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恰
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まる
ふりがな文庫
“
恰
(
まる
)” の例文
幾ら
人數
(
にんず
)
が少ないと
謂
(
い
)
ツて、書生もゐる
下婢
(
げぢよ
)
もゐる、それで
滅多
(
めつた
)
と笑聲さへ聞えぬといふのだから、
恰
(
まる
)
で冬の
野
(
の
)
ツ
原
(
ぱら
)
のやうな光景だ。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
其の果報者は何処の何奴だと
空呆
(
そらとぼ
)
けて訊きますと、相手は一層調子に乗って来て、それはそれは綺麗な美男子なのよ、
恰
(
まる
)
で女見たいな。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
そこで一計を案じて、いかにも吸取紙に残った所らしくて、
恰
(
まる
)
で違った所を考え出して、本当らしく持かけて
態
(
わざ
)
と敵の手に渡して終う。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
と笑っているところは
恰
(
まる
)
で飢饉の実話以上……ここいらは首陽山に
蕨
(
わらび
)
を採った聖人の兄弟以上に買ってやらなければならぬと思う。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「情愛てものは争はれないものだね。妾はつく/″\感心して居るのさ。だつてね。叔父さんがあんなに酷く酔つて、
恰
(
まる
)
で気狂ひのやうに。」
白明
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
▼ もっと見る
女「
真実
(
まこと
)
に宜いのう、愛らしいこと、
人抦
(
ひとがら
)
で
恰
(
まる
)
でお屋敷さんのお嬢さん見たようで、実に女でも惚れ/″\するのう」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「そうだろう、いい花だろう、桃の花だよう、桃の花なんだ」と、声高に
銅鑼
(
どら
)
声を上げつつ、
恰
(
まる
)
で兵隊ごっこをする子供のように先頭を切って出て行った。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
すると鍋小路の若殿
恰
(
まる
)
で結納の品でも貰つたやうに有頂天になつて其紙莨入れを
片時
(
へんじ
)
も離さず到る処に番町随一の美人から貰つたと吹聴して廻つたさうだ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
ドクトルが
恰
(
まる
)
で
乞食
(
こじき
)
にも
等
(
ひと
)
しき
境遇
(
きやうぐう
)
と、
思
(
おも
)
はず
涙
(
なみだ
)
を
落
(
おと
)
して、ドクトルを
抱
(
いだ
)
き
締
(
し
)
め、
聲
(
こゑ
)
を
上
(
あ
)
げて
泣
(
な
)
くので
有
(
あ
)
つた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
恰
(
まる
)
で自分が内侍と色事でもしてゐるやうな調子で、若い変な声を出して
何時
(
いつ
)
迄も読み続けるので、どんな相手でもついその記憶力に感心させられてしまふ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
『贅沢云うなら、サッサと帰って頂戴。そんな幸福感を味わっちゃったら、あんたはあたしを、
恰
(
まる
)
で女房かなんかのような気がするでしょうよ。馬鹿々々しい!』
四月馬鹿
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
「
彼奴
(
あいつ
)
にも困っちまう。今日は
恰
(
まる
)
で
狂人
(
きちがい
)
みたよう。
私
(
わし
)
が、宮様へ
上
(
あげ
)
る玉露の御相伴をさしたい、御茶菓子の
麦落雁
(
むぎらくがん
)
も頂かせたい、と思って
先刻
(
さっき
)
から探しているんだけど」
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
雖然
(
けれども
)
風早學士は、カラ平氣で、
恰
(
まる
)
で子供がまゝ事でもするやうに、臟器を
弄
(
いぢく
)
ツたり摘出したりして、そして更に其の臟器を解剖して見せる。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
真弓の長い物語りに、津村と村井は
恰
(
まる
)
で悪夢から醒めたように、暫くは茫然としていた。が、やがて漸く気をとり直して、津村が訊き始めた。
殺人迷路:10 (連作探偵小説第十回)
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
互ひに
憤
(
む
)
ツとした顔をして、決して視線を合せなかつた。——それが酔つた場合になると
恰
(
まる
)
で親しい友達か何かのやうに盛んに喋り出すのだつた。
熱海へ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
良人
(
をつと
)
は三高の語学教授で京都に住み、
細君
(
かない
)
は音楽学校のヴイオロニストで東京に居るのでは、
恰
(
まる
)
で七夕様のやうに夏休みを
娯
(
たのし
)
む他には、いい機会もあるまい。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
常の如く番頭さんが女の方へ
摺寄
(
すりよ
)
って来るとき、女の方で番頭の手へ小指を
引掛
(
ひっか
)
けたから、手を握ろうとすると無くなって仕舞うから、
恰
(
まる
)
で金魚を探すようで
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
或
(
あるひ
)
は
又
(
また
)
苦痛
(
くつう
)
を
以
(
もつ
)
て
自分
(
じぶん
)
を
鍛練
(
たんれん
)
して、
其
(
そ
)
れに
對
(
たい
)
しての
感覺
(
かんかく
)
を
恰
(
まる
)
で
失
(
うしな
)
つて
了
(
しま
)
ふ、
言
(
ことば
)
を
換
(
か
)
へて
言
(
い
)
へば、
生活
(
せいくわつ
)
を
止
(
や
)
めて
了
(
しま
)
ふやうなことに
至
(
いた
)
らしめなければならぬのです。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「それは、分りませんよ」と今度は横合いの方から他の中年のボーイが
恰
(
まる
)
で怒ったように叫んだ。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
第一文章が
恰
(
まる
)
で成つて居らず、
加
(
おま
)
けに無禮な調子であると訂正されるうちに、作文でも手紙でも私は、眞に考へたことや感じたことを、そのまゝ書くべきものではなく
桃の雫
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
何時だか
恰
(
まる
)
で見当も付きませんが、翌日眼を
寤
(
さま
)
した所が、閣下よ、A警察署なのであります。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
晩年には益々
昂
(
こう
)
じて舶来の織出し模様の
敷布
(
シーツ
)
を買って来て、中央に穴を明けてスッポリ
被
(
かぶ
)
り、左右の腕に垂れた個処を
袖形
(
そでがた
)
に
裁
(
た
)
って縫いつけ、
恰
(
まる
)
で
酸漿
(
ほおずき
)
のお化けのような
服装
(
なり
)
をしていた事があった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
恰
(
まる
)
で夢みたような事を主張するのです……しかも真剣に……
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
北國の雪解の時分と來たら、
全
(
すべ
)
て眼に入るものに、
恰
(
まる
)
で永年牢屋にぶち込まれた囚人が、急に放たれて自由の體となツたといふ趣が見える。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
その時分の事をよう知っている者に聞きますと、当時の二人は
恰
(
まる
)
でお雛さま見たいやったそうだす。私の観測はやっぱり当ってましたンやな。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
先づ学生フロッシが「誰も飲まんのか、誰も笑はんのか、馬鹿に鬱いでゐるぢやないか、君等は何時もてきぱきしてゐるのに今日は
恰
(
まる
)
で濡藁の様だな。」
喜劇考:(吾が、アウエルバツハの一節)
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
切付けられてアッと云って
蹌
(
ひょろ
)
めく
処
(
ところ
)
へ、又、太刀深く肩先へ切込まれ、アッと叫んで倒れる処へ乗し掛って、
恰
(
まる
)
で
河岸
(
かし
)
で
鮪
(
まぐろ
)
でもこなす様に切って仕舞いました。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
路傍
(
みちばた
)
の見物人は、
恰
(
まる
)
で名士の葬式にでも出会つたやうに、克明に帽子を脱いでお辞儀をしたといふ事だ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
当の彼が帰れば
恰
(
まる
)
でお客でも迎えるような調子でこれは珍しいね等と云っていたという話だった。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
六
號室
(
がうしつ
)
の
第
(
だい
)
五
番目
(
ばんめ
)
は、
元來
(
もと
)
郵便局
(
いうびんきよく
)
とやらに
勤
(
つと
)
めた
男
(
をとこ
)
で、
氣
(
き
)
の
善
(
い
)
いやうな、
少
(
すこ
)
し
狡猾
(
ずる
)
いやうな、
脊
(
せ
)
の
低
(
ひく
)
い、
瘠
(
や
)
せたブロンヂンの、
利發
(
りかう
)
らしい
瞭然
(
はつきり
)
とした
愉快
(
ゆくわい
)
な
眼付
(
めつき
)
、
些
(
ちよつ
)
と
見
(
み
)
ると
恰
(
まる
)
で
正氣
(
しやうき
)
のやうである。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
恰
(
まる
)
で夢のような話だ。私は昨夜遅く、毛沼博士を自宅に送って、ちゃんと寝室に寝る所まで見届けて帰って来たのである。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
建物の後は、
楡
(
にれ
)
やら
楢
(
なら
)
やら栗やら、中に
漆
(
うるし
)
の樹も混ツた雜木林で、これまた何んの
芬
(
にほひ
)
も無ければ色彩も無い、
恰
(
まる
)
で枯骨でも
植駢
(
うゑなら
)
べたやうな粗林だ。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
おもひおもひの
姿
(
ポーズ
)
で、
恰
(
まる
)
で彫像か何かのやうにおし黙つて、余つ程深い瞑想に沈んでゐるといふ風な余つ程深い瞑想に沈んでゐるといふ風な、不思議な光景だつた。
海路
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
先日
(
こなひだ
)
もこんな事があつた。その日は博士は朝から少し機嫌を損じてゐて、
何家
(
どこ
)
かの若い夫人が診察室に入つて来た折は、
恰
(
まる
)
で苦虫を噛み潰したやうな顔をしてゐた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
成程
(
なるほど
)
、そこで
寿老神
(
じゆらうじん
)
は。甲「
安田善次郎君
(
やすだぜんじらうくん
)
よ、茶があるからおつな
頭巾
(
づきん
)
を
冠
(
かむ
)
つて、庭を
杖
(
つゑ
)
などを
突
(
つ
)
いて歩いて
居
(
ゐ
)
る
処
(
ところ
)
は、
恰
(
まる
)
で
寿老人
(
じゆらうじん
)
の
相
(
さう
)
があります。乙「シテ
福禄寿
(
ふくろくじゆ
)
は。 ...
七福神詣
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
胡坐
(
あぐら
)
を掻きながら、一息煙を吸うと得も云われない気持だった。つい先刻死を決した自分が、
恰
(
まる
)
で別人のように思われた。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
周三は、此のモデルを
得
(
え
)
て、製作熱を
倍加
(
ばいか
)
した。
屹度
(
きつと
)
藝術界を驚かすやうな一
大傑作
(
だいけつさく
)
を描いて見せると謂ツて、
恰
(
まる
)
で熱にでも
罹
(
かゝ
)
ツたやうになツて製作に
取懸
(
とりかゝ
)
ツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
僕は、小舟に
凭
(
もた
)
れて、珍しくも沁々と月を眺めたりした。夜も大分
更
(
ふ
)
けたと見えて、ふと足もとを見ると自分の影が
恰
(
まる
)
でベルモットの壜のやうに細長く倒れてゐた。
センチメンタル・ドライヴ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
恰
(
まる
)
で動物園に新着の
鸚鵡
(
あうむ
)
でも見るやうな物好きな気持で、その日本人に会つた事があつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「アレ又
引込
(
ひっこ
)
んだ、アラ又出た、引込んだり出たり出たり引込んだり、
恰
(
まる
)
で
鵜
(
う
)
の
水呑
(
みずのみ
)
/\」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「貴い犠牲か? だが世間の奴等はそうは云わないからな。
恰
(
まる
)
で僕達が愉快で人の裏面を
発
(
あば
)
くように思っているからな」
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ところが皺くちやな執事が、土蔵から取り出して観山氏の前に
展
(
ひろ
)
げたのはそんな
小切
(
こぎれ
)
では無かつた。
恰
(
まる
)
で呉服屋の店先に転がつてゐる
緋金巾
(
ひがねきん
)
か何ぞのやうに
大幅
(
おほはゞ
)
のものだつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
丁度
紅葉
(
もみじ
)
も色づきます秋のことでげすが、軍艦が
五艘
(
ごそう
)
も碇泊いたし
宿
(
しゅく
)
は大層な賑いで、夜になると貸座敷近辺は
恰
(
まる
)
で水兵さんで
埋
(
うま
)
るような塩梅、
何
(
いず
)
れも一杯
召食
(
きこしめ
)
していらっしゃる
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
少し
甘
(
あま
)
ツたるいやうな點はあツたけれども、調子に響があツて、好く
徹
(
と
)
ほる、そして
優
(
やさ
)
しい聲であツた「
恰
(
まる
)
で小鳥が
囀
(
さへづ
)
ツてゐるやうだ。」と思ツて、周三は、お房の
饒舌
(
しやべ
)
ツてゐるのを聞いてゐると
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
私の自惚れとは
恰
(
まる
)
で反対に、白々しく快活に照子は笑ひました。
晩春の健康
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
恰
(
まる
)
で親身のようになって、而も私がもし離れでもしたら大変だというようにして、自ら屈してまで機嫌をとられるのが、はっきり分るほどになった。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ズブ/\と這入っちゃア大変でげすからナ…へえ御免なさい/\……これは/\何うも旦那
御覧
(
ごろう
)
じろ、
恰
(
まる
)
で鮪を転がしたように
皆
(
みん
)
なゴロ/\寝ていますが、上等の方でさえ是れでげすもの
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と自分は
熟
(
じつ
)
と流を見詰めると、螢の影は
恰
(
まる
)
で流れるやうだ。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
「よろしなあ、
恰
(
まる
)
で画のやうやなも。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ふと気がつくと、午後の日ざしは大分傾いて、割に涼しい風が吹いていたにも係らず、野村の身体は、
恰
(
まる
)
で雨にうたれたかのように、汗でグッショリだった。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
恰
漢検準1級
部首:⼼
9画
“恰”を含む語句
恰好
恰度
不恰好
背恰好
年恰好
恰当
脊恰好
恰幅
無恰好
相恰
四十恰好
格恰
恰形
恰腹
形恰
無格恰
悧恰
恰顔斎
脊丈恰好
身丈恰好
...