かくし)” の例文
旧字:
それはいきな外国人で、靴を穿いて来ましたが、其の靴をぬいでかくしから帛紗ふくさを取出しましたからなんの風呂敷包かと思いますと、其の中から上靴を出してはきまして
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
兵隊上へいたいあがりの小使こづかいのニキタは乱暴らんぼうにも、かくし一々いちいち転覆ひっくりかえして、すっかり取返とりかえしてしまうのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この井戸は一寸ちょっと見ると、山上の城によくあるかくし井戸らしく見えるが、決してそうでは無い。
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
乱杭、歯くそかくし鉄漿かねをつけて、どうだい、そのざまで、全国の女子の服装を改良しようの、音楽を古代にかえすの、美術をどうのと、鼻のさきで議論をして、舌で世間をめやがる。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
柳行李やなぎごうりの蓋にてそこらを叩き立て「へえ、旦那、御常談ごじょうだんをなすつちやあいけません、わつちが道を急いで居るものだから、おかくしなすつてからかはうと思つていらつしやるのでせう」
ほとんどそのまゝ所持致をり候事故、当山の御厄介に相なり候に付いては、またもやそのかくし場所に困りをり候処、唯今にても当寺表惣門おもてそうもんかたわらに立ちをり候えのきの大木に目をつけ、夜中やちゅう攀上よじのぼ
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
職務しょくむるのはまえにもいやであったが、いまはなお一そういやでたまらぬ、とうのは、ひと何時いつ自分じぶんだまして、かくしにでもそっと賄賂わいろ突込つきこみはせぬか、それをうったえられでもせぬか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
拾ったとこを云わなければならないが、御迷惑が掛っちゃア済まねえから、売りてえのを我慢して、何うか御当人にお渡し申してえと思って、今まで腹掛のかくし突込つッこんでいた所が
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と治平は真青まっさおになりブル/\慄え出すを見て、ガラリと鞄をほうり出し、どたアりと大胡座おおあぐらをかいて、かくしからハンケーチを取出とりいだし、チンとはなをかんで物をも云わず巻煙草に火を移し
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
することの出来でき院長いんちょうは、かくしから十せんしてかれる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)