さか)” の例文
旧字:
勅使の一行が通ってきた北国の駅路うまやじには、綸旨りんし下向げこうのうわさが、当然、人々の耳目からひろがった。そして、念仏門のさかえが謳歌おうかされた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほかの生物せいぶつ生存競争せいぞんきょうそうほろびても、協力生活きょうりょくせいかつをするありの種族しゅぞくだけはさかえるのだ、世界せかいじゅうどこでも、ありのいないところはないだろう。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、ちいさなたにしから出世しゅっせしたおむこさんは、たにしの長者ちょうじゃとよばれて、やさしいおよめさんと一緒いっしょに、すえながくさかえましたと、さ。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
神のさかえ霊魂の不滅を歌ひ得ざる堕落の詩人は、この光によりて初めて罪と暗黒の美を見出みいだし候。ボードレールが一句
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
お前になんのさかえをも与えることもできないで。恥とわずらいとのみ負わせた。お前がわしの妻子に最後までつくしてくれたことは、わしのきもめいじている。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そののちおとこはすっかりこころれかえ、村人むらびとからもうらやまるるほど夫婦仲ふうふなかくなりました。現在げんざいでもその子孫しそんはたしか彼地かのちさかえてはずでございます……。
知らぬものは真の文雅ぶんがとおもひ、とひよるさへも多ければ、たちま諸国しよこくにもそのの名をかほらせ、枝葉えだはさかえ、それのみか、根堅ねがた名園めいゑんのこして年々ねん/\繁昌はんじやう、なみ/\の智恵ちゑ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
この学校にて雛形の鑑札受くるときも、ハンスルといふ名にて通したれど、そは我まことの名にあらず。父はスタインバハとて、今の国王にでられて、ひと時さかえし画工なりき。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
としも十七なればかねてむこをと思ひをりたるをりからなれば、かのしのび男が実心まごゝろめで早速さつそくなかだちはしをわたし、姻礼こんれいもめでたくとゝのひてほどなく男子をまうけけり。其家そのいへなほさかゆ。
御民みたみわれけるしるしあり天地あめつちさかゆるときへらくおもへば 〔巻六・九九六〕 海犬養岡麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あえてこの部落が無くなるという意味ではない、衰えるという意味ではない、人と家とはさかえるので、進歩するので、繁昌はんじょうするので、やがてその電柱は真直まっすぐになり、鋼線はりがねはりを持ち
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして一番みすぼらしい雪小屋から出て、村のかしらになりました。彼が生きていた間じゅう、彼の村人はさかえ、夜、食べる肉がないといって泣くものは一人もなかったということです。
負けない少年 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
よわき子はあめさす指も毒に病むさかえを祝へ地なる醜草しこぐさ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
レバノンのさかえはこれに与えられん
はてなくさかえてくらんみ
横浜市歌 (新字新仮名) / 森林太郎(著)
いちさかへて千代ちよやよろづよ
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あたらしい器械きかい発明はつめいされたとか、あたらしい思想しそう流行りゅうこうするとか、また、戦争せんそうなどということがあって、さかえた職業しょくぎょうが、きゅう衰微すいびしたり、また反対はんたい衰微すいびしていたものが
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わかいお婿むこさんとおよめさんは、なかよくらして、おとうさんとおかあさんをだいじにしました。そしてたくさん子供こどもんで、おくらのねずみの一家いっかはますますさかえました。
ねずみの嫁入り (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これともうすもみな神様かみさま御加護ごかご、おかげ他所よそ銀杏いちょうとはことなり、何年なんねんてどえだれず、みきちず、日本国中にほんこくじゅう無類むるい神木しんぼくとして、いまもこのとおさかえてるような次第しだいじゃ。
「どこまで、悪運がつよいのか」といよいよ、おごさかえる平家を憎んだ。石の上の雑草みたいな、うだつの上がらない自分たちの生活に、また当分、があたらないあきらめを嘆いた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天皇すめろぎ御代みよさかえむとあづまなるみちのくやま金花くがねはなく 〔巻十八・四〇九七〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
正しきものの名によって兵をくわだてた勇士をかかる悲惨ひさんな境遇におちいらしめ、そして王法の敵にかかるさかえをあたうるごとき不合理な神々の前に、乞食こじきのごとくに伏してあわれみを求めることが!
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
会話はいよいよさかえて、笑声わらいごえまじって来る。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わが失へる血を吸ひ誇りさかゆ。
一向いつかういちさかえぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おとろへてくにさか
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
「あのみせも、はやらないとみえて、みせめるのだな。しかし、ものを、こんなに、ぞんざいにするようでは、なに商売しょうばいだって、さかえないのも無理むりはない。」と、こんなことをかんがえたのであります。
おじいさんが捨てたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
さかうる者は自ら安々あんあん
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)