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ふりがな文庫
“
扶
(
たす
)” の例文
「助けてい!」と言いさまに、お雪は何を
狼狽
(
うろた
)
えたか、
扶
(
たす
)
けられた滝太郎の手を振放して、
僵
(
たお
)
れかかって拓の袖を千切れよと
曳
(
ひ
)
いた。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
扶
(
たす
)
け給え」と、悲鳴をあげながら、皇甫嵩の前へひれ伏したが、ひとりの兵が跳びかかったかと見るまにその首はもう落ちていた。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……いつの間にか往来に倒れているのを誰か
扶
(
たす
)
け起してくれたように思う。そうしてそれを振り離して、又駆け出したようにも思う。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
今一つは昨年九月末の出来事に
繋
(
つなが
)
れり。予は久しぶりにて、わが家より程遠からぬ湯屋に物せんとて、家人に
扶
(
たす
)
けられて門を出でたり。
予が見神の実験
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
また良人を師として常に教えられ、親友以上の親友として、不安動揺の生の中に信頼し
扶
(
たす
)
け合って行く情味も一つの原因であろう。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
ハリイ男爵は、例の子供らしい腕をした小さな、小麦色の肌の女を、
扶
(
たす
)
けおろした。念を入れて、じょうずにおろしたのである。
ある幸福
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
これはいけない。これは
最早
(
もはや
)
扶
(
たす
)
からない。しかし、
今日
(
こんにち
)
までの経過は、こう
迅
(
はや
)
く迫って来べきでないが、何か、どうかしたのではないか。
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
半時おきほどづつに、かう
極
(
きま
)
つたやうに言つて、看病人に
扶
(
たす
)
けられつゝ、半身を起き上らして貰つたり、寢さして貰つたりした。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
同事とは他人の願い求める仕事を理解して、それを
扶
(
たす
)
け誘導することです。禍福を分かち、苦楽を共にするというのがそれです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
枕山の妻は七月
盂蘭盆
(
うらぼん
)
のころから
枕
(
まくら
)
に伏していた。枕山は老母と病妻とを
扶
(
たす
)
けて五十日ほど某所に
立退
(
たちの
)
き、やがて三枚橋の旧居に還った。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼はこの時
扶
(
たす
)
けし手を放たんとせしに、
釘付
(
くぎつけ
)
などにしたらんやうに
曳
(
ひ
)
けども振れども得離れざるを、怪しと女の
面
(
おもて
)
を
窺
(
うかが
)
へるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
かなり実用的学問を授けたくなって、それより大事な心底に潜伏してある精力を開発してやろう修養を
扶
(
たす
)
けようという心が
疎
(
おろそ
)
かになり易い。
教育家の教育
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
この手腕は少からず彼の収入を
扶
(
たす
)
けたことであらう。彼のジヤアナリズムは十字架にかかる前に正に最高の市価を占めてゐた。
続西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蓋し老人は老を
諱
(
い
)
むが故のみ。
若
(
も
)
し少壮なる者ならば、
扶
(
たす
)
けらるるも扶けられざるも与に可、何の
瞋
(
いか
)
ることか有らん。(老学庵筆記、巻八)
放翁鑑賞:07 その七 ――放翁詩話三十章――
(新字旧仮名)
/
河上肇
(著)
その家の娘を嫁にむかえて
親戚
(
しんせき
)
となってからは、なにかにかこつけてしばしば物などおくっては母子の生活を
扶
(
たす
)
けようとするのであったが
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
さきにいはれしごとく
二人
(
ふたり
)
の
勇士
(
ますらを
)
を
遣
(
おく
)
りて己が
新婦
(
はなよめ
)
を
扶
(
たす
)
け給へり、かれらの
言
(
ことば
)
と
行
(
おこなひ
)
とにより迷へる人々道に歸りき 四三—四五
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
家元なる人もまたかくの如き後進を
扶
(
たす
)
けて行く事に
力
(
つと
)
めて、ゆめにもその進路を妨げるやうな事をしてはならぬ。(八月三日)
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
苦痛の重荷に押し据ゑられたる我は、アヌンチヤタが足の下に伏しまろびしに、アヌンチヤタ
徐
(
しづ
)
かに
扶
(
たす
)
け起し、すかして戸外に伴ひ出でぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
車夫は
肯
(
き
)
き入れず——あるいは聞えなかったかもしれぬ——
轅
(
かじ
)
を下におろし、その老女をいたわり
扶
(
たす
)
け起し、
身体
(
からだ
)
を支えながら彼女に訊いた。
些細な事件
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
第三
酒
(
さけ
)
茶
(
ちや
)
菓子
(
かし
)
の
類
(
るゐ
)
は
食時
(
しよくじ
)
の
節
(
せつ
)
少々
(
せう/\
)
用
(
もち
)
ゐて
飮食
(
いんしよく
)
の
消化
(
せうくわ
)
を
扶
(
たす
)
くるは
害
(
がい
)
なしと
雖
(
いへど
)
も、その
時限
(
じげん
)
の
外
(
ほか
)
退屈
(
たいくつ
)
の
時
(
とき
)
用
(
もちゆ
)
る
等
(
とう
)
は
害
(
がい
)
ある
事
(
こと
)
。
養生心得草
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
文次郎は引っ返して老婆を
扶
(
たす
)
け起そうとすると、かれは返事もせずにあえいでいた。疲れて倒れて、もう起きあがる気力もないらしいのである。
経帷子の秘密
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夢かとばかり驚きながら、
扶
(
たす
)
け參らせて
一間
(
ひとま
)
に
招
(
せう
)
じ、身は
遙
(
はるか
)
に席を隔てて
拜伏
(
はいふく
)
しぬ。思ひ懸けぬ對面に
左右
(
とかう
)
の言葉もなく、
先
(
さき
)
だつものは涙なり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
葉子はそのためになんどつまずいたかしれない。しかし、世の中にはほんとうに葉子を
扶
(
たす
)
け起こしてくれる人がなかった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その肉や
胆
(
い
)
の薬効を『本草』に記せると実際旅行中実験した欧人
輩
(
ら
)
の話とが十分二者を同物とする拙見を
扶
(
たす
)
け立たしむ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
老女は聞きも
畢
(
おわ
)
らず、窓の戸を開け放ちたるままにて、
桟橋
(
さんばし
)
の
畔
(
ほとり
)
に
馳出
(
はせい
)
で、泣く泣く巨勢を
扶
(
たす
)
けて、少女を抱きいれぬ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
坂口とビアトレスは互に顔を見合せたが、女は膝に怪我をしている様子なので、一先ず家の中へ
扶
(
たす
)
け入れる事にした。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
人の話では何でも誘拐されて祖父の
許
(
もと
)
に来たと言う。そして後妻になって祖父を
扶
(
たす
)
け、それが祖父を感化して了った。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
予はここに於て終に十年来の
素志
(
そし
)
を達する能わずして、下山の
止
(
や
)
むべからざるに至りたれば、
腑甲斐
(
ふがい
)
なくも一行に
扶
(
たす
)
けられて、吹雪の中を下山せり
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
互の愛によって一層の生活の力を感じ合い、
扶
(
たす
)
け合って行く、平和な、同時に高貴な輝きはなかなか恵まれなかった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その結果、サモアは依然名目上の王を戴き、英・米・独三国人から成る政務委員会が之を
扶
(
たす
)
けるという形式になった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
同じくはわが国に還って産をなされんとして、明神に
扶
(
たす
)
けられてこの嶺を越えたもう折に、にわかに
御催
(
おんもよお
)
しあって、山中において神子誕生なされた。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
停車場
(
ステーション
)
を出るとすぐそこに電車が待っていた。兄と自分は
手提鞄
(
てさげかばん
)
を持ったまま婦人を
扶
(
たす
)
けて急いでそれに乗り込んだ。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
咽
(
むせ
)
び泣く麗子を
扶
(
たす
)
けて、深い木立の中のロハ台に陣取った加奈子は、涙の隙から、
漸
(
ようや
)
くこれだけの事を聞きました。
向日葵の眼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして野次が艇内から敗れた選手を
扶
(
たす
)
け起して岸へ上らせていた。三番の大きな男が二人の野次の肩に凭りかかって、涙をかくしながら運び去られた。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
「それでいて馬車賃は皆同じです、動物を
劬
(
いたわ
)
り弱いものを
扶
(
たす
)
けるという精神が現れています、この頃から見てもナカ/\進んだ考えじゃありませんか?」
村の成功者
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
荷を背負った長次郎に
扶
(
たす
)
けられながら、漸く底に下りついて吻と一息する。此処から二、三間下手で南側から空滝が落ち合っている。高さは三丈に近い。
八ヶ峰の断裂
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
九月九日の
重陽
(
ちょうよう
)
の日になった。十一娘は
痩
(
や
)
せてささえることもできないような体になっていた。両親は侍女にいいつけて強いて
扶
(
たす
)
けて庭を見せにいかした。
封三娘
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
扶
(
たす
)
け起こそうとしている女王の家は、人影もにぎやかに見えてきて、
繁
(
しげ
)
りほうだいですごいものに見えた木や草も整理されて、流れに水の通るようになり
源氏物語:15 蓬生
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
万事この調子で、いろいろ心配りが多くて行きとどかぬ勝ちの私を
扶
(
たす
)
けて、それはよくしてくれたものでした。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
日露戦争前のことだが、
扶清却露
(
ふしんきゃくろ
)
という言葉があった。清朝を
扶
(
たす
)
けて、東洋に野望を抱くロシアをしりぞけようというのだ。わしらの先輩は、それだった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
病人に霊魂の
扶
(
たす
)
けを与へたり、又屡々わし自身が其日の生活にも差支へる位、施しをしたりして暮してゐた。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
部分的のものが総観的なものを
扶
(
たす
)
け補って行くのが当然であります。故に私は智と慧とは人間文化発展の両眼、一を失って一だけ保って行けるものではない。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其三尺四方の
溝
(
どぶ
)
のやうな田池の中には、
先刻
(
さつき
)
大酔して人に
扶
(
たす
)
けられて戸外へ出たかの藤田重右衛門が、殆ど池の広さ一杯に、髪を
乱
(
み
)
だし、顔を
打伏
(
うつぶ
)
して、丸で
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
ここを以ちて汝が命、上とまして、天の下
治
(
し
)
らしめせ。
僕
(
やつこ
)
は汝が命を
扶
(
たす
)
けて、
忌人
(
いはひびと
)
三
となりて仕へまつらむ
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
初めの間は僕がさうやつて上げるが、直ぐにあなたは(僕にはあなたの力が分つてゐるから)僕同樣に、強くそして
敏
(
さと
)
くなつて、僕の
扶
(
たす
)
けは要らなくなります。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
大塚は古井戸に落ちた話から、猿に
扶
(
たす
)
けられた話を女房や
婢
(
じょちゅう
)
などに聞かせていた。そして、何かの拍子に行灯の傍を見ると、白い大猿が前足をついて坐っていた。
忘恩
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
少しおくれて、次郎が左右から二人の生徒に
扶
(
たす
)
けられるようにして出て来るのが、俊亮の眼にとまった。
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
八郎太は、眼をしばたたいたきりで、自分を
扶
(
たす
)
けてくれているのは誰だか、判らなかった。だが、微かに
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
内気な人だったらしいおばあさんを
扶
(
たす
)
けながら、どんなにけなげに働いたか、そしてどんなに人に知れぬような苦労をしたか、いま私にはその想像すらも出来ない。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
一郎は追いすがって、甲子を
扶
(
たす
)
けながら、半分落ちた石橋を越えて往来に出たが、もうその時は海岸から、必死になって山手へ逃る人で、狭い道はいっぱいだった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
扶
常用漢字
中学
部首:⼿
7画
“扶”を含む語句
扶助
扶持
窒扶斯
御扶持
腸窒扶斯
扶桑略記
扶桑
食扶持
捨扶持
扶養
三人扶持
扶余
扶持高
家扶
扶持米
扶翼
扶植
相扶
蔭扶持
人扶持
...