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かくし
ふりがな文庫
“
隠袋
(
かくし
)” の例文
旧字:
隱袋
三四郎はまた
隠袋
(
かくし
)
へ手を入れた。銀行の
通帳
(
かよいちょう
)
と印形を出して、女に渡した。金は帳面の間にはさんでおいたはずである。しかるに女が
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
帆村が腰を一とひねりして、尻の
隠袋
(
かくし
)
から拳銃を取出しながら、早や身体を玄関の
扉
(
ドア
)
にぶっつけてゆくのを見た。こっちも負けずに、狭い家と家との間に飛び込んだ。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
青銅の
框
(
わく
)
を
嵌
(
は
)
めた眼鏡を外套の
隠袋
(
かくし
)
から取りだして、眼へ
宛
(
あて
)
がおうとしてみた、がいくら眉を
皺
(
しか
)
め、頬を捻じ上げ、鼻まで
仰
(
あ
)
お向かせて眼鏡を支えようとしてみても
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
洋袴は何か乙な
縞
(
しま
)
羅紗で、リュウとした
衣裳附
(
いしょうづけ
)
、
縁
(
ふち
)
の巻上ッた
釜底形
(
かまぞこがた
)
の黒の帽子を
眉深
(
まぶか
)
に
冠
(
かぶ
)
り、左の手を
隠袋
(
かくし
)
へ差入れ、右の手で細々とした
杖
(
つえ
)
を
玩物
(
おもちゃ
)
にしながら、高い男に向い
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
次にチョッキの
隠袋
(
かくし
)
から、何か小さなものを出して、火縄でそれに点火したのを、手早く筒口から投げ入れると、半秒足らずくらいの後に、爆然と煙が
迸
(
ほとばし
)
り出て、鈍い爆音が聞える。
雑記(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
三四郎は又
隠袋
(
かくし
)
へ手を入れた。銀行の通帳と印形を
出
(
だ
)
して、女に渡した。
金
(
かね
)
は帳面の
間
(
あひだ
)
に
挟
(
はさ
)
んで
置
(
お
)
いた筈である。
然
(
しか
)
るに女が
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
柔らかい皮袋に入れて
隠袋
(
かくし
)
に収めるように出来ている。
「万年筆」欄より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
自分は
隠袋
(
かくし
)
の中から
今朝
(
けさ
)
読んだ手紙を出して、おいお
土産
(
みやげ
)
をやろうと言いながら、できるだけ長く手を重吉の方に伸ばした。
手紙
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
答のない口元が結んだまましゃくんで、見るうちにまた
二雫
(
ふたしずく
)
落ちた。宗近君は親譲の
背広
(
せびろ
)
の
隠袋
(
かくし
)
から、くちゃくちゃの
手巾
(
ハンケチ
)
をするりと出した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかしあとから
直
(
すぐ
)
続くと思った男は、案外
上
(
あが
)
る
気色
(
けしき
)
もなく、足を
揃
(
そろ
)
えたまま、両手を
外套
(
がいとう
)
の
隠袋
(
かくし
)
に突き差して立っていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小林はすぐ吸い残した
敷島
(
しきしま
)
の袋を
洋袴
(
ズボン
)
の
隠袋
(
かくし
)
へねじ込んだ。すると彼らの
立
(
た
)
ち
際
(
ぎわ
)
に、叔父が偶然らしくまた口を開いた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は私の驚いた様子を馬鹿にするような調子でこう云ったなり、その
手帛
(
ハンケチ
)
の包をまた
隠袋
(
かくし
)
に収めてしまった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お延の気を利かして
外套
(
がいとう
)
の
隠袋
(
かくし
)
へ入れてくれた新聞を津田が取り出して、いつもより念入りに眼を通している頃に、
窓外
(
そうがい
)
の空模様はだんだん悪くなって来た。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夫の
隠袋
(
かくし
)
の中に畳んである今朝の
読殻
(
よみがら
)
を、
後
(
あと
)
から出して読んで見ないと、その日の記事は分らなかった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「しかし」と云いながら、
隠袋
(
かくし
)
の中を
捜
(
さ
)
ぐって、太い
巻煙草
(
まきたばこ
)
を一本取り出した。煙草の煙は大抵のものを
紛
(
まぎ
)
らす。いわんやこれは金の吸口の着いた
埃及産
(
エジプトさん
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
やがて
洋袴
(
ズボン
)
の
隠袋
(
かくし
)
へ手を入れて「や、しまった。
煙草
(
たばこ
)
を買ってくるのを忘れた」と大きな声を出した。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
先刻
(
さっき
)
津田に買ってもらった一円五十銭の空気銃を
担
(
かつ
)
いだままどんどん自分の
宅
(
うち
)
の方へ逃げ出した。彼の
隠袋
(
かくし
)
の中にあるビー玉が
数珠
(
じゅず
)
を
劇
(
はげ
)
しく
揉
(
も
)
むように鳴った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鼠の勝った
品
(
ひん
)
の好い
胴衣
(
チョッキ
)
の
隠袋
(
かくし
)
には——恩賜の時計が
這入
(
はい
)
っている。この上に金時計をとは、小さき胸の小夜子が夢にだも知るはずがない。小野さんは変っている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は一封の紹介状を
懐
(
ふところ
)
にして
山門
(
さんもん
)
を入った。彼はこれを同僚の知人の
某
(
なにがし
)
から得た。その同僚は役所の往復に、電車の中で洋服の
隠袋
(
かくし
)
から
菜根譚
(
さいこんたん
)
を出して読む男であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「思わず
馳
(
か
)
け込んで、
隠袋
(
かくし
)
から
蝦蟇口
(
がまぐち
)
を出して、蝦蟇口の中から五円札を二枚出して……」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はフロックの上へ、とんびのような
外套
(
がいとう
)
をぶわぶわに着ていた。そうして電車の中で
釣革
(
つりかわ
)
にぶら下りながら、
隠袋
(
かくし
)
から
手帛
(
ハンケチ
)
に包んだものを出して私に見せた。私は「なんだ」と
訊
(
き
)
いた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は男が乗り換えさえすれば、自分も早速降りるつもりで、停留所へ来るごとに男の様子を
窺
(
うか
)
がった。男は
始終
(
しじゅう
)
隠袋
(
かくし
)
へ手を突き込んだまま、多くは自分の正面かわが
膝
(
ひざ
)
の上かを見ていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ただは頼みません、御礼はするです。シャンパンがいやなら、こう云う御礼はどうです」と云いながら上着の
隠袋
(
かくし
)
のなかから七八枚の写真を出してばらばらと畳の上へ落す。半身がある。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
野々宮さんは目
録
(
ろく
)
へ
記号
(
しるし
)
を
付
(
つ
)
ける
為
(
ため
)
に、
隠袋
(
かくし
)
へ手を入れて鉛筆を
探
(
さが
)
した。鉛筆がなくつて、一枚の活版
摺
(
ずり
)
の
端書
(
はがき
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た。見ると、美禰子の結婚披露の招待状であつた。披露はとうに
済
(
す
)
んだ。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
野々宮さんは目録へ
記号
(
しるし
)
をつけるために、
隠袋
(
かくし
)
へ手を入れて鉛筆を捜した。鉛筆がなくって、一枚の活版刷りのはがきが出てきた。見ると、美禰子の結婚
披露
(
ひろう
)
の招待状であった。披露はとうに済んだ。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
男は返事をしずに、外套の
隠袋
(
かくし
)
から半紙に包んだものを出した。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
男は返事をしずに、外套の
隠袋
(
かくし
)
から半紙に
包
(
つゝ
)
んだものを
出
(
だ
)
した。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分がこう云った時、兄はチョッキの
隠袋
(
かくし
)
から時計を出した。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
隠
常用漢字
中学
部首:⾩
14画
袋
常用漢字
中学
部首:⾐
11画
“隠”で始まる語句
隠
隠匿
隠岐
隠蔽
隠密
隠家
隠居
隠遁
隠棲
隠栖