出帆しゅっぱん
成瀬君 君に別れてから、もう一月の余になる。早いものだ。この分では、存外容易に、君と僕らとを隔てる五、六年が、すぎ去ってしまうかもしれない。 君が横浜を出帆した日、銅鑼が鳴って、見送りに来た連中が、皆、梯子伝いに、船から波止場へおりると、僕 …