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頬冠
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ほおかむ
ふりがな文庫
“
頬冠
(
ほおかむ
)” の例文
雲が破けて、陽光が畑いちめんに落ちると、麦の芽は輝き躍って、善ニョムさんの
頬冠
(
ほおかむ
)
りは、そのうちにまったく融けこんでしまった。
麦の芽
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「そればかりは判りませんよ、いつでも手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして——誰かに後を
跟
(
つ
)
けられたと
覚
(
さと
)
ると、その逃げ足の早いということは——」
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それも出来ず、犯人も捕まえず
頬冠
(
ほおかむ
)
りしていようというなら、もういいよ。婆にも婆の考えがある。——ほかの奉行所へ行って訴え出るのさ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
初め出遇ッたのが百姓で、重そうな荷をえッちらおッちら背負ッていたが、わざわざ
頬冠
(
ほおかむ
)
りを取って会釈して往き過ぎた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
遙か向うを、トットと急いで行く、漁師体の男、着物の縞柄から脊格好から
頬冠
(
ほおかむ
)
りの
手拭
(
てぬぐい
)
まで、さっきの曲者に相違ない。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
藍微塵
(
あいみじん
)
の
素袷
(
すあわせ
)
に
算盤玉
(
そろばんだま
)
の三
尺
(
じゃく
)
は、
見
(
み
)
るから
堅気
(
かたぎ
)
の
着付
(
きつけ
)
ではなく、
殊
(
こと
)
に
取
(
と
)
った
頬冠
(
ほおかむ
)
りの
手拭
(
てぬぐい
)
を、
鷲掴
(
わしづか
)
みにしたかたちには、
憎
(
にく
)
いまでの
落着
(
おちつき
)
があった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
頬冠
(
ほおかむ
)
りの男の中に交って赤い
襷
(
たすき
)
の女も一緒に礫を打っている。振り上げる鍬の刃先がキラリキラリと光る向うには、秩父の山々が美しく聳えている。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
こんな所でも人間に
逢
(
あ
)
う。じんじん
端折
(
ばしょ
)
りの
頬冠
(
ほおかむ
)
りや、赤い
腰巻
(
こしまき
)
の
姉
(
あね
)
さんや、時には人間より顔の長い馬にまで逢う。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
頬冠
(
ほおかむ
)
りをし直してでかけた。まだ霜柱の立っている道を、小一里もゆかなければ街道へは出られない、畑にさえ一人の百姓の姿も見えなかった。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
頬冠
(
ほおかむ
)
りに
唐桟
(
とうざん
)
の
半纏
(
はんてん
)
を引っ掛け、
綺麗
(
きれい
)
に
研
(
みが
)
いた素足へ
爪紅
(
つまべに
)
をさして
雪駄
(
せった
)
を
穿
(
は
)
くこともあった。金縁の色眼鏡に
二重廻
(
にじゅうまわ
)
しの
襟
(
えり
)
を立てて出ることもあった。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
井桁格子
(
いげたごうし
)
の浴衣に
鬱金木綿
(
うこんもめん
)
の手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
り。片袖で顔を蔽って象のそばから走り出そうとすると、
人気
(
ひとけ
)
のないはずの松の
根方
(
ねかた
)
から
矢庭
(
やにわ
)
に駈け出した一人。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
夜
(
よ
)
も段々と更け渡ると、孝助は
手拭
(
てぬぐい
)
を
眉深
(
まぶか
)
に
頬冠
(
ほおかむ
)
りをし、
紺看板
(
こんかんばん
)
に
梵天帯
(
ぼんてんおび
)
を締め、槍を小脇に
掻込
(
かいこ
)
んで庭口へ忍び込み、雨戸を少々ずつ
二所
(
ふたところ
)
明けて置いて
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ましてや夕方近くなると、坂下の
曲角
(
まがりかど
)
に
頬冠
(
ほおかむ
)
りをした
爺
(
おやじ
)
が
露店
(
ろてん
)
を出して魚の骨と
腸
(
はらわた
)
ばかりを並べ、さアさア
鯛
(
たい
)
の
腸
(
わた
)
が安い、鯛の腸が安い、と
皺枯声
(
しわがれごえ
)
で
怒鳴
(
どな
)
る。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
猿轡
(
さるぐつわ
)
をはめられて、引転がされているところに、
頬冠
(
ほおかむ
)
りした二人の兇漢が、長いのを畳へつきさして、
胡坐
(
あぐら
)
を組んで脅迫の
体
(
てい
)
は、物の本などで見る通りの
狼藉
(
ろうぜき
)
です。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夏着
(
なつぎ
)
冬着ありたけの
襤褸
(
ぼろ
)
の
十二一重
(
じゅうにひとえ
)
をだらりと
纏
(
まと
)
うて、破れしゃっぽのこともあり、黒い髪を長く額に垂らして居ることもあり、或は
垢染
(
あかじ
)
みた手拭を
頬冠
(
ほおかむ
)
りのこともある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
小袖からは
淋
(
さび
)
しい山道を一里ばかりも離れていたが、冬になると雪がひどいので、男の子も女の子も竹の皮で
拵
(
こしら
)
えた靴見たいな物を
履
(
は
)
いて、
手拭
(
てぬぐい
)
ですっぽりと
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「大小お捨てなさいまし! 野山を越えて行きましょう!
頬冠
(
ほおかむ
)
りの似合う
秋
(
とき
)
ですよ」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
男子は
手拭
(
てぬぐい
)
を以て
頬冠
(
ほおかむ
)
りし、双刀を
帯
(
たい
)
する者あり、或は一刀なる者あり。或は昼にても、
近処
(
きんじょ
)
の歩行なれば双刀は
帯
(
たい
)
すれども
袴
(
はかま
)
を
着
(
つ
)
けず、隣家の往来などには
丸腰
(
まるごし
)
(無刀のこと)なるもあり。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
汚れた手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして、
大人
(
おとな
)
のような
藍
(
あい
)
の細かい
縞物
(
しまもの
)
の
筒袖単衣
(
つつそでひとえ
)
の
裙短
(
すそみじか
)
なのの汚れかえっているのを着て、細い
手脚
(
てあし
)
の
渋紙
(
しぶかみ
)
色なのを貧相にムキ出して、見すぼらしく
蹲
(
しゃが
)
んでいるのであった。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
平生さえ然うだったから、
況
(
いわん
)
や試験となると、
宛然
(
さながら
)
の
狂人
(
きちがい
)
になって、手拭を
捻
(
ねじ
)
って
向鉢巻
(
むこうはちまき
)
ばかりでは
間怠
(
まだる
)
ッこい、氷嚢を頭へ
載
(
のっ
)
けて、其上から
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして、
夜
(
よ
)
の目も
眠
(
ね
)
ずに、例の
鵜呑
(
うのみ
)
をやる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
七つの
歳
(
とし
)
であったが、
筋向
(
すじむか
)
いの家に湯に招かれて、秋の夜の八時過ぎ、母より一足さきにその家の戸口を出ると、不意に
頬冠
(
ほおかむ
)
りをした屈強な男が、
横合
(
よこあい
)
から出てきて私を
引抱
(
ひっかか
)
え、とっとっと走る。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
早や、
旧
(
もと
)
来た
瓦斯
(
がす
)
に
頬冠
(
ほおかむ
)
りした薄青い肩の処が。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
口惜
(
くや
)
しいが、なんにも解りませんよ。麻裏を履いて
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして、煙のように消えてなくなったとでも思わなきゃなりません」
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頃合
(
ころあい
)
をはかって、善ニョムさんは寝床の上へ、ソロソロ起きあがると、
股引
(
ももひき
)
を
穿
(
は
)
き、野良着のシャツを着て、それから
手拭
(
てぬぐい
)
でしっかり
頬冠
(
ほおかむ
)
りした。
麦の芽
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
今、あたふたと帰って来ると、戸棚を掻廻して、一枚の
単衣
(
ひとえ
)
と
一腰
(
ひとこし
)
の刀を出し、姿をかえると、手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
りして、またすぐ草履を
穿
(
は
)
こうとしていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
正面玄関
(
フロント
)
の土間で、髪をとばされないようにネッカチーフで
頬冠
(
ほおかむ
)
りをすると、ガラス扉にうつった姿は、それなりにショウバイニンのスタイルになっている。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そうして同じ彼等の姿が再び欄間の上から曲折して
下
(
くだ
)
って来るのを
疎
(
うと
)
い眼で眺めた。彼らは必ず
粗
(
あら
)
い
縞
(
しま
)
の
貸浴衣
(
かしゆかた
)
を着て、日の照る時は
手拭
(
てぬぐい
)
で
頬冠
(
ほおかむ
)
りをしていた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
一
(
いつ
)
は
桜花爛漫
(
おうからんまん
)
たる
土塀
(
どべい
)
の外に一人の若衆
頬冠
(
ほおかむ
)
りにあたりの人目を兼ねて
彳
(
たたず
)
めば、土塀にかけたる
梯子
(
はしご
)
の頂より一人の美女結び
文
(
ぶみ
)
を手に持ち半身を現はしたり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼はうす汚れた手拭で鼻の先に
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして、
細
(
こまか
)
い
碁盤縞
(
ごばんじま
)
の日本キモノに三尺帯、そのお尻をはしょって、ふところには、九寸五分が覗いていようという趣向である。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
音を忍ばせて障子をあけ、手拭掛けから乾いている手拭を取り、それで
頬冠
(
ほおかむ
)
りをした。
ちゃん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
またその
頬冠
(
ほおかむ
)
りの
体
(
てい
)
や、着物の
縞柄
(
しまがら
)
を見ても、多分——ではない、全く昨夜の悪者共に相違ないと
頷
(
うなず
)
かれたが、ただしかし、兵馬が、もう一層近く寄って、この屍骸を検視した時に
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
様
(
さま
)
の
頬冠
(
ほおかむ
)
ナー
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
もう一人は四十前後、凄まじい
青髯
(
あおひげ
)
で、
頬冠
(
ほおかむ
)
りを取って汗を拭いたところを見ると、山賊の小頭が戸惑いして飛込んだ——といった男です。
銭形平次捕物控:049 招く骸骨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
黙々と、そして緩やかに、艪をうごかしていた船頭は、
頬冠
(
ほおかむ
)
りをした手拭の耳に、ひらひらと風をうけながら
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
種員は
頬冠
(
ほおかむ
)
りにした
手拭
(
てぬぐい
)
のある事さえ打忘れ今は
惜気
(
おしげ
)
もなく大事な秘密出版の草稿に流るる涙を押拭った。そして仙果
諸共
(
もろとも
)
堀田原をさして
金竜山
(
きんりゅうざん
)
の境内を飛ぶがごとくに走り行く。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
頬冠
(
ほおかむ
)
りをとりながら、万三郎は飯台に向って腰をかけた。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
取込んでろくに雪も
掻
(
か
)
かなかったのでしょう、下男の与次郎が、
浅黄
(
あさぎ
)
の手拭を
頬冠
(
ほおかむ
)
りに、
竹箒
(
たけぼうき
)
でセッセと雪を払っております。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
廂
(
ひさし
)
の雨だれに打たれながら、
頬冠
(
ほおかむ
)
りをした男が、その上から又
赤合羽
(
あかがっぱ
)
を被って、ぼんやり立っていた。
魚紋
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女もその年頃のものが多く、汚れた古手拭の
頬冠
(
ほおかむ
)
り、つぎはぎのモンペに足袋はだしもある。中には
能
(
よ
)
くあんな重いものが背負えると思われるような皺だらけの婆さんも交っていた。
買出し
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
手拭を出して、ちょいと
頬冠
(
ほおかむ
)
りをしたまま、なおも人垣の間から、奇怪な女の一挙一動に、何物をも見尽さずには
措
(
お
)
かない眼を注ぎました。
銭形平次捕物控:004 呪いの銀簪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頬冠
(
ほおかむ
)
りをすると、すぐに、犬這いになって、縁の下へ這いこんだ。いつかの時は、この不恰好なところを、慎吾に見られるのがいやで、引っ返したのかも知れない。
銀河まつり
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それが解らないんで、暑いのに
頬冠
(
ほおかむ
)
りを取らなかったと言いますよ。それに、お政を水から救い上げると、すぐ姿を隠してしまったそうで」
銭形平次捕物控:053 小唄お政
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、色の小白い、ちょっと
笑靨
(
えくぼ
)
のある男が、
頬冠
(
ほおかむ
)
りをとって、三尺帯の尻を下ろした。
梅颸の杖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ポカポカする
秋日和
(
あきびより
)
、
頬冠
(
ほおかむ
)
りは少し
鬱陶
(
うっとう
)
しいが、場所柄だけに、少し遅い朝帰りと思えば大して
可笑
(
おか
)
しくはありません。
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
返辞はなかったがその代りに、ギーと出てきた
剣尖船
(
けんさきぶね
)
、
頬冠
(
ほおかむ
)
りの男が黙々と動いた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いえ、金は大した事はございませんが、帰って行く時、庭の松に引っ掛って、うっかり
頬冠
(
ほおかむ
)
りが
除
(
と
)
れたそうで、お滝は泥棒の顔をよく見たと申します
銭形平次捕物控:039 赤い痣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何か、冷たい手にでも撫でられたような気がして、ふと、眼をあけると、うつつな、渋い
網膜
(
もうまく
)
に、大きな人影が映った。
絞
(
しぼ
)
りの手拭で、
頬冠
(
ほおかむ
)
りをして、壁の下を、這ってゆくのであった。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
頬冠
(
ほおかむ
)
りをしていて人相は判らなかったが、
道傍
(
みちばた
)
の柳の小枝を上手に切って、切れ味を試して行ったんだそうで——」
銭形平次捕物控:079 十七の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そう言う八五郎は、
頬冠
(
ほおかむ
)
りに薄寒そうな
擬
(
まが
)
い
唐桟
(
とうざん
)
の
袷
(
あわせ
)
、尻を高々と
端折
(
はしょ
)
って、高い足駄を踏み鳴らしておりました。
銭形平次捕物控:117 雪の夜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
宵のうちのことで、手拭で
頬冠
(
ほおかむ
)
りをした男が、人待ち顔に物蔭に立っていたのを見た者もあり、半七郎と何やら言い争っている声を聞いた者もあります。
銭形平次捕物控:039 赤い痣
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
頬
部首:⾴
15画
冠
常用漢字
中学
部首:⼍
9画
“頬”で始まる語句
頬
頬杖
頬張
頬被
頬辺
頬骨
頬白
頬髯
頬桁
頬笑