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当
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あて
ふりがな文庫
“
当
(
あて
)” の例文
旧字:
當
「そうか。」やっと
当
(
あて
)
がついたので、わたくしも俄に声をひそめ、「おれはそんなドジなまねはしない。始終気をつけているもの。」
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
とも
角
(
かく
)
、明日のパンに困っては、売る
当
(
あて
)
もない原稿を書いて、運の
賽
(
さい
)
の目が
此方
(
こっち
)
へ廻って来るのを待っているわけにも参りません。
奇談クラブ〔戦後版〕:05 代作恋文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「好いわね。どうせ畑へはわし一人出りやすむんだから。」——お民は不服さうにお住を見ながら、こんな
当
(
あて
)
つこすりも
呟
(
つぶや
)
いたりした。
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ただ
当
(
あて
)
もなく逃げまわる旅寝の夢が、私の人生の疲労に手ごろな感傷を添え、敗残の快感にいささかうつつをぬかしているうちに
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
王子
(
おうじ
)
はこういう
憐
(
あわ
)
れな
有様
(
ありさま
)
で、
数年
(
すうねん
)
の
間
(
あいだ
)
、
当
(
あて
)
もなく
彷徨
(
さまよ
)
い
歩
(
ある
)
いた
後
(
のち
)
、とうとうラプンツェルが
棄
(
す
)
てられた
沙漠
(
さばく
)
までやって
来
(
き
)
ました。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
▼ もっと見る
そして今度はどこという
当
(
あて
)
もなく、フラフラと街から街を
彷徨
(
さまよ
)
った。どこまで逃げても、たった五尺の
身体
(
からだ
)
を隠す場所がなかった。
灰神楽
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
錦子は、青葉の中を、美妙と、そぞろ歩きしようという、
当
(
あて
)
が
外
(
はず
)
れただけではない重っくるしさを抱えてぽっくりを引きずって歩いた。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私しは初め天然の縮毛で無い事を
知
(
しっ
)
た時、猶お念の為め湯気で伸して見ようと思い此一本を鉄瓶の口へ
当
(
あて
)
て、出る湯気にかざしました
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
と
咳
(
しわぶ
)
き、がっしりした、
脊低
(
せいひく
)
の
反身
(
そりみ
)
で、仰いで、指を輪にして目に当てたと見えたのは、柄つきの片目金、拡大鏡を
当
(
あて
)
がったのである。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
のつそり立ち上りざま「
何
(
いづ
)
れ近日
何等
(
なんら
)
かの沙汰をしようが、余り
当
(
あて
)
にしない方がよからう。」と
体
(
てい
)
よく志望者を送り出してしまふ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
医師は、いかにも、自分の与へた注意が守られなかつたのが、遺憾に堪へないやうに、耳は聴診器に
当
(
あて
)
がひながら、幾度も繰り返した。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
それは私がまだ
二十
(
はたち
)
前の時であった。若気の無分別から気まぐれに家を飛びだして、旅から旅へと
当
(
あて
)
もなく放浪したことがある。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
影薄く存在していた蕪村について考える時、人間の史的評価や名声やが、
如何
(
いか
)
に頼りなく
当
(
あて
)
にならないかを、真に痛切に感ずるのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
こいつあ
明日
(
あした
)
になりゃあ勝負がつくのだ、どうせ
無益
(
むだ
)
にゃあ
極
(
きま
)
ってるが
明日
(
あした
)
行って見ねえ中は楽みがある、これよりほかに
当
(
あて
)
は無えんだ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
大原「オヤオヤ少し
当
(
あて
)
が違った。ナニさ少し都合が悪いよ。僕は今小山君の処で南京豆のお汁粉というものを腹一杯食べて来た」
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
兄と自分は体力の優秀な男子と云う訳で、婦人
方
(
がた
)
二人に、下のベッドを
当
(
あて
)
がって、上へ寝た。自分の下には嫂が横になっていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから、武の顔を見ると、鱒の歯に
当
(
あて
)
られて、少し血が出て居り升た。母は可愛さうだと思ひながらも
可笑
(
をかし
)
くつてたまらず
鼻で鱒を釣つた話(実事)
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
田端
(
たばた
)
辺りでも好い。広々した畑地に霜解けを踏んで、冬枯れの木立の上に高い蒼空を流れる雲でも見ながら、
当
(
あて
)
もなく歩いていたいと思う。
枯菊の影
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
『わかりません。全く解りません。が、ここにほんのちょっと不審に思うことがあるんです。でも、それもどうも
当
(
あて
)
にはなりませんが‥‥』
探偵小説アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
一途
(
いちず
)
にこうして鏃ばかりでねらうと、鏃の
当
(
あて
)
はよくても、
桿
(
かん
)
の通りが
碌
(
ろく
)
でもないことになると、矢の出様が真直ぐにいかない。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
抽斎は目を
睜
(
みは
)
った。「お前そんな事を言うが、何百両という金は容易に
調達
(
ちょうだつ
)
せられるものではない。お前は何か
当
(
あて
)
があってそういうのか。」
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
作「それじゃア三藏に貸してくれといっても貸さねえといえば礼はねえか、困ったな、じゃア
後
(
あと
)
の礼の処は
当
(
あて
)
にはならねえな」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
故曰、形は偶然のものにして変更常ならず、意は自然のものにして万古易らず。易らざる者は以て
当
(
あて
)
にすべし、常ならざる者
豈
(
あに
)
当
(
あて
)
にならんや。
小説総論
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ヘエー何が慈善だよ、何が公共事業だよだ。夕方になると、朝から何も食べていない二人は、暗い部屋にうずくまって
当
(
あて
)
のない原稿を書いた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「さう」と、女は
寂
(
さび
)
しい微笑を浮べたが、やつぱり
当
(
あて
)
にならないことを頼りにして来たのだと云ふ、淡い悔いを感じた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
当
(
あて
)
の
外
(
はず
)
れた青蠅が他の腐肉を捜し求めに四方へ散ってゆくかのように、蠅の唸るような声高いうわあっという声が街路へ流れ出ていたからである。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
涯
(
はて
)
しもない白い砂漠を、
当
(
あて
)
もないのにタッタ一人で旅行させられているような苛立たしさと、馬鹿らしさを感じ初めた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
翁は、机の上の書物を伏せて、手を合せて指を組んで、頭の上に
当
(
あて
)
て
俯向
(
うつぶ
)
して、神に何をか祈る……翁が初めの五年、六年は斯様風のものであった。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
一しょに行こうじゃないか。己の方ではもうその考えに
馴染
(
なじ
)
んでしまっている。アルフレットのいう事なんぞはもう
疾
(
と
)
うから己は
当
(
あて
)
にしていないのだ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
ナイエル婦人の
旅館
(
オテル
)
は
此
(
この
)
広場の外れにあつて、僕の部屋に
当
(
あて
)
られた二階の窓を
其処
(
そこ
)
の
木立
(
こだち
)
の明るい緑が
照
(
てら
)
して居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
煙は中天に
満々
(
みちみち
)
て、炎は虚空に
隙
(
ひま
)
もなし。
視
(
まのあた
)
りに見奉れる者、更に
眼
(
まなこ
)
を
当
(
あて
)
ず、遥に
伝聞
(
つたへき
)
く人は、
肝魂
(
きもたましひ
)
を失へり。
法相
(
ほつさう
)
三論の法門聖教、
総
(
すべ
)
て一巻も残らず。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
きみちやん一人ばかりが本当で後の人の考へは、
当
(
あて
)
推量だとか臆測とか云ふものでそれは間違つてゐるのです。
従妹に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
余り期待が大きかったので、これなら規模は小さいが、岩は寧ろ一之関の
厳美
(
いつくし
)
渓の方がよいと思わず独語したのは、少し
当
(
あて
)
のはずれた
腹癒
(
はらい
)
せに外ならない。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
私はじつに苦心をした。できることなら、すね
当
(
あて
)
、こて当、かぶとをかぶって街を歩きたく思ったのである。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「二口あるんですがね。百五十円と二百円ですが、どうも、二百円のほうは、三文役者の
当
(
あて
)
なしなんでねえ」
痀女抄録
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
この家来を叱ることについて如水自身の言ひわけがあるが、その言ひわけは固より
当
(
あて
)
になつたものではない。
畢竟
(
ひっきょう
)
は苦しまぎれの
小言
(
こごと
)
と見るが穏当であらう。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
という
当
(
あて
)
もないのに、女持ちの雨傘を買って来たり
金縁
(
きんぶち
)
の小型の名刺にただ「
仲木
(
なかぎ
)
」とだけ刷らしたのを、
用箪笥
(
ようたんす
)
の
抽斗
(
ひきだし
)
に
蔵
(
しま
)
い込んでおいては楽しんでいた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そしてそんな思い附きでも何かの機縁になって、他日良果を結ぶことでもあればなんぞと、
当
(
あて
)
にもならぬ先の先を見越して
空頼
(
そらだの
)
みしていることもあるのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
禿鷹は
当
(
あて
)
がはずれました。それでもなお、方々の山へ行って、一々たずねてみましたがどの山の霊もみな、どれだか知らない、と同じ冷かな答えをするきりです。
コーカサスの禿鷹
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
益々好色的な気分に成って未だ
当
(
あて
)
の定らない裡に最早や其の牛屋に坐って居る事に
怺
(
こら
)
えられなく成り、歩き乍ら定めようと元の活動街の方へ引返して参りました。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
痩
(
やせ
)
た者かをハッキリといい
当
(
あて
)
るときが出来るほど、異状に
磨
(
と
)
ぎすまされた感覚の、所有者となっていた。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
富岡先生少し
当
(
あて
)
が
外
(
はず
)
れたのサ、
其処
(
そこ
)
で
宜
(
よろ
)
しい
此処
(
こっち
)
にもその
積
(
つもり
)
があるとお梅
嬢
(
さん
)
を連れて東京へ行って江藤侯や
井下
(
いのした
)
伯を押廻わしてオイ井下、娘を頼む位なことだろうヨ
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
どこへ往こうと云う
当
(
あて
)
もなしに歩いているところである。とにかく入ってみようと思いだした。広巳は
前方
(
むこう
)
が知っていて己の知らないと云う女に好奇心を動かした。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「こつちも、一日々々の命が
当
(
あて
)
だ、一日命が延びたと云へば、誰が凝つとしてゐられるものかね。」
サクラの花びら
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
夜中を
当
(
あて
)
もなく歩き回った。空気はさわやかで、野は暗く寂しかった。
梟
(
ふくろう
)
が寒そうに鳴いていた。彼は夢遊病者のように歩いていった。
葡萄
(
ぶどう
)
畑の中にある丘に上った。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
知行割でゆくと、百石について、十八両
当
(
あて
)
の分配であったから、千石では百八十両になるが「高知減し」は、百石を増して禄が上へのぼる毎に、二両
宛
(
ずつ
)
の減配をする。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
出かけたにしても、行く
当
(
あて
)
もない彼女はもう帰って来そうなものだ。彼は一層不安になり出した。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
当
(
あて
)
にしていた印税を持って来てくれる筈の男が、これも生活に困って使い込んでしまったのか途中で雲隠れしているのだと、ありていに言うと、老訓導は急に顔を赧くした。
世相
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
機関車の断末魔の吐息に泡立ちながら、七色に輝く機械油を、
当
(
あて
)
もなく広々と漂わしていた。
気狂い機関車
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
知時は内裏に行くと、夜になって人目につかなくなってから、
局
(
つぼね
)
の裏口にひそんでいた。すると確かに、訪ねる
当
(
あて
)
の
主
(
ぬし
)
の声で何かいっているのが聞えた。耳を澄ましてみると
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
当
常用漢字
小2
部首:⼹
6画
“当”を含む語句
当時
見当
当然
本当
当家
当麻
相当
心当
当地
胸当
当麻語部
日当
弁当
至当
当初
当今
当方
当世
正当
面当
...