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片
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きれ
ふりがな文庫
“
片
(
きれ
)” の例文
おまけに、この間の水なるものが、非常にきたない。わらくずやペンキ塗りの木の
片
(
きれ
)
が黄緑色に濁った水面を、一面におおっている。
出帆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
旗男は義兄の自信に感心しながら、西瓜の
片
(
きれ
)
をとりあげた。そいつはすてきにうまくて、文字どおり
頬
(
ほ
)
っぺたが落ちるようだった。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
家の中には紛失物は無いらしく、天井裏からボロ
片
(
きれ
)
に包んで、少しばかり纒まつた金の出て來たのも、
後家
(
ごけ
)
らしいたしなみでした。
銭形平次捕物控:296 旅に病む女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼は物貰ひのやうに
襤褸
(
ぼろ
)
つ
片
(
きれ
)
を身に纏つて、日がな一日ぼりぼりと微かな歯音をたてて、そこらの葉つぱをかじるのに余念がない。
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
蛙
(
かへる
)
の
肉
(
にく
)
を
食
(
た
)
べに
來
(
き
)
た
蜂
(
はち
)
は
餌
(
え
)
をくはへて
巣
(
す
)
の
方
(
はう
)
へ
飛
(
と
)
んで
行
(
い
)
きますが、その
小
(
ちひ
)
さな
蛙
(
かへる
)
の
肉
(
にく
)
についた
紙
(
かみ
)
の
片
(
きれ
)
で
巣
(
す
)
の
行衛
(
ゆくゑ
)
を
見定
(
みさだ
)
めるのです。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
彼の眼の前にしろじろと見えているものは、もはや大理石の
片
(
きれ
)
はしではなくて、その一つ一つがみごと円満具足の肉体であった。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
まず照らされたその谷間の光景はすこぶる
狼藉
(
ろうぜき
)
たるもので、
篝
(
かがり
)
の燃えさしだの、木や竹の
片
(
きれ
)
だの、地面に石や穴が散在していることだの
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
つまり彼は真白だと称する壁の上に汚い
種々
(
さまざま
)
な
汚点
(
しみ
)
を見出すよりも、投捨てられた
襤褸
(
らんる
)
の
片
(
きれ
)
にも美しい縫取りの残りを発見して喜ぶのだ。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お次の間には老女笹尾が御添寝を承わり、その又次の間が当番の腰元二人、
綾女
(
あやじょ
)
、
縫女
(
ぬいじょ
)
というのが
紅絹
(
もみ
)
の
片
(
きれ
)
で眼を押えながら宿直に当った。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
念のために一つ一つ紙へ計算を
記
(
しる
)
して御覧なさい。エート、先ずサンドウィッチの原料として、食パン一
斤
(
きん
)
を
薄
(
う
)
すく切って二十
片
(
きれ
)
にします。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
女はそれを見るとバケツの中へ手を入れて中の物を
掴
(
つか
)
み出して投げた。それはなんの肉とも判らない血みどろになった
生生
(
なまなま
)
しい肉の
片
(
きれ
)
であった。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
黙って青い水と、水と左右の高い家と、さかさに映る家の影と、影の中にちらちらする赤い
片
(
きれ
)
とをながめていた。すると
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その直感は
外
(
はず
)
れなかった。脇の飯台で飲んでいた二人が、勘定を払って出てゆくとすぐ、刺身を二三
片
(
きれ
)
たべた前の男が、大きな声で小女を呼んだ。
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
博士はそう云って、私に、二
片
(
きれ
)
の肉塊を与えるのであった。それは何れも七八斤ほどもありそうな大きなものであった。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
たったいっぺん国芳師匠のところにいたとき到来物があったのを、上戸の師匠が要らないといい、兄弟子たちとひと
片
(
きれ
)
ずつ頬張ったばかりだった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
「この間見たら箪笥の底にこんな
片
(
きれ
)
があったからね、お前にやろうと思って、内緒で
拵
(
こしら
)
えておいたんだよ」と言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
そして其の丹念なことは、
片
(
きれ
)
の
薄切
(
うすき
)
れたところや、薄くなつてゐる部分を、どんなに手間がかゝつても、綴らなければ気がすまないといふ風であつた。
余震の一夜
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
血痕は
点滴
(
てんてき
)
となって断続し乍ら南へ半丁程続いて、
其処
(
そこ
)
には土に印された
靴跡
(
くつあと
)
や、辺りに散乱している衣服の
片
(
きれ
)
などから歴然と格闘の模様が想像された。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
病弱と老衰と空腹と——空腹と云えば、老人は、今日で三日というものは
麺麭
(
パン
)
一
片
(
きれ
)
さえ食ってはいない。老人の腹の中にあるものは道々飲んだ水ばかりだ。
死の航海
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
たくさんの
哺乳
(
ほにゅう
)
動物の遺骨の中から一本の奥歯を発見したのであるが、それがすなわち先に言うところの五十万年前の人間が
遺
(
のこ
)
して死んだ
臼歯
(
うすば
)
の一
片
(
きれ
)
である。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
一銭に四
片
(
きれ
)
というのを、私は六片食って、何の足しにということはなしに二銭銅貨で五厘の
剰銭
(
つり
)
を取った。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
手拭いに包んだハムの
片
(
きれ
)
が、支那兵の家に到る途中に落ちると、支那兵は、一時に、三人もころげるようにとび出してきて、嬉しげに罵りながらそれを拾った。
前哨
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
第一、何処へかお出掛けになる時は
毎
(
いつ
)
でも俺がお伴を
仰付
(
あふせつ
)
かるから子、君達が指でもさせば直ぐワンと
喰付
(
くらひつ
)
く。
麺包
(
パン
)
の一
片
(
きれ
)
や二片呉れたからつて容赦は無いよ。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
年老いた
下婢
(
かひ
)
がひとり彼女のそばに附いていて、その女が時折り飲物をのませたり、小さな冷肉の
片
(
きれ
)
を口のところまで持っていって食べさせてやったりしていた。
狂女
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
吹矢の筒に紙の小さい
片
(
きれ
)
を入れて吹いて見玉え、その紙は必らずぐるぐる回りながら飛出すよ。水の中に石を落して見玉え、これもぐるぐるまわりながら沈むよ。
ねじくり博士
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこで今度はまた別の
片
(
きれ
)
を取りあげたが、ちよつと唇に触つたと思つただけで、自分の咽喉へは通らなかつた。三度目もやはり同じやうにわきへ
外
(
そ
)
れてしまつた。
ディカーニカ近郷夜話 前篇:06 紛失した国書
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
そうすると他の生徒
等
(
ら
)
は後からも前からも一時に囃し立て鼻緒の切れた
草履
(
ぞうり
)
を投げ付けたり、
互
(
たがい
)
に前の者を押しやって清吉に突き当たり、
白墨
(
はくぼく
)
の
片
(
きれ
)
を投げ付けたり
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ところが念のためにダイヤモンドの入っているサックを開けてみると、驚いたことに、中にダイヤはなくて新聞紙の
片
(
きれ
)
を細かに折ったのが入っているばかりであった。
紅色ダイヤ
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
姉のジャンヌお
上
(
かみ
)
さんはよく彼の食べてるそばから、牛肉や豚肉の
片
(
きれ
)
や、キャベツの
芯
(
しん
)
など、食べ物のいい所を彼の皿から取って、それを自分の子供にくれてやった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
恥
(
はぢ
)
らうて
漸
(
やうや
)
く
手
(
て
)
の
及
(
およ
)
ぶ
程度
(
ていど
)
にカンテラの
光
(
ひかり
)
の
範圍
(
はんゐ
)
から
遠
(
とほ
)
ざからうとしつゝ
西瓜
(
すゐくわ
)
の一
片
(
きれ
)
づつを
求
(
もと
)
める。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
火の気は無論のこと、一
片
(
きれ
)
の
麺麭
(
パン
)
もない下宿の部屋へ帰ったって、どうすることも出来はしない。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
そいつを一
片
(
きれ
)
切ってくんねえ。己はナイフを持っていねえから。よし持ってたって、切るだけの力もねえ。ああ、ジム、ジム、己ぁやり損ったようだよ! 一片切ってくれ。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
鼠はかう言つて、ボウトのそばを流れてゐる、木の
片
(
きれ
)
やわらくづにかせいをたのみました。
一本足の兵隊
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
それに番号の
片
(
きれ
)
と針と糸を渡されたので、俺は着物の
襟
(
えり
)
にそれを縫いつけた。そして、こっそり小さい
円
(
ま
)
るい鏡に写してみた。すると急に自分の顔が罪人になって見えてきた。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
四の
片
(
きれ
)
より二の腕成り、
股
(
もゝ
)
脛
(
はぎ
)
腹
(
はら
)
胸
(
むね
)
はみな人の未だみたりしことなき身となれり 七三—七五
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
半
片
(
きれ
)
の菓子パンとコーヒーを貰いたいと彼は几帳面に言った。その女があちらへひきかえそうとすると彼はこう言い足した、「それからね、僕は君に結婚してもらいたいんだが」
見えざる人
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
百万金よりも、一
片
(
きれ
)
のパンの方が有難い。一杯の水の方が望ましいとは、何という変てこな立場であろう。事実、わしはペコペコに腹が減っていたし、痛い程喉が乾いていたのだ。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さて骨に掛けず流血も少なく尻の肉を四角な
片
(
きれ
)
に刻み去る。牛大いに鳴く時客人一同座に就く。牛は戸辺にあって流血少なし。屠者骨より肉を切り離すは腿や大動脈のある処を避く。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
と云いながら、石や木の
片
(
きれ
)
をなげつけたり、ぶったり、蹴ったりしはじめました。
オシャベリ姫
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
かぐつちみどり
(著)
いぎりすのA氏は不器用な手つきで一
片
(
きれ
)
のトマトのために大の男——しかも紳士!——が汗をかき、あめりかのB氏は瞳をひらめかしてあれかこれかと
徒
(
いたず
)
らに検査して歩き、C夫人は
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
潮
(
うしお
)
遠く引きさりしあとに残るは
朽
(
く
)
ちたる板、
縁
(
ふち
)
欠けたる
椀
(
わん
)
、竹の
片
(
きれ
)
、木の片、柄の折れし
柄杓
(
ひしゃく
)
などのいろいろ、皆な
一昨日
(
おととい
)
の夜の
荒
(
あれ
)
の
名残
(
なごり
)
なるべし。童らはいちいちこれらを拾いあつめぬ。
たき火
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
仁十郎が、こういったのに答えないで、岩の下に落ちている焚木の
片
(
きれ
)
を拾う。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その首のめぐりはいつせいに痩せて、ほんのちよつぴり、冬の
襟巻
(
マフラア
)
に肖た雲の
片
(
きれ
)
はしをまとつてゐるといふだけ。この灰いろの襟巻。ふゆの遺産。——そこに、まだ春のことぶれはとほい。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
室内の人工の灯りが徐々に流れ込んで、部屋を浸す暁の光線と中和すると、妙に精の抜けた白茶けた超現実の世界に器物や光景を彩り、人々は影を失った鉛の
片
(
きれ
)
のようにひらぺたく見える。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
消え残る夕焼の雲の
片
(
きれ
)
と、
紅蓮
(
ぐれん
)
白蓮
(
びゃくれん
)
の
咲乱
(
さきみだ
)
れたような
眺望
(
ながめ
)
をなさったそうな。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
恨むと見ゆる死顔の月は、肉の
片
(
きれ
)
の棄てられたるやうに
朱
(
あか
)
く
敷
(
し
)
ける満地の瓦を照して、目に
入
(
い
)
るものは皆伏し、四望の空く
寥々
(
りようりよう
)
たるに、黒く点せる人の影を、彼は
自
(
おのづか
)
ら
物凄
(
ものすご
)
く顧らるるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
私としては、餅の一
片
(
きれ
)
なり、飯の一塊まりなり食わせてやりたい。しかしそれは父から禁じられていた。そんな癖をつけると、いつかその犬が内の犬になってしもうて困る、と言うのであった。
私の父
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
きつとあなたのお手は寒いので
凍
(
こゞ
)
えてゐらつしやるにきまつてをりますもの。リアや、熱いニィガスを少し
拵
(
こしら
)
へて、サンドヰッチを一
片
(
きれ
)
か二
片
(
きれ
)
切つて來て下さい。貯藏室の鍵はこゝにあります。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
すると、彼は、何のひと
片
(
きれ
)
でもかまわない、大急ぎでつめ込んでしまう。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
足許の地面から拾い上げた巻紙の
片
(
きれ
)
に、
拙
(
へた
)
な薄墨の字が野路の
村雨
(
むらさめ
)
のように横に走っているのを、こう
低声
(
こごえ
)
に読み終った八丁堀藤吉部屋の岡っ引
葬式
(
とむらい
)
彦兵衛は、鶏のようにちょっと小首を傾げた後
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
“片”の解説
片(へん)は、漢姓の一つ。
(出典:Wikipedia)
片
常用漢字
小6
部首:⽚
4画
“片”を含む語句
片端
一片
木片
片々
片方
紙片
破片
小片
片面
片側
片付
断片
岩片
阿片
布片
片附
砕片
頬片
片傍
片頬笑
...