根気こんき)” の例文
旧字:根氣
籠城戦は根気こんきだ、また、食糧その他一切は自給自足だ。日常、家庭での御内助をここ一城に集めて、あんた達のお力にまつ任務も多い。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは手間のかかる仕事であったが、少年は根気こんきよく土の壁に足場を一段ずつ掘っていって、やがて穴のそとに出ることができた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もう海上を長いあいだ漂流ひょうりゅうし、暴風雨ぼうふううと戦って根気こんきもつきはてた少年どもは、いま眼前に陸地を見ると、もういても立ってもいられない。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それには、すこしでもたくさんってゆくほうがもうかりますから、おとこは、根気こんきよくさびしい北国ほっこく町々まちまちあるいていました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供にも根気こんきよく話したら確かに得心とくしんのゆくべき性質のものゆえ、今日のところではまず誤りを含むことのもっとも少ないものと認めねばならぬ。
我らの哲学 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
でも、キツネ先生は、いつまでも根気こんきよくやっています。まったく、これはどこからみても、りっぱな狩人かりうどです。
肉は食べやすいように小さくむしり魚は小骨一つ残さず取り去り、御飯やお湯は必ず自分の舌で味わってみて、熱すぎれば根気こんきよくさましてからくれるのだった。
根気こんきが無いからいけません、むかし加賀の千代女が、はじめてお師匠さんのところへ俳句を教わりに行った時、まず、ほととぎすという題で作って見よと言われ
千代女 (新字新仮名) / 太宰治(著)
にんじんは、根気こんきよく、ハンケチの表側おもてがわへかみ出す。間違って裏側へやると、そこをなんとかごまかす。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
で、宿の主人は布団のいわれをさがし出すために、根気こんきよくそれからそれへとたずねて行きました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
も早読む根気こんきはなく、手っ取り早く英語のルブランを集めたのであるが、新聞紙法違反で入獄する友人のために、その全部を寄贈してしまって、その後どうなったかわからない。
すると南町みなみちょうへ行って、留守るすだと云うから本郷通りの古本屋を根気こんきよく一軒一軒まわって歩いて、横文字の本を二三冊買って、それから南町へ行くつもりで三丁目から電車に乗った。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三人は約三十分ばかり根気こんきに働いた。仕舞にはさすがの与次郎もあまりつ付かなくなつた。見ると書だなの方を向いて胡坐あぐらをかいてだまつてゐる。美禰子は三四郎のかた一寸ちよつといた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私はまた、二人ふたりの子供の性質の相違をも考えるようになった。正直で、根気こんきよくて、目をパチクリさせるような癖のあるところまで、なんとなく太郎は義理ある祖父おじいさんに似てきた。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
良人おっとまでを道具につかったり、木部の尊信する牧師を方便にしたりして、あらん限りの知力をしぼった懐柔策も、なんのかいもなく、冷静な思慮深い作戦計画を根気こんきよく続ければ続けるほど
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それは空中を鍵形かぎがたに区切り、やいば型に刺し、その区切りの中間から見透みとおす空の色を一種の魔性ましょうに見せながら、その性全体においては茫漠ぼうばくとした虚無を示して十年の変遷へんせんのうちに根気こんきよく立っている。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
狂気の真似をし通したお高の根気こんき、役者も下座も粒の揃った納涼狂言すずみきょうげん、十両からは笠の台が飛ぶと言われたその当時、九カ月あまりに五百両は、もし最終どんじりまで漕ぎつけえたら、瘠浪人の書き下し
親愛な人々を見暮らす根気こんきが尽きて、限りなく懐しみ乍ら訣別けつべつを急ごうとする広々とした傷心しょうしんを抱き、それをいつくしんで汽車に乗った。知る友のない海浜の村落へ来て、海を眺めた時、ほっとした。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
わずかな食物を見つける以外に、何一つ身を労することもなく、ただ一心に風と潮合しおあいとの便宜を観察して、時節の到来をねらっていたという根気こんきのよさは、おそらくは東洋の魯敏孫ロビンソンの特性であって
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何時いつか男の眼が覚めるだらうつて思ふ一方、その女との根気こんきくらべみたいな形にもなつたんだわ。で、たうとう、あたしが負けるには負けたけれど、三年間の辛抱は、褒めてもらつてもいゝわ……。
モノロオグ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
根気こんきのいいことだ。こちらも根気よくやらなければ。持久戦じきゅうせんだぞ)
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
丘田医師は、今もさる病院の一室で、根気こんきのよい治療を続けているという。流石さすがは医師である彼のことだと、医局では感心しているそうだ。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
野原のはらも、むらも、やまも、もうゆきしろでありました。おじいさんは、毎晩まいばん根気こんきよく仕事しごとをつづけていたのであります。
こまどりと酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ところがその運動をいつまで根気こんきにやったものか覚えていない。いとど疲れている上に、なお手足を疲らして、いかな南京虫でもこたえないほど疲れ切ったんで、始めて寝たもんだろう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
滝川たきがわ攻めにかかった秀吉ひでよしは、あの無類むるい根気こんきと、熱と、智謀ちぼうをめぐらして、またたくうちに、亀山城かめやまじょうをおとし、国府こうの城をぬき、さらに敵の野陣や海べの軍船をきたてて、一益かずますの本城
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かういふ時には、根気こんきが大事だ。みんな根気くらべだ。
雅俗貧困譜 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
晩方ばんがたまで、根気こんきよくかえるらはいていました。すると、いままでえなかったくもかげそらうごきはじめました。
長ぐつの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なぐっても、叩いても、蹴っても、どう締めつけてもなお動いている生きものと闘っているような根気こんき負けが、ともすると却って寄手の方に生じて——それはいちじるしく士気を沮喪そそうせしめることがある。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それなら安心あんしんだ。金色こんじきうおは、おれらなけりゃならぬ。」と、一人ひとりはいって、自分じぶんがその千りょうかねをもらう覚悟かくごで、根気こんきよくいとれているのであります。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、これはどこまで、根気こんき懸合かけあいだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとたちのなかでは、まっててゆくものもあれば、らぬかおをして、さっさといってしまうものもありました。しかし、おじいさんは、根気こんきよくおなじことをいっていました。
千代紙の春 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みちばたでは、あいかわらず、みみずが、ジーイ、ジーイ、とうたをうたい、なかでは、かえるが、根気こんきよく、おさまを見上みあげながら、コロ、コロ、といっていていたのでした。
春の真昼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「はやく、れてしまえ!」と、腹立はらだちまぎれに、いったものもあります。すずめをっているおとこは、これで生活せいかつをするのか、根気こんきよく、いつまでも仕事しごとをつづけていました。
すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
あんなに幸福こうふくのにじがかかった。またそれだけ下界げかいほろびるのが長引ながびくわけだ。よし、いもうとがそういうようにみんなをまもなら、わたしはいっそう根気こんきよくみんなをのろってやろう。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
かすかにうなりごえをたて、なみがあちらへいたかとおもうと、つぎには、もっとおおきないかごえわって、いきおいよくおそってきたのです。しかも、おなじことを根気こんきよくくりかえしていました。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
毎日まいにち毎日まいにち、こうして根気こんきよくあるいても、あまりひとがないだろうと、むら人々ひとびとがいったことを太郎たろうむねおもして、なんとなく、その薬売くすりうりがどくなようなかんじがしたのでありました。
薬売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、ちいさなまちほうからまずに根気こんきよくやってきたのです。
からすの唄うたい (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、おとこ根気こんきよく、日盛ひざかりをかさをかぶって、黄色きいろふくろげて
薬売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまえさんは、そんなことをひとにきくのはむりというもんだ。かんがえてみるがいい。だれもにみえないところにすんでいるものを、れるとか、れないとかいうことはできない。根気こんきひとつだ。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)