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棲家
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すみか
ふりがな文庫
“
棲家
(
すみか
)” の例文
と、洞穴の外で異様な
唸
(
うな
)
り声がした。わが
棲家
(
すみか
)
のうちの怪しき気ぶりに鏡のような眼を
研
(
と
)
ぎすまして帰って来た小虎の親の
牝
(
めす
)
だった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
社の報酬はいうに足らぬほどなれど、
棲家
(
すみか
)
をもうつし、
午餐
(
ひるげ
)
に
往
(
ゆ
)
く食べもの
店
(
みせ
)
をもかえたらんには、かすかなる暮らしは立つべし。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
刺繍
(
ししゅう
)
を施したカーテンがつるしてあった。でも、そこからは、動物の
棲家
(
すみか
)
のように、異様な毛皮と、獣油の臭いが発散して来た。
渦巻ける烏の群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
祖父江出羽守の
猟座
(
かりくら
)
、山伏山の田万里は、こうしてあくなき殿の我慾の
犠牲
(
にえ
)
に上げられて、一朝にして
狐狸
(
こり
)
の
棲家
(
すみか
)
と化し去ったのだった。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
奥州へ来て、広い原さえ見れば安達ヶ原だと思い、一つ
家
(
や
)
がありさえすれば鬼の
棲家
(
すみか
)
だと想像する自分の
頭脳
(
あたま
)
の御粗末さ加減に
呆
(
あき
)
れ返る。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
紇は
悦
(
よろこ
)
んで山をおり、その約束の日を
違
(
たが
)
えないように、一切の物を用意して鬼神の
棲家
(
すみか
)
へ往った。美女の一人はそれを見て
戸外
(
そと
)
へ出てきて
美女を盗む鬼神
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は喉元で自分を
叱
(
しか
)
つた。宗右衛門にとつては
最早
(
もは
)
や
此頃
(
このごろ
)
の二人の娘は妄鬼であつた。離れ家はまさしく妄者の
棲家
(
すみか
)
であつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼はよく名探偵が大胆にも賊の
棲家
(
すみか
)
に忍びこむところを小説に書いたことがあったけれど、本当に実物の邸内に侵入するのは今夜が始めてだった。
軍用鼠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「へツ、お孃樣、無事に鬼の
棲家
(
すみか
)
を出ましたね、——お墨附はこれだよ、御用人。今度は盜られないやうに頼みますぜ」
銭形平次捕物控:195 若党の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
大隅諸島のはづれの、
黒子
(
ほくろ
)
のやうな、こんもりした孤島を眺めた時、富岡は、こゝが、自分の行き着く
棲家
(
すみか
)
だつたのかと、無量な気持ちであつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
通りすがりに、ただふらりと来た私は偶然一室を借りられたそれだけの縁で、とにかくここをしばらく仮の
棲家
(
すみか
)
とすることが出来たのは幸いである。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「誰も山賊の
棲家
(
すみか
)
だとも、万引の
隠場所
(
かくればしょ
)
だとも言わないのに、貴下が聞違えたんではありませんか。ええ、お先達?」
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
堪
(
たま
)
りかねてその
子家鴨
(
こあひる
)
は
自分
(
じぶん
)
の
棲家
(
すみか
)
をとび
出
(
だ
)
してしまいました。その
途中
(
とちゅう
)
、
柵
(
さく
)
を
越
(
こ
)
える
時
(
とき
)
、
垣
(
かき
)
の
内
(
うち
)
にいた
小鳥
(
ことり
)
がびっくりして
飛
(
と
)
び
立
(
た
)
ったものですから
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その逆旅たる人生に在っても江戸に住むも近江に住むも悉く旅中の一小
宿
(
やど
)
りたるに過ぎなかった彼に在っては、死の外に帰る
棲家
(
すみか
)
はなかったのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
水際
(
みずぎわ
)
の
蘆
(
あし
)
の間には、
大方
(
おおかた
)
蟹
(
かに
)
の
棲家
(
すみか
)
であろう、いくつも
円
(
まる
)
い穴があって、そこへ波が当る度に、たぶりと云うかすかな音が聞えた。が、女は未だに来ない。
尾生の信
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何十億本という木が滅びつつあるし、鳥やけものの
棲家
(
すみか
)
は荒されるし、河はしだいに浅くなって
涸
(
か
)
れてゆくし、すばらしい景色も、消えてまた返らずさ。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
棲家
(
すみか
)
の無くなつた
大蛇
(
おろち
)
は、自然人間の胸に巣を組まねばならなくなつた。それからといふもの、和江村には
従来
(
これまで
)
無かつた精神病者がどん/\出来出した。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
純潔な処女をこの一角の怪獣の
棲家
(
すみか
)
へ送り込むと、ウニコールがすっかり大人しくなって処女の胸に頭をすりつけて来る。そこを猟師がつかまえるのだという。
マルコポロから
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
山中で、怪物に会って、馳け込んだ家が、丁度怪物の
棲家
(
すみか
)
であるように、母と青年とから逃れて来ても、彼等は相つづいて、同じ此の部屋に帰って来るのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「これがおれのついの
棲家
(
すみか
)
だ」彼は溜息をつきながら呟やいた、「おれはこの部屋で年をとり、やがていつかは兄の家族の誰かにみとられて、この部屋で死ぬんだ」
艶書
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
長虫は処を得て這いまわり、また翅虫は澱みを幸い湧きむらがって、人の
棲家
(
すみか
)
とも思えなかった。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
権次は満足に歩くことも出来なかった。あばら家は朽ちて傾いて、広い庭は
狐狸
(
こり
)
の
棲家
(
すみか
)
と変った。
番町皿屋敷
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼等の潜伏する場所として屈強の
棲家
(
すみか
)
だと
点頭
(
うなずか
)
れるのだから、そういうような話の方面からも、この
羅馬
(
ローマ
)
を開拓すれば、何か
頗
(
すこぶ
)
る面白いものを手に入れられるか知れぬが
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
ことによるとそれは、太古以来生き残っている原人の
棲家
(
すみか
)
かも知れない……なぞと云い出す
凝
(
こ
)
り
屋
(
や
)
も居る。そうかと思うと……ナアニそれは薬草採りが見当違いをしたんだ。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
其れを植えた時、墓地の東隣に住んで居た唖の子が、其幹を指して、何かにょろ/\と上って行く
状
(
さま
)
をして見せたが、墓地にあった時から此百日紅は蛇の
棲家
(
すみか
)
であったのだ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
濃いけれど柔かい
地蔵眉
(
じぞうまゆ
)
のお宮をば大事な
秘密
(
ないしょ
)
の楽しみにして思っていたものを、根性の悪い柳沢の
嫉妬心
(
しっとしん
)
から、
霊魂
(
たましい
)
の安息する
棲家
(
すみか
)
を引っ
掻
(
か
)
きまわされて、汚されたと思えば
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
清末某省某州附近の十余県には幇匪の出没最も
劇
(
はげ
)
しく中にも某県の十八段という地方四五里四方は全く匪の
棲家
(
すみか
)
となり、一万以上の匪がここを根城として地方へ出稼したもので
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ります。誰も、今迄こゝに休んだことはないのでございます。若しもソーンフィールド
莊
(
ホール
)
に幽靈がゐるのだつたら、こゝがその
棲家
(
すみか
)
だらうと申すものもあるやうでございますよ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
普通の感能を供えしものにして
誰
(
たれ
)
か己に生を与えし国土を愛せざるものあらんや、鳥獣かつその
棲家
(
すみか
)
を認むいわんや人においてをや、かつてユダヤの愛国者がバビロン河の
辺
(
ほと
)
りに坐し
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
土壊
(
つちくい
)
で土地が沈み、太い門柱が
門扉
(
とびら
)
をつけたままごろんと
寝転
(
ねころが
)
っている。小瓦の上には、
苔
(
こけ
)
が
蒼々
(
あおあお
)
。夏は
飛蝗
(
ばった
)
や
蜻蛉
(
とんぼ
)
の
棲家
(
すみか
)
になろう、その苔の上に落葉が落ち積んで、どす黒く腐っている。
平賀源内捕物帳:萩寺の女
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
やれ嬉しやと
切石
(
きりいし
)
を拾うて脇差の
柄
(
つか
)
に打付け、
袂
(
たもと
)
にあり合う綿に火を移し、枯枝にその火を掛けて
焚火
(
たきび
)
をなし、また
樹
(
き
)
の枝を折って樹から樹を柱に、屋根をこしらえて
雨露
(
あめつゆ
)
を
凌
(
しの
)
ぐの
棲家
(
すみか
)
となし
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「風が吹けば浪が騷ぎ、汐が滿ちれば潟が隱れる。漁船は年々殖えて魚類は年々減りつゝあり。川から泥が流れ出て海は次第に淺くなる。幾百年の後にはこの小さい海は
干乾
(
ひから
)
びて、魚の
棲家
(
すみか
)
には草が生えるであらう。……」
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
小さなてめい等
集団
(
グループ
)
の
棲家
(
すみか
)
じゃない
墓場が用意された!:――×××組合のダラ幹を葬れ――
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
自分はそこに
棲家
(
すみか
)
を
見出
(
みいだ
)
す
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
「十一、十二、十三——何を数えてるのか知らねえが、とんだ皿屋敷だ。ここらは猿の
棲家
(
すみか
)
だてえから、定めし狐も多かろう。化かされめえぞ。」
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
恐
(
おそ
)
らく
震災
(
しんさい
)
で一度
潰
(
つぶ
)
れたのを、また復活させてみたが、思わしくないので、そのまま
蜘蛛
(
くも
)
の
棲家
(
すみか
)
に
委
(
ゆだ
)
ねてしまったものだろう。それにしても……。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
社の報酬はいふに足らぬほどなれど、
棲家
(
すみか
)
をもうつし、
午餐
(
ひるげ
)
に往く
食店
(
たべものみせ
)
をもかへたらんには、
微
(
かすか
)
なる暮しは立つべし。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
音にきく
源平
(
げんぺい
)
時代のむかし、
天狗
(
てんぐ
)
の
棲家
(
すみか
)
といわれたほどの鞍馬の山路は、まったく話にきいた以上のけわしさ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
梶は高田とよく会うたびに栖方のことを
訊
(
たず
)
ねても、家が焼け
棲家
(
すみか
)
のなくなった高田は、栖方についてはもう興味の
失
(
う
)
せた答えをするだけで、何も知らなかった。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「
狐狸
(
こり
)
の
棲家
(
すみか
)
と
云
(
い
)
ふのだ、
相馬
(
さうま
)
の
古御所
(
ふるごしよ
)
、いや/\、
酒
(
さけ
)
に
縁
(
えん
)
のある
處
(
ところ
)
は
酒顛童子
(
しゆてんどうじ
)
の
物置
(
ものおき
)
です、
此
(
これ
)
は……」
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
鬼の
棲家
(
すみか
)
を過ぎて仙郷に入るような気がして昔の支那人の書いた夢のような物語を想い出すのである。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「ここはお身が
永久
(
とわ
)
の
棲家
(
すみか
)
じゃ。」と、彼はおごそかに言った。「身も魂もここに封じられた以上は、ふたたび人間の
代
(
よ
)
に帰ろうとて帰られぬ。また帰るべき家もない。 ...
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夏は青々として眼がさめる。
葭切
(
よしきり
)
、
水鶏
(
くいな
)
の
棲家
(
すみか
)
になる。螢が此処からふらりと出て来て、田面に乱れ、墓地を飛んでは
人魂
(
ひとだま
)
を真似て、時々は彼が家の
蚊帳
(
かや
)
の天井まで舞い込む。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
しかも人生の日常の喜怒哀楽というものは
此処
(
ここ
)
に存しているのであって、社会機構というものは仮の
棲家
(
すみか
)
にすぎず、ふるさとは人間性の中にある。之なくして人間に生活はない。
咢堂小論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
わずか五両か十両の
瑇瑁
(
たいまい
)
のために、女性の優しさのすべてを捨てて、死骸に付く狼のように、殺された女の死骸を慕うて駆けて行くのを見ると、市九郎は、もうこの罪悪の
棲家
(
すみか
)
に
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
これより約一里ばかり谷川の上流になりますがな、
千疋洞
(
せんびきどう
)
という
窟
(
いわや
)
がござる。そこが敵の
棲家
(
すみか
)
でござるよ。すなわちそこには不死身の怪物、才蔵と
宣
(
なの
)
る十八、九歳の狼使いがおるのでござる。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ソーンフィールド莊が陰氣な
廢墟
(
はいきよ
)
になつて、
蝙蝠
(
かうもり
)
や梟の
棲家
(
すみか
)
になつた夢を。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
何か
素敵
(
すてき
)
な大金儲けで。
彼奴
(
あいつ
)
が邪魔じゃと思うた一念。
狙
(
ねら
)
う相手が一人で歩るく。
情婦
(
いろ
)
の
棲家
(
すみか
)
か
賭博
(
ばくち
)
の打場か。又は秘密の相談場所だの。ソッと入込む息抜き場所に。近いあたりの道筋突き止め。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「風が吹けば浪が騒ぎ、潮が満ちれば潟が隠れる。漁船は年々殖えて魚類は年々減りつつあり。川から泥が流れでて海はしだいに浅くなる。幾百年の後にはこの小さな海は
干乾
(
ひから
)
びて、魚の
棲家
(
すみか
)
には草が生えるであろう。……」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
初めのうちは、刑務所ほど平和な、そして気楽な
棲家
(
すみか
)
はないと思って
悦
(
よろこ
)
んでいた。しかし何から何まで単調な所内の生活に、
遂
(
つい
)
に
愛想
(
あいそう
)
をつかしてしまった。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
棲
漢検準1級
部首:⽊
12画
家
常用漢字
小2
部首:⼧
10画
“棲”で始まる語句
棲
棲息
棲処
棲居
棲所
棲木
棲巣
棲遅
棲息地
棲主