先方せんぱう)” の例文
これから釣堀つりぼりへまゐりますと、男女なんによ二人連ふたりづれゆゑ先方せんぱうでもかして小間こまとほして、しゞみのおつけ、おいも煑転につころがしで一猪口いつちよこ出ました。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
こまつたものだとはおもひながらも、ひとつは習慣しふくわん惰力だりよくでとう/\五個月間かげつかんやりつゞけた。さうすると、どうだらう。或日あるひ先方せんぱうやつ突然とつぜんぼくうちにやつてて……
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
付込つけこみ度々無心に來れどもかさぬ時はこと面倒めんだうに成べしと思案しあんして三五郎に向ひまでにいはるゝなればわれ今より品川迄用事あつてゆくあひだ先方せんぱうにて才覺さいかく致し遣すべしとやが身拵みごしらへを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いよ/\といふた。荷物にもつといふ荷物にもつは、すつかりおくられた。まづをとこ一足ひとあしきに出發しゆつぱつして先方せんぱう都合つがふとゝのへ、それから電報でんぱうつて彼女かのぢよ子供こどもぶといふ手筈てはずであつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
催促さいそくすると、まだ先方せんぱうからもどつてまゐりませんからとかなんとか言譯いひわけをするだけかつらちいたためしがなかつたが、とう/\れなくなつたとえて、何處どこかへ姿すがたかくして仕舞しまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
發掘はつくつ承知しようちせぬので、はらつたから惡口あくこういたら、先方せんぱうおこつたといふ説明せつめい
先方せんぱうではおほい恐縮きようしゆくして、いろ/\相談さうだんすゑ名高なだか針醫はりいなくなつて、藥箱くすりばこ不用ふようになつてゐたのをり、それを療法れうはふれいとしておくつてたのが、この藥箱くすりばこで、見事みごと彫刻てうこくがしてあつて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わたくしいま喰殺くひころされるのは覺悟かくごまへだが、どうせぬならたゞなぬぞ、睨合にらみあつてあひだに、先方せんぱうすきでもあつたなら、機先きせん此方こなたから飛掛とびかゝつて、多少たせういたさはせてれんとかんがへたので
先方せんぱうでは貴顕きけんのお客様きやくさまですから丁寧ていねい取扱とりあつかひでございましておかみかたはお二階にかいあるひ奥座敷おくざしきといふのでわたくしつぎのお荷物の中の少々せう/\ばかりの明地あきちかしていたゞく事にあひなりました。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
としわかだけすべてに性急せいきふ小六ころくは、あにたのめば今日明日けふあすにもかたくものと、おもんでゐたのに、何日迄いつまでらちかないのみか、まだ先方せんぱう出掛でかけてもれないので、大分だいぶ不平ふへいになつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
平右衞門へいゑもんきゝそれ相應さうおう相談さうだんなり當人といふは我等われら同町どうちやう地主ぢぬし彌太郎方やたらうかたに勤居らるゝ又七と申者なり隨分ずゐぶん辛抱人しんばうにんにて主人しゆじん彌太郎やたらう事は最早もはや六十にもなれど一人も子なく金ばかり澤山ありて地面ぢめんは十三ヶ所も持居もちをり此人親分おやぶんとなるつもりなれば何事も氣遣きづかひなし先方せんぱう能々よく/\はなせし上明日御返事ごへんじいたすべしとて長兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
露地ろぢ打水うちみづなにかしてらう、先方せんぱう茶人ちやじんだから客はほかになければおまへ一人だから広間ひろまとほすかも知れねえが、おまへ辞儀じぎ下手へたで誠に困る、両手をちごはごにいてはいけねえよ
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)