平癒へいゆ)” の例文
佐吉の傷は間もなく平癒へいゆし、お駒と与次郎は、相変らず忠実に勤めておりますが、それからは、別に変ったこともありません。
国の臣等とともに深い哀愁をいだき、諸共に発願して、三宝に祈念し、一の釈迦如来の像——太子と等身なるを作り、その功徳くどくを以て、御病平癒へいゆ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
手紙の奥には老母の信心する日吉ひよしさまとかの御洗米が、一ト袋き込まれてあった。老母は夜の白々あけにそこへ毎日毎日孫の平癒へいゆを祈りに行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
聞夫婦は増々ます/\よろこ心靜こゝろしづかに逗留とうりういたしけるうち早くも十日程立疵口もやゝ平癒へいゆして身體も大丈夫になりければ最早江戸表へ出立せんと申に亭主八五郎は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その様あたかも庸医よういが病を誤診して、初め普通薬を用いて無効なりしや更に劇薬を病者に服せしめし如く、病は平癒へいゆせざるのみか益々重る一方であった。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「お延、これは陰陽不和になった時、一番よくく薬だよ。たいていの場合には一服呑むとすぐ平癒へいゆする妙薬だ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして現代においてこの二国民がようやくその病根から平癒へいゆし初めたのは一七八九年(訳者注 フランス大革命)の勇健なる衛生法のお陰によってである。
かれ悲慘みじめ自分じぶん自分じぶんいぢめてやるやうな心持こゝろもちを一ぱうにはつた。一ぱうにはまた無智むち彼等かれら伴侶なかまくするやうにかれ持病ぢびやう平癒へいゆほとけいのつたのでもあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
病気ようやく平癒へいゆ で三日ばかりは非常に苦しみましたが、ドクトルが余程骨を折ってくれたものか三日ばかり経つと大分手足に感覚のある事を覚えて来た。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それは領内の窮民きゅうみんまたは鰥寡かんか孤独の者で、その身がなにかの痼疾こしつあるひは異病いびょうにかゝつて、容易に平癒へいゆの見込みの立たないものは、一々いちいち申出ろといふのであつた。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
さて重二郎は母の眼病平癒へいゆのために、暇さえあれば茅場町の薬師やくし参詣さんけいを致し、平常ふだんは細腕ながら人力車じんりきき、一生懸命に稼ぎ、わずかなぜにを取って帰りますが
公爵のシャトーの中のかび臭い陰気な雰囲気ふんいきを描くためにいろいろな道具が使われているうちに、姫君の伯母おば三人のオールドミスが姫君の病気平癒へいゆを祈る場面がある。
った御礼おれいまいりにいでおおいのは病気びょうき平癒へいゆ祈願きがん就中なかんずく小供こども病気びょうき平癒へいゆ祈願きがんでございます。
十日、庚戌かのえいぬ、将軍家御疱瘡、すこぶる心神を悩ましめ給ふ、これに依つて近国の御家人等ごけにんら群参ぐんさんす。廿九日、己巳つちのとみ、雨降る、将軍家御平癒へいゆの間、御沐浴もくよく有り。(吾妻鏡あずまかがみ。以下同断)
鉄面皮 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この本尊である薬師如来やくしにょらいは、そもそも光明こうみょう皇后眼病平癒へいゆ祈願のためにと、ここの尼僧は説明してくれたと記憶するが、それで特に眼が大きく鋭く作られてあるのかと思う。
乏しい小遣銭こづかいせんをはたいて、医者にもみて貰った。色々の医学の書物を買込んで、自己療法もやって見た。あるいは神仏を念じて、大好物のもちって病気平癒へいゆの祈願をさえした。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
平癒へいゆを待って一たび東に帰り、母にあい、浪子をうて心を語り、再び彼女かれを迎えんか。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
糧米を分け薬湯やくとうを与え城中の武士を引卒して自分から親しく罹災者りさいしゃを見舞い、神社仏閣へ使者を遣わし加持かじ祈祷きとうを行わせ、ひたすら病魔の退散と罹病者の平癒へいゆを願うのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
十五年二月廿二日御当家御攻口おんせめくちにて、御幟を一番に入れ候時、銃丸左のももあたり、ようよう引き取り候。その時某四十五歳に候。手創てきず平癒へいゆ候て後、某は十六年に江戸詰えどづめ仰つけられそろ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あるいは何がしの神を信ずれば病気平癒へいゆ疑なしといはるるもあり、あるいはこの病に利く奇体の灸点あり幸にその灸師只今田舎より上京中なれば来てもらふては如何などいはるるもあり
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「奥方さまのおたのみで、お祈祷いのりにあがりました……ハイ、三人の姫君さまが、そろいもそろうてご風気ふうき大熱たいねつ……そのご平癒へいゆを神さまにおいのりしてくれとのごじょうをうけてまいりました」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ために平素往々うれうる所の、扁桃腺炎へんとうせんえんを誘起し、体温上昇し咽喉いんこうふさがりて、湯水ゆみずも通ずること能わず、病褥びょうじょく呻吟しんぎんすること旬余日、僅かに手療治てりょうじ位にて幸に平癒へいゆせんとしつつありしが
もう高齢であったから不思議でもないのであるが、そのことから不穏な空気が世上にかもされていくことにもなったし、太后も何ということなしに寝ついておしまいになって、長く御平癒へいゆのことがない。
源氏物語:13 明石 (新字新仮名) / 紫式部(著)
一日も早くご平癒へいゆあらんことを祈った。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
山崎の守符はそのころ流行したもので、その守符で火傷をでれば直ぐに平癒へいゆすると伝へられてゐた。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
とある。即ち皇后御病気平癒へいゆを願って建立こんりゅうされた寺であるが、たちま霊験れいげんあって皇后は御恢復かいふくになった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
夫婦が太鼓をかついでお宮まいりをして親の病気の平癒へいゆを祈願したという美談がある、と真面目まじめな顔でうそを言う古老もあり、それはどんな書物に出ています、と突込まれて
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
くだきて我が妻のやまひ平癒へいゆ成さしめ給へと祈りしかば定まりある命數めいすうにや日増ひましつかおとろへて今は頼み少なき有樣に吉兵衞は妻の枕邊まくらべひざさしよせ彼是かれこれと力をつけ言慰いひなぐさめつゝ何かべよくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おれは娘の病気の平癒へいゆを祈るために、ゆうべここに参籠さんろうした。すると夢にお告げがあった。左の格子こうしに寝ているわらわがよい守本尊を持っている。それを借りて拝ませいということじゃ。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
鳴雪めいせつ翁より贈られたるは柴又しばまた帝釈天たいしゃくてんの掛図である。この図は日蓮にちれんが病中に枕元に現はれたといふ帝釈天の姿をそのまま写したもので、特に病気平癒へいゆには縁故があるといふて贈られたのである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
病気平癒へいゆの願に発したものに相違ないが、私ははじめその純白の眼のゆえに、眼病平癒の祈りをこめたみ仏であろうかと想像していたのであった。むろんそうではない。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
本腹ほんぷくなりとは大納言光貞卿だいなごんみつさだきやう紀州きしう和歌山わかやまにて大病たいびやうにつき奧方おくがた國元くにもといらせられぢき看病遊かんびやうあそばされたきよし度々たび/\の願ひ先例せんれいにはなくとも格別かくべつ家柄いへがらゆゑ聞濟きゝずみに成り國許くにもとのぼらせられ御看病遊ごかんびやうあそばし平癒へいゆ懷姙くわいにんなるゆゑ和歌山にて御誕生ごたんじやうありしなり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)