年來ねんらい)” の例文
新字:年来
かれやまにゐるあひださへ、御米およねこの事件じけんいて何事なにごとみゝにしてれなければいがと氣遣きづかはないはなかつたくらゐである。宗助そうすけ年來ねんらいれたいへ座敷ざしきすわつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地震ぢしん考慮かうりよするやうになつたのは、各個人かくこじん眞劍しんけん生命せいめい財産ざいさん尊重そんてうするやうになり、都市とし發達はつたつ科學思想くわがくしさう普及ふきふしてからのことで、ちかく三百年來ねんらいのこととおもはれる。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
櫻木大佐さくらぎたいさその姿すがたかくすとともにかの帆走船ほまへせんその停泊港ていはくかうらずなり、あはせて大佐たいさ年來ねんらい部下ぶかとしてかみごとおやごとくに服從ふくじゆうせる三十七めい水兵すゐへいその姿すがたうしなひたりといへば
所詮ながい間の空想を實現させたので、無論父にも義母はゝにも無斷だ。彼は此の突飛とつぴきはまる行動に、勝見の一をまごつかせて、年來ねんらい耐へに耐へた小欝憤せうゝぷんの幾分をらしたのである。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
これは彌六やろくといつて、與吉よきち父翁ちゝおや年來ねんらい友達ともだちで、孝行かうかう仕事しごとをしながら、病人びやうにんあんじてるのをつてるから、れいとして毎日まいにち今時分いまじぶんとほりがかりにその消息せうそくつたへるのである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
きみ彼等かれらしんじなさるな。うそなのです。わたし病氣びやうきふのはそも/\うなのです。二十年來ねんらいわたしまちにゐてたゞ一人ひとり智者ちしやつた。ところれは狂人きちがひるとふ、是丈これだけ事實じゝつです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
七歳なゝつのとしに父親てゝおや得意塲とくいば藏普請くらぶしんに、足塲あしばのぼりてなかぬりの泥鏝こてちながら、したなるやつこものいひつけんと振向ふりむ途端とたんこよみくろぼしの佛滅ぶつめつとでもありしか、年來ねんらいれたる足塲あしばをあやまりて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こゝに又伊勢屋五兵衞の養子やうし千太郎はもとの番頭久八がなさけにておのれ引負ひきおひの金迄も久八が自分に引請ひきうけつひに是が爲に久八は年來ねんらいつと白鼠しろねずみと云れし功も水のあわとなし永のいとまと成し事其身をすて養子やうし千太郎の離縁りえん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
宗助そうすけ糸底いとぞこうへにしてわざとせた自分じぶん茶碗ちやわんと、この二三年來ねんらい朝晩あさばん使つかれたはしながめて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何しろ幾百年來ねんらい腐敗ふはいしたあらゆる有機體いうきたいの素を吸込すひこむで、土地はしツけてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
エヒミチははじめの一分時ぷんじは、なん意味いみもなく書物しよもつはなれ、ダリユシカと麥酒ビールとにわかれて、二十年來ねんらいさだまつた其生活そのせいくわつ順序じゆんじよやぶるとこと出來できなくおもふたが、またふかおもへば、市役所しやくしよりしこと
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おや/\、まあ御珍おめづらしいこと」とつて、何時いつもよりは愛想あいそよく宗助そうすけ款待もてなしてれた。其時そのとき宗助そうすけいやなのを我慢がまんして、この四五年來ねんらいめていた質問しつもんはじめて叔母をばけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)