きも)” の例文
新字:
が、ガラツ八の大音聲にきもを潰した上、近所のざわめき始めたのに氣おくれがしたらしく、縁側の戸を開けて、パツと外の闇へ——。
我は崇拜の念止み難き故をもて、きも太くもまたこの群に加りぬ。唱歌といふものをば止めてより早や年ひさしくなりたるにも拘らで。
かれら少しくその激しき怒りをおさへ、いひけるは、汝ひとり來り、かくきもふとくもこの王土に入りたる者を去らせよ 八八—九〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
たゞ大地震直後だいぢしんちよくごはそれがすこぶ頻々ひんぴんおこり、しかも間々まゝきもひやほどのものもるから、氣味惡きみわるくないとはいひにくいことであるけれども。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
折くべ居る時しも此方の納戸なんど共覺しき所にて何者やらん夥多おびたゞしく身悶みもだえして苦しむ音の聞ゆるにぞ友次郎はきもつぶし何事成んと耳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
水門の上を蒼白い月がのぼり、栴檀の葉につやつやと露がたまればきものわななきもはたと靜止して足もとにはちんちろりんが鳴きはじめる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
『おつ魂消たまぎえた/\、あぶなく生命いのちぼうところだつた。』と流石さすが武村兵曹たけむらへいそうきもをつぶして、くつ片足かたあしでゝたが、あし幸福さひはひにも御無事ごぶじであつた。
そろひの浴衣ゆかたはでものこと、銘々めい/\申合まをしあわせて生意氣なまいきのありたけ、かばきももつぶれぬべし、横町組よこてうぐみみづからゆるしたる亂暴らんぼう子供大將こどもたいしやうかしらちやうとてとしも十六
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
地極煉獄天國の三界をまたにかけたダンテ・アリギエリでさへ、聞いては流石にきもを冷した『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ』といふ奈落の底の聲ではないか。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
苦ますること幾許いくばくか知れず惡事も此念より芽をいだし壽命も是より縮まるなり此の江戸風が地方に流れ込むは昨年の洪水より怖しきものと思ひ玉へと云へばきもの潰れた顏を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
もとよりの異僧道衍は、死生禍福のちまたに惑うが如き未達みだつの者にはあらず、きもに毛もいたるべき不敵の逸物いちもつなれば、さきに燕王を勧めて事を起さしめんとしける時、燕王、彼は天子なり
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それでなければジッと繩を巻かれていられるものではあるまいなどと、かつて浩が語ったときには、未練だとか、きもが小さいとか、嘲笑あざわらったけれども、このごろはそうでもあろうという気がして来た。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これで私も重荷をおろして歸りますが——困つたことに、來る時は夢中で飛出しましたが、私は根がきもの太い方ぢやございません。
庇間合ひあはひ捨置すておき早足はやあし逃出にげいだし手拭ひにて深く頬冠ほゝかむりをなしきもふとくも坂本通りを逃行くをりから向うより町方の定廻り同心手先三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼は死にしより以來このかたかくのごとく歩みたり、また歩みてやすらふことなし、凡て世にきものあまりにふとき者かゝる金錢かねを納めてあがなひしろとす。 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
げに埃及エヂプトの尖塔にも劣らぬ高さなり。かしこにぢしむるにはきもだましひ世の常ならぬ役夫を選むことにて、あらかじめ法皇の手より膏油の禮を受くと聞けり。姫。
往昔むかしから世界せかいだい一の難所なんしよ航海者かうかいしやきもさむからしめた、紅海こうかいめい死海しかいばれたる荒海あらうみ血汐ちしほごと波濤なみうへはしつて、右舷うげん左舷さげんよりながむる海上かいじやうには、此邊このへん空氣くうき不思議ふしぎなる作用さようにて
何處どこはじまつた廓内なか鳥居前とりゐまへか、おまつりのときとはちがふぜ、不意ふいでさへくはけはしない、れが承知しようち先棒さきぼうらあ、しようさんきもたまをしつかりしてかゝりねへ、ときそひかゝるに、ゑゝはややつ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
恐れに、きもへし消え
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「その上、花嫁の膝の上へ、行儀よくさやを置いて來るなんざ、磯の安松がどんなにきものすわつた野郎でも、容易に出來ないことだ」
進ぜん外々ほか/\の儀と事變り金子の事故驚怖おどろいたりあたらきもつぶす所と空嘯そらうそぶひてたばこをくゆらし白々敷しら/″\しくも千太郎を世間知らずの息子むすこと見かすまづ寛々ゆる/\と氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
左の方にて彼と並ぶは、きもふとく味へるため人類をしてかゝるにがさを味ふにいたらしめし父 一二一—一二三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
朝日島あさひじまうみ神樣かみさまも、さだめてきもつぶしたことであらう。
「紙入れや赤い紐の細工は器用だが、さすがに叔父を殺した自分の前掛を持つて行くほどきもが太くなかつたんだな。罰當ばちあたりな奴だ」
「多分、花見の客が落したのを、寶搜しで拾つたのだらうといふことでした。勸進元の山の宿の喜三郎もきもをつぶして居たくらゐだから」
「山之助はきもを潰してをりましたが、晝は前々から人でも頼まないと、店をあけられないから、宜しくお願ひしてくれといふことでした」
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
翌る日になつて、お三輪殺しの罪を被せる積りでゐた專次が、一日一と晩八五郎に見張られて居たと知つて、手前達はきもをつぶしたらう。
「又眼の色を變へて飛び込んで來やがる。御町内では馴れつこだが、江戸中大變を觸れて歩かれた日にや皆んなきもを潰すぜ」
「何んにも氣がつきません。此處までは大分離れて居りますし、——家の者が騷ぎ出したので、きもをつぶしたくらゐで——」
入口の高張、家の中の物々しさ、疊と唐紙を染めた血潮を見て、お幾は門口かどぐちきもを潰してしまつたのも無理のないことです。
俵屋におほかぶさつた暗い雲は、一夜にして取拂はれましたが、その代償だいしやう大袈裟おほげさなのに、誰も彼もがきもをつぶしたことです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
氣の強い駒込の長五郎——嫁の親父の、あの祿ろくでもなしも、聟の榮三郎の愁嘆場しうたんばきもを潰して、マアマアと慰め方に廻つたのは、變な圖でしたよ
八五郎のヌケヌケした報告に、さすがの平次もきもをつぶしました。名物のあごを二三寸切り詰めたところで、これは色男といふ人相ではありません。
平次はさすがにきもを潰しました。長い間御用聞をして居りますが、まだ、こんな無法な人間に逢つたこともありません。
「何が大變なんだ、お長屋の人達が一ぺん毎にきもを潰すぢやないか。岡つ引や坊主は滅多なことに驚くもんぢやねえ」
平次はきもをつぶしました。萬年床をあわてておつつくねた、ほこりだらけの六疊、全くうじが湧き兼ねない獨り者風景です。
八五郎はきもをつぶしました。鈴川主水の自白を聽かなかつた八五郎にとつては、これはあまりにも豫想外な話です。
庄司三郎兵衞もきもをつぶし、急に目黒川のほとり、自分の家の後ろに堂を建てて、江戸裏鬼門の聖天樣として、まつることになつた——とんなわけですよ
髷は無事ですがね、驚いたの何んの——全くきもをつぶしましたよ、——親分の言ひ付け通り、損料で紋付と大小を
線香を上げて、念入りに拜んだ平次も、一と眼、死骸のグロテスクな人相にきもを潰したのも無理はありません。
私もお孃さんも、あれは唯の人間ではあるまい。おばけか、物のか、惡靈あくりやうのやうなものかと、暫らくきもをつぶして立留りましたが、それが何處ともなく姿を
「あわてましたよ。脂ぎつた良い年増が、三階の手摺てすりから逆樣にブラ下つて、町内中の見世物になつて居るのを見たら、誰だつてきもつぶすぢやありませんか」
お杉の聲に集まつた人達は、床から少しのり出して、あけに染んでこと切れてゐる主人の凄じい姿にきもつぶし、忽ち煮えくり返るやうな騷ぎが始まつたのです。
「みんな言つてしまつてはどうだ、——大した惡氣でやつたことでもあるまい。が、喜三郎が死骸になつて百本ぐひに浮いたと聽いて、お前はきもを潰した筈だ」
早桶はやをけは吟味したものですが、ふたをあけて覗くと、まことにそれはきもを潰さずには居られない凄まじさです。
八五郎はきもを潰しました。寶搜しにさへ乘り出さない平次です。系圖のゑさでは動き出しさうもありません。
平次の明智は、一がうの曇りもありません。何から何まで、推理の上に築いた想像ですが、それが拔き差しならぬ現實となつて、二人の用人のきもを奪つたのです。
一と目見てきもをつぶし、——この間から見えないと思つた袷がこんなところにあつたのかねえ、誰が一體こんな惡戯いたづらをしたんだらう——と口惜しがつてゐました
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
死骸を見付けた下男の甲子松きねまつは、これは二十五六の、勝負事と喧嘩が好きで、用心棒には持つて來いのきもつ玉の太い男。こんな野郎も、何をするかわかりません。
白ばつくれて平氣な顏をするよ——多分賭場とばで夜明かしをして、何んにも知らずに出て來たところをお前に捕まつた上、紅い扱帶を見せられてきもを潰したんだらう