“呆:あき” の例文
“呆:あき”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂76
太宰治48
中里介山38
泉鏡花34
海野十三29
“呆:あき”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語13.5%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)4.2%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆1.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
『まアそんなことを言わないで信仰してお呉れ、後生だから。』という母の言葉を里子もそばで聞て居ましたが、あきれて、
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
われながらあきれて、再び日頃の汚濁の心境に落ち込まぬよう、自戒の厳粛の意図をもって左に私の十九箇条を列記しよう。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
酒を飲んで、一人で勝手な事を云つてゐる富岡を観察しながら、ゆき子は、一升びんの空になりかけたのをあきれて眺めた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
あきれた野郎だ、そんなことをしたら呑む下から醒めるだらう。それより鼻の穴から呑んで見ねえ、飛んだきが良いぜ」
れながらよわこヽろあさましさにあきれ、ればこそはけばこそはおもひもすなれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それをナオミは、黙って、まじまじと、棒のように突っ立ったまま、あきれ返ったと云う風ににらみつけているだけでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雪之丞は、まじまじと、あきれたように対手あいてを見詰めたが、だしぬけに、からからと、ひどく朗らかに笑って見せた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
衆人これを見て貪著とんじゃくせず、釈迦仏の時昔の衆生この宝のためにあい偸劫とうごうして罪を造ったと各あきれる。
と、主膳があきれ返ってダメを押すと、この女の子は、妙な上目使いで叱る主膳のかおを見ながら、片手を振って見せました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あゝあきれたやつだ。困ったもんだ。」と獅子ししは大きくため息をつきました。きつねもおいおい泣きだしました。
月夜のけだもの (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
一息に語りつづけてしまった弁信の長物語に、抑えつけていた者もあきれたらしいが、言葉が途切れると急にね返って、
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
田山白雲があきれ返ってながめると、その上にせないことは、この美人が後生大事に胸に抱きかかえているものがあります。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この人は何だろうと思いましたが、まんざら木の葉を包んで出したとも見えない。あきれ返り、受取り兼ねていると、道庵は、
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白雲がののしったのは、怒ったからではありません、あきれ果てたからです。思わず眼をまるくして「こいつ」と前置をして、
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あきれた人々の、目鼻の、まゆとともに動くに似ず、けろりとした蝦蟆が、口で、鷹揚おうように宙にを描いて、
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
世間が『書生気質』や『妹と背鏡』や『小説神髄』を感嘆する幼稚さをあきれると同時に、文学上の野心が俄にムズムズして来た。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一図いちずに我が子の出世に希望を繋ぐ親心おやごころからは歯痒はがゆくも思いあきれもして不満たらざるを得なかった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あきれた野郎だ――抱くと言つて惡きや、ちよいとかついで見るが宜い。そいつを二三十動かすにはどんな力が要るか」
あきれた野郎だ。一文無しで江戸の街を歩く御用聞があるものか。――いつ、どこへ飛ばなきゃならないか分らないじゃないか」
彼女は熟々つくづく持彦の顔を見ながら、半ば恍惚こうこつとした半ばは感銘ただならぬふうに、あきれたようにいった。
花桐 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「俺は何て愚かな人間だか、自分でもあきれるばかりだ……」痴川はのどが通じるようになると、がっかりして嘆息した。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
思いがけない静かな内省が何処ともなくらけてくるような冷たさを覚えて自分でもあきれるほど妙にしんみりしてしまった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
津田は一気に洋盃コップくちびるへあてがって、ぐっと麦酒ビールを飲み干した小林の様子を、少しあきれながら眺めた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人によっては歓迎をしない限りはないのに、物々しく、無言の行をつづけて来たものですから、人が、なあーんだとあきれてしまう。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから林の入口で馬車を降りて、一足つめたい森の中にはひりますと、つぐみがすぐ飛んで来て、少しあきれたやうに言ひました。
よく利く薬とえらい薬 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
と言ってお松も、さすがにあきれたけれど、兵馬の吉原へ行くという意味は、そんなわけのものでないことを知っています。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私はあきれて相手の顔を見た。相手は私のうちのどこかに質屋の通帳かよひの二つか三つは懸つてゐさうな眼つきをしてゐた。
と尋ねました。私たち一同は、この意外な質問にびっくりしました。白井刑事も、あまりのことにあきれたような顔をして、
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
いよいよ不可思議な大和めぐりだと自らあきれる、しかしこの狸の舌はなかなかに愛嬌あいきょうなめらかだ。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
見物の者あきれて、あざけりながら帰って行く。妻子眷属は世間へ対して面目ないことだと、歎いたが、当人は一向平気で、
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母親があきれて叱ったけれど、道子は自分の長湯を信用させるために顔を真赤にしてまで堪えて、長くお湯につかっていた。
快走 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
汽車はあまり長くて退屈な旅であつた。富岡は退屈もしないで、よく、むしやむしやと、食ひ散らかしてゐるゆき子にあきれてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
太郎左衛門はうとうとと眠って眼を覚して見ると、じぶんの傍に女房の寝姿があった。太郎左衛門はあきれて眼をみはった。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「目の廻しやうを自慢するんぢやあるまいネ、あきれた野郎だ。この上若樣の御容體が惡かつたら勘辨かんべんしないぞ」
平次も少しあきれましたが、今に始めぬガラツ八の暢氣のんきさが、腹を立てるにしても、少し馬鹿馬鹿しかつたのです。
「驚いたなあ、あきれた小父さんだなあ。――もう懲々こりごりしたろうから、今日は来まいって、先生も仰っしゃっていたのに」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こは又いかに成行なりゆくぞと驚きあきれ候間に、お座敷の畳を一畳ばかり取除けられ候、さてその下の床板を二尺程切取らせられ
つくづくあきれ、憎み、自分自身を殺したくさえなって、ええッ! と、やけくそになって書き出した、文字が、なんと、
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私はあきれて、立ち上ったら、「ひでえ部屋にいやがる。」と学生みたいな若い口調で言って、のっそり私の部屋へはいって来られた。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
始に何者なりやとおどろかされし貫一は、今又何事なりやといよいあきれて、彼の様子を打矚うちまもれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それから、どこに蔵ってあったのか、匂いの高い白粉を出して来て、僕の顔に塗りはじめた。あきれかえっているうちにそれも終った。
鍵から抜け出した女 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分の墜落することを一向気にとめず、猛然と、機体を、爆弾代りに、うちつけて来る日本軍の勇猛さに、大佐は、あきれてしまった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そう叫んだまま、大隅学士は門の中から飛び出してきた可憐なる少年の顔を、あきがおにいつまでも見つめていた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「まア御寮人さん……」と、仰山ぎようさんらしくあきれた表情をしたが、後からいて入つて来た源太郎の大きな姿を見ると、
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
僕はそれに気がついて、人間の馴致じゅんち性というのか、変通性というのか、自身のたより無さにあきれてしまった。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「お婆さん、わたし、今姉さんから話を聴いてあきれた。……」越前屋の主人は、あとの句も続かぬように湿っぽい調子になっている。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
周さんはその夜、自分の生立おいたちやら、希望やら、清国の現状やらを、あきれるくらいの熱情をもって語った。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一同があきれ返って、先生を目のかたきにした時分には、先生すましたもので、再び舟を漕ぎはじめているから始末にいけません。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
主膳は、我ながら、しくじったことの念入りなのに、あきれたのが、いよいよ一方のぬしをおさまらないものにしてしまいました。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、黒い姿もさすがにけたの違った母の人の言い分に驚かされ、あきれさせられたように投げ出して言うと、賢母は、
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あきがおに見るもののお蔦は憎くない眼をした。駕辰かごたつから、若い者を一人呼んでもらって、庄次郎を負ぶってもらう。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうもあきれたもんだ」と彼は受話器をかけながら言った。「警視庁までが正義党の幽霊にとりつかれているなんて?」
鉄の規律 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
今更ながら、一同のあきれたところを、ひさしまたいでさかしまのぞいてねらつた愚僧だ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
オリガ・イワーノヴナはあきがおでアリョーシャを眺め、ベリヤーエフを眺め、それからまたアリョーシャを見た。
小波瀾 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「あんな野郎だ。あきれてものが言へねえ、――お前路地の入口の邊で五十年配ねんぱいの下男風の男に逢つた筈だが」
旦那だんなさまあきれてをばたまふ、まだ家内うち/\言葉ことばあらそひのるうちはよきなれども
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「まあ、どう云う了見で、そんな馬鹿な事をしたのだ」とあきれた調子で云った。代助は依然として、口を開かなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人は、私の守銭奴しゅせんどぶりに、あきれて、憫笑びんしょうをもらしているかも知れないけれど、私は、ちっとも恥じていない。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
と、言つて起ち上つた。まあと寿枝はあきれたが、しかし瞬間母子の情が通つたと思ひ、だから叱らうとはしなかつた。
六白金星 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
受付兼会計係をしている姉が「十二銭も貼るほど手紙に書く事が、どうしてあるのだろう」とあきれるくらいであった。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さふらへど私の取り得べき量を十倍もしたるばかりのかゆを白き平たき皿に盛りて鈴木の参りし時はあきれ申しさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
諏訪 (まじまじと須貝の顔を見て)あきれた……何て言う人でしょう、この人は、……(階段の中ほどで坐って了う)
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
その時分、海の方に向ったこの研究室の窓を、外から押しあけようとするものがあるので、さすがの駒井も、その無作法にあきれました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お婆さんが、不意に突立ち上ったものですから、与八があきれていると、早くもお婆さんは与八の後ろへ廻ってしまい、
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こちらは、いささか櫓拍子をゆるめた宇治山田の米友は、あきれ面に弁信の面を見詰めていましたが、ちょっとお喋りの呼吸の隙を見て、
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伯母、あきれて無言。部屋じゅうをじろじろ見回す。と、つかつかと炉棚の机の前に行き、まず蔵書をしらべにかかる。
字で書いた漫画 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
村の人達はあきれ返りました。彼のことを八太郎といふ者はなく、いつのまにか犬の八公といふやうになつてゐました。
犬の八公 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
ただ、あきれながら書斎に坐る。しかしそのお蔭に、留守でも女手がとどいていたせいだろう、彼の机のまわりなども、小ぎれいだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「叔父さんはのらくらしているけれども実際偉いんですってね」と云った。代助もこれには一寸あきれた。仕方なしに、
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
理をもって、優しく、しかしするどく、徐々に責めていた十兵衛も、常識負けした形で、あきがおしてしまった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長があきれていう。信玄の死を聞いてとらわれている彼の感傷と、藤吉郎の心配とは、これほどな距離があった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
覚メタケレドモ事ノ意外ニ驚キあきレ、アマリニはずカシイ恰好かっこうヲシテイルノデ、寝タフリヲシテ通ソウトシテイルノダ。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
校長さんはかいってあきれてしまわれたのんか、ただ恐い眼エしてじっとにらんでおられるだけで、もう何ともいいなされしません。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼れはその考に自分ながら驚いたようにあきれて眼を見張っていたが、やがて大声を立てて頑童がんどうごとく泣きおめき始めた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
余りの事にあきれて口も利けなくなって、茫然ぼんやりと鸚鵡を見つめていると、赤鸚鵡は構わずに叫び続けた――
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「だから、手当々々とやかましく言うたんです。こんなになるまでほっとくとはあきれましたな。――お痛いですか」
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
驚きもし、あきれもして、来合せた人々と一緒になつて取押へたが、其時はもう疲れて居たせゐか、別に抵抗てむかひも為なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
昨日の朝丑松の留守へ尋ねて来た客がくなつた其人である、と聞いた時は、猶々なほ/\一同驚きあきれた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
兄は小声で、あれは新進作家の何の誰だ、と私に教え、私はなんてまあ浅墓あさはかな軽薄そうな男だろうとあき
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「まあ、う云ふ了見で、そんな馬鹿な事をしたのだ」とあきれた調子で云つた。代助は依然として、くちひらかなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
他の客も、山崎の意見の滅茶めちゃ苦茶なのにあきれながら、しかし、いまのこの場合、原田にお収めを願うのは最も無難と思ったので、
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし、だんだん話合ってみると、私の同級生は、たいてい大酒飲みで、おまけに女好きという事がわかり、互にあきれ、大笑いであった。
やんぬる哉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
森君は帽子を取ってペコンとお辞儀をして、坊さんがあきれている暇にさっさと歩きだした。僕も少し呆れながら森君の後について行った。
贋紙幣事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
田山白雲はあきれるばかりでしたけれども、言うだけは言わせて、歌うだけ歌わせることによって、相当の暗示が与えられないこともない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あきれて籠をおろして腰をかけ弁当をたべはじめましたら一人の赤髯あかひげの男がせはしさうにやって来ました。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
家のものがいって見ると、黒ぬり蒔絵まきえの重箱が、残ったお萩のはいったまま土中にあったので、かえって本当だったのにあきれた。
或時頼んで遣ったら、そこの引手ひきてが三人の女を連れて来て、「どれでもお好きなのをお使い下さい」といったのにはあきれました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
誰しも国の自慢を言わぬものはないけれど、ここまで通り越してしまっては、うっかり相槌あいづちも打てぬとあきれ返ったのであった。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
あきれた野郎だ――おや、さう言へばお客樣ぢやないか。お靜が取次に出たやうだ。お前はその顎を引つ込めろ。見付かると面白くねエ」
平次も少しあきれました。まだ下手人の見當もつかないのに、此の女は殺されたあによめの惡口を、何の遠慮もなく並べ立てるのです。
同じ夜半にふたたび庭わたりをしているではないか、凝然ぎょうぜんとして経之はあきれ返ったなかに、女のつよさ
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
御主人はわたしがあきれたように、はしもつけないのを御覧になると、上機嫌に御笑いなさりながら、こう御勧おすすめ下さいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いよいよあきれたる馭者は少しく身を退すさりて、仮初かりそめながら、狐狸変化こりへんげのものにはあらずやと心ひそかに疑えり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「誰を」と云った彼女は少しあきれたようにお延の顔を見た。「昨夕ゆうべお目にかかったあのかたの事?」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
七十にもなりそうな婆さんまでが、〓跛ちんばひきひき前垂に白米を入れて貰いまして、門を出ると直ぐ人並に歩いたには、あきれました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自分は水の心配をするたびに、ここの工事をやった人の、馬鹿馬鹿しきまで実務に不忠実な事をあきれるのである。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
帆村も、この枕の小包にはあきれるより外なかった。彼は差出人の悪意のこもるその美しい坊主枕をとりあげて、つくづくと眺め入った。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この質問には流石さすがに安藤巡査もあきれたと見えまして、暫く眉根をしかめながら考えを絞っていましたが、やがて顔を挙げると、
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
Hとの事で、母にも、兄にも、叔母にもあきれられてしまったという自覚が、私の投身の最も直接な一因であった。
叔父おぢさんはのらくらして居るけれども実際えらいんですつてね」と云つた。代助も是には一寸ちよつとあきれた。仕方なしに、
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)