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梯子段
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はしごだん
ふりがな文庫
“
梯子段
(
はしごだん
)” の例文
仕事は
放擲
(
うつちや
)
らかして、机の上に肘を突き兩掌でぢくり/\と鈍痛を覺える頭を揉んでゐると、女中がみしり/\
梯子段
(
はしごだん
)
を昇つて來た。
業苦
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
その途中の甚だ乱雑なのに驚かされたが、低い
梯子段
(
はしごだん
)
のあがり口で、かの守田
勘弥
(
かんや
)
に
出逢
(
であ
)
うと、きょうもやはり丁寧に挨拶していた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それからさっさと土間からかけてある
梯子段
(
はしごだん
)
で向うむきのまま靴を脱ぎ、メリンスのカーテンの垂らしてある中二階へ上って行った。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それから又足音を
偸
(
ぬす
)
んで、
梯子段
(
はしごだん
)
を下りて来ると、下宿の御婆さんが心配さうに、「御休みなすつていらつしやいますか」と
尋
(
き
)
いた。
あの頃の自分の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
たまに来てもさも
気兼
(
きがね
)
らしくこそこそと来ていつの
間
(
ま
)
にか、また
梯子段
(
はしごだん
)
を下りて人に気のつかないように帰って行くのだそうである。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
梯子段
(
はしごだん
)
を
踏轟
(
ふみとどろ
)
かして上ッて来て、
挨拶
(
あいさつ
)
をもせずに
突如
(
いきなり
)
まず
大胡坐
(
おおあぐら
)
。我鼻を視るのかと怪しまれる程の下眼を遣ッて文三の顔を視ながら
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そうして狭く小さくなった彼の意識の中へ
微
(
かすか
)
な
跫音
(
あしおと
)
が入って来た。それは二階の
梯子段
(
はしごだん
)
をあがって来ているような微な微な跫音であった。
雀が森の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
室へ帰る時、二階へ通う
梯子段
(
はしごだん
)
の下の
土間
(
どま
)
を通ったら、
鳥屋
(
とや
)
の中で鶏がカサコソとまだ寝付かれぬらしく、ククーと淋しげに鳴いていた。
嵐
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「あ……それなら向うの突当りの
梯子段
(
はしごだん
)
をお上りになると、直ぐ左側のお部屋で御座います。十二番と十三番のお二間になっております」
女坑主
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
梯子段
(
はしごだん
)
の二三段を
一躍
(
ひとと
)
びに
駈上
(
かけあが
)
つて
人込
(
ひとご
)
みの中に
割込
(
わりこ
)
むと、
床板
(
ゆかいた
)
の
斜
(
なゝめ
)
になつた低い
屋根裏
(
やねうら
)
の
大向
(
おほむかう
)
は大きな船の底へでも
下
(
お
)
りたやうな
心持
(
こゝろもち
)
。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
『
梅子
(
うめこ
)
さん!
梅子
(
うめこ
)
さん!
直
(
す
)
ぐに
手套
(
てぶくろ
)
を
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
て
頂戴
(
てうだい
)
!』と
云
(
い
)
ふ
聲
(
こゑ
)
がして、
軈
(
やが
)
てパタ/\と
梯子段
(
はしごだん
)
を
上
(
のぼ
)
る
小
(
ちひ
)
さな
跫音
(
あしおと
)
がしました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
女は足を
爪立
(
つまだ
)
てて台所へ出て、女中に病室へ行っているように差図した。それから帽子と
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
とを持って、飛ぶように
梯子段
(
はしごだん
)
を降りた。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
とりあえず、その話を簡単に多吉の耳に入れて置いて、やがてその足で彼は二階の
梯子段
(
はしごだん
)
を上って行って見た。夕日は
部屋
(
へや
)
に満ちていた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
正吉の重みで
梯子段
(
はしごだん
)
が
軋
(
きし
)
むと、お
美津
(
みつ
)
は
悪戯
(
いたずら
)
らしく上眼で
睨
(
にら
)
んだ。——十六の乙女の
眸子
(
ひとみ
)
は、そのとき
妖
(
あや
)
しい光を帯びていた。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
梯子段
(
はしごだん
)
を昇る時、何心なく隣の部屋を覗くと、三十二三の遊び人風の男を、十八九の可愛らしい娘が、一生懸命なだめているのが見えます。
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その屋根裏へ通うのにはアトリエの室内に
梯子段
(
はしごだん
)
がついていて、そこを上ると手すりを
繞
(
めぐ
)
らした廊下があり、あたかも芝居の
桟敷
(
さじき
)
のように
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
だが
梯子段
(
はしごだん
)
を
下
(
お
)
りるには下りたが、登るのはよほどの苦痛で
咳入
(
せきい
)
り、それから横になって間もなく他界の人となってしまった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
君もよく知っている通り、その上げ
蓋
(
ぶた
)
を明けて、繩梯子でも
卸
(
おろ
)
してくれる外には、
梯子段
(
はしごだん
)
も何もないんだから。人間業では出られやしない。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そう云って、その友達は、
白粉
(
おしろい
)
の濃い綺麗な顔で、店の暗い
梯子段
(
はしごだん
)
を降りて来た。——わたしは海添いの旅館に宿をとった。
田舎がえり
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
やがて荒っぽい足音がきこえると、縁側から二階の
梯子段
(
はしごだん
)
へむかっていたたまれぬように
駈
(
か
)
けあがってゆく後姿が見えた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
晩には、汗まみれになり疲れはてて、緑の帽子を目深にかぶり、監視の者の
笞
(
むち
)
の下に、海に浮かんだ徒刑場の
梯子段
(
はしごだん
)
を二人ずつ上ってゆくのだ。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「坊様、暗うございますよ」と言ったぎり、女とともに登ってしまったから僕もしかたなしにそのあとについて暗い、狭い、急な
梯子段
(
はしごだん
)
を登った。
少年の悲哀
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
源蔵の眼と、貞四郎の眼とは、
梯子段
(
はしごだん
)
の途中と下で
凝
(
じっ
)
と結びついていた。女中の来る
気勢
(
けはい
)
がしたので、二人は、無言のまま、二階へ戻って行った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私は嬉しさの余り、二段づゝ急いで
梯子段
(
はしごだん
)
を上つた。座敷に入つてゆくと、皆はもういゝ加減に酔つてゐる所だつた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
真紀 昨日はお天気だったが明日は雨だろう、とか、家の二階の
梯子段
(
はしごだん
)
は十二段だけれどあんたんところは何段ですって話だの、そんな話ばかりかい。
みごとな女
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
彼らは、次郎が
梯子段
(
はしごだん
)
を上る音で話をやめ、一せいにこちらを見たらしかったが、誰の顔も石像のように固かった。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「靴はお持ち致しますから。さあどうぞこちらの方へ、御二階の方で御座いますが」とその美しい声の主は、真暗な
梯子段
(
はしごだん
)
を先に立って案内してくれる。
I駅の一夜
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
箱根竹を
矯
(
た
)
めて
円蓋
(
えんがい
)
を作り、そのしほんに
梯子段
(
はしごだん
)
を持たせて、いつぞやお話した百観音の
蠑螺堂
(
さざえどう
)
のぐるぐると廻って階段を上る行き方を参考としまして
幕末維新懐古談:63 佐竹の原へ大仏を拵えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
お増は浅井に済まないような、
拗
(
す
)
ねて見せたいようななつかしい落着きのない心持で、急いで
梯子段
(
はしごだん
)
をあがった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
女が
梯子段
(
はしごだん
)
を下りて行ったあとで、しばらく男はひとりでいた。ひとりでいると障子が余りに白く鮮やかで、なにかが映ってくるようなあやしい予期をさせた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
樽
(
たる
)
の間を探してみたが、何も居ない。——刑事は
頤
(
あご
)
をしゃくった。その方角に
梯子段
(
はしごだん
)
が斜めに掛っていた。
疑問の金塊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
話し声を聞くとどうやらそれは女らしく、しばらくすると、その声の持ち主が
梯子段
(
はしごだん
)
を登ってきました。
塵埃は語る
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
なにか心待ちにしていることがあるらしく、何度も何度もそわそわとして、
梯子段
(
はしごだん
)
の方をふりかえった。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
振り払い、振り払い、矢を負った
獣物
(
けもの
)
のように、私は夢中になって狭い急な
梯子段
(
はしごだん
)
を駆けおりた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
梯子段
(
はしごだん
)
を登り来る足音の早いに驚いてあわてて
嚥
(
の
)
み下し
物平
(
ものへい
)
を得ざれば胃の
腑
(
ふ
)
の必ず鳴るをこらえるもおかしく
同伴
(
つれ
)
の男ははや十二分に参りて元からが不等辺三角形の眼を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
自分は、起きると下へ行く
梯子段
(
はしごだん
)
に
万朝報
(
まんちょうほう
)
が置いてあるのを取り上げた。京都では東京の各新聞はちょうど一時頃に配達されるのだった。自分は、何気なく万朝報を取上げた。
天の配剤
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
お松は夜着の中から滑り出て、
鬆
(
ゆる
)
んだ細帯を締め直しながら、
梯子段
(
はしごだん
)
の方へ歩き出した。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
テカテカする
梯子段
(
はしごだん
)
を登り、長いお廊下を通って、
漸
(
ようや
)
く奥様のお
寝間
(
ねま
)
へ
行着
(
ゆきつき
)
ましたが、どこからともなく、ホンノリと来る
香
(
こう
)
は
薫
(
かお
)
り
床
(
ゆか
)
しく、わざと細めてある
行燈
(
あんどう
)
の
火影
(
ほかげ
)
幽
(
かす
)
かに
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
泥々に酔って二階へ押上って、つい
蹌踉
(
よろ
)
けなりに
梯子段
(
はしごだん
)
の欄干へつかまると、ぐらぐらします。屋台根こそぎ波を打って、下土間へ
真逆
(
まっさか
)
に落ちようとしました……と云った
楼
(
うち
)
で。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其光りで下を見ると
梯子段
(
はしごだん
)
の下は一パイの捕手で槍の穂先は
晃
(
ぴ
)
か/\と丸で
篠薄
(
しのすすき
)
です。三発やると初めに私を捕へた男が持つた槍をトンと落して斃れました。私は嬉しかつた……。
千里駒後日譚
(新字旧仮名)
/
川田瑞穂
、
楢崎竜
、
川田雪山
(著)
梯子段
(
はしごだん
)
があぶなくって、女の人は
滑
(
すべ
)
って首の骨をへし折っちまいそうなんだ。そいつを僕が平気で
降
(
お
)
りられたもんで、それから、この僕でなけりゃならないってことになったんだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それでね、早速荷物を片附けて、前の下宿へ帰ろうと思って、そう断ろうと
梯子段
(
はしごだん
)
を降りると、爺さんも婆さんもいなくて、十二三の女の子がいた。仕方なく、その女の子に話すと
貸間を探がしたとき
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私はそんな人達から一尺程の金魚の沢山沢山居ると云ふ池やら、綺麗な花の咲いた
築山
(
つきやま
)
やら、
梯子段
(
はしごだん
)
の幾つにも折曲つたと云ふ二階や、中二階、離座敷の話をして貰ふのが楽みでした。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
お蔦が足をすべらせないように木で張った
梯子段
(
はしごだん
)
をおり切ると、眼の前の二間ほどの所に、
荒筵
(
あらむしろ
)
が二枚だらりと下がっていて、その目を通して、何やら黄色い光が、地獄の夢のように
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一段高く
梯子段
(
はしごだん
)
を上ったところに、浅間神社を勧請した
離屋
(
はなれや
)
が、一屋建ててあり、紀伊殿御祈願所の木札や、文化年間にあげたという、
太々神楽
(
だいだいかぐら
)
の額や、天保四年と記した中山道深谷宿
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
梯子段
(
はしごだん
)
の上り口を見返るのは、どうも人が上って来るような気配がして、トントンと梯子段の途中まで上って来ては、そこで立ち止まっているものがあるように思われてならないからです。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二室ばかり向うに抜け
梯子段
(
はしごだん
)
を上に
昇
(
あが
)
り、その人の本堂の室へ着きました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
折
(
おり
)
から何だか、気味を
好
(
よ
)
く思っていないところへ、ある晩高麗蔵さんが、二階へ
行
(
ゆ
)
こうと、
梯子段
(
はしごだん
)
へかかる、
妻君
(
さいくん
)
はまた
威
(
おど
)
かす気でも何でもなく、上から下りて来る、その顔に薄く
燈
(
あかり
)
が
映
(
さ
)
して
薄どろどろ
(新字新仮名)
/
尾上梅幸
(著)
暗がりの
梯子段
(
はしごだん
)
をよくまあ踏みはづさなかつたと思ふくらゐ、下の座敷へ飛びこんでみると庭の雨戸はいつのまにか一枚のこらず外され、おやもう夜が明けるのかしらと思つたほど明るかつた。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
こういう
愛嬌
(
あいきょう
)
を浴びせかけられたので、老人はあいた口もふさがらず、突っ立ったまま、中二階をさして
梯子段
(
はしごだん
)
を上って行くわが子の姿を見えなくなるまで、
嘲笑
(
あざわら
)
うような顔つきで見送っていた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
梯
漢検準1級
部首:⽊
11画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
段
常用漢字
小6
部首:⽎
9画
“梯子”で始まる語句
梯子
梯子口
梯子酒
梯子乗
梯子登
梯子乘
梯子伝
梯子壇
梯子昇
梯子櫓