昨日さくじつ)” の例文
上松を過れば、一たび遠く離れし木曾川は再び來りて路傍を洗ひ、激湍の水珠すゐしゆを飛ばし、奇岩の水中によこたはれる、更に昨日さくじつに倍せるを覺ゆ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
ともかくも葬式は昨日さくじつで済みましたから、これから何とかして当夜の間違いの起った筋道を詮議いたしたいと存じて居るのでございます。
勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『丑松の奴がいろ/\御世話様に成りますさうで——昨日さくじつはまた御出下すつたさうでしたが、生憎あいにくと留守にいたしやして。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なす治助なるか御意ぎよいに御座りますと答るにコレ此請取に覺えあるかと尋ねければ治助は是を見て此請取は昨日さくじつ廣小路ひろこうぢの店にてあきなひを致し手付てつけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、昨日さくじつはなしをして、おじいさんのいわれたおんなは、このおんなでなかったかとたずねました。おじいさんはかんがえていたが
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
既に今日こんにち及び昨日さくじつの公衆にしてくの如くんば、明日みやうにちの公衆の批判といへどまた推して知るべきものがありはしないだらうか。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「さて残暑お熱い事でございます、又昨日さくじつあがりまして御無理を願ったところ、早速にお聞済きゝずみ下され有がとう存じます」
ふまでのことではあるまい。昨日さくじつ……大正たいしやう十二ねんぐわつじつ午前ごぜん十一五十八ふんおこつた大地震おほぢしんこのかた、たれ一睡いつすゐもしたものはないのであるから。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昨日さくじつ父より帰国しろという手紙を受取り候う時は、とっさにはぼんやりいたそうらいしかど、ようやくにして悲しさ申しわけなさに泣き申し候う。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
白氏はくし晴天せいてんの雨の洒落しやれほどにはなくそろへども昨日さくじつ差上さしあそろ端書はがき十五まいもより風の枯木こぼくの吹けば飛びさうなるもののみ、何等なんら風情ふぜいをなすべくもそろはず
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
う致しまして。昨日さくじつ態々わざわざお立寄下すつた相ですが、生憎あいにくと芋田の急病人へ行つてゐたものですから失礼致しました。今度町へ被来いらしつたら是非何卒どうか。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨日さくじつは、あまり口惜くやしゅうございましたから、ねむらず工夫くふうしました、今日はそう負けはいたしません」
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
昨日さくじつ、旦さんがドツサリ焙じとくなはつたばツかりやおまへんか。」と、お駒は不審氣な顏をした。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それにはべつ理由りいうなにも無い、究竟つまり学校が違つてしまつた所から、おたがひ今日こんにちあつて昨日さくじつ明日みやうにちも無い子供心こどもごゝろに、漠然ぼうつわすれてしまつたのです、すると、わたしが二きふつたとき
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ここは、左大臣藤原道世ふじわらのみちよ様のおやしきでございます。実は、昨日さくじつ道世様が、鞍馬くらまのお寺へ御参詣ごさんけいの途中、お車を引く牛が、あばれ出して、あなたにそんな大傷おおきずを負わせたのでした。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
昨年のクリスマスにも機械の破損せし懐中時計を子供の玩弄物おもちやに致すやうにと贈り遣りしことあるものなるに、昨日さくじつ門口にて出逢ひし時、可笑をかしさをこらへ居る如き顔付きを致し候。
昨日さくじつも、やった。昨日もやった。今日もやった。だから、明日も、やるであろう。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かかる饗応きょうおうの前でみだりに食うものでないと言い聞かされ、だんさだめし岩倉公の御不興ごふきょうを受けたであろうと思いしが、翌日にいたりこうより昨日さくじつ来た青年は菓子がすきだと見えるというて
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私達が昨日さくじつ見て来た地獄は旧火山である西雲仙中央火山丘の一つが、その後絶えず繰返くりかえされた爆発のため山形さんけいを失い、現在の地獄盆地を現出したものにほかならないと、地質学者は説く。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
昨日さくじつはわざ/\お使をお立て下さいまして、有難くお礼を申上げます。就いてはその節お貸し下さいました二しなのうち、紐育の地図は暫く拝借させて戴きますが、ベデカアの方は……」
罪の罪たるを知らざるより大なる罪はなし、とはカーライルに聞くところなり、昨日さくじつの非を知りて明日みやうにちを期するは、信仰に入るの要緘えうしんにして、罪人の必らず自殺すべしとせざるは之をもてなり。
山庵雑記 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
翌朝五百は貞固をうて懇談した。大要はこうである。昨日さくじつおおせは尤至極である。自分は同意せずにはいられない。これまでの行掛ゆきがかりを思えば、優善にこの上どうして罪をあがなわせようという道はない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
うぞ宜しく、先生には昨日さくじつ……」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
 昨日さくじつは紅楼に爛酔らんすいするの人
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昨日さくじつは」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
というので台所を捜すと醤油樽がある、丁度昨日さくじつ取ったばかりの重いやつをげて来て裾の方に載せ、沢庵石と石の七輪を掻巻かいまきの袖に載せると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
閣下の怠慢たいまんは、私たち夫妻の上に、最後の不幸をもたらしました。私の妻は、昨日さくじつ突然失踪したぎり、いまだにどうなったかわかりません。私は危みます。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
便たよりて參り候はゞかくまひもいたすべけれども未だ手前てまへへは參り申さず主税之助方よりは昨日さくじつ尋ね參り候間右のむね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
早速でございますが、こちらの娘のお蝶どのの身の上について、昨日さくじつもほかの御女中がまいって詳しいお話を
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『マア、貴方で御座いましたか! 昨日さくじつは失礼致しました。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨日さくじつは舟の中で御一緒に成ました時に、何とか御挨拶を
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
昨日さくじつは見舞がてらに本宅の御母様おんははさままゐられ候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
昨日さくじつは図らざる事で段々御厄介に成りました、あれから万年町へ参ると重三も来合せて、段々話も尽きないゆえ、重三は親父が案じるから帰ると云ったが
保吉やすきちは三十になったばかりである。その上あらゆる売文業者のように、目まぐるしい生活を営んでいる。だから「明日みょうにち」は考えても「昨日さくじつ」は滅多めったに考えない。
お時儀 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昨日さくじつといい、今日こんにちといい、御役の方々、御苦労に存じます。大かた斯うであろうと察しまして、今朝こんちょうは読経して、皆さま方のお出でをお待ち申して居りました」
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ひそかに話しわたくしにも昨日さくじつぷくつかはして貴君樣あなたさまの食事に入れてくれよとたのみ候と彼藥を見せければまた委細ゐさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
四、彼は昨日さくじつ小咄こばなし文学」を罵り、今日こんにち恬然てんぜんとして「コント文学」を作る。うべなるかな。彼の健康なるや。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
目出度めでたうございます。乙「はい、お目出度めでたうございます。甲「昨日さくじつ御年頭𢌞ごねんとうまはりでございましたか。 ...
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
武「昨日さくじつは色々お世話に……今日こんにちは早くから出ようと思ったが少々余儀ない事で友達に逢って暇乞いとまごいなどをして居たんで少々時刻が遅れてお待たせ申して済みません」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんだ、これは? ……『昨日さくじつのことは夫の罪にては無之これなく、皆浅はかなるわたくしの心より起りしこと故、何とぞ不悪あしからず御ゆるし下されたくそうろう。……なおまた御志おこころざしのほどはのちのちまでも忘れまじく』
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
多「炭屋善右衞門の所からめえりやしたが、此のお屋敷の御家来に鎌の一昨日さくじつという人がありやすか」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
文「しからばそれで御承知の上からは友之助が昨日さくじつ持参致した百金は速かにお返しがありましょうな」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はア一昨日いっさくじつは余程お悪いようでございましたが、昨日さくじつよりいたして段々御快気におもむき、今朝こんちょうなどはおかゆを三椀程召上りました、其の上お力になる魚類を召上りましたが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
昨日さくじつ火事見舞ながら講釈師の放牛舎桃林ほうぎゅうしゃとうりんの宅へ参りました処同子どうしの宅は焼残やけのこりまして誠に僥倖しあわせだと云って悦んで居りましたが、桃林のうちに町奉行の調べの本が有りまして
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)