“隱(かくし)” の例文
新字:隠
そこへ鷄二が歩いて來た。動物のすきな鷄二は洋服の隱(かくし)にでも入れて持ち歸りたい樣子であつたが、やがて思ひついたやうに、小石の間へその燕の雛を放した。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
聞長兵衞夫は何が大變(たいへん)だと云に長八誠(まこと)に大變なり親分に御相談申さねばならず夫(それ)に付(つけ)ても是まで親分には隱(かくし)て御咄(おはな)し申さざりしが私し共夫婦は豫(かね)て御存じの通り國元(くにもと)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
職務(しよくむ)を取(と)るのは前(まへ)にも不好(いや)であつたが、今(いま)は猶(なほ)一層(そう)不好(いや)で堪(たま)らぬ、と云(い)ふのは、人(ひと)が何時(いつ)自分(じぶん)を欺(だま)して、隱(かくし)にでも密(そつ)と賄賂(わいろ)を突込(つきこ)みは爲(せ)ぬか、其(そ)れを訴(うつた)へられでも爲(せ)ぬか
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
兵隊上(へいたいあが)りの小使(こづかひ)のニキタは亂暴(らんばう)にも、隱(かくし)を一々(いち/\)轉覆(ひつくりか)へして、悉皆(すつかり)取返(とりか)へして了(しま)ふので有(あ)つた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
偖(さて)も郡奉行松本理左衞門は夫々申渡し相濟(あひすみ)早(はや)退座(たいざ)せんとなしける處に百姓三五郎申上ますと云ながら白洲(しらす)へ飛込(とびこむ)ゆゑ下役どもソレと取押(とりおさへ)るを猶も聞入ず大音(だいおん)揚(あげ)今は何をか隱(かくし)申さん惣内夫婦を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
辭(じ)することの出來(でき)ぬ院長(ゐんちやう)は、隱(かくし)から十錢(せん)を出(だ)して彼(かれ)に遣(や)る。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)