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銜
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ふく
ふりがな文庫
“
銜
(
ふく
)” の例文
この楠先生もよくお愛想に出した葡萄酒の杯を
銜
(
ふく
)
んだりして、耳新しい医学上の新学説などを聞かせてくれたような記憶がある。
追憶の医師達
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
日比野の家の、何か物事を
銜
(
ふく
)
んで控え目に暮している空気がお涌にはなつかしまれた。それには豪華を消しているうすら冷たい感じがあった。
蝙蝠
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
卯平
(
うへい
)
は一
杯
(
ぱい
)
をも
口
(
くち
)
へ
銜
(
ふく
)
まぬのに
先刻
(
さつき
)
から
只
(
たゞ
)
凝然
(
ぢつ
)
として、
騷
(
さわ
)
ぎを
聞
(
き
)
くでもなく
聞
(
き
)
かぬでもない
容子
(
ようす
)
をして
胡坐
(
あぐら
)
をかいて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その頃イイダの君はとをばかりなりしが、あはれがりて物とらせつ。
玩
(
もてあそび
)
の笛ありしを与へて、『これ吹いて見よ、』といへど、欠唇なればえ
銜
(
ふく
)
まず。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
黒々と
搦手
(
からめて
)
から市外を遠く迂回して、全軍
枚
(
ばい
)
を
銜
(
ふく
)
み、必殺の意気をこらしつつ、矢田山の敵本営へ向って進んでいた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
念
(
おも
)
へ、彼等の
逢初
(
あひそ
)
めし
夕
(
ゆふべ
)
、互に
意
(
こころ
)
有りて
銜
(
ふく
)
みしもこの酒ならずや。更に
両個
(
ふたり
)
の影に伴ひて、人の
情
(
なさけ
)
の必ず
濃
(
こまやか
)
なれば、必ず
芳
(
かうばし
)
かりしもこの酒ならずや。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
また
乾酪
(
チーズ
)
を一口
銜
(
ふく
)
んで吐き出すとしても、そこいらにペッと唾をするではなく、人にわからぬように、そうっと
掌
(
たなごころ
)
に受けて、人知れず棄てるところなぞ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
遊人の舟は相
銜
(
ふく
)
みて洞窟より出で、我等は前に
渺茫
(
べうばう
)
たる大海を望み、
後
(
しりへ
)
に
琅玕洞
(
らうかんどう
)
の石門の漸く
細
(
ほそ
)
りゆくを見たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
己はどんなざまに声をあげたらうか。凹凸に截られた、石畳の隅で、彼等街衢から出はづれ台地を降る者の、塩を
銜
(
ふく
)
んだ頤が獣のやうに緊るのを知つた時。
逸見猶吉詩集
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
瞬く中に、百本の矢は一本の如くに相連り、的から一直線に續いた其の最後の括は猶弦を
銜
(
ふく
)
むが如くに見える。傍で見てゐた師の飛衞も思はず「善し!」と言つた。
名人伝
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
おすぎはトシに乳を
銜
(
ふく
)
ませながら、最前順吉が観音さまのお守りを見せてくれたときのことを思い浮かべた。あのときおすぎは
吐胸
(
とむね
)
をつかれるような感じをうけた。
夕張の宿
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
と、
床
(
とこ
)
なる一刀スラリと拔きて、青燈の光に差し付くれば、爛々たる氷の刃に水も
滴
(
したゝ
)
らんず
無反
(
むそり
)
の
切先
(
きつさき
)
、鍔を
銜
(
ふく
)
んで紫雲の如く
立上
(
たちのぼ
)
る
燒刃
(
やきば
)
の
匂
(
にほ
)
ひ目も
覺
(
さ
)
むるばかり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
三更後一黒虎観に入り一道士を
銜
(
ふく
)
み出づるを射しが
中
(
あた
)
らず、翌日竭忠大いに太子陵東の石穴中に猟し数虎を
格殺
(
うちころ
)
した、その穴に道士の冠服遺髪甚だ多かったと見ゆ。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
而
(
しこう
)
して
果然
(
かぜん
)
嘉永六年六月三日米国軍艦は、
舳艫
(
じくろ
)
相
銜
(
ふく
)
み、
忽然
(
こつぜん
)
として天外より江戸湾の
咽吭
(
いんこう
)
なる浦賀に落ち来れり。
六無斎子平
(
ろくむさいしへい
)
が、半世紀前に予言したる夢想は、今や実現せり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
黒ずんだ、ふくよかな瓶を
繊
(
ほそ
)
い指で
擡
(
もた
)
げて酌をする姿はいかにも美しい。酒は青み掛かつた軽い古風な杯に流れ入る。唇に触れて冷やかさを覚えさせる此杯を、己は楽んで口に
銜
(
ふく
)
む。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
と、かつて美術学校の学生時代に、そのお山へ
抜参
(
ぬけまい
)
りをして、狼よりも旅費の不足で、したたか
可恐
(
こわ
)
い思いをした小村さんは、
聞怯
(
ききおじ
)
をして口を入れた……
噛
(
か
)
むがごとく杯を
銜
(
ふく
)
みながら
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
往きはまず無事、御評定所で御墨付を受取り、一応懐紙を
銜
(
ふく
)
んで改めた上、持参の文箱に移して御評定所を退き、
東雲
(
しののめ
)
に
跨
(
またが
)
って、文箱を捧げ加減に、片手
手綱
(
たづな
)
でやって来たのは牛込見附です。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
盛庸等之を破る。帝
都督
(
ととく
)
僉事
(
せんじ
)
陳瑄
(
ちんせん
)
を遣りて
舟師
(
しゅうし
)
を率いて庸を
援
(
たす
)
けしむるに、
瑄却
(
かえ
)
って燕に
降
(
くだ
)
り、舟を
具
(
そな
)
えて迎う。燕王乃ち
江神
(
こうじん
)
を祭り、師を誓わしめて江を渡る。
舳艫
(
じくろ
)
相
(
あい
)
銜
(
ふく
)
みて、
金鼓
(
きんこ
)
大
(
おおい
)
に
震
(
ふる
)
う。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ある時賈に従って洞庭に舟がかりをしていると、たまたま大きな
猪婆龍
(
ちょばりゅう
)
が水の上に浮いた。賈はそれを見て弓で射た。矢はその背に
中
(
あた
)
った。他に小さな魚がいて龍のしっ尾を
銜
(
ふく
)
んで逃げなかった。
西湖主
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
かの
蒼然
(
さうぜん
)
たる
水靄
(
すゐあい
)
と、かの万点の紅燈と、而してかの
隊々
(
たいたい
)
相
銜
(
ふく
)
んで、尽くる所を知らざる
画舫
(
ぐわぼう
)
の列と——
嗚呼
(
ああ
)
、予は終生その夜、その
半空
(
はんくう
)
に仰ぎたる煙火の明滅を記憶すると共に、右に
大妓
(
たいぎ
)
を擁し
開化の殺人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すぐ又乳首をさしつけると、ちょいと
銜
(
ふく
)
んでまた離して泣いた。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
牡丹散る
盃
(
はい
)
を
銜
(
ふく
)
みて
悼
(
いた
)
まばや
六百句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
日比野の家の、何か物事を
銜
(
ふく
)
んで控へ目に暮してゐる空気がお涌にはなつかしまれた。それには豪華を消してゐるうすら冷たい感じがあつた。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
四更、月光を見ながら、
枚
(
ばい
)
を
銜
(
ふく
)
み、馬は鈴を収め、降る露を浴びながら、粛々と山の隠し道へすすんで行く。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
少女は
誰
(
た
)
が飲みほしけむ珈琲碗に添へたりし「コップ」を取りて、中なる水を口に
銜
(
ふく
)
むと見えしが、唯
一噀
(
ひとふき
)
。「継子よ、継子よ、汝ら
誰
(
たれ
)
か美術の継子ならざる。 ...
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
この女は赤子に乳房を
銜
(
ふく
)
ませたるに、別に年稍〻長ぜる一兒の膝に枕したるさへありき。忽ち一道の雷火下り射ると共に、颶風は引き去らんと欲する
状
(
さま
)
をなせり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
瞬く中に、百本の矢は一本のごとくに相連なり、的から一直線に続いたその最後の括はなお
弦
(
げん
)
を
銜
(
ふく
)
むがごとくに見える。傍で見ていた師の飛衛も思わず「善し!」と言った。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
口に尾を
銜
(
ふく
)
みて、
箍
(
たが
)
状
(
なり
)
になり、
電
(
いなずま
)
ほど迅く追い走ると言ったが、全く
啌
(
うそ
)
で少しも毒なし、しかし今も黒人など、この蛇時に数百万広野に群がり、眼から火花を散らして躍り舞う
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
乾酪
(
チーズ
)
をあまり喜ばなかった。一口口に
銜
(
ふく
)
むと、ほろ苦い顔をして吐き出してしまった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
所帯道具がふえたじゃないかと笑った人があるが、たとえば僕が一羽の燕であるとすれば、僕にとって七輪や鍋は燕がその巣を造るために口に
銜
(
ふく
)
んでくる泥や
藁稭
(
わらしべ
)
の
類
(
たぐ
)
いに相当するであろう。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
往きは先づ無事、御評定所で御墨附を受取り、一應懷紙を
銜
(
ふく
)
んで改めた上、持參の文箱に移して御評定所を退き、
東雲
(
しのゝめ
)
に
跨
(
またが
)
つて、文箱を捧げ加減に、片手
手綱
(
たづな
)
でやつて來たのは牛込見附です。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
今にも
蛭
(
ひる
)
が
小島
(
こじま
)
の頼朝にても、
筑波
(
つくば
)
おろしに
旗揚
(
はたあ
)
げんには、源氏譜代の恩顧の士は言はずもあれ、
苟
(
いやしく
)
も志を當代に得ず、怨みを
平家
(
へいけ
)
に
銜
(
ふく
)
める者、響の如く應じて關八州は日ならず平家の
有
(
もの
)
に非ざらん。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
飛乘
(
とびの
)
る
瞬間
(
しゆんかん
)
に
見
(
み
)
た
顏
(
かほ
)
は、
喘
(
あへ
)
ぐ
口
(
くち
)
が
海鼠
(
なまこ
)
を
銜
(
ふく
)
んだやうであつた。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
武田兄弟は、走り帰ると、にわかに兵をまとめ、駒に
枚
(
ばい
)
を
銜
(
ふく
)
ませて、味方にも気づかれぬように、富士川の
真夜半
(
まよなか
)
を、粛々と岸に沿って上流へ移動しはじめた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
池上は、
怪訝
(
けげん
)
な顔をして盃を差出しましたが、わたくしに注がれた盃の縁を口に
銜
(
ふく
)
んで下に置くと
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
火の左右に身を
横
(
よこた
)
へたる二人は、
逞
(
たく
)
ましげに肥えたる農夫なるが、毛を表にしたる羊の
裘
(
かはごろも
)
を纏ひ、太き長靴を穿き、聖母の圖を
貼
(
つ
)
けたる尖帽を戴き、短き
烟管
(
きせる
)
を
銜
(
ふく
)
みて
對
(
むか
)
ひあへり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
唐五行志に、乾符六年越州山陰家に豕あり、室内に入って器用を
壌
(
やぶ
)
り、
椀缶
(
わんふ
)
を
銜
(
ふく
)
んで水次に置くと至極の怪奇らしく書き居るが、豕が
毎
(
つね
)
に人の所為を見てその真似をしたのであろう。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
娘の一人が口に
銜
(
ふく
)
んでいる
丹波酸漿
(
たんばほおずき
)
を
膨
(
ふく
)
らませて出して、泉の真中に投げた。
杯
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
父親は美しい息子が
紺飛白
(
こんがすり
)
の着物を着て盃を
銜
(
ふく
)
むのを見て陶然とする。
他所
(
よそ
)
の女にちやほやされるのを見て手柄を感ずる。息子は十六七になったときには、結局いい道楽者になっていた。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
本能寺の
濠
(
ほり
)
に迫るまでは、
枚
(
ばい
)
を
銜
(
ふく
)
んで、
喊声
(
かんせい
)
を発すな、旗竿も伏せてゆけ、馬も
嘶
(
いなな
)
かすな——と軍令されていたが、ひとたび木戸を突破して、町なかへ駈け入るや否、明智の部下はすでに
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見物がその芋を
竿
(
さお
)
の
尖
(
さき
)
に突き刺して檻の格子の前に出すと、猿の母と子との間に悲しい争奪が始まる。芋が来れば、母の乳房を
銜
(
ふく
)
んでいた子猿が、乳房を放して、珍らしい芋の方を取ろうとする。
牛鍋
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その間に亀その親族のある一亀を語らい当日川の
此方
(
こなた
)
に居らしめ自分は川の
彼方
(
かなた
)
に居り各々ラトマル花莟一つを口中に
銜
(
ふく
)
む事とした、さて約束の日になって獅川辺に来り亀よ汝は用意
調
(
ととの
)
うかと問うと
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
突き出された掌から逃げはしなかったが、「きゃっ!」と
銜
(
ふく
)
み声で叫んだ。
唇草
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
此
(
この
)
時
(
とき
)
僧
(
そう
)
は
鐵鉢
(
てつぱつ
)
の
水
(
みづ
)
を
口
(
くち
)
に
銜
(
ふく
)
んで、
突然
(
とつぜん
)
ふつと
閭
(
りよ
)
の
頭
(
あたま
)
に
吹
(
ふ
)
き
懸
(
か
)
けた。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
“銜(ハミ(馬具))”の解説
ハミ(馬銜、銜、en: bit)、または轡(くつわ)は、馬具の一種であり、馬の口に含ませる主に金属製の棒状の道具である。
(出典:Wikipedia)
銜
漢検1級
部首:⾦
14画
“銜”を含む語句
横銜
馬銜
銜煙管
引銜
相銜
兜銜山
官銜燈
頭銜