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和
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やわら
ふりがな文庫
“
和
(
やわら
)” の例文
雨が降りかかって頭から面に
雫
(
しずく
)
がたらたらと流れ、
和
(
やわら
)
かい着物がビッショリと濡れてしまっても、少しも気にかけないのであります。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
尉官は腕を
拱
(
こまぬ
)
きて、こもまた
和
(
やわら
)
ぎたる
体
(
てい
)
あらず、ほとんど五分時ばかりの間、互に眼と眼を見合せしが、遂に良人まず
粛
(
さ
)
びたる声にて
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の語調と挙動との
和
(
やわら
)
いだのに喜んで応ずるように、彼の娘は彼の前に跪いて、訴えるように両手を彼の胸のところへ差し出した。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
と、云ったが、此の冷たそうな男の胸にも、美しい瑠璃子に対する一片の同情が浮んだのであろう。彼は急に、口調を
和
(
やわら
)
げながら
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
息苦しさは
和
(
やわら
)
いでいた。脈は力を回復していた。突然生命の力がよみがえって、その衰弱しきったあわれな女に元気を与えていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
一通り談義めいた事を説いて聴かせますと、摩利信乃法師は顔色を
和
(
やわら
)
げながら、あの十文字の護符を私どもの上にさしかざして
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし
良
(
やや
)
久しく話しているうちに、保が津軽人だと聞いて、少しく
面
(
おもて
)
を
和
(
やわら
)
げた。大江の母は津軽家の用人
栂野求馬
(
とがのもとめ
)
の妹であった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ちょうど日清戦役頃の沖縄のように。とにかく沖縄が薩摩に対する悪感情は漸く
和
(
やわら
)
いで参りましたが、経済上の困難は一層増して参りました。
琉球史の趨勢
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
和
(
やわら
)
げ心にもない
褒
(
ほ
)
め言葉を
吐
(
は
)
いたりするので聞く方が気味を悪がりお師匠さんのお世辞と云うと恐ろしいものになっていた。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
無残々々
(
むざむざ
)
と人に話すには、惜いような
昨夕
(
ゆうべ
)
であったが、
寧
(
いっ
)
そ長田に話して了って、岡嫉きの気持を
和
(
やわら
)
がした方が可い。と私は即座に決心して
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そして、彼の声の登場するところ、春風タイトウとして、人心を
和
(
やわら
)
げ、心底から解放を与えてくる。又と得がたい声の俳優と申すべきであろう。
戦後新人論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
本家の長尾は股野さんの親類で、竜野出身というので、当時の千葉県令である柴原
和
(
やわら
)
という竜野人に招かれたのかと思う。
故郷七十年
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
第二に彼女は寄宿生活に万事少しの
和
(
やわら
)
か味もない定規で造り上げられた四角四面な規則で生活した。理屈ばかりの生活をしたことが原因してゐる。
ウォーレン夫人とその娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
松永が帰って来た安心と、連日の疲労とが、お酒の力で
和
(
やわら
)
かに溶け合い、あたしを泥のように熟睡させたのだった。……
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼等
(
かれら
)
はそのことをあからさまに見せつけたが、彼は気づかない
様子
(
ようす
)
で、彼等に深い
敬意
(
けいい
)
をしめしていた。そのため、二人の
気持
(
きもち
)
はいくらか
和
(
やわら
)
いだ。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
たくさんの人がこう肩を並べているのに、いくらたくさんいても、いっこう苦にならない。ことごとく互いと互いを
和
(
やわら
)
げている。自分は上を見た。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夏の烈しい日光に照らされて匂う高声の誇らしさを、天分の
瑞々
(
みずみず
)
しさで少しく
和
(
やわら
)
げている。そのような笑いかたである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
腕
(
うで
)
を消毒したりするのに手間取っているのを見ると、寺田は一代の苦痛を一秒でも早く
和
(
やわら
)
げてやりたさに、早く早くと自分も手伝ってやるのだった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
宮内は骨細い生れつきで、
襟首
(
えりくび
)
のあたりは女かと思うばかり、
和
(
やわら
)
かい線をしていた。見るからに弱々しいのは姿ばかりではなく、実際に
非力
(
ひりき
)
であった。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
部屋の低い天井に反響する
甲高
(
かんだか
)
な女の話声、笑声、口ぐせになった練習の歌声などのそうぞうしさを、
馴
(
な
)
れればさほどにも思わせない程度に
和
(
やわら
)
げている。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
山口
和
(
やわら
)
、千葉胤秀、剣持章行、佐藤一清、法道寺善、小松鈍斎などいう人々は皆遊歴して教授したものであり
和算の社会的・芸術的特性について
(新字新仮名)
/
三上義夫
(著)
……率直に打ちあけますが、私自身、どんな具合にしてレエヌの気持を
和
(
やわら
)
げていいのかわからなくなっている。
キャラコさん:05 鴎
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と云いますから、お島が急いで持ってまいった茶碗の水をグッと呑みほして
太息
(
おおいき
)
を
吐
(
つ
)
き、顔色を
和
(
やわら
)
げまして
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
懺悔
(
ざんげ
)
は語られざる哲学である。それは争いたかぶる心のことではなくして
和
(
やわら
)
ぎへりくだる心のことである。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
この人にとって楽器は心の不安を
和
(
やわら
)
げる神秘な力をもっている。下船しようとするとき、この人は他の一人が所有する楽器を六〇ギニーの価格で購ったという。
純粋経済学要論:01 上巻
(新字新仮名)
/
マリー・エスプリ・レオン・ワルラス
(著)
「そんなことは有ません」と布施は言葉を
和
(
やわら
)
げて、さも
可懐
(
なつか
)
しそうに、「実際、私は原先生のものを愛読しましたよ。永田先生にも
克
(
よ
)
くその話をしましたッけ」
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
猛
(
たけ
)
きもののふの心を
和
(
やわら
)
げなどいへど、猛きもののふといふ者、多くは趣味卑しき者なれば、彼らを感動せしめたりといふ歌は、趣味
卑
(
ひく
)
く取るにも足らぬぞ多き。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
焼きが廻ったというものであろうか、それとも、人間らしいところへ落ちついてきたのであろうか、とにかく、吉運到来がだいぶ
獰猛
(
どうもう
)
性を
和
(
やわら
)
げているのは事実だ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
智者の鼻は
研磨
(
とぎす
)
まされた心鏡の光を現わしております。仁者の鼻は
和
(
やわら
)
かい静かな気持を示しております。聖者の鼻からは上品な清らかな霊感を
受
(
うけ
)
るのであります。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と堀尾君も斯う打ち解けた調子で話しかけられると、
和
(
やわら
)
がざるを得ない。底意は悪くない人だと思った。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「
貴方
(
あなた
)
、春田さん、ありますか」博士は急に顔色を
和
(
やわら
)
げて、
椅子
(
いす
)
にかけながら猫撫で声で云った。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その色を
和
(
やわら
)
げ、奏して言いけるよう、「陛下、火は
諸
(
もろもろ
)
の
穢
(
けがれ
)
を清めると申します。大璽も再び清潔になりましたから、臣は再びこれを尚蔵いたしますでございましょう。」
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
が、しかし、後ですぐに心を
和
(
やわら
)
げて、自分がこうしていっしょにいるのも今しばらくの間だから、できるだけ大切にしてあげて悪く思われぬようにしたいと思い返した。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
荒れに荒れ狂いに狂い、吹き
且
(
か
)
つ降った
暴風雨
(
しけ
)
も、充分威力を
揮
(
ふる
)
ったのでようやく心が
和
(
やわら
)
いだのか次第に勢いを弱めて来た。そこは夏の雨風である。見る間に静まった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
時には重吉にそう慰められていねの胸は
和
(
やわら
)
ぎ、
不可抗
(
ふかこう
)
な力に押されて坂を走る石ころのように
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
素直な満足と
喜悦
(
よろこび
)
に
和
(
やわら
)
ぎ浸ることができずに、暗い日蔭へ入っていくような不安を感じていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
肉体化さえ、されて居る。十年後もまた、変ることなし。けれども私は、労働者と農民とが私たちに向けて示す憎悪と反撥とを、いささかも
和
(
やわら
)
げてもらいたくないのである。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかるに三友の容貌は少しも
和
(
やわら
)
がないのみか、かえって
傲然
(
ごうぜん
)
として彼を
見下
(
みくだ
)
すその態度に
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
その薬で胸の裂けそうな苦痛はよほど
和
(
やわら
)
いだものの全体の気分はすこしもよくならない。□□先生に電話をかける。午後来てくださるという返事だった。床を下の次の間へうつす。
胆石
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
「が
若
(
も
)
し叔母が
慈母
(
おふくろ
)
のように
我
(
おれ
)
の心を
噛分
(
かみわ
)
けてくれたら、若し叔母が心を
和
(
やわら
)
げて共に
困厄
(
こんやく
)
に安んずる事が出来たら、
我
(
おれ
)
ほど世に幸福な者は有るまいに」ト思ッて文三
屡々
(
しばしば
)
嘆息した。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それでも新しい湯にほんのりと匂う柚の香は、このごろとかくに尖り
勝
(
がち
)
なわたしの神経を不思議に
和
(
やわら
)
げて、震災以来初めてほんとうに入浴したような、安らかな爽かな気分になった。
風呂を買うまで
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こんな風に場の空気が
和
(
やわら
)
いで来たにも拘らず酔いにつれて小田島の連れの女は険悪になって行った。女は丁度其処へ来合わせた夜会服の柔和な老人を見ると急に軒昂として眉を釣上げ
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
女主人の心を
和
(
やわら
)
げようと思って木之助はそんなことをいった。すると女主人は
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
どちらも軽い洋装ですが、勇美子はクリーム色のジャケツ、陽子は白のセーラー、ロング・カットが
和
(
やわら
)
かい風に
靡
(
なび
)
いて、知らない者が見たら、
少女
(
おとめ
)
の幸福に酔った散歩姿とも見るでしょう。
身代りの花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「失礼だが、
燐寸
(
マッチ
)
の持合せがあるなら貸してくれませんか。」男は泉原の顔をジロ/\と覗込みながら、幾分か声を
和
(
やわら
)
げていった。泉原はポケットを探って無言のまゝ相手に燐寸を渡した。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
病人に
勧
(
すす
)
めてよくその
苦痛
(
くつう
)
を
和
(
やわら
)
ぐる
下剤
(
げざい
)
を服用させることができましょうや。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
日蔭
(
ひかげ
)
幽
(
ゆう
)
に笑む白い花もあわれ、曇り日に見る花の
和
(
やわら
)
かに落ちついた色も好いが、真夏の
赫々
(
かくかく
)
たる烈日を存分受けて精一ぱい照りかえす花の色彩の美は何とも云えぬ。彼は色が大好きである。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
仁科少佐は
恭
(
うやうや
)
しく礼をしました。総長はホッとして、幾分顔を
和
(
やわら
)
げながら
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
一
凡
(
およそ
)
婦人の
心様
(
こころさま
)
の悪き病は、
和
(
やわら
)
ぎ
順
(
したがわ
)
ざると、
怒
(
いかり
)
恨
(
うら
)
むと、人を
謗
(
そし
)
ると、ものを妬むと、智恵浅きと也。此五の
疾
(
やまい
)
は十人に七、八は必ず有り。是婦人の男に及ざる所也。自ら
顧
(
かえりみ
)
戒
(
いまし
)
めて
改
(
あらため
)
去
(
さる
)
べし。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
この
書物
(
しょもつ
)
と、
青
(
あお
)
い
傘
(
かさ
)
を
掛
(
か
)
けたランプとの
外
(
ほか
)
には、
世
(
よ
)
にまた
何物
(
なにもの
)
もあらぬかと
思
(
おも
)
わるる
静
(
しず
)
けさ。
院長
(
いんちょう
)
の
可畏
(
むくつけ
)
き、
無人相
(
ぶにんそう
)
の
顔
(
かお
)
は、
人智
(
じんち
)
の
開発
(
かいはつ
)
に
感
(
かん
)
ずるに
従
(
したが
)
って、
段々
(
だんだん
)
と
和
(
やわら
)
ぎ、
微笑
(
びしょう
)
をさえ
浮
(
うか
)
べて
来
(
き
)
た。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
和
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“和”を含む語句
和尚
柔和
平和
温和
調和
和郎
和女
大和
日和
和魂
穏和
和主
三和土
和蘭陀
和琴
大和魂
和声
和合
大和尚
混和
...