ゆづ)” の例文
新字:
わが生ける間は我しきりに人をしのがんことをねがひ、心これにのみむかへるが故に、げにかくゆづるあたはざりしなるべし 八五—八七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ゆづりしとぞこゝに又丁山と小夜衣の兩人はほどなく曲輪くるわを出てたり姉の丁山二世と言替いひかはせし遠山とほやまかん十郎と云し人も病死なせしかば其跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一つの美味あれば、一家擧げて共にし、衣服をつくるにも、必ず善きものは年長者にゆづり、自分勝手じぶんがつてかまへず、互に誠を盡すべし。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
みぎ車麩くるまぶのあるのをつけて、おかみさんと馴染なじみだから、家内かないたのんで、ひとかゞり無理むりゆづつてもらつたので——少々せう/\おかゝをおごつてた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうして、私は、あの所有物全部を彼女にゆづり渡す前に彼女がこの世に生れて來るのを確める爲めに待つてゐるのだ。
「言ひましたよ、あつしの煙草入れの根附ねつけを見て、そいつは氣に入つたから、脇差と一緒にゆづつてくれ——一つて」
歐洲婦人に比して一歩をゆづるも、彫刻のお手本としては(近時モデルと呼ぶ言葉は一種の擯斥ひんせきする樣に聞えますので、私は敢てお手本と呼ぶ事にして居ります)
裸体美に就て (旧字旧仮名) / 小倉右一郎(著)
しかるに第二だいに方面ほうめんおいては、歐洲おうしゆうとくにドイツへん優秀ゆうしゆう學者がくしやおほあらはれ、近年きんねんわがくに此點このてんについてかれ一歩いつぽゆづつてゐたかのかんがあつたが、大正十二年たいしようじゆうにねん關東大地震かんとうだいぢしん以來いらい
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
(二三)其傳そのでんいはく、伯夷はくい叔齊しゆくせい(二四)孤竹君こちくくんの二なりちち叔齊しゆくせいてんとほつす。ちちしゆつするにおよんで、叔齊しゆくせい伯夷はくいゆづる。伯夷はくいいはく、『ちちめいなり』と。つひのがる。
同時どうじに、さうわけなら、自分じぶんぢか宗助そうすけから相當さうたうゆづつてもらへばかつたに、しいことをしたとつた。最後さいご横町よこちやう道具屋だうぐやをひどくのゝしつて、しからんやつだとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すこおもいけれど、かうしてあるけば途中とちう威張ゐばれて安全あんぜんだといふので、下男げなんいさつてあるした。るほどあふひもんと『多田院御用ただのゐんごよう』の木札きふだは、人々ひと/″\皆々みな/\みちゆづらせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
やゝにあまるやうなのをゆづけることが出來た。
ば高弟にゆづり長兵衞長八兩人十四五日逗留の中に半四郎は支度を調とゝのへ長兵衞長八を連れて江戸屋清兵衞にわかれをつぐるに清兵衞も萬端世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
着てゐる浴衣は、別れた母親ゆづりの品らしく、二三十年前江戸で流行はやつた、洗ひざらしの大時代物、赤い帶もしんがはみ出して、つくろひ切れぬ淺ましい品だつたのです。
たゞ坦懷たんくわいなる宙外君ちうぐわいくんは、此盆このぼんゆづりうけて、のままに彫刻てうこくさせて掛額かけがくにしたのであつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしそれは世の中のすべての習慣にさからふものです。その上、全財産はあなたの權利です。僕の伯父はそれを自らひたひに汗して得たのです。それを誰にゆづらうかは彼の自由です。
(二)がく載籍さいせききはめてひろけれども、しん六蓺りくげいかんがふ。(三)詩書ししよ(四)けたりといへども、しかれども(五)虞夏ぐかぶんなりげうまさくらゐ(六)のがれんとするや、虞舜ぐしゆんゆづる。
ゆづり給はるべし手始めの功とも致したく明朝あすとも云ず今宵の中に結果かたづけ申すべしと云ふに大膳のいふ樣貴殿が手始めの功にしたしと有るからは仕事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「勘當を許せば、お粂は矢張り俵屋の總領娘で、何んにも言ふことはありません、改めて親の私の眼鏡めがねに叶ふむこを貰ひ、お粂夫婦に跡をゆづるのが順當のことでございます」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
一寸ちよつと話題わだいにはらうとおもふ、武生たけふから道程みちのりじつ二十七里にじふしちりである。——深川ふかがはくるま永代えいたいさないのを見得みえにする……とつたもので、上澄うはずみのいゝところつてかすゆづる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
げう天下てんか許由きよいうゆづりしが、許由きよいうけず、これぢてかくる。
「さう言へば今日、さかひの商人の和泉屋の皆治みなぢといふ人が來る筈で、あの歡喜天をどうしても、千兩でゆづれといふのです。千兩でいけなければ、千二百兩まで出さうと言ふのですが」
したがつて、ころ巷談こうだんには、車夫くるまや色男いろをとこ澤山たくさんあつた。一寸ちよつと岡惚をかぼれをされることは、やがて田舍ゐなかまはりの賣藥行商ばいやくぎやうしやうのち自動車じどうしや運轉手うんてんしゆゆづらない。立志りつし美談びだん車夫しやふなんとかがざらにあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「御當主石見樣は、先代の御遺言ゆゐごん通りに遊ばせば、三年も前に二十歳はたちになられたをひの釆女樣に御家督かとくゆづらなければなりません。私は七日がかりでこれだけの事を調べて參りました」
私が一代に溜めた身代だが、娘が死んではゆづもなく、後へ遺す張合もない
「そんな事で田屋三郎兵衞は浪人し、私も家を弟にゆづつて、三つになつたばかりの伜勇三郎を背負ひ、何處ともなく旅に出ました。田屋三郎兵衞に出逢ひ次第、せめて一と太刀なりとも怨まうと」
八五郎は後ろから跟いて來た平次に場所をゆづりました。
平次はなか/\ゆづりさうもありません。