“かくし”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:カクシ
語句割合
衣嚢35.4%
衣兜22.8%
隠袋10.1%
5.1%
客死4.4%
郭汜2.5%
隠袖2.5%
1.9%
兜衣1.3%
核子1.3%
衣套1.3%
衣袋1.3%
兜兒0.6%
袖袋0.6%
隱袋0.6%
兜児0.6%
内隠0.6%
落袋0.6%
衣匣0.6%
袖嚢0.6%
袖隠0.6%
襯衣0.6%
郭資0.6%
隔子0.6%
隠匿0.6%
隠嚢0.6%
隠衣0.6%
隱衣0.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
老人のうしろに立つてゐて、お付合のやうに笑ひながら窓側まどぎはの柱に懸つてゐる時計を眺め、更に大形の懐中時計を衣嚢かくしから出して見た。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
嵩張つた包みが二人の間から取れて、輕い紙幣が女のコートの衣兜かくしに殘つたといふ事が、二人を浮世の人間並みらしい感じに戻らせた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
帆村が腰を一とひねりして、尻の隠袋かくしから拳銃を取出しながら、早や身体を玄関のドアにぶっつけてゆくのを見た。こっちも負けずに、狭い家と家との間に飛び込んだ。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
兵隊上へいたいあがりの小使こづかいのニキタは乱暴らんぼうにも、かくし一々いちいち転覆ひっくりかえして、すっかり取返とりかえしてしまうのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかして楡木川ゆぼくせん客死かくし高煦こうこう焦死しょうし、数たると数たらざるとは、道衍袁珙えんこうはいもとより知らざるところにして、たゞ天これを知ることあらん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
山峡やまかい隘地あいちを出て、軍を返そうとすれば、たちまち、李傕や郭汜かくしの兵が、沢や峰や渓谷の陰から、所きらわず出て来て戦を挑むからだった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時とすると学士はフロック・コオトの後の隠袖かくしから白い帕子ハンケチを取出し、広い額の汗を押拭って、また講演を続けた。時々捨吉は身内がゾーとして来た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
聞長兵衞夫は何が大變たいへんだと云に長八まことに大變なり親分に御相談申さねばならずそれつけても是まで親分にはかくし御咄おはなし申さざりしが私し共夫婦はかねて御存じの通り國元くにもと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
洋服の男はそう云って思いだしたように双手りょうて兜衣かくしに入れた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
得るは稗史はいし野乗やじょう核子かくしなれど茲に築地の土佐堀は小鯔いなの多く捕れる処ゆゑ一昨夜も雨上りに北鞘町の大工喜三郎が築地橋の側の処にて漁上とりあげたのは大鯔にて直ぐに寿美屋の料理番が七十五銭に買求め昨朝庖丁した処腹の中から○之助様ふでよりと記した上封うわふうじが出たといふがモウ一字知れたら艶原稿の続きものにでもなりさうな話。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこで身を起して銭箱ぜにばこの中から毎日節約して貯め込んだ十三枚の小銀貨と百八十の銅貨をさらけ出し、皆ひっくるめて衣套かくしの中に押込み、戸締をして寶兒を抱えて何家かけの方へと一散に走った。
明日 (新字新仮名) / 魯迅(著)
紳士は衣袋かくしの間から一本平骨ひらぼねの扇子を抜出して、胸の辺りを、さやさや。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されど財布をこそ人にやりつれ、さきに兜兒かくしうちに入れ置きし「スクヂイ」二つ猶在らば、人々に取らせんものをと、かい探ぐるにあらず。
その面は色を失ひて、唇は打顫へり。我が、あな、何事のおはせしぞと驚き問ふ時、マリアは兜兒かくしの中より、一封のふみ取出とうでて、さて語をつゞけて云ふやう。
とある町の曲り角で、外套の袖袋かくしに手を入れて見ると、古いしわだらけに成つた手袋が其内そのなかから出て来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さて残つたのを捨てる訳にもいかず、犬に呉れるは勿体もつたいなし、元の竹の皮に包んで外套ぐわいたう袖袋かくしへ突込んだ。斯うして腹をこしらへた上、川船の出るといふ蟹沢を指して、草鞋わらぢひも〆直しめなほして出掛けた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
をつと隱袋かくしなかたゝんである今朝けさ讀殼よみがらを、あとからしてんでないと、其日そのひ記事きじわからなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ一封いつぷう紹介状せうかいじやうふところにして山門さんもんはひつた。かれはこれを同僚どうれう知人ちじんなにがしからた。その同僚どうれう役所やくしよ徃復わうふくに、電車でんしやなか洋服やうふく隱袋かくしから菜根譚さいこんたんしてをとこであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
杉村博士はシガアの灰を落して、兜児かくしからパイプを出して、短くなつたシガアをめて、半ば身を起した。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そそくさと、そそくさと、内隠かくしから山葵色わさびいろびんを取り出し
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
涼しい風の来そうなところをえらんで、腰を掛けて、相川は洋服の落袋かくしから巻煙草を取り出す。原は黒絽くろろの羽織のまま腕まくりして、帕子ハンケチで手の汗を拭いた。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
赤い帶で腰の上へ留めた足首のところがすり切れた一雙のズボンの衣匣かくしに兩手を突つ込んだやうな異樣な扮裝でひよつこり玄關先に立たれたら、圭一郎は奈何どうしよう。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
丑松は色のせたズボンの袖嚢かくしの内へ手を突込んで、人知れず銀貨を鳴らして見ながら、幾度か其雑誌屋の前を往つたり来たりした。かく、四十銭あれば本が手に入る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
風景画家は洋服の袖隠かくしから磁石じしゃくを取出した。引いた図の方角をよく照らし合せて見て、ある家相を研究する人のことを三吉に話した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お定が默つてゐたので、丑之助は自分で手探りに燐寸マツチを擦つて手ランプに移すと、其處に脱捨てゝある襯衣かくしの衣嚢から財布を出して、一圓紙幣を一枚女の枕の下に入れた。女は手ランプを消して
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
燕王の張昺ちょうへい謝貴しゃきって反をあえてするや、郭資かくしとどめて北平ほくへいを守らしめ、ただちに師をいだして通州つうしゅうを取り、薊州けいしゅうを定めずんば、後顧のうれいあらんとえる張玉の言を用い、玉をして之を略せしめ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
許宣はそこで心をめて入った。へやの両側は四扇しまいびらき隔子かくしになって一方の狭い入口には青いきれとばりがさがっていた。小婢は白娘子に知らすためであろう、その簾を片手に掲げて次の室へ往った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
宝物の隠匿かくし場所ばかりが、今も荏原屋敷のどこかにあるという、そういうこともお姉様には、伝説として聞いて知っていますわねえ。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其れも小学校や中学校の生徒のように多勢景気よく練って来るのではない。大概は一人ずつ、稀には二三人組み合って、洋服の者は外套の隠嚢かくしに両手を突っ込み、襟におとがいを埋めてスタスタ行く。
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ともすれば彼女は、注意力の弛緩しかんからして、他のことを考えてぼんやりしていた。彼女は時々、胸の隠衣かくしから時計を出して針の動くのを眺めていた。
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
この鋏の槓力でも、女の錆びついた銅牌メダルが切れないのか。水夫よ! 汝の隱衣かくしの錢をかぞへて、無用の情熱を捨ててしまへ!
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)