて
可
(
い
)
いか
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
して
可
(
い
)
いんでせう
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
もし味淋やお醤油が悪くって好い味が出なかったらホンの少しのお砂糖を加えてよく煮て
皆
(
み
)
んな
漉
(
こ
)
して用います。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
その近代人的な検討と趣味性に
漉
(
こ
)
された
玲瓏
(
れいろう
)
たる古典は、極めて興味の深いものであるばかりでなく、一九三〇年代のモーツァルトの演奏として、後人に示さるべきものであると思う。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
常磐木
(
ときわぎ
)
が丈高く植え込まれていたが、その枝と葉を
漉
(
こ
)
して来る、
飛白
(
かすり
)
のような日の光を浴びて、突っ立っている兵馬の風采といえば、痩せてはいるが
身長
(
せい
)
は高くて、肩が怒って
凛々
(
りり
)
しかった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お前さん、中は土間で、腰掛なんか、台があって……
一膳
(
いちぜん
)
めし屋というのが、腰障子の字にも見えるほど、黒い森を、柳すかしに、青く、くぐって、月あかりが、水で一
漉
(
こ
)
し漉したように映ります。
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山の若葉を
漉
(
こ
)
してくる夜風が冷たくなった。蘭丸は立って
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
出来上ったら
水嚢
(
すいのう
)
で
漉
(
こ
)
して塩を加えて病人に与えます。その濃さ加減は病人によって
斟酌
(
しんしゃく
)
しなければなりません。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
鮮紅
(
からくれなゐ
)
と、
朱鷺
(
とき
)
と、
桃色
(
もゝいろ
)
と、
薄紅梅
(
うすこうばい
)
と、
丹
(
に
)
と、
朱
(
しゆ
)
と、くすんだ
樺
(
かば
)
と、
冴
(
さ
)
えた
黄
(
き
)
と、
颯
(
さつ
)
と
點滴
(
したゝ
)
る
濃
(
こ
)
い
紅
(
べに
)
と、
紫
(
むらさき
)
の
霧
(
きり
)
を
山氣
(
さんき
)
に
漉
(
こ
)
して、
玲瓏
(
れいろう
)
として
映
(
うつ
)
る、
窓々
(
まど/\
)
は
恰
(
あたか
)
も
名
(
な
)
にし
負
(
お
)
ふ
田毎
(
たごと
)
の
月
(
つき
)
のやうな
汽車
(
きしや
)
の
中
(
なか
)
から
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
牛の
生脂
(
なまあぶら
)
即ちケンネ
脂
(
し
)
という処を買って細かく
截
(
き
)
ってそのまま鍋へ入れて少しの水を加えてよく煮ます。それを
水嚢
(
すいのう
)
で
漉
(
こ
)
しておけばそれが純粋のヘットです。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
漉
漢検準1級
部首:⽔
14画
“漉”を含む語句
味噌漉
紙漉
絹漉
手漉
裏漉
生漉
紙漉場
流漉
溜漉
煮漉
漉返
生漉紙
砂漉
筑紫漉
米漉
紙漉村
紙漉阿原
絹漉餅
茶滓漉
茶漉
...