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わ
ふりがな文庫
“
湧
(
わ
)” の例文
しかし、盛夏のうだるような暑さの中では、冬ほどうなぎは美味ではないけれど、食いたいとの欲求がふつふつと
湧
(
わ
)
き起こって来る。
鰻の話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
小説にしようか、絵の修業をしようか——まとまりようのない空想が、あとからあとから
湧
(
わ
)
いてくる。つい、うっとりとしていると
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
十年ほど前に
御霊
(
ごりょう
)
の文楽座を覗いた時には何の興味も
湧
(
わ
)
かなかった要は、ただその折にひどく退屈した記憶ばかりが残っていたので
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
昔のことを思うと眼に涙が
湧
(
わ
)
いてきた。しかし彼にとっては、一通の手紙を書くのは、大譜表を書くに劣らないほどの大仕事だった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
何にも無い、畳の
摺剥
(
すりむ
)
けたのがじめじめと、蒸れ湿ったその
斑
(
まだら
)
が、陰と明るみに、黄色に鼠に、雑多の
虫螻
(
むしけら
)
の
湧
(
わ
)
いて出た形に見える。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
それは、とつぜん空中に、どこから
湧
(
わ
)
いたか、すばらしい金色の翼を張った超重爆撃機が数百機、頭上に姿をあらわしたのであった。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蛆
(
うじ
)
がわくように、いつのまにやら、誰が言い出したともなく、もくもく
湧
(
わ
)
いて出て、全世界を
覆
(
おお
)
い、世界を気まずいものにしました。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
だが、そうして、あとに残ったものとして当然この現地にある部署を襲うと、怒りはあの人たちと同じような調子で
湧
(
わ
)
いて来るのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
関所は
廃
(
すた
)
れ、街道には草蒸し、交通の要衝としての箱根には、昔の面影はなかったけれども、
温泉
(
いでゆ
)
は
滾々
(
こんこん
)
として
湧
(
わ
)
いて尽きなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
しかし、蹄の音がまだ消えるか、消えないうちに、たちまち屈託のない、
野放図
(
のほうず
)
な百姓たちの笑い声が、
賑
(
にぎや
)
かに雲のように
湧
(
わ
)
きあがる。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
昔の旅の
伴侶
(
はんりょ
)
の顔を見れば、いつでも、愉快な情景や、面白い冒険や、すばらしい冗談などの尽きぬ思い出が
湧
(
わ
)
きでてくるものだ。
駅馬車
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
風が
激
(
はげ
)
しくなり、
足下
(
あしもと
)
の
雲
(
くも
)
がむくむくと
湧
(
わ
)
き立って、
遙
(
はる
)
か下の方に
雷
(
かみなり
)
の音まで
響
(
ひび
)
きました。王子はそっと下の方を
覗
(
のぞ
)
いてみました。
強い賢い王様の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
基督の信は、常に
衷
(
うち
)
に神を見、神の声を
聴
(
き
)
けるより来たり、ポーロの信は、其のダマスコ途上驚絶の天光に接したるより
湧
(
わ
)
き出でたり。
予が見神の実験
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
歳子は
襟元
(
えりもと
)
へ急に何かのけはひが忍び寄るものゝやうに感じたが、牧瀬に対してまた周囲の情勢に対して何の不安も
湧
(
わ
)
かなかつた。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
頼家 あたたかき湯の
湧
(
わ
)
くところ、温かき人の情も湧く。恋をうしないし頼家は、ここに新しき恋を得て、心の痛みもようやく癒えた。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
子ながらも
畏敬
(
いけい
)
の心の
湧
(
わ
)
く
女御
(
にょご
)
の所へこの娘をやることは恥ずかしい、どうしてこんな欠陥の多い者を家へ引き取ったのであろう
源氏物語:26 常夏
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
楯無しの鎧を
背後
(
うしろ
)
にして動かざること山の如く端然と坐っていた信玄も少からず好奇心を
湧
(
わ
)
かせたと見えて、長老の様子を眺めている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
生家
(
うち
)
を
出奔
(
しゅっぽん
)
したんだ、どうしたんだ、こうしたんだとまるで十二三のたんだがむらむらと
塊
(
かた
)
まって、頭の底から一度に
湧
(
わ
)
いて来た。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お常は只胸の
中
(
うち
)
が
湧
(
わ
)
き返るようで、何事をもはっきり考えることが出来ない。夫に対してどうしよう、なんと云おうと云う思案も無い。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼は自分の
内部
(
なか
)
から
湧
(
わ
)
いて来るもののために半ば押出されるようにして、
隅田川
(
すみだがわ
)
の水の中へでも自分の身体を浸したいと思付いた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
シューベルトにおいては、作曲は少しも労苦ではなく、旋律と和声の噴泉が、絶えず
湧
(
わ
)
き上って、その
奔注
(
ほんちゅう
)
の道を求めていたのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
手水鉢は
殻
(
から
)
で
柄杓
(
ひしゃく
)
はから/\だが、誰もお参りに来ないと見えるな、うんそう/\、
此方
(
こっち
)
へ来な、聖天山の裏手に清水の
湧
(
わ
)
く処がある
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
友人はこれを聞き、カッとしてわが胸中に
湧
(
わ
)
きいずる同情の海に比ぶれば二千、三千の金はその一
滴
(
てき
)
にだも
値
(
あたい
)
せずと
絶叫
(
ぜっきょう
)
したと聞いた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
綺麗
(
きれい
)
な綺麗な、水晶のようなのが
湧
(
わ
)
いていましたし、——だから、おばあさんは何にも心配することも、いそがしい用事もない訳でした。
でたらめ経
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
家には
老婢
(
ろうひ
)
が一人遠く離れた勝手に寝ているばかりなので
人気
(
ひとけ
)
のない家の内は古寺の如く障子
襖
(
ふすま
)
や壁畳から
湧
(
わ
)
く湿気が
一際
(
ひときわ
)
鋭く鼻を
撲
(
う
)
つ。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
毎度このモデル問題では
大真面目
(
おおまじめ
)
でありながら
滑稽
(
こっけい
)
に近い話などが
湧
(
わ
)
いて、家のものなども大笑いをしたことが
度々
(
たびたび
)
ありました。
幕末維新懐古談:57 矮鶏のモデルを探したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
再び峠の頂きに来る。振り返ってまた来たい心が
切
(
しき
)
りに
湧
(
わ
)
く。私は近いうちにそれを果したいと今も思っている。 昭和六年五月二十六日
日田の皿山
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
こうした春の日の光の下で、人間の心に
湧
(
わ
)
いて来るこの不思議な悩み、あこがれ、寂しさ、
捉
(
とら
)
えようもない孤独感は何だろうか。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
周囲の負傷者は殆ど死んで行くし、西田の耳には
蛆
(
うじ
)
が
湧
(
わ
)
いた。「耳の穴の方へ蛆が這入ろうとするので、やりきれませんでした」
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
『どうも無造作すぎるな』とわたしは、思わず
湧
(
わ
)
き上がる
嫌悪
(
けんお
)
の情をもって彼女のぶざまな様子をじろじろ
眺
(
なが
)
めながら、心の中で考えた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
こういう大官や名家の折紙が附いたので
益々
(
ますます
)
人気を
湧
(
わ
)
かして、浅草の西洋覗眼鏡を見ないものは文明開化人でないようにいわれ
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
何しに降つて
湧
(
わ
)
いた事もなければ、人との
紛雑
(
いざ
)
などはよし有つたにしろそれは常の事、気にもかからねば何しに物を思ひませう
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
あのます紙鳶を買ふには、この十倍ものお
銭
(
あし
)
が必要であるといふことを。しかし、それにも
拘
(
かかは
)
らず、栄蔵の心には
希望
(
のぞみ
)
の泉が
湧
(
わ
)
き出した。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
雖然周三は、其れにすら何等の不滿を感ぜず、
舌
(
した
)
と胃の腑の
欲望
(
よくぼう
)
を充すよりも、寧ろ胸に
饒
(
ゆた
)
かな
興趣
(
きやうしゆ
)
の
湧
(
わ
)
くのを以つて滿足した。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
あっけにとられて見ていた竹童は、
居士
(
こじ
)
にいいつけられたまま、岩のあいだから、こんこんと
湧
(
わ
)
きいでている泉をすくってきた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やがて食卓から立って妻児が下りて来た頃は、北天の一隅に
埋伏
(
まいふく
)
し居た彼濃い
紺靛色
(
インジゴーいろ
)
の雲が、
倏忽
(
たちまち
)
の中にむら/\と
湧
(
わ
)
き
起
(
た
)
った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
それ故にこそ電火
一閃
(
いっせん
)
するごとに拍手
湧
(
わ
)
くが如きなれ。ただ小町の
詞
(
ことば
)
に和歌のために一命を捨つるは
憾
(
うらみ
)
なしとあるは利きたり。
明治座評:(明治二十九年四月)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
だが虎穴に入らずんば虎児を得ずという一かばちかの気持ちで、降って
湧
(
わ
)
いた奇妙なアバンチュールに身をもってあたってみることにした。
謎の女
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
そして向岸の暗みへゆきつくと、間もなく、あおじろい夜明けがやってくるらしいのだ。あそこは水も冷たい。別な新しい水が
湧
(
わ
)
いている。
寂しき魚
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
留守城はよろこびのためにどよみあがり、城下町の隅ずみまで、活気のある賑わいに
湧
(
わ
)
きたった。……そのさ中のことである。
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
この頃になってようやく叔孫にも、この近臣に対する疑いが
湧
(
わ
)
いて来た。
汝
(
なんじ
)
の言葉は真実か? と
吃
(
きつ
)
として聞き返したのはそのためである。
牛人
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
一匹の牛が皮の前掛を振うか、あるいは乾いた地面を
蹄
(
ひづめ
)
で
蹴
(
け
)
るかすると、虻の雲が
唸
(
うな
)
り声を立てて移動する。ひとりでに
湧
(
わ
)
いて出るようだ。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
夏の暮れ方は、一種あわただしいはかなさをただよわして、うす紫の
宵闇
(
よいやみ
)
が、波のように、そこここのすみずみから
湧
(
わ
)
きおこってきている。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ルンペンが大声にどなると、たちまち地上の各所から「やかましい」「静かにしろ」などという
叱
(
しか
)
り声が
湧
(
わ
)
くように起こった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
毎年新たな感想が
湧
(
わ
)
くたびに書きつけて、この本の増刷されるたびに、年代順に添えて行く、というのが私の楽しみであった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
それでもこの
永
(
なが
)
い
星霜
(
つきひ
)
の
間
(
あいだ
)
には
何
(
なに
)
や
彼
(
か
)
やと
後
(
あと
)
から
後
(
あと
)
からさまざまの
事件
(
こと
)
が
湧
(
わ
)
いてまいり、とてもその
全部
(
ぜんぶ
)
を
御伝
(
おつた
)
えする
訳
(
わけ
)
にもまいりませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
将校は旅行者のさきほどの冷淡さにはほとんど気づかなかったのだが、相手の今や
湧
(
わ
)
き始めた関心には感づいたようである。
流刑地で
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
私はというと、間もなくその猫に対する嫌悪の情が心のなかに
湧
(
わ
)
き起るのに気がついた。これは自分の予想していたこととは正反対であった。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そこを去つて川上の方に行くに、林中から
湧
(
わ
)
いた泉が流になつてそそぐところがある。そこに二人の童子が一人の
守
(
もり
)
に連れられて遊んでゐた。
イーサル川
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
すがすがしい朝を前触れる
浄
(
きよ
)
めの嵐なのではあるまいかと、わたくしごとの境涯を離れて広々と世を見はるかす
健気
(
けなげ
)
な覚悟も
湧
(
わ
)
いて参ります。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
湧
常用漢字
中学
部首:⽔
12画
“湧”を含む語句
湧出
湧水
湧上
湧起
湧然
湧返
洶湧
湧立
坌湧
湧井
小湧谷
湧金門
湧井将監
飛瀑湧泉
群湧
立湧
石湧
岩湧山
湧金
常湧
...