)” の例文
試合の催しがあると、シミニアンの太守が二十四頭の白牛を駆ってらちの内を奇麗に地ならしする。ならした後へ三万枚の黄金をく。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
相接する機会が多く、じっさい、何だかんだとしじゅう一しょに噂の種をいて世間の脚下灯きゃっかとうに立っているんだから、むを得ない。
新しい妻を讃美さんびしながら、日本中で、一番得意な人間として、後から後からと続いて来る客に、平素いつもに似ない愛嬌あいきょうを振りいていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
怪我をした時に赤土を押し当てて血を止める事。渋柿を吊して露柿ほしがきを造る事。胡栗くるみを石で割って喰べる事。種子たねいて真瓜うりを造る事。
猿小僧 (新字新仮名) / 夢野久作萠円山人(著)
それは百姓が彼岸になるといろいろの種をきますその準備のために畑を打ち返すのであります。俳句ではそれを畑打と申します。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
善根をためにつかふといふのか、これはしたり、それはまた大したこつたな、さうともそれなら、うつちやるもんぢやないとも。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
ひるがへつて考へて見なければならない余地はないか否か。かれ等は少くとも犬死ではなかつた。すぐれたいたには相違なかつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
まして、軽がるしく人の名をあげ、臆測に類することをお口に出されることこそ、却って御家の内に不穏の種をくことになります
その時彼らは彼ら自らではなし得ない異常な仕事をなし遂げるであろう。種く者は彼らであるとも、刈り入れる者は民衆である。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
瞿麦なでしこの花をえると天人が降りるということを聞いて、庭にその種子をいて見ると、果して天人が降りて来て水に浴して遊んだ。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
幾つ思い出の数にのぼりましょう、第二の故郷である安房の国へ帰ることは、第二の煩悩の種子をきに行くようなものでございます。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かれ前年ぜんねんさむさがきふおそうたときたねわづか二日ふつか相違さうゐおくれたむぎ意外いぐわい收穫しうくわく減少げんせうしたにが經驗けいけんわすることが出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
レタスなどつくってみれば、何でもないもので、デパートから買ってきた種をき、油かすを入れておけば、結構立派なレタスが出来た。
サラダの謎 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
それでどうしたかというと、川辺の誰も知らないところへ行きまして、菜種なたねいた。一ヵ年かかって菜種を五、六升も取った。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
私の四畳半に置く机の抽斗ひきだしの中には、太郎から来た手紙やはがきがしまってある。その中には、もう麦をいたとしたのもある。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
重い作切鍬よりも軽いハイカラなワーレンホーで無造作にうねを作って、原肥無し季節御構いなしの人蔘にんじん二十日大根はつかだいこんなどくのを
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あゝこれらのいとも富めるはこに——こは下界にて種をくにふさはしき地なりき——收めし物の豐かなることいかばかりぞや 一三〇—一三二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そしてまた、こゝにも、あらゆるまどはしの麦は芽を噴いてゐる。しやうこりもなく、情緒に誘はれるアダム……。神は無数に種子をいた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
夏の頃、彼は窓の下にへちまの種をいて、痩土やせつちに生長して行く植物の姿を、つくづくと、まるでかれたように眺めていた。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
かないで呉れると、もっと働けて、そんなお金がたまるかもしれない。これ御覧、お父様の頭なんざ、こんなに毛が薄くなった
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すっかり涙で洗われた顔は、新鮮なすもものように紅くなって、十九娘のむせ返るような魅力が何んとも言いようの無い匂いをき散らします。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
女中たちなどにも満遍なく愛嬌あいきょうを振りき、今に御寮人ごりょうんさんにお願いしてお春どんをお嫁に貰うのだなどと冗談を云っていた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一度は紅き薔薇の花、二度は月夜の罌粟畑、三度は今や桂の冠! (間)紅き薔薇ではものを思わせ、憂いと恋を心にいた。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うなわれた畑には化学肥料がほどこされた。それからその次ぎには種子たねかれた。先生が自分の畑でして見せるように生徒達はそれを真似まねた。
人間から出る肥料のお陰で、支那の土地は今日なおアブラハム時代のように若々しい。支那では小麦が、種を一粒けば百二十粒得らるる。
尊氏はまだ六波羅のころから、筑紫の少弐しょうにや大友の族党へはいちばい恩義をかけていた。そのほか、いておいた胚子たねも多い。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこらの畑では燕麦えんばくもライ麦ももう芽をだしていましたし、これから何かくとこらしくあたらしく掘り起こされているところもありました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
十五人の男の歩く足音は、穹窿きゅうりゅうになっている廊下に反響を呼び起して、丁度大きな鉛の弾丸か何かをき散らすようである。
箔にも種類があって、一つの製品を金にするにも金箔を使うのと、同じ金であっても、金粉をいて金にするのと二色ふたいろある。
くものは、らざるべからず。今や徳川幕府も、二百年来の悪因果たる鎖国のがき経験をめねばならぬ時とはなれり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
プロレタリア文学雑誌「種く人」の同人で二十五歳、病弱な為めW大学中途退学の青年だが病身で小柄でも声が妙にかん高で元気に話す男だ。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
人の生ずるは草木の萌生ほうせいするがごとし。その死するは枯るるがごとし。また、その子あるは種実をきて生ずるがごとし。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
花がすむと堅き粒状の小実を宿存蕚の中心に結び平滑で遂に真珠色を呈するに至るが、採ってこれをけばよく生える。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
関西にては稲を刈りたる後の田は水を乾して畑となし麦などをくならひなれば春になりても打ち返すべき田なきなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
今日は天気もよくなりましたし、ひとつ、婆さんと一緒に不尽山を眺めながら、瓜の種をいてやろうと思っています。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
田面たづらの氷もようやくけて、彼岸の種きも始まって、背戸せどの桃もそろそろ笑い出した頃になると、次郎左衛門はそわそわして落ち着かなくなった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
南瓜かぼちや甜瓜まくはうりと、おなじはたけにそだちました。種子たねかれるのも一しよでした。それでゐてたいへんなかわるかつたのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
き散らしてあったお金をそのままにして置いて、檀那衆がおにげなさると、お辰さんはそれを持っておかえりなさいました
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それかといって余りあちこち見に歩くのも疑いを受ける種をくようなものですから、殊更ことさらに司令長官に願いを出して
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼女の心に悲哀の種をいたことを、心苦しく思いながら、私は彼女を愛して書物など送ってやったりしています。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
すると、三日もすれば、豚どもは食物を探して、隅から隅まで掘り返すし、それに、豚の糞が肥料になるので、あとはもう種をけばいゝばかりです。
美しい青田の山城やましろ平野、それに続く摂津せっつ平野の向うに、くっきり播但ばんたんの山脈が見えるようになると、野原にき散らされた家の数がだんだん多くなる。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
みんな泥まみれになり、ヴェランダは愛蘭土アイルランド泥炭沼の如し。ココアは始めココア樹の葉で編んだかごく。十人の土人が裏の森の小舎で此の籠を編む。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
が、ふだんの彼なら、藤左衛門や忠左衛門と共に、笑ってすませる筈のこの事実が、その時の満足しきった彼の心には、ふと不快な種をく事になった。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
身をもむような精神の苦しみの中でさえ季節を忘れずにいた閑子のえんどうは、閑子の性格をそのまま、きちんとした間隔でみどりの葉を出している。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
かれらは冬のライ麦をきにきたのか、それともアイスランドから近年持ち込まれた他の種類の穀物を蒔きにきたのか、わたしには見当がつかなかった。
この句はそういう虫の声さえなくなった冬枯の野で、百姓が折角いた麦を烏が掘りに来る、という意味らしい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
十世紀にできた宇治うじ鳳凰堂ほうおうどうには今もなお昔の壁画彫刻の遺物はもとより、丹精たんせいをこらした天蓋てんがい、金をき鏡や真珠をちりばめた廟蓋びょうがいを見ることができる。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
買ってもらって、人通ひとどおりの少い方へきますと、山門の上から見下していた鳩が、一度にぱっと羽音を立てて下りて来て、人に踏まれそうな処まで集ります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
多くの人の見る前で、砂を盛つた植木鉢へコスモスの種子たねなどをいて、じつと祈祷きたうこらす。すると種子たねはじけて芽はぐん/\砂を持上げて頭を出して来る。