佛壇ぶつだん)” の例文
新字:仏壇
が、不思議なことに諸道具や百味ひやくみ箪笥、そんなものの奧に六疊ほどの疊敷があつて、壁際にはさゝやかな佛壇ぶつだんが飾つてあるのです。
度々たび/\みません。——御免ごめんなさいましよ。」と、やつと佛壇ぶつだんをさめたばかりの位牌ゐはいを、内中うちぢうで、こればかりは金色こんじきに、キラリと風呂敷ふろしきつゝとき
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おこし其夜家内は寢鎭ねしづまりやゝ丑刻半なゝつはんとも思ふころ不※ふと起出おきいかねて勝手は知りしゆゑ拔足ぬきあしさし足して奧へ忍び行き佛壇ぶつだんの下より三百五十兩の大金を盜みいだし是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「なあに、さうだもんなんざんねえツたつてがよりやこつちのはうはやなほつから」小柄こがらぢいさんはしばらもとへいたあぶらさらふたゝ佛壇ぶつだんすみしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鷲尾はいい加減な返辞へんじをしながら、もう一言娘に云いたい機会をネラっていたが、最初は小格子のかげにうずくまり、次には奥の佛壇ぶつだんそばで向うむきのままたたずんでいたのが
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
正面には家に較べて立派な神棚かみだながあツて、傍の方に小さな佛壇ぶつだんもあツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
宗助そうすけまた本堂ほんだう佛壇ぶつだんまへけて、圍爐裏ゐろりつてある昨日きのふちやた。其所そこには昨日きのふとほ宜道ぎだう法衣ころも折釘をれくぎけてあつた。さうして本人ほんにん勝手かつてかまどまへ蹲踞うづくまつて、いてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
障子しやうじもないすゝつた佛壇ぶつだんはおつぎを使つかつて佛器ぶつきその掃除さうぢをして、さいきざんだ茄子なすつたいもと、さびしいみそはぎみじかちひさな花束はなたばとをそなへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
濱野はまのさんがかへつてから、その一枚いちまいみづひたして、そして佛壇ぶつだんあかりてんじた。つゝしんでまもつたのである
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一同がつかりして、元の部屋——佛壇ぶつだんの扉も、二つの床もそのまゝにしてある佛間へ引返しました。
佛壇ぶつだんへ上置其夜は九助も旅勞たびつかれゆゑ前後も知らず休みしが翌朝佛壇ぶつだんを見れば日蓮上人直筆ぢきひつ十界の曼陀羅見えざるにより家内は大騷おほさわぎとなりて直樣菩提所不動院ふどうゐんを招き卜筮うらなひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すゝつた佛壇ぶつだん菜種油なたねあぶらあかりはとほくにからでもひかつてるやうにぽつちりとかすかにえた。おふくろのよりも白木しらきまゝのおしな位牌ゐはいこゝろからの線香せんかうけぶりなびいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わびしさは、べるものも、るものも、こゝにことわるまでもない、うす蒲團ふとんも、眞心まごころにはあたゝかく、ことちと便たよりにならうと、わざ佛間ぶつま佛壇ぶつだんまへに、まくらいてくれたのである。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いえ、かんの強いお子さんで、そんなに物驚きをなさりながらも、どうしても誰とも一緒にお休みになりません。仕方が御座いませんので、お孃樣か私が、床を並べて、お佛壇ぶつだんの前に休んで居ります」
父親ちゝおや佛壇ぶつだん御明みあかしてんずるに、母親はゝおやは、財布さいふひもゆはへながら、けてこれ懷中ふところれさせる、女中ぢよちうがシヨオルをきせかける、となり女房にようばうが、いそいで腕車くるま仕立したてく、とかうするうち
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
佛壇ぶつだんは昨夜もこの通り締つて居たんだね、八」
祖母そぼ佛壇ぶつだんりんつてすわつた。わたしおなじやうにすわつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)