病人びょうにん)” の例文
しかし、よるになると、こっそりとはじめて、あさしろもんがあくまでうつしました。かおははれぼったくなり、病人びょうにんのようにみえました。
これなら、どんな神経質しんけいしつ子供こどもかせても、また、気持きもちのつねに滅入めい病人びょうにんいても、さしつかえないということになりました。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
病人びょうにんが二、三人、露台ろだいにでて、すがすがしい春の空気をたのしんでいましたが、ちょうどそのとき、ガンの鳴き声を耳にしました。
吉原よしわらだといやァ、豪勢ごうせいびゃァがるくせに、谷中やなか病人びょうにんらせだといて、馬鹿ばかにしてやがるんだろう。伝吉でんきちァただの床屋とこやじゃねえんだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたくしはついふらふらとあがりましたが、不思議ふしぎにそれっきり病人びょうにんらしい気持きもちせてしまい、同時どうじ今迄いままでいてあった寝具類しんぐるいけむりのようにえてしまいました。
病院びょういんです、もううから貴方あなたにもいただきたいとおもっていましたのですが……みょう病人びょうにんなのです。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「いや、おまえは病人びょうにんだからむりをしないでおくれ。わしがひとりでさがす。きっとさがしだしておまえのところへつれてくるから、気をもまないでっていておくれ。」
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
若者わかものはそういって、みかんを三つともしてやりました。みんなはたいそうよろこんで、さっそくみかんをむいて、病人びょうにんの女にそのしるわせました。すると女はやっと元気げんきがついて
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
衛生とは人のいのちぶるがくなり、人の命ながければ、人口じんこうえてしょくらず、社会しゃかいのためにはあるべくもあらず。かつ衛生のぎょうさかんになれば、病人びょうにんあらずなるべきに、のこれをとなうるはあやまてり云々。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかし、ここばかりは、ふゆともおもえぬあたたかさでありました。叔父おじさんは心配しんぱいそうに、病人びょうにんかおをのぞきこみました。よくねむっています。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
はいほうから病人びょうにんなのですがな。』とハバトフは小声こごえうた。『や、わたし聴診器ちょうしんきわすれてた、ってますから、ちょっと貴方あなたはここでおください。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ロシアでは、医者いしゃ病人びょうにんのしゅじゅつをするところをみせてくれました。
「いっしょにつれていって!」と、病人びょうにんは言いました。
なかには片腕かたうでられ、また両脚りょうあし切断せつだんされて不具者ふぐしゃになっているのもあります。そして今夜こんやにもにそうなおも病人びょうにんもありました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
はあ、病人びょうにん、しかしなんにん狂人きょうじん自由じゆうにそこらへんあるいているではないですか、それは貴方々あなたがた無学むがくなるにって、狂人きょうじんと、健康けんこうなるものとの区別くべつ出来できんのです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「なんでもわたしゆめたのは、あかはたがひらひらとひるがえっていましたが。」と、あわれな病人びょうにん金持かねもちはいったのです。
金の魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういって、二人ふたりは、たがいににっこりわらってわかれました。病人びょうにんにつききりの看護婦かんごふは、氷袋こおりぶくろをぶらさげていました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
健康けんこうひと世界せかいと、病人びょうにん世界せかいと、もし二つの世界せかいべつであるなら、それをつつ空気くうき気分きぶん色彩しきさいが、またことなっているでありましょう。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いわば、ここは、病人びょうにんだけがいるところであり、健康けんこうなもののじっとして、いられるところではありませんでした。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、それは、わるいとおもわれないような場合ばあいもありました。たとえば、病人びょうにんかって
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おばあさんは、こいを病人びょうにんべさせるとたいそうちからがつくというはなしおもしました。
千代紙の春 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「このあいだよりも、ずっとおかおいろがよくおなりです……。」というと、実際じっさいは、そうでなくても、病人びょうにんよろこばすものである。こんなときのうそは、かならずしもわるいのでない。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二股ふたまたのおんばこをしておいて、燈心とうしんのかわりに、真夜中まよなか病人びょうにんねむっているまくらもとにともすと、そのへやのなかおな人間にんげんが、二人ふたりまくらをならべて、うりを二つにったように
草原の夢 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでも、みんなは、「病人びょうにんだから、だまっておれ。」と、我慢がまんをしていました。
夏とおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そとからると、宏壮こうそう洋館造ようかんづくりの病院びょういんでしたけれど、ひとたび病棟びょうとうはいったら、どのへやにも、青白あおじろかおをして、んだ病人びょうにんが、とこうえ仰臥ぎょうがするもの、すわってうめくもの
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、そのなかには、みんなこの人間にんげんのようなきたないふうをした、あおかお人間にんげんがうようよとしてんでいるのでありました。そこでは、子供こどもいています。病人びょうにんくるしんでいます。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
じょうのへやには、すみのほう吉雄よしおつくえいてあって、そこへとこいたので、病人びょうにんのまくらもとには、くすりびんや、洗面器せんめんきや、湯気ゆげたせる、火鉢ひばちなどがあってあしのふみもないのです。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
「だれか、をかしてくれませんか。病人びょうにん交番こうばんまでつれていくのだが。」
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして墓地ぼちぎて、おかにさしかかりますと、そこにはおおきな病院びょういんがあります。かみながくうしろにらしたあねは、病院びょういん内部ないぶしのんで、病人びょうにんのいるへやを、一つ一つのぞいてあるきました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)