トップ
>
垂
>
たれ
ふりがな文庫
“
垂
(
たれ
)” の例文
正月三日の晩、伊勢屋總兵衞からの迎ひと言つて來た駕籠は、道庵を乘せると、嚴重に
垂
(
たれ
)
を下ろして、滅茶々々に驅け出しました。
銭形平次捕物控:025 兵粮丸秘聞
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
先棒
(
さきぼう
)
と
後
(
うしろ
)
との
声
(
こえ
)
は、
正
(
まさ
)
に一
緒
(
しょ
)
であった。
駕籠
(
かご
)
が
地上
(
ちじょう
)
におろされると
同時
(
どうじ
)
に、
池
(
いけ
)
に
面
(
めん
)
した
右手
(
みぎて
)
の
垂
(
たれ
)
は、
颯
(
さっ
)
とばかりにはね
揚
(
あ
)
げられた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
それまでは、不自然な部分が
咽輪
(
のどわ
)
の
垂
(
たれ
)
で隠されていたので判らなかったのだが、不思議な事に、易介は鎧を横に着ているのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
庭下駄を突っかけて、その駕籠の傍へ寄って来たおかみさんは、何か後ろめたいように見返しました時、前の駕籠の
垂
(
たれ
)
が細目にあいて
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
垂
(
たれ
)
から
透
(
すか
)
して、土間へ
焚火
(
たきび
)
をしたのに雪のような顔を照らされて、娘が縛られていたのを見ましたが、それなり目が
眩
(
くら
)
んでしまったです。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
何
(
なに
)
か
噺
(
はなし
)
の
端緒
(
いとぐち
)
でも
求
(
もと
)
めたいといふ
容子
(
ようす
)
で
栗
(
くり
)
の
木
(
き
)
の
梢
(
こずゑ
)
からだらりと
垂
(
たれ
)
てる
南瓜
(
たうなす
)
の
臀
(
しり
)
を
見上
(
みあ
)
げながらいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
頼みける然ば
無殘
(
むざん
)
なる
哉
(
かな
)
水呑村の九助は
豫
(
かね
)
て
覺悟
(
かくご
)
とは言ながら我が罪ならぬ無實の
災難
(
さいなん
)
今更
怨
(
うら
)
んで
甲斐
(
かひ
)
なしと雨なす涙に面を
浸
(
ひた
)
し首うな
垂
(
たれ
)
て面目なげに目を
閉
(
とぢ
)
口には
稱名
(
しようみやう
)
唱
(
とな
)
へ
未來
(
みらい
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
垂
(
たれ
)
たる
形状
(
かたち
)
は
蝋燭
(
らふそく
)
のながれたるやうなれど、
里地
(
さとち
)
のつらゝとたがひて
屈曲
(
くつきよく
)
種々
(
しゆ/″\
)
のかたちをなして
水晶
(
すゐしやう
)
にて
工
(
たくみ
)
に作りなしたるがごとく、
玲瓏
(
れいろう
)
として
透徹
(
すきとをれ
)
るが
暾
(
あさひ
)
の
暉
(
かゞやき
)
たるはものに
比
(
たぐ
)
ふべきなしと
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
十間ばかり
隔
(
へだて
)
て、その次のはそれより少し脊が低くて、子供のような歩き方だ。また十間ばかり隔て最後の一人は長く黒髪を
後
(
あと
)
に
垂
(
たれ
)
ていて女のように思われた。その三人は、始終
俯向
(
うつむ
)
いていた。
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
怪しい女は蘆を折り敷いた上に
胡坐
(
あぐら
)
をかいて盗み集めたらしい金を
算
(
かぞ
)
えていた。算えながら
垂
(
たれ
)
さがって来る
頭髪
(
かみ
)
を
隻手
(
かたて
)
で
煩
(
うるさ
)
そうに
掻
(
か
)
きあげていた。その指の間は蛇の
鱗
(
うろこ
)
のようにきらきら光った。
女賊記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
敬太郎は主人一人の眼を
掠
(
か
)
すめるのにさえ苦心していたところだから、この上下女に出られては
敵
(
かな
)
わないと思って、いや
宜
(
よろ
)
しいと云いながら、自分で下駄箱の
垂
(
たれ
)
を上げて、早速靴を取りおろした。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お登和嬢は
頓
(
とみ
)
に
答
(
こたえ
)
ず、
垂
(
たれ
)
たる
頭
(
こうべ
)
はいよいよ下を向て
一雫
(
ひとしずく
)
涙の
滴
(
たれ
)
し様子。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
垂
(
たれ
)
を
下
(
さ
)
げた
一梃
(
いっちょう
)
の
駕籠
(
かご
)
の前に、返り血やら自分の血やらで、
血達磨
(
ちだるま
)
のようになりながら、まだ闘士満々としている、
精悍
(
せいかん
)
そのもののような鶴吉が、血刀を右手にふりかぶり、左手を駕籠の峯へかけ
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
洟
(
はな
)
っ
垂
(
たれ
)
の一人が、不服そうに遠くから呶鳴り返してきた。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
正月三日の晩、伊勢屋総兵衛からの迎いと言って来た
駕籠
(
かご
)
は、道庵を乗せると、厳重に
垂
(
たれ
)
を下ろして、滅茶滅茶に駆け出しました。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「そんなら、ゆっくりめえりやしょう。——おせんちゃんが
垂
(
たれ
)
を
揚
(
あ
)
げておくんなさりゃ、どんなに
肩身
(
かたみ
)
が
広
(
ひろ
)
いか
知
(
し
)
れやァしねえ。のう
竹
(
たけ
)
」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
そこで駕籠屋は急いで
垂
(
たれ
)
をハネ上げると、駕籠の中から一刀を提げて出て来たのは、羽織袴の身分あるらしい覆面のさむらいでありました。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そう言えば、
欅
(
けやき
)
の枝に
這
(
は
)
いかかって、こう、月の上へ蛇のように
垂
(
たれ
)
かかったのが、
蔦
(
つた
)
の葉か、と思うと、屋根一面に瓜畑になって、鳴子縄が引いてあるような気もします。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
締殺
(
しめころ
)
せし
段
(
だん
)
最
(
もつと
)
も
重罪
(
ぢうざい
)
なり然ながら
後悔
(
こうくわい
)
致し
自訴
(
じそ
)
に及びし段
神妙
(
しんめう
)
に
似
(
に
)
たり其
始末
(
しまつ
)
は何故何樣の
所業
(
しよげふ
)
に及びしや
仔細
(
しさい
)
有る事ならん
眞直
(
まつすぐ
)
に申立よと有ければ久八
首
(
かうべ
)
を
垂
(
たれ
)
私し事
計
(
はか
)
らずも千太郎を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と、小さな
旋風
(
つむじかぜ
)
が起ってそれが
薄
(
うっ
)
すりと
塵
(
ちり
)
を巻きながら、
轎夫
(
かごかき
)
の頭の上に巻きあがって青い
簾
(
すだれ
)
の
垂
(
たれ
)
を横に吹いた。簾は鳥の飛びたつようにひらひらとあがった。
艶麗
(
えんれい
)
な顔をした夫人が坐っていた。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
相手は
新造
(
しんぞう
)
ですから、
賃銀
(
ちんぎん
)
なんかいいかげんに
定
(
き
)
めて、駕籠の
垂
(
たれ
)
を上げると、娘は小風呂敷包みを持ったまま、馴れた調子でポンと乗りましたが
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
駕籠
(
かご
)
の
垂
(
たれ
)
を明けっぱなして、海を一面にながめながら、女長兵衛式に納まって、外にいる若いのを相手に話すお角さん。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
欲
(
よく
)
のねえお
人
(
ひと
)
だなァ。
垂
(
たれ
)
を
揚
(
あ
)
げてごらんなせえ。あれ
見
(
み
)
や、あれが
水茶屋
(
みずちゃや
)
のおせんだ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
出て
戻
(
もど
)
る頃漸々東が
白
(
しら
)
み出し雨も
小降
(
こぶり
)
に成たる故
浮羅々々
(
ぶら/\
)
戻る
向
(
むかう
)
より
尻
(
しり
)
つぺた迄
引端打
(
ひつはしをり
)
古手拭
(
ふるてぬぐひ
)
で
頬冠
(
ほゝかぶ
)
り
傘
(
かさ
)
をも指ずに
濡
(
ぬれ
)
しよぼ
垂
(
たれ
)
小脇差
(
こわきざし
)
をば後ろへ廻し
薄氣味惡
(
うすきみわる
)
き
坊主奴
(
ばうずめ
)
が來るのを見れば長庵故
傘
(
かさ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
入口の片隅に、フト
燈
(
あかり
)
の暗い影に、
背屈
(
せくぐ
)
まった和尚がござる! 鼠色の
長頭巾
(
もっそう
)
、ト二尺ばかり
頭
(
ず
)
を長う、肩にすんなりと
垂
(
たれ
)
を
捌
(
さば
)
いて、墨染の
法衣
(
ころも
)
の袖を胸で
捲
(
ま
)
いて、
寂寞
(
じゃくまく
)
として
踞
(
うずくま
)
った姿を見ました……
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこで槍を投げ捨てて、御徒町へ行けと駕籠屋へ言いつけたままで、
垂
(
たれ
)
を上げて駕籠の中へ身を隠してしまわれました。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
垂
(
たれ
)
をおろすと、中には医者の玄道が乗っていることになるのです。石原の利助の子分が、五六人網を張っている中を、駕籠は掛声もなく、向島の方へ飛びます。
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうして、脇差を差して刀を提げて、悠々と店先まで出て来ると、駕籠の
垂
(
たれ
)
が上ってその中から姿を見せたのはお絹。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そんなしみつ
垂
(
たれ
)
な三下野郎を相手ぢや役不足だ。手柄爭ひをする
心算
(
つもり
)
なら、平次に出て來いつて言へ。
憚
(
はゞか
)
りながら四ツ目の銅八だ、見込んだ下手人に間違ひがあるもんか。
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
この時に神尾主膳が駕籠の
垂
(
たれ
)
を上げて外を見ると、おりから来かかった駒井能登守と
面
(
かお
)
を合わせたが、さあらぬ
体
(
てい
)
で
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
駕籠の
垂
(
たれ
)
を下ろしているので、どこを通るのか見当はつきませんが、
扉
(
と
)
の下の方に商売用の水牛の
匙
(
さじ
)
を挟んで、糠をこぼして行くくらいのことは出来たのです。平次はその後を追いました。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
八州の役人は、その駕籠へ近寄って、手ずから
垂
(
たれ
)
を揚げたものですから、駕籠屋どもは、もう二の句がつげません。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
飛付くように駕籠の
垂
(
たれ
)
を押上げて
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
横目でジロリジロリと竜之助の一行を眺めましたが、竜之助の笠はかなり深いのに、
垂
(
たれ
)
のない駕籠で、お雪の姿はありありと見えましたから、離れると
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
飛付くように駕籠の
垂
(
たれ
)
を押上げて
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
女長兵衛の格で納まっているお角が
垂
(
たれ
)
を上げて見ると、棒鼻をおさえているのは、権八よりはまだ若い、振袖姿のお小姓らしい美少年が、刀の鯉口を切って
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
頭巾を被って
面
(
かお
)
の全部はほとんど見えないから、米友が
身悶
(
みもだ
)
えしているうちに、その頭巾を被った若い娘は前の方の駕籠へ、市五郎が手を取って乗せて
垂
(
たれ
)
を下ろしてしまいました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
駕籠屋は、
乗主
(
のりぬし
)
に対する義務として、わざわざ注意して、頼みもしないのに進行を止めて、
垂
(
たれ
)
まで上げて見せようとする。それにぜひなく人垣の隙間から主膳が見ると、苦りきってしまいました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
駕籠の中から
垂
(
たれ
)
を上げて、米友を呼びかけたのはお絹でありました。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
威勢よく
店前
(
みせさき
)
へ着いた一
挺
(
ちょう
)
の
駕籠
(
かご
)
、
垂
(
たれ
)
を上げると一人の女。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お銀様が、
垂
(
たれ
)
を上げない駕籠の中から返事をする。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
駕籠屋が外から
垂
(
たれ
)
を上げたものです。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、
垂
(
たれ
)
を手あらく
掻
(
か
)
き上げて
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
垂
常用漢字
小6
部首:⼟
8画
“垂”を含む語句
垂下
垂々
垂髪
鼻垂
前垂掛
垂布
前垂
垂涎
垂幕
洟垂
垂氷
垂帳
直垂
枝垂
垂簾
垂頭
垂示
垂帛
耳垂
項垂
...