用人ようにん)” の例文
また前にいえるごとく、大臣と小姓組との身分はおおいことなるがごとくなれども、小姓組が立身りっしんして用人ようにんとなりし例はめずらしからず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
をとつひの夜平山が来て、用人ようにん野々村次平に取り次いでもらつて、所謂いはゆる一大事のうつたへをした時、跡部は急に思案して、突飛とつぴな手段を取つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
何分なにぶんお願ひ申す。」と、松村も同意した。小幡は先づ用人ようにんの五左衞門を呼び出して調べた。かれは今年四十一歳で譜代の家來であつた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
広い玄関の上段には、役人の年寄としより用人ようにん書役かきやくなどが居並び、式台のそばには足軽あしがるが四人も控えた。村じゅうのものがそこへ呼び出された。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いきほひじようじて、立處たちどころ一國一城いつこくいちじやうあるじこゝろざしてねらひをつけたのは、あらうことか、用人ようにん團右衞門だんゑもん御新造ごしんぞ、おきみ、とふ、としやうや二十はたち
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
用人ようにん源伍兵衛げんごべえ老人である。さては、自分の気の迷いで、廊下には何人も立ってなんぞいなかったのだと思うと、玄蕃げんば、一時に胆力たんりょく恢復かいふくして
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
左側に続いた赤い煉瓦塀の家の中でづピヤノの音がする。主人達が避暑に行つたあとを預かつた用人ようにんの娘か小間使こまづかひの手すさびの音とも聞かれる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
紋太夫の手飼の家来やら食客らしい者など、約十名あまりも出合ってよく防いだが、わけても、最後の最後まで、奮戦に努めて死んだ用人ようにんがある。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とぎをしていたのは格之助兄弟と家扶かふ六郎兵衛ろくろべえ用人ようにん左内さない、それに若侍たち四五人だった、女たちは次の間にいた。
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
不昧公は江戸のやしきはるかにその噂を聞き伝へた。胃の腑はいつぞやの復讐しかへしの時が来たのを思つて小躍りした。不昧公は用人ようにんを呼んで何か知ら言ひつけた。
相勤候處夫より段々だん/\取立とりたてられ用人に相成候後先代せんだいよりの古老こらうたる山口惣右衞門にながいとまを申付られ候然れどもいまだ先代よりの用人ようにんすけ十郎郷右衞門と申者御座候を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
孤獨こどくしもよけの花檀くわだんきくか、だけ後見うしろみともいふべきは、大名だいみやう家老職かろうしよく背負せおをてたちし用人ようにんの、何之進なにのしん形見かたみせがれ松野雪三まつのせつざうとてとし三十五六、おやゆづりの忠魂ちうこんみがきそへて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何某なにがし御子息ごしそく何屋なにや若旦那わかだんなと、水茶屋みずちゃやむすめには、勿体もったいないくらいの縁談えんだんも、これまでに五つや十ではなく、なかには用人ようにん使者ししゃてての、れッきとしたお旗本はたもとからの申込もうしこみも二三はかぞえられたが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
けて最初さいしよのめがねで召抱めしかゝへた服部家はつとりけ用人ようにん關戸團右衞門せきどだんゑもん贔屓ひいきと、けやうは一通ひととほりでなかつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その屋敷の御鎗下おやりしたで、年寄と用達ようたし用人ようにんとの三役も立ち合いのところで、山村氏から書付を渡され、それを書記から読み聞かせられたというものを持って
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
木村の家来に島安太郎しまやすたろうと云う用人ようにんがある、ソレが海岸まで迎いに来て、私が一番先に陸にあがってその島にうた。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
玄關げんくわんに送り出せしかば生駒家の用人ようにん金子忠右衞門玄關につき今日嚴命げんめいに因て主人生駒大内藏おほくらへ貴君樣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小幡は先ず用人ようにんの五左衛門を呼び出して調べた。かれは今年四十一歳で譜代の家来であった。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこで下野の宗家を仮親かりおやにして、大田原頼母たのも家来用人ようにん八十石渋江官左衛門かんざえもん次男という名義で引き取った。専之助名は允成ただしげあざな子礼しれい定所ていしょと号し、おる所のしつ容安ようあんといった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
夕方ゆふかた豊後がやしきに帰つて、用人ようにんを相手にその話をすると、用人ははたと膝を叩いた。そして
今に何かはじまるかなと、ソッと玄関口から首を入れてのぞいていると、あちこちで戸締りを調べ歩いてる用人ようにん仲間ちゅうげんなどの物音がするだけ、奥の方はシンと静まり返っているから、長庵
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
用人ようにんが心得ているだろう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さりとて用人ようにん若御新姐わかごしんぞ、さして深窓しんさうのとふではないから、隨分ずゐぶん臺所口だいどころぐち庭前にはさきでは、あさに、ゆふに、したがひのつまの、なまめかしいのさへ、ちら/\られる。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一体大名や華族などいふものは、家老とか家扶とかの手で始終上手な手品を見せつけられてゐるものなのだが、備前少将は案外眼の明るい大名だつたので、用人ようにん達もこの人の前では
笑っているので、段々きいて来たかと思った玄蕃、今にも用人ようにんどもがやってくるであろう。そうしたら、サッと室外そとへ飛び退こうという心構え、チラ、チラと廊下の方へ眼を配りながら
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのうちにはだんだん出世して給人きゅうにん用人ようにんになれまいものでもない。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
津軽順承ゆきつぐは一の進言に接した。これをたてまつったものは用人ようにん加藤清兵衛せいべえ側用人そばようにん兼松伴大夫かねまつはんたゆう、目附兼松三郎である。幕府は甲冑を準備することを令した。然るに藩の士人のくこれを遵行じゅんこうするものは少い。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
さても生駒家の用人ようにん留守居等は玄關脇げんくわんわきの座敷にひかへ居けるに暫時しばらく有て御徒目付青山三右衞門再び出立迎の乘物のりものしまりの儀御心得有べきやと云へば金子かねこ忠右衞門加川新右衞門の兩人御念ごねんの入たる御尋ねしまりの儀は錠前ぢやうまへに及ばざる旨御書付にまかせ錠は付申さず候へども警固けいご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けて最初さいしよのめがねで召抱めしかゝへた、服部家はつとりけ用人ようにん關戸團右衞門せきどだんゑもん贔屓ひいきけやうは一通ひとゝほりでなかつた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そんなところで、生き馬の眼を抜くような稼業しょうばいをしている。しかも、本人は、奥の茶室にすわったまんまだ。手代てだいとも用人ようにんとも、さむらいとも町人ともつかない男が、四、五人飼われている。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これはさすがに、井戸端ゐどばたで、のりけるわけにはかない、さりとて用人ようにん若御新造わかごしんぞ、さして深窓しんさうのとふではないから、隨分ずゐぶん臺所だいどころに、庭前ていぜんではあさに、ゆふに、したがひのつまなまめかしいのさへ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
横からても、縦から視ても、きたない屑屋に相違あるまい。奉行は継上下つぎがみしも、御用箱、うしろに太刀持たちもち用人ようにん与力よりき同心徒どうしんであい、事も厳重に堂々と並んで、威儀を正して、ずらりと蝋燭ろうそくを入れた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いきほひじようじて、立所たちどころ一國一城いつこくいちじやうあるじこゝろざしてねらひをつけたのは、あらうことか、用人ようにん團右衞門だんゑもん御新姐ごしんぞ、おくみととしやうや二十はたちく、如何いかにも、一國一城いつこくいちじやうたぐへつべきいたつてうつくしいのであつた。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)