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唸
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うな
ふりがな文庫
“
唸
(
うな
)” の例文
「田町の大澤彦四郎といふ、
工面
(
くめん
)
の良い浪人者が、軒下に
唸
(
うな
)
つてゐる急病人を助けたばかりに、危なく殺されかけたといふ話ですよ」
銭形平次捕物控:296 旅に病む女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ことに
最
(
も
)
っと不思議なことは、晩、登山したものが、この堂宇の裏から陰気な犬の
遠吼
(
とおぼ
)
えのような
唸
(
うな
)
りが絶え間なく漏れてくること
天狗
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
呼び起してくれたのは
三間
(
みま
)
ばかり隔てて寝ていた若党
源八
(
げんぱち
)
であった。そこまで聴こえる程の高声で純之進は
唸
(
うな
)
されていたのであった。
丹那山の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
するとその声に母親が逆上して、声を荒らげるために親子の叫喚となり、それが、高い
天井
(
てんじょう
)
に反響して、うわん、うわんと
唸
(
うな
)
るのだ。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
さてはや、
念佛
(
ねんぶつ
)
、
題目
(
だいもく
)
、
大聲
(
おほごゑ
)
に
鯨波
(
とき
)
の
聲
(
こゑ
)
を
揚
(
あ
)
げて
唸
(
うな
)
つて
居
(
ゐ
)
たが、やがて
其
(
それ
)
も
蚊
(
か
)
の
鳴
(
な
)
くやうに
弱
(
よわ
)
つてしまふ。
取亂
(
とりみだ
)
さぬ
者
(
もの
)
は
一人
(
ひとり
)
もない。
旅僧
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
あっと思いながらわたしはよろめいた。倒れてはいないのがわかった。なにかが走り抜けたあとの速さだけがわたしの耳もとで
唸
(
うな
)
る。
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
電信柱のごうごうと云う
唸
(
うな
)
りも蓮沼のカサカサと云う音も聞えなくなって、ただ海の
轟
(
とどろ
)
きばかりが
未
(
いま
)
だに地響きをさせて鳴っている。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
伯爵は
唸
(
うな
)
っていた。主翁は小紐を出して、そっと伯爵の
頸
(
くび
)
に捲こうとした。と、小紐は風に吹き寄せられるように
手許
(
てもと
)
に寄って来た。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
わしは、汗みどろになって、泣きながら、
唸
(
うな
)
りながら、燭台をふるった。休んでは始め、休んでは始め、一時間程も、石壁と戦った。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
爛酔の客が、またもかく言って
唸
(
うな
)
り出した。その気配を見ると、部屋の真中に大の字になって、いい気持に
紅霓
(
こうげい
)
を吹いているらしい。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
またすぐに、冷笑したり、
唸
(
うな
)
り声を出したり、口笛を吹いたり、指先で調子を取ったり、鼻声を出したり、楽器の
真似
(
まね
)
をしたりした。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と、洞穴の外で異様な
唸
(
うな
)
り声がした。わが
棲家
(
すみか
)
のうちの怪しき気ぶりに鏡のような眼を
研
(
と
)
ぎすまして帰って来た小虎の親の
牝
(
めす
)
だった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まず、身長三尺五寸程と思われる小児の姿が法水の眼に映ったのであるが、なんと意外なことには、次の瞬間幅広い
低音
(
バス
)
が
唸
(
うな
)
り出した。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
人妻になった万竜を一度見掛けた事があったが、
惚々
(
ほれぼれ
)
とするような美しい女であった。きんはその見事な美しさに
唸
(
うな
)
ってしまった。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
彼は努めて驚きを隠し、はるかに△△を励したりした。が、△△は傾いたまま、
炎
(
ほのお
)
や煙の立ち
昇
(
のぼ
)
る中にただ
唸
(
うな
)
り声を立てるだけだった。
三つの窓
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
呼吸を
矯
(
た
)
めていた、兵さんは、ウンと
唸
(
うな
)
りながら、
殆
(
ほと
)
んど
奇蹟
(
きせき
)
的な力で腰をきった。が、石は肩に乗り切らないで
背後
(
うしろ
)
に、
辷
(
すべ
)
った。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
この間を縫うて四人は一歩一歩
辿
(
たど
)
った。ちょうど中頃の最も崩壊の甚だしい処に至ると、
頭上
(
とうじょう
)
唸
(
うな
)
りを生じて一大石塊が地に
陥
(
お
)
ちた。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
「喧嘩ではないぞ! 単なる、単なる、ううむ、単なる、単なる、ううむ」と
唸
(
うな
)
って、とほうに暮れたように、僕のほうをちらと見た。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鈍重な
唸
(
うな
)
り声を上げながら喜平は上半身を起こそうとしたが、正勝の掌の中の刃物はふたたび喜平の心臓を目がけて突き刺さった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
ふーんと俺は
唸
(
うな
)
っていた。慷堂の話は、血湧き肉おどるという形容が誇張でなく当てはまる話だったが、それで俺が唸ったのではない。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「君、僕ももう
旧
(
もと
)
の徳蔵ではないよ、お金は
唸
(
うな
)
る程出来るし、
加之
(
おまけ
)
に弟は貴族院に
入
(
い
)
るし、何一つこの世に不足は無くなつたよ。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
朝になっても、体中が
脹
(
は
)
れふさがっているような痛みを感じて、お島はうんうん
唸
(
うな
)
りながら、寝床を離れずにいるような事が多かった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
喧
(
かしま
)
しき
田畑
(
たはた
)
の
人聲
(
ひとごゑ
)
と(
愛
(
あい
)
ちやんの
知
(
し
)
つてる)
變
(
へん
)
じました、——
遠方
(
ゑんぱう
)
に
聞
(
きこ
)
ゆる
家畜
(
かちく
)
の
唸
(
うな
)
り
聲
(
ごゑ
)
は、
海龜
(
うみがめ
)
の
重々
(
おも/\
)
しき
歔欷
(
すゝりなき
)
であつたのです。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
細君の
唸
(
うな
)
る声が
絶間
(
たえま
)
なく静かな夜の
室
(
へや
)
を不安に
攪
(
か
)
き乱した。五分経つか経たないうちに、彼女は「もう生れます」と夫に宣告した。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
飛行機を初めあらゆる近世の科学が生んだ器械や発動機とを、同時に鳴かせ、
吼
(
ほ
)
えさせ、
唸
(
うな
)
らせ、
軋
(
きし
)
らせた如きものであると云ふ。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そしてほどなく、うーんと
唸
(
うな
)
った。気持のよさそうな、ああいい心持だというような唸り方であった。それが死ぬ合図であった。
ゆうれい貸屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこにはあのゆるやかな抑揚ある四拍子の「
子守
(
こも
)
り歌」の代わりに、機械的に調律された恒同な雑音と
唸
(
うな
)
り音の交響楽が奏せられていた。
糸車
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「うむ」寺本医師は
唸
(
うな
)
った。「じゃ、この死んでいる男は小浜信造じゃないのだな。
之
(
これ
)
アいよいよ警察の仕事になって来たわい」
青服の男
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
第一に、ボリシチとか号するスウプに類したものには油が玉のように浮んで、二きれの偉大な肉が煩悶の極
唸
(
うな
)
り声を上げている。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ブーン、ブーン——竹トンボをまわすような
唸
(
うな
)
りは、しだいにこちらへちかづいて、やがて、山小屋の上空までやってきた。と、思うと
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
三吉は
最早
(
もう
)
響の中に居た。朝の騒々しさが納まった頃は、電車の
唸
(
うな
)
りだの、河蒸汽の笛だのが、特別に二階の部屋へ響いて来た。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
死んでくれと祈る人にはお金が
唸
(
うな
)
るほどあって、共白髪の末までもと祈る人には金はなし……なぞとそんな安っぽい同情を並べてないで
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一事が万事、坂田の対局には大なり小なりこのやうな
大向
(
おほむか
)
ふを
唸
(
うな
)
らせる奇手が現はれた。その彼が急に永い沈黙を守つてしまつたのである。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
唐寺の謎を
解
(
と
)
くものはないか!
唸
(
うな
)
っているのだ、恐ろしいものが! 日本の国は買われるだろう、日本の国は属国となろう。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
唸
(
うな
)
る、苦しむというわけで、医者も手の着けようがないような始末になりましたので、主人は勿論、手前共もいろいろと心配いたしまして
半七捕物帳:13 弁天娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一匹の牛が皮の前掛を振うか、あるいは乾いた地面を
蹄
(
ひづめ
)
で
蹴
(
け
)
るかすると、虻の雲が
唸
(
うな
)
り声を立てて移動する。ひとりでに
湧
(
わ
)
いて出るようだ。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
僕はひどい
流感
(
りゅうかん
)
にやられましたが誰も看病してくれるものがないので、三日ばかり呑まず食わずに
本所
(
ほんじょ
)
の木賃宿でうんうん
唸
(
うな
)
っていました。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
日増しのお経みたようなものを大勢で
唸
(
うな
)
っている横で、鼻の詰まったようなイキンだ掛け声をしながら、間の抜けた拍子で鼓や太鼓をタタク。
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
与兵衛はかう言ひましたが、悲しい事には猿に人間の言葉は通じませんから、親猿は却つて
歯齦
(
はぐき
)
を
剥
(
む
)
き出して
唸
(
うな
)
るのでした。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
山
(
やま
)
全体
(
ぜんたい
)
が
動
(
うご
)
いたやうだつた。
急
(
きふ
)
に
四辺
(
あたり
)
が
薄暗
(
うすくら
)
くなり、
引
(
ひ
)
き
裂
(
さ
)
けるやうな
冷
(
つめた
)
い
風
(
かぜ
)
の
唸
(
うな
)
りが
起
(
おこ
)
つてきたので、
驚
(
おどろ
)
いたラランは
宙返
(
ちうがへ
)
りしてしまつた。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
そう思うと同時に、眼前の赤犬の顔のなかから、私の小学校時代のある同級生の顔が二重写しのように見えてきた。あいつだ、と私は
唸
(
うな
)
った。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
溝の蚊の
唸
(
うな
)
る声は
今日
(
こんにち
)
に在っても隅田川を東に渡って行けば、どうやら三十年前のむかしと変りなく、場末の町のわびしさを歌っているのに
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
銃声は聞えていたが、外から、耳へ入るので無く、耳の底のどっかで、
唸
(
うな
)
っているように感じた。前方の地に、小さい土煙が、いくつも上った。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
黒い速度のような鈍い
唸
(
うな
)
りをあげて通る風に背を向け、炉端にひとり坐っていると、いつか読んだ、「
生
(
な
)
まのままの真は、
偽
(
に
)
せよりも偽せだ。」
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「けちなことァおいてくんねえ。
憚
(
はばか
)
ンながら、あしたあさまで
持越
(
もちこ
)
したら、
腹
(
はら
)
が
冷
(
ひ
)
え
切
(
き
)
っちまうだろうッてくれえ、
今夜
(
こんや
)
は
財布
(
さいふ
)
が
唸
(
うな
)
ってるんだ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「此の猫だツて、誰かに可愛がられて、鼠を踏んまへて
唸
(
うな
)
ツたことがあるのだ……ふゝゝゝ。」と無意味に、
冷
(
ひやゝか
)
に笑ツて
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
無形一刀、天下無二の使い手神保造酒先生は、紫いろの線香のけむりがユラユラと
絡
(
から
)
む首を
白眼
(
にら
)
んでウウム! と
唸
(
うな
)
った。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
夜の八時ごろ、船体が微妙に
震動
(
しんどう
)
し、ひとの心をしめつけるような無気味な
唸
(
うな
)
りが、どこからともなくひびいてきた。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
いくらのばしてものびきれぬように、そっくりかえってうんうん
唸
(
うな
)
りつづけた。そしていつのまにかねむり、目がさめるともう日は高くなっていた。
妻の座
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
その上、森の奥深くへ来ると、森全体が恐ろしい
勢
(
いきおい
)
で
唸
(
うな
)
り出しました。けれど王子達の方には宝の鏡がありました。
夢の卵
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
唸
漢検1級
部首:⼝
11画
“唸”を含む語句
唸声
呻唸
唸音
矢唸
火唸
呻唸声
唸呍
唸呻
唸独楽
地唸
底唸
弓唸
弦唸
雪唸