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拱
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こまぬ
ふりがな文庫
“
拱
(
こまぬ
)” の例文
何
(
なん
)
にもならないで、ばたりと力なく墓石から下りて、腕を
拱
(
こまぬ
)
き、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、じっとして立って居ると、しっきりなしに蚊が
集
(
たか
)
る。
星あかり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
暮のやり
繰
(
くり
)
と違つて、こいつは何うやら思案の仕甲斐がありさうです。それを眞似するともなく、八五郎も高々と腕を
拱
(
こまぬ
)
きました。
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は手を
拱
(
こまぬ
)
いで島田の来るのを待ち受けた。その島田の来る前に突然彼の
敵
(
かたき
)
の御常が訪ねて
来
(
き
)
ようとは、彼も思い掛けなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また、さう云ふものが存在してゐる世の中に、住みながら、教育家とか思想家などと云ふ人達が、晏然として手を
拱
(
こまぬ
)
いてゐるのですもの。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
袁世凱の後ろ姿を手を
拱
(
こまぬ
)
いて見送った。何故飛びかかって行かなかったのか? 手箱を貰った恩義のためか? いいや決してそうではない。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
「はての」——村重は大きく腕を
拱
(
こまぬ
)
いた。そして、官兵衛の使命をほぼ察したが、同時に、そこに介在する羽柴秀吉を思い
泛
(
うか
)
べずにいられなかった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こは
事難
(
ことむづかし
)
うなりぬべし。
克
(
かな
)
はぬまでも多少は累を免れんと、貫一は手を
拱
(
こまぬ
)
きつつ
俯目
(
ふしめ
)
になりて、
力
(
つと
)
めて
関
(
かかは
)
らざらんやうに
持成
(
もてな
)
すを、満枝は
擦寄
(
すりよ
)
りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
わが子の命のことは、とにかく、多くの忠臣が、死罪となるのに、腕を
拱
(
こまぬ
)
いて、斉興公任せにしておるのも、判らん
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
と私は或晩腕を
拱
(
こまぬ
)
いた。もう赤ん坊を抱いていない。男女取り交ぜて十人あるから、大きい奴等が相応役に立つ。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
腕
拱
(
こまぬ
)
きて茫然たる夫の顔をさし覗きて、吐息つく/″\お浪は歎じ、親方様は怒らする仕事は
畢竟
(
つまり
)
手に入らず
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
ほんとに寶の山に入つて手を
拱
(
こまぬ
)
くとは、このことですよ。いくらでも夜學にだつて行けるぢやありませんか。
滑川畔にて
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
自由が身自らそこなわんことを常に喜ぶ専制政府の目から見れば、恐るべきものでありながら、しかも静かに手を
拱
(
こまぬ
)
いてるということが七月革命の錯誤であった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
近世
(
きんせい
)
では、
犬
(
いぬ
)
の
使命
(
しめい
)
といふ
事
(
こと
)
は
左迄
(
さまで
)
珍奇
(
ちんき
)
な
事
(
こと
)
ではないが、それと
之
(
これ
)
とは
餘程
(
よほど
)
塲合
(
ばあひ
)
も
異
(
ちが
)
つて
居
(
を
)
るので、
二名
(
にめい
)
の
水兵
(
すいへい
)
は
危
(
あや
)
ぶみ、
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
は
腕
(
うで
)
を
拱
(
こまぬ
)
いた
儘
(
まゝ
)
、
眤
(
じつ
)
と
稻妻
(
いなづま
)
の
面
(
おもて
)
を
眺
(
なが
)
めた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「ふむ、それは困ったことになったな」と、新左衛門は両腕を
拱
(
こまぬ
)
いたまま、
溜息
(
ためいき
)
を吐いた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
やむをえず、座敷へ戻って腕を
拱
(
こまぬ
)
いて考えていたが、俺の胸にあったのは、忿怒でもなく、悲哀でもなく、
妬忌
(
とき
)
の念でもなく、どうして体面を膳おうかというそのことであッた。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と藤吉は腕を
拱
(
こまぬ
)
いた。と、中庭の植込みを透かして見える置場の横を顎で指しながら
釘抜藤吉捕物覚書:10 宇治の茶箱
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
実際、高山を見ること平地の如く、天変と気候とを超越すること金石の如き肉体でなければ、こんなことはできないと、兵馬は手を
拱
(
こまぬ
)
いて、空しくその後ろ影を見送るばかりです。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「よいわ。この上は、林右衛門も意地ずくじゃ。手を
拱
(
こまぬ
)
いて縛り首もうたれまい。」
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「こういわれてみると
悴
(
せがれ
)
の言う所も無理はない」と両眼を閉じ腕を
拱
(
こまぬ
)
きて黙然たり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
すてが再び
塞
(
とりで
)
の前に立って、例の手を
拱
(
こまぬ
)
いて見やった時に、
迥
(
はる
)
かな山平に袴野ノ麿と貝ノ馬介とが、みやこの先刻の女を間に置いて、なにか問答の渡り合いでもしているふうであった。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
振返るを見て飯島もハテナと思い、
暫
(
しば
)
し腕
拱
(
こまぬ
)
き、小首かたげて考えて居りました。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
松島は膝を正して手を
拱
(
こまぬ
)
けり、「何卒我が過去の罪は梅子さん、お
赦
(
ゆる
)
し下ださい」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
やけに腕を
拱
(
こまぬ
)
いて考え込んでいる姿が目に映ったので、退屈男は急に何か素晴らしい奇計をでも思いついたもののごとく、にんめり微笑をもらすと、その武者窓下にぴたり身を
平
(
ひら
)
みつけて
旗本退屈男:01 第一話 旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
さうして、私が、ほんたうに鎭まつたのを
確
(
たしか
)
めると、押へてゐた手を
緩
(
ゆる
)
めた。それから、二人は、立ち上つて、手を
拱
(
こまぬ
)
いて、正氣かどうか怪しむやうに、漠然と迷ひながら、私の顏を眺めた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
拱
(
こまぬ
)
きて
居
(
ゐ
)
たりしがとは
云物
(
いふもの
)
の五十兩
容易
(
ようい
)
の金に有ぬ故
如何
(
どう
)
して
穴
(
あな
)
を
償
(
つぐな
)
はん實家へ何とか
方便
(
はうべん
)
云
(
いふ
)
て時借なりとせんものか外に
手段
(
しゆだん
)
は
更
(
さら
)
に無しと
胸
(
むね
)
に思へども久八にも夫のみは云出し
兼
(
かね
)
て居たりしを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
憲作は腕を
拱
(
こまぬ
)
いて聴いた。時々眼を丸くした。最後に高らかに笑った。
黒白ストーリー
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
あきれたことだ。腕を
拱
(
こまぬ
)
いてばかりいて、だれも家の前の歩道を掃くだけの勇気をもっていない。国家も個人もともにその義務を尽くしていない。両者たがいにとがめ合って責を免れたと思っている。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
こいつはちょっと難問題だと、腕を
拱
(
こまぬ
)
いたまま考え込んだ。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
いかにも腕を
拱
(
こまぬ
)
く、とはこのことと思われた。
夢幻泡影
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
人々は唯手を
拱
(
こまぬ
)
いて河の怒りを眺めてゐた。
ランボオ詩集≪学校時代の詩≫
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
唯手を
拱
(
こまぬ
)
いて悲しげに眺めたことか。
鳥料理:A Parody
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
手を
拱
(
こまぬ
)
いて
磧
(
かわら
)
に座すのみである。
水垢を凝視す
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
血汐を浴びて、腕をば
拱
(
こまぬ
)
きて
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
尉官は腕を
拱
(
こまぬ
)
きて、こもまた
和
(
やわら
)
ぎたる
体
(
てい
)
あらず、ほとんど五分時ばかりの間、互に眼と眼を見合せしが、遂に良人まず
粛
(
さ
)
びたる声にて
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
野次馬を分けて入ってみると、玉垣の下、紅白の鈴の緒で縛られた堂守の死体を前に、銭形平次は腕を
拱
(
こまぬ
)
いて考えているところでした。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
また、そう云うものが存在している世の中に、住みながら、教育家とか思想家などと云う人達が、
晏然
(
あんぜん
)
として手を
拱
(
こまぬ
)
いているのですもの。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
甲野さんは首を壁に向けたまま、宗近君は腕を
拱
(
こまぬ
)
いたまま、——時計はきちきちと鳴る。日本間の方で大勢が一度に笑った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこへ登って来た政子が、自分の前にあるのも知らずに、彼は、御堂のぬれ縁に腰かけたまま、
拱
(
こまぬ
)
いて俯向いていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
腕
拱
(
こまぬ
)
きて
茫然
(
ぼうぜん
)
たる夫の顔をさし
覗
(
のぞ
)
きて、吐息つくづくお浪は歎じ、親方様は怒らする仕事はつまり手に入らず
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
素破
(
すわ
)
とばかりに振り返って見ると、白井誠三郎が袈裟に斬られ朱に染まって
斃
(
たお
)
れていた。そうして彼のすぐ背後に鏡葉之助が腕を
拱
(
こまぬ
)
き黙然として立っていた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
されど
狼狽
(
うろた
)
へたりと見られんは
口惜
(
くちを
)
しとやうに、
遽
(
にはか
)
にその手を
胸高
(
むなたか
)
に
拱
(
こまぬ
)
きて、動かざること山の如しと
打控
(
うちひか
)
へたる
様
(
さま
)
も、
自
(
おのづか
)
らわざとらしくて、また
見好
(
みよ
)
げにはあらざりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
士官
(
しくわん
)
水兵
(
すいへい
)
の
勇
(
いさ
)
ましき
働
(
はたら
)
きぶりは
言
(
い
)
ふ
迄
(
まで
)
もない。よし
戰鬪員
(
せんとうゐん
)
にあらずとも
如何
(
いか
)
でか
手
(
て
)
を
拱
(
こまぬ
)
いて
居
(
を
)
らるべきぞと、
濱島
(
はまじま
)
も、
私
(
わたくし
)
も、
重
(
おも
)
き
上衣
(
うわぎ
)
を
跳
(
は
)
ね
脱
(
の
)
けて、
彈丸
(
だんぐわん
)
硝藥
(
せうやく
)
を
運
(
はこ
)
ぶに
急
(
いそが
)
はしく。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
単に手を
拱
(
こまぬ
)
いていて時機を逸したのだが、それを一向に惜しかったとも思っていない。元来一理窟
捏
(
こ
)
ねないと気の済まない男だ。一生涯に関係する就職の問題だから、無論手間がかゝる。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「ふむ、そうか」と、小平太は腕を
拱
(
こまぬ
)
いで考えこんだ。そういうことがあるとすれば、いっそここでこの女に大望を打明けて、その
手蔓
(
てづる
)
で何事かを聞きだすようにしようかとも思ってみた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
夕ばえの富士の雪とも見るべき神々しき姉の
面
(
おもて
)
を仰ぎて、剛一は、
腕
(
うで
)
拱
(
こまぬ
)
きぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
圭一郎は默然として手を
拱
(
こまぬ
)
き乍ら硬直したやうになつて日々を迎へた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
拱
(
こまぬ
)
いて居たりけり翌日伊勢屋の養子千太郎は我が爲に久八が
昨日
(
きのふ
)
の
始末
(
しまつ
)
と夜の目も
合
(
あは
)
ず少しも早く六右衞門に
逢
(
あう
)
て實を
明
(
あか
)
さんと
何
(
ど
)
う
首尾
(
しゆび
)
せしか
宅
(
たく
)
を出でて本石町なる六右衞門の宅へ
到
(
いた
)
り久八に
逢度
(
あひたき
)
由を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と言った米友は、腕を
拱
(
こまぬ
)
いて考え込んでしまいました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何
(
なん
)
にもならないで、ばたりと
力
(
ちから
)
なく
墓石
(
はかいし
)
から
下
(
お
)
りて、
腕
(
うで
)
を
拱
(
こまぬ
)
き、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、ぢつとして
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、しつきりなしに
蚊
(
か
)
が
集
(
たか
)
る。
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
彌次馬を別けて
入
(
はひ
)
つて見ると、
玉垣
(
たまがき
)
の下、紅白の鈴の緒で
縛
(
しば
)
られた堂守の死體を前に、錢形平次は腕を
拱
(
こまぬ
)
いて考へて居るところでした。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
拱
漢検1級
部首:⼿
9画
“拱”を含む語句
拱手
腕拱
拱廊
拱揖
斗拱
拱門
手拱
拱手傍観
拱格
老拱
拱黙
拱道
拱路
拱貫
拱衛
拱梁
三拱
拱州
拱居
拱基
...