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足掻
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あが
ふりがな文庫
“
足掻
(
あが
)” の例文
むしろその毒血自体がのたうつてゐる
足掻
(
あが
)
きであり、見様によつては狡猾なカラクリであり、女はそれを意識してゐないであらうが
戦争と一人の女
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
奔馬
(
ほんば
)
は
中
(
ちゅう
)
を
駈
(
か
)
けて、見る見る腕車を乗っ越したり。御者はやがて馬の
足掻
(
あが
)
きを
緩
(
ゆる
)
め、渠に先を越させぬまでに徐々として進行しつ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は、奥歯をじっと噛んで、ますます殺気の
漲
(
みなぎ
)
る瞳で、門倉平馬の
睨
(
ね
)
め下ろす視線を、何のくそと、
弾
(
はじ
)
き返そうと
足掻
(
あが
)
くのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
林冲は
罵
(
ののし
)
りつづける。その
面罵
(
めんば
)
に、王倫はぶるぶる五体をふるわせ、地だんだを踏み鳴らしたが、
足掻
(
あが
)
きも、前へは踏み出せない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、頻りに泥をはねかす音と
足掻
(
あが
)
く音がすると共に、霧の中から一人の男の声が聞えて来た。「それあドーヴァー通いの馬車かい?」
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
▼ もっと見る
彼の眼は子供のように、純粋な感情を
湛
(
たた
)
えていた、若者は彼と眼を合わすと、
慌
(
あわ
)
ててその視線を避けながら、
故
(
ことさら
)
に馬の
足掻
(
あが
)
くのを叱って
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
馬のひづめの音と
足掻
(
あが
)
きの絵との加速度的なフラッシュ・バックにはやはりちょっとすぐにはまねのできない呼吸のうまみがあるようである。
音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
三千人と一ト口に言うが、大したものだ、要所要所に上飯台の連中を配置し、寸分も
足掻
(
あが
)
きを効かせまいと行届いた手配だ。
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
しかし、どこにも
怪我
(
けが
)
はなかった。すぐ起き上がって花房のほうを見ると、花房は
足掻
(
あが
)
きをして起き上がろうとしながら起き上がれずにいた。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
踠き
足掻
(
あが
)
いて夢から逃れたのだったが、今夜は、今夜も、駈け去りたい気が強いのだけれど、足が鉄のように砂にめりこんで、動かないのだった。
あの顔
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あんな
鰯
(
いわし
)
の干物のような奴が、どう
足掻
(
あが
)
いたって、洒落本はおろか、初午の茶番狂言ひとつ、書ける訳はありますまい。
曲亭馬琴
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
その大后
石
(
いは
)
の日賣の命、いたく
嫉妬
(
うはなりねた
)
みしたまひき。かれ天皇の使はせる
妾
(
みめ
)
たちは、宮の中をもえ
臨
(
のぞ
)
かず、言立てば、足も
足掻
(
あが
)
かに
一
妬みたまひき。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
さて、暫くそこに坐っていますと、ふいに頭の上で馬の鼻息と
足掻
(
あが
)
きの音が聞え、同時にヘールゼの教會の塔のすぐ上の空に長い火花が見えました。
ユダヤ人のブナの木:山深きヴェストファーレンの風俗画
(旧字新仮名)
/
ドロステ=ヒュルスホフアネッテ・フォン
(著)
其
(
そ
)
れが一
度
(
ど
)
で
斷念
(
だんねん
)
すれば
其
(
そ
)
れ
迄
(
まで
)
であるけれど、
二度
(
ふたたび
)
三度
(
みたび
)
戸口
(
とぐち
)
に
立
(
た
)
つて
足掻
(
あが
)
き
始
(
はじ
)
めれば、
去
(
さ
)
つては
來
(
きた
)
り、
去
(
さ
)
つては
來
(
きた
)
り
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「やっぱりああいう人が男だ! 俺なんかこうして患っているうちに馘だ。どう
足掻
(
あが
)
いたって仕方がない。こうして死ぬのを待ってるようなもんだ。」
母親
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
「僕は東京丈けだ。成行に委せる。
足掻
(
あが
)
いても駄目と見越がついたから、当分鮎でも釣って頭を休めようと思う」
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
馬に乗っているなら、試みにその気高い動物を波に向かって
騎
(
の
)
り入れ、おそろしさに
足掻
(
あが
)
くのを見るもよかろう。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
軽井沢の別荘から
沓掛
(
くつかけ
)
の別荘まで夏草を馬の
足掻
(
あが
)
きにふみしかせ、山の初秋の風に吹かれて、彼女が
颯爽
(
さっそう
)
と
鞭
(
むち
)
をふっていたとき、みな灰になってしまった。
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
大晦日の江戸の街は、一瞬転ごとに、幾百人かずつ最後の
足掻
(
あが
)
きの
坩堝
(
るつぼ
)
の中に、眼を覚さして行くのでしょう。
銭形平次捕物控:083 鉄砲汁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一五六九年における北方大名伯爵の反逆は、旧勢力がその運命を避けようための最後の大きな
足掻
(
あが
)
きだった。
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
しかし、藻掻けば藻掻くほど、
足掻
(
あが
)
けば足掻くほど、私の足は次第々々に深く泥の中に入つたのだつた。
病室より
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
天皇を兵庫の
御道筋
(
おみちすじ
)
まで御迎え申し上げたその時の有様を形にしたもので、
畏
(
おそ
)
れ多くも
鳳輦
(
ほうれん
)
の方に向い、
右手
(
めて
)
の
手綱
(
たづな
)
を
叩
(
たた
)
いて、勢い切った
駒
(
こま
)
の
足掻
(
あが
)
きを留めつつ
幕末維新懐古談:68 楠公銅像の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「すると、あの野郎に決まってる。旦那、わっしゃあ其奴に手を藉して、
泥濘
(
どろ
)
ん中にめり込んで
足掻
(
あが
)
きが取れねえでいるやつの自動車を持上げてやったんで——」
双面獣
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
苦悶
(
くもん
)
の一瞬
足掻
(
あが
)
いて硬直したらしい肢体は一種の
妖
(
あや
)
しいリズムを含んでいる。電線の乱れ落ちた線や、おびただしい破片で、虚無の中に
痙攣
(
けいれん
)
的の図案が感じられる。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
よく
神馬
(
じんめ
)
として神社に納めてある、あの馬である。木像のようでもあったが、人を乗せて、静かに
足掻
(
あが
)
いている。馬のあとには若者がついてゆく。従者なのであろう。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
思えば思うほどひとり壁立
万仭
(
ばんじん
)
の高さに
挺身
(
ていしん
)
して行こうとする娘の
健気
(
けなげ
)
な姿が空中でまぼろしと浮び、娘の
足掻
(
あが
)
く裳からはうら哀しい
雫
(
しずく
)
が翁の胸に
滴
(
したた
)
って翁を苦しめた。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
まだまだと云ってる
中
(
うち
)
にいつしか此世の
隙
(
ひま
)
が明いて、もうおさらばという時節が来る。其時になって幾ら
足掻
(
あが
)
いたって
藻掻
(
もが
)
いたって
追付
(
おッつ
)
かない。覚悟をするなら今の
中
(
うち
)
だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
腹這
(
はらば
)
いにさせて浮かしてやったり、シッカリ
棒杭
(
ぼうぐい
)
を
掴
(
つか
)
ませて置いて、その脚を持って
足掻
(
あが
)
き方を教えてやったり、わざと突然手をつッ放して苦い潮水を飲ましてやったり
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
何か一やま当てて、あの女の鼻を明かすような働きがしてみたいが、どうも
足掻
(
あが
)
きがつかない。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
……こんな事なら仲間に話し、遠巻きさせればよかったんだが、何が烏組と莫迦にしたので、とうとうこんな
破目
(
はめ
)
に落ち込んでしまった! どうにも
足掻
(
あが
)
きがつかないねえ。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そうだとも、実際はどれだけあるか分らないんだけれど、岸の浅いところだって泥沼のようになって落ちこむと、
足掻
(
あが
)
きもできないそうだよ。ずいぶん怖いところでしょう。」
不思議な国の話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
若者に教えられて、御陣屋目ざしながら出かけようとしたとき、いかさま容子探りに行ったのが事実であるらしく、
足掻
(
あが
)
きを早めながら駈け戻って来たのは先刻のあの二人です。
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「親方を知っているのは吉公たった一人だよ。その大切な奴を
殺
(
ばら
)
しちゃったんだから、お気の毒だが、もう分らねえよ。旦那方がいくら
足掻
(
あが
)
いたって金輪際知れっこありゃしねえ」
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「冬の仕度はなんにも出來てやしないのに、弱つちまふよ。……おたまさんなぞ、手まはしがいゝから、慌てることはないだらうけれど、こちとらは、これから
足掻
(
あが
)
き廻るだけよ。」
玉の輿
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
浮世
(
うきよ
)
の
欲
(
よく
)
を
金
(
かね
)
に
集
(
あつ
)
めて、十五
年
(
ねん
)
がほどの
足掻
(
あが
)
きかたとては、
人
(
ひと
)
には
赤鬼
(
あかをに
)
と
仇名
(
あだな
)
を
負
(
おほ
)
せられて、五十に
足
(
た
)
らぬ
生涯
(
しようがい
)
のほどを
死灰
(
しくわい
)
のやうに
終
(
おは
)
りたる、それが
餘波
(
なごり
)
の
幾万金
(
いくまんきん
)
、
今
(
いま
)
の
玉村恭助
(
たまむらけうすけ
)
ぬしは
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
どちらにしても、当分
足掻
(
あが
)
きがつかないということだけは確かめられた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
其処らを
足掻
(
あが
)
き廻っている中に、雑木が次第に殖えて、恐ろしく背の高い偃松が姿を
顕
(
あら
)
わしたと思ったら、うまく切明けに出た、長次郎が休んでいる、南日君と実君はずっと右寄りの藪の中から
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「
足掻
(
あが
)
きやがるな、
経師屋
(
きょうじや
)
」
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
何処ぞへ行って、おらあ
生命
(
いのち
)
がけで、日本一の刀鍛冶に成って見せなけれやアならねえ。——身の出世に、あくせく
足掻
(
あが
)
くわけじゃあねえよ。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一向
足掻
(
あが
)
かないのでも分る。見込のないのは自分だ。家の財産は山に飼ってある馬ばかりだと聞かされている。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と、その椀を、うしろから投げつけたのが、
空
(
くう
)
を
足掻
(
あが
)
く馬の
踵
(
かかと
)
に当ると、生ぬるい水がざぶりとかかった。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
地獄の騒音の底で古沼の沈澱を探りたいなどと
勿体
(
もったい
)
ぶった言い草もくだらない独りよがりで、
見掛倒
(
みかけだお
)
しの痴川は始終古沼の底で
足掻
(
あが
)
きのとれない憂鬱を
舐
(
な
)
めていた。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
それを知って父は急に
足掻
(
あが
)
き出し、奪還策として、山林田畑を売り払っていろいろの事業に手をつけ、失敗に失敗を重ね、
却
(
かえ
)
って加速度を与えるの結果となったのであった。
簡略自伝
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
彼等は、頭をうなだれ尾を震わせながら、折々は、四肢の
附根
(
つけね
)
のところで潰れはしないかと思われるくらいに、
足掻
(
あが
)
いたり
躓
(
つまず
)
いたりして、どろどろの泥の中を進んで行った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
扱い方にコツがあると見えて、猫は啼きもせず
足掻
(
あが
)
きもせず、皮の外れから顔を出し、金色の眼で武士を眺め、緋の編紐の巻いてある咽喉を、ゴロゴロ鳴らして静もっていた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あれ程までに
足掻
(
あが
)
きつ
踠
(
もが
)
きつして穿鑿しても解らなかった
所謂
(
いわゆる
)
冷淡中の一
物
(
ぶつ
)
を、今訳もなく造作もなくツイチョット突留めたらしい心持がして、文三覚えず身の毛が
弥立
(
よだ
)
ッた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
薄陽
(
うすび
)
と河風を顔の
正面
(
まとも
)
にうけて源三郎は、駒の
足掻
(
あが
)
きを早めた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
揷
(
さ
)
し
込
(
こ
)
んでは
足掻
(
あが
)
いて/\さうして
他
(
ほか
)
へ
行
(
い
)
つて
畢
(
しま
)
ふ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
青い一匹の
蝗
(
いなご
)
が止つて
足掻
(
あが
)
いてゐた。
忘春詩集:02 忘春詩集
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
停
(
とどま
)
り
足掻
(
あが
)
く旅の馬、土蹴る音は
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
足
常用漢字
小1
部首:⾜
7画
掻
漢検準1級
部首:⼿
11画
“足”で始まる語句
足
足袋
足許
足下
足音
足駄
足利
足蹴
足跡
足痕