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荊棘
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いばら
ふりがな文庫
“
荊棘
(
いばら
)” の例文
この小説家のために一歩の発展を
促
(
うなが
)
されて、開化の進路にあたる
一叢
(
ひとむら
)
の
荊棘
(
いばら
)
を切り開いて貰ったと云わねばならんだろうと思います。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この時われ手を少しく前にのべてとある大いなる
荊棘
(
いばら
)
より一の小枝を採りたるに、その幹叫びて何ぞ我を折るやといふ 三一—三三
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
今はどうか知らぬが、昔は中国のある地方では、それが
荊棘
(
いばら
)
のように
繁
(
しげ
)
っていて、原住民はこれを
伐採
(
ばっさい
)
し燃料にしたと書物に書いてある。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
和歌子は親しみの少ない
継母
(
はは
)
と義理の妹達とが、彼女の失敗を牙を磨いて待っている恐ろしい
荊棘
(
いばら
)
の床に帰らねばならなかった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
さらば
爾
(
なんじ
)
は神を見ざりしか? 神は十字の木の上に居たまいぬ、足をたれ手を
釘
(
つ
)
けられ、白き
荊棘
(
いばら
)
の小さき冠を頭にかぶりて居たまいぬ。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
「
爾
(
なんじ
)
我言に背いて禁菓を食ひたれば、土は爾の為に
咀
(
のろ
)
はる。土は爾の為に
荊棘
(
いばら
)
と
薊
(
あざみ
)
を生ずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンを
食
(
くら
)
はん」
草とり
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
木立わづかに
間
(
ひま
)
ある方の明るさをたよりて、
御陵
(
みさゝぎ
)
尋ねまゐらする心のせわしく、
荊棘
(
いばら
)
を厭はでかつ進むに、そも/\これをば
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
節くれだつた木の杖で
荊棘
(
いばら
)
のしげみを押し分けると、二人の面前には、昔噺にあるとほりの
*
鶏の脚で立つた小舎が現はれた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:04 イワン・クパーラの前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
人生の、ひとつの、より輝かしい
時期
(
じき
)
が、私にはじまつたと思つた——花や
歡
(
よろこ
)
びと共に、
荊棘
(
いばら
)
や辛勞をも受けるであらう時期。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「
爾
(
なんじ
)
我言に背いて
禁菓
(
きんか
)
を
食
(
く
)
いたれば、土は爾の為に
咀
(
のろ
)
わる。土は爾の為に
荊棘
(
いばら
)
と
薊
(
あざみ
)
を
生
(
しょう
)
ずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンを
食
(
くら
)
わん」
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そうして小坊主を対手にしていると朝になって通りかかった者に注意せられ、気が
注
(
つ
)
いてみると
己
(
じぶん
)
は
荊棘
(
いばら
)
と相撲をとって血みどろになっている。
鷲
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかしその華やかにして遠慮がちな新婚生活は、一心同体となって勇ましくも
荊棘
(
いばら
)
多き人生行路を突き進まんには、余りに
果
(
はか
)
なき生活であります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼が友の安楽房とわかれて取った道も、元より
荊棘
(
いばら
)
でないはずはない。いや、住蓮のほうは、もっと
酷
(
ひど
)
かった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、わたしが垣を越えようとするたびごとにとんで来て、
荊棘
(
いばら
)
や、
棘
(
とげ
)
のついた針金を掻きわけてくれる。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
ロミオ なに、
戀
(
こひ
)
を
温柔
(
やさ
)
しい?
温柔
(
やさ
)
しいどころか、
粗暴
(
がさつ
)
な
殘忍
(
あらけな
)
い
者
(
もの
)
ぢゃ。
荊棘
(
いばら
)
のやうに
人
(
ひと
)
の
心
(
むね
)
を
刺
(
さ
)
すわい。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
栄光の王は神の右に坐するありて、ソクラット、
保羅
(
パウロ
)
、コロンウェルの
輩
(
はい
)
数知れぬほど
御位
(
みくらい
)
の周囲に坐するあり、
荊棘
(
いばら
)
の
冠
(
かんむり
)
を頂きながら十字に登りし
耶蘇基督
(
いえすきりすと
)
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
それで彼らは一刻も早く奥地地帯へ踏み込もうと土人軍どもを鞭韃した。しかしどのように鞭韃しても
荊棘
(
いばら
)
に蔽われた険阻の道をそう早く歩くことは出来なかった。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
尤もソクラテスは
跣足
(
はだし
)
で
雅典
(
アゼンス
)
の
市
(
まち
)
を説教し歩いたやうだが、
家
(
うち
)
に
荊棘
(
いばら
)
のやうな
女房
(
かない
)
を持つてゐた身には、雅典の街は羽蒲団のやうに踏み心地がよかつたに相違ない。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
朝又
餅
(
もち
)
を
炙
(
あぶ
)
りて食し、
荊棘
(
いばら
)
を
開
(
ひら
)
きて山背を
登
(
のぼ
)
る、昨日来
餅
(
もち
)
のみを
喫
(
きつ
)
し未だ一滴の水だも
得
(
え
)
ざるを以て、一行
渇
(
かつ
)
する事実に
甚
(
はなはだ
)
し、梅干を
含
(
ふく
)
むと雖も
唾液
(
つば
)
遂
(
つゐ
)
に出で
来
(
きた
)
らず
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
荒地の中には、まばらな小松や灌木の間に、低い
荊棘
(
いばら
)
や茅草が茂っていて、小さな花がぽつりと咲いていたりする。その片隅で、平助は鍬の柄を杖に腰を伸して立上った。
土地
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
が、クリストが
十字架
(
くるす
)
にかけられた時に、彼を
窘
(
くるし
)
めたものは、独りこの猶太人ばかりではない。あるものは、彼に
荊棘
(
いばら
)
の
冠
(
かんむり
)
を
頂
(
いただ
)
かせた。あるものは、彼に紫の
衣
(
ころも
)
を
纏
(
まと
)
わせた。
さまよえる猶太人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
荊棘
(
いばら
)
はいよいよ深くてとても行かれる所でない。酒の罎も岩へ打つゝけたらそれ迄である。木苺を採つて食つた。黄色い玉のふわふわとして落ち相になつたのは非常に甘い。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
針の蓆に座っているより、
荊棘
(
いばら
)
の道を勇敢に掻き分けて進みます。養父に云わせると私の父は気狂いだったそうですから、私も今に気狂いになって何を仕出かすか分りません。
深夜の客
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
頬
(
ほお
)
も
削
(
こ
)
けて
夜業
(
よなべ
)
仕事に健康も
優
(
すぐ
)
れず
荊棘
(
いばら
)
の行く手を前に望んで、何となし気が重かった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
舊
(
ふる
)
い街道は是れは街道ではない、廢道になつてしまつて居るのである、
荊棘
(
いばら
)
が一杯生えて居つて、それを古學者連が刈除いて道にしようと思つたけれども、人民は從つて行かない。
仮名遣意見
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
美しい女優たちは、自分たちの前にたって
荊棘
(
いばら
)
の道を死ぬまで切りひらいた
女
(
ひと
)
の足
許
(
もと
)
に
平伏
(
ひれふ
)
して、感謝の涙に死体の
裳裾
(
もすそ
)
をぬらし、額に接吻し、
捧
(
ささ
)
ぐる花に彼女を
埋
(
うず
)
めつくすであろう。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
黒髪は乱れて
頸
(
えり
)
に
縺
(
もつ
)
れ頬に
懸
(
かか
)
り、ふッくりした頬も
肉
(
しし
)
落ちて、
裾
(
すそ
)
も
袂
(
たもと
)
もところどころ破れ裂けて、岩に
縋
(
すが
)
り草を
蹈
(
ふ
)
み、
荊棘
(
いばら
)
の中を
潜
(
くぐ
)
り潜った様子であるが、手を負うた少年の
腕
(
かいな
)
に
縋
(
すが
)
って
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
病弱な室長の寝小便の罪を自分で着て、
蒲団
(
ふとん
)
を人の目につかない柵にかけて乾かしてもやつた。
斯
(
か
)
うしてたうとう
荊棘
(
いばら
)
の道を踏み分け他を
凌駕
(
りようが
)
して私は偏屈な室長と無二の仲好しになつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
荊棘
(
いばら
)
の中に身をころがして、
悶
(
もだ
)
えなやんだ聖者フランシスが、その悔悟の結果が、人類にどういう影響を及ぼすだろうかと考えていたかなどと想像するようなものは、人の心の正しい尊さを
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私は後へ引返して、逆に最初の道へ
戻
(
もど
)
ろうとした。そして一層地理を失い、多岐に別れた迷路の中へ、ぬきさしならず入ってしまった。山は次第に深くなり、小径は
荊棘
(
いばら
)
の中に消えてしまった。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
愛の
荊棘
(
いばら
)
よ、
末期
(
まつご
)
の苦の時、この罪ある心の
中
(
なか
)
にその針を突き通し給へ。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
昂奮
(
こうふん
)
しないでお
聽
(
き
)
きなさいツ。ではこれから
自分達
(
じぶんたち
)
の
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
が、どんなに
嶮
(
けは
)
しい、
文字
(
もじ
)
通
(
どほ
)
りの
荊棘
(
いばら
)
の
道
(
みち
)
だつてことが、
生々
(
なま/\
)
しい
現實
(
げんじつ
)
として、お
孃
(
ぢやう
)
さん、ほんとにあなたにわかつてゐるんですか……
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
牛は四、五十頭もいるであろうと思われたが、人も家も少しも見えぬのである。それからまた暫く歩いていると、路傍の
荊棘
(
いばら
)
の中でがさがさという音がしたので、余は驚いた。見ると牛であった。
くだもの
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
そこここの血の
荊棘
(
いばら
)
あなやその
暗
(
くら
)
き底より
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
『おもひ』は
經
(
へ
)
つや
荊棘
(
いばら
)
の
路
(
みち
)
を、今し
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
覚醒
(
かくせい
)
に
憤
(
いきどお
)
る不眠症の
荊棘
(
いばら
)
。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
我等これをこゝに曳き來らむ、かくて我等の
體
(
からだ
)
はこの憂き林、いづれも己を虐げし魂の
荊棘
(
いばら
)
の上に懸けらるべし 一〇六—一〇八
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
樹木は
荊棘
(
いばら
)
の方へ身をかがめ、荊棘は樹木の方へ伸び上がり、
灌木
(
かんぼく
)
はよじ上り、枝はたわみ、地上をはうものは空中にひろがるものを見いださんとし
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
青い鳥は巌の一方へ廻ってやはり尖を伝って往ったが、巌が次第に低くなって
四辺
(
あたり
)
に
荊棘
(
いばら
)
の茂った処へ往くと見えなくなった。李張はその
辺
(
あたり
)
へ注意した。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
監獄のように廻らした木柵の代りに
荊棘
(
いばら
)
が自然に垣根をなしていた。門の扉ははずれたままで、門側には伸び放題に伸びたポプラが微風にそよいでいた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
二人は手に手をとつて、じめじめした沼地をば、深々と生ひはびこつた
荊棘
(
いばら
)
にひつ掻かれたり、殆んど一足ごとにつまづいたりしながら、前へ前へと進んで行つた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:04 イワン・クパーラの前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「まことに、これは
朕
(
ちん
)
がいま住む所にふさわしい。見よ、四方は
荊棘
(
いばら
)
のみだ。荊棘の獄よ」
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一方は生れながら暗い運命を背負って、
荊棘
(
いばら
)
の道を辿らねばならぬ貧しい私生児。
美人鷹匠
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
荊棘
(
いばら
)
か
山椒
(
さんせう
)
の樹のやうなもので
引爬
(
ひつか
)
いたのであらう、雨にぬれた頬から血が出て、それが散つて居る、そこへ蝋燭の光の映つたさまは甚だ不気味だつた。漸く其処へ歩み寄つた晩成先生は
観画談
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
肩には、紫の衣がかかっている。
額
(
ひたい
)
には
荊棘
(
いばら
)
の
冠
(
かんむり
)
がのっている。そうしてまた、手や足には、
鞭
(
むち
)
の
痕
(
あと
)
や切り
創
(
きず
)
が、
薔薇
(
ばら
)
の花のように赤く残っている。が、
眼
(
め
)
だけは、ふだんと少しも変りがない。
さまよえる猶太人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
感謝祭に来た時には
荊棘
(
いばら
)
の迷路であった十坪ほどの地面が今は
隙間
(
すきま
)
もなく花に埋まって、夏の日の光の中でいちばん麗しい光がそれを押し包んでいた。私は自分の醜さを恥じながらその側を通った。
フランセスの顔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
御主
(
おんあるじ
)
の
冠
(
かんむり
)
となつた
荊棘
(
いばら
)
の木よ、
血塗
(
ちまみれ
)
の王の
額
(
ひたひ
)
に
嵌
(
は
)
めた
見窄
(
みすぼ
)
らしい冠。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
からたちの
荊棘
(
いばら
)
がもとにぬぎ掛くる蛇の衣にありといはなくに
長塚節歌集:1 上
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
真素肌
(
ますはだ
)
の
悲哀
(
かなしみ
)
よ血の
香
(
か
)
する
荊棘
(
いばら
)
のなかを
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
回憶
(
おもひで
)
しげき
荊棘
(
いばら
)
の
途
(
みち
)
に
下
(
くだ
)
り
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
荊
漢検準1級
部首:⾋
9画
棘
漢検1級
部首:⽊
12画
“荊棘”で始まる語句
荊棘何無情
荊棘中
荊棘路
荊棘何妬情