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溜息
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ためいき
ふりがな文庫
“
溜息
(
ためいき
)” の例文
黄昏
(
たそがれ
)
には間のある、ふと往来の途絶えるいっとき。街ぜんたいがひそかに
溜息
(
ためいき
)
でもつくような、沈んだ、うらさびしい時刻であった。
夕靄の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「雪が解けて、たらの芽でも何でも、青いものが出て来るようになれば」と、人々は遠い春をはるかに望んで、力弱い
溜息
(
ためいき
)
をもらす。
イグアノドンの唄:――大人のための童話――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
元気を出して、物干場へあがってお日様を険しく見つめ、思わず、深い
溜息
(
ためいき
)
をいたしました。ラジオ体操の号令が聞えてまいります。
皮膚と心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
するとロッセ氏は、とつぜん吾れにかえったらしく、ふーっと、
鯨
(
くじら
)
のようにふかい
溜息
(
ためいき
)
をついた。そして私に
噛
(
かじ
)
りついたものである。
のろのろ砲弾の驚異:――金博士シリーズ・1――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ああ、彼奴じゃ駄目だ。歩いて出入する以外に術があるまい。」熊城は悲しげな
溜息
(
ためいき
)
を吐いたが、法水の顔は更に暗く憂鬱だった。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
今
(
いま
)
は
餘波
(
なごり
)
さへもない
其
(
その
)
戀
(
こひ
)
を
味
(
あぢ
)
つけうために!
卿
(
そなた
)
の
溜息
(
ためいき
)
はまだ
大空
(
おほぞら
)
に
湯氣
(
ゆげ
)
と
立昇
(
たちのぼ
)
り、
卿
(
そなた
)
の
先頃
(
さきごろ
)
の
呻吟聲
(
うなりごゑ
)
はまだ
此
(
この
)
老
(
おい
)
の
耳
(
みゝ
)
に
鳴
(
な
)
ってゐる。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
枕元にいる長屋の者は、時々、深い
溜息
(
ためいき
)
でこう祈った。そして、お互いに、痛い心をジッと抑えて、虎五郎の容体を見まもっていた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
幸子はほっと
溜息
(
ためいき
)
をついて寝返りを打った。そしてぱっちり眼を開けて見ると、いつの間にか部屋の中がすっかり明るくなっていた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
夜の更けたせいか、一瞬、寒む寒むとしたものを感じた私は、ほっと重い
溜息
(
ためいき
)
を落したのと共に、鈍い音をたてた柱時計に気がついた。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
なおも腕を深く組んで何事か考えまわしているらしかったが、そのうちに両手で眼鏡をかけ直しながら、軽い
溜息
(
ためいき
)
と一緒につぶやいた。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
母はほっと
溜息
(
ためいき
)
をついて、考え込んでしまった。父も
黙
(
だま
)
ってしまった。わたしはこの会話の間じゅう、ひどく照れくさかった。——
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
と
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
いて、ジーナは語り出しました。父親というのは、同じ長崎県でもここからは北の
端
(
はず
)
れに当る、平戸島の人だというのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
何度も寝返りを打ち、何度も深い
溜息
(
ためいき
)
をつき、からだをちぢめ、また伸ばそうとこころみたが、
睡
(
ねむ
)
りはもう穏やかにはやって来なかった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ルイザは
溜息
(
ためいき
)
をもらしたが、しかしきまり悪そうな笑顔をして服従した。幸いにもクリストフはそのことを少しも知らなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
暫
(
しばら
)
くするとお玉は起って押入を開けて、
象皮賽
(
ぞうひまがい
)
の
鞄
(
かばん
)
から、自分で縫った
白金巾
(
しろかなきん
)
の前掛を出して腰に結んで、深い
溜息
(
ためいき
)
を
衝
(
つ
)
いて台所へ出た。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ヘレンは、彼女の默想が消えてしまふと、そつと
溜息
(
ためいき
)
をついた。そして立ち上つて、返辭もせず、ためらひもせず、級長の命令に從つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「ああ、もう仕様がない!」私は思わず
溜息
(
ためいき
)
をついた。そして「ええッどうにでもなれ」といった風に自分の身を運命に任せてしまった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
此時江戸表には八代將軍
吉宗公
(
よしむねこう
)
近習
(
きんじゆ
)
を
召
(
めさ
)
れ上意には奉行越前守は未だ
病氣全快
(
びやうきぜんくわい
)
は致さぬか芝
八山
(
やつやま
)
に居る天一坊は
如何
(
いかが
)
せしやと
發
(
ほつ
)
と御
溜息
(
ためいき
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「ざっとこう云う経過だ」と説明の結末を付けた時、平岡はただ
唸
(
うな
)
る様に深い
溜息
(
ためいき
)
を
以
(
もっ
)
て代助に答えた。代助は非常に
酷
(
つら
)
かった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
朴訥
(
ぼくとつ
)
な調子で語りおわると、石津右門はホッと
溜息
(
ためいき
)
を吐きます。鬼の霍乱が
萎
(
しお
)
れ返った様子は、物の哀れを通り越して
可笑
(
おか
)
しくなるくらい。
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
うす暗ひランプの光…………彼女のすゝり泣く声………………何と云ふ
薄命
(
あはれ
)
な女であるかと
我
(
われ
)
は
思
(
をも
)
はず
溜息
(
ためいき
)
をついた、やがて汽車は
止
(
とま
)
つた
夜汽車
(新字旧仮名)
/
尾崎放哉
(著)
としみじみ
労
(
いたわ
)
って問い慰める、真心は通ったと見えまして、少し枕を寄せるようにして、小宮山の方を向いて、お雪は
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
きましたが
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しつかり眼を閉ぢてゐても、
些
(
ちつと
)
も眠くならなかつた。何度も寝返りをうつては
溜息
(
ためいき
)
をついた。そして夜はだんだんふけて来た。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「随分心配させられたぜ、もうもうどんなことが有っても、
独
(
ひと
)
りでなんぞ
屋外
(
そと
)
へ出されない」と言って、正太は
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
いて
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
其方
(
そちら
)
に
思
(
おも
)
ひ
寄
(
より
)
もあらば
言
(
い
)
つて
見
(
み
)
て
呉
(
く
)
れとてくる/\と
剃
(
そり
)
たる
頭
(
つむり
)
を
撫
(
な
)
でゝ
思案
(
しあん
)
に
能
(
あた
)
はぬ
風情
(
ふぜい
)
、はあ/\と
聞
(
きゝ
)
居
(
ゐ
)
る
人
(
ひと
)
は
詞
(
ことば
)
は
無
(
な
)
くて
諸共
(
もろとも
)
に
溜息
(
ためいき
)
なり。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
急に何やら思出したように
溜息
(
ためいき
)
をつき、例の如く細い目をぱちくりさせながら、じっと兵卒の衣裳に
鈍
(
にぶ
)
い視線を注いでいた。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しきりに
溜息
(
ためいき
)
をついておいでになりましたが、やがて低い声で『ああ、御運の悪い方だ』と独り言のように仰しゃいました。
半七捕物帳:01 お文の魂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大きな
溜息
(
ためいき
)
をついて、壁の一隅につるしてある薩摩屋敷の
轡
(
くつわ
)
の紋のついた
提灯
(
ちょうちん
)
を見て、じっと物を考え込んでしまいました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さう云つて、ことこまかに、時計の売れた一件を話すと、ゆき子は眼に涙をためて、「めぐりあひつて、いゝ事云ふひとね」と
溜息
(
ためいき
)
をついた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
洩
(
も
)
らす
溜息
(
ためいき
)
に代える程度により口へ出しえないのは、姫君のあまりに高貴な気に打たれてしまうことが多いからであった。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
といった身の上話に聴き入りながら、オーレンカはほっと
溜息
(
ためいき
)
をして頭をふり、この男をしみじみ気の毒に思うのだった。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
二時間目の授業が始まるからといって園が座を立ったあと、清逸は
溜息
(
ためいき
)
をしたいような衝動を感じた。それが悪るかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼はほんのちょっとのあいだ
躊躇
(
ちゅうちょ
)
したが、やがて、かすかな
溜息
(
ためいき
)
をつきながら、黙って剣を抜き、防御の身がまえをした。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
その運命を耐えている
溜息
(
ためいき
)
が、今なお聞こえるほど、この芸術は、その耐えきるという男らしさ、心構えの苦しさが、そのまま人の魂をうっている。
美学入門
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
と
溜息
(
ためいき
)
をついたりして、変だと思った事もあったのですが、大阪へいっても死ぬ日に、たった一人で
住吉
(
すみよし
)
へお
参詣
(
まいり
)
に行くといって、それを
止
(
と
)
めたり
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
それから男が大きい
溜息
(
ためいき
)
を
衝
(
つ
)
いた。それを聞いて、女が男の顔を見ようとすると、男は顔を
反
(
そむ
)
けた。そして突然云った。「ここが
好
(
い
)
いじゃないか。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
あまりに悲しい時には
溜息
(
ためいき
)
をつきながら、あるいは快活なふうを見せたい時には
袖
(
そで
)
を爪ではじきながら、こう答えた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
お島はその
度
(
たんび
)
に、目に涙をためて
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
いたが、還るとも還らぬとも決らずに、話がぐずぐずになる事が多かった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
甚兵衛はがっかりして家に戻ってきて、とんだことになったと
溜息
(
ためいき
)
をつきながら、しみじみと馬の顔を眺めました。
天下一の馬
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
妖
(
あや
)
しいまでに生々しい蜘蛛と、
可憐
(
かれん
)
な唐子の姿が、その餅肌の白さと一つになって
烈
(
はげ
)
しく彼の
慾情
(
よくじょう
)
をそそった。藤三は首を振り、深々と
溜息
(
ためいき
)
を吐いた。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
跡に忍藻はただ一人
起
(
た
)
ッて行く母の後影を
眺
(
なが
)
めていたが、しばらくして、こらえこらえた
溜息
(
ためいき
)
の
堰
(
せき
)
が一度に切れた。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
おまけに肩から背中にかけて一面に赤く
爛
(
ただ
)
れた
腫物
(
はれもの
)
が崩れている有様に、悟浄は思わず足を
停
(
と
)
めて
溜息
(
ためいき
)
を
洩
(
も
)
らした。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
なにを風呂場で
戯
(
ふざ
)
けているのだろう。若い人はしようがないと思っていると、やがて
溜息
(
ためいき
)
のような長い声が聞えた。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
壮い漁師は
溜息
(
ためいき
)
をついた。と、その眼の前へふらふらと寄って来た物があった。それは向うから来た女で、壮い小づくりなその顔が月の光に浮んでいた。
海嘯のあと
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
吉本はそれだけを言って深い
溜息
(
ためいき
)
を一つした。吉本の言葉が永峯には、一つ一つ皮肉に聞こえてくるのであった。
街頭の偽映鏡
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
竟
(
つひ
)
には
溜息
(
ためいき
)
呴
(
つ
)
きてその目を閉づれば、片寝に
倦
(
う
)
める
面
(
おもて
)
を
内向
(
うちむ
)
けて、
裾
(
すそ
)
の寒さを
佗
(
わび
)
しげに
身動
(
みうごき
)
したりしが、
猶
(
なほ
)
も
底止無
(
そこひな
)
き思の
淵
(
ふち
)
は彼を沈めて
逭
(
のが
)
さざるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「そうね。私が悪かったわ。」菜穂子は自分が何か思い違いをしていた事に気がつきでもしたように、深い
溜息
(
ためいき
)
をついた。そして思いのほか素直に云った。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
涙ぐんで「ハイ」と
幽
(
かすか
)
に答えしが
忽
(
たちま
)
ち思い直して顔を揚げ「アハハ、牛は牛連れと言ってちょうど
好
(
よ
)
く似合いましょう」と無理に笑いて
悵然
(
ちょうぜん
)
と
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
く。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そして高踏極まる話をする青年の言葉の底に
却
(
かえ
)
つて切ない人間の至情を感じて、何か
歎
(
なげ
)
かずにはゐられない気持ちになつた。歳子は哀れな優しい
溜息
(
ためいき
)
をした。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
俺はなぜか、ふーっと
溜息
(
ためいき
)
をついた。小娘のくせに度胸がある。感歎の溜息だと俺が自分に言いきかせると
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
溜
漢検準1級
部首:⽔
13画
息
常用漢字
小3
部首:⼼
10画
“溜息”で始まる語句
溜息交
溜息の橋