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妾
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わらわ
ふりがな文庫
“
妾
(
わらわ
)” の例文
「いいえの、もういつまで
其方
(
そなた
)
どもをかもうてはおられぬ。さ新九郎、猶予することはないぞ、
妾
(
わらわ
)
の駕に早う乗って邸へ帰ったがよい」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
同じ東洋人なる支那の貴公子よ、
妾
(
わらわ
)
を固く信じ給え、
西班牙
(
スペイン
)
の愚人の守りおる彼の水晶球を奪い取り妾の住居へ来たりたまえ。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この事業はいまだ
半途
(
はんと
)
にして
如何
(
いか
)
になり行くべきや、常なき人の世のことは
予
(
あらかじ
)
めいいがたし、ただこの趣意を
貫
(
つらぬ
)
かんこそ、
妾
(
わらわ
)
が将来の務めなれ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
狂人走れば不狂人も走るということがある、
妾
(
わらわ
)
も今の童舞に刺激されてひとさし舞おうと言ってついに舞を舞うというのが一篇の趣向であります。
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その手紙には「罪なき
妾
(
わらわ
)
にまたいうなかれ」と書いてある。当面の責任者さえ罪を感じていないのだもの、その他の人々がなんで罪を意識していよう。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
「無礼者。
妾
(
わらわ
)
を知らぬか」と
一睨
(
いちげい
)
すると、呉一郎は愕然たる
面
(
おも
)
もちで鍬を控えて立止ったが、「アッ。
貴女
(
あなた
)
は楊貴妃様」と叫びつつ砂の上に
跪座
(
きざ
)
した。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
これを春琴伝は記して
汝等
(
なんじら
)
妾
(
わらわ
)
を少女と
侮
(
あなど
)
りあえて芸道の神聖を
冒
(
おか
)
さんとするや、たとい幼少なりとていやしくも人に教うる以上師たる者には師の道あり
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「二十三年を生きて今
妾
(
わらわ
)
ここに横たわる。」修道院が若い娘の教育をよしたのも、かかる衰微のゆえにである。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
見そなはす如き
妾
(
わらわ
)
が
容体
(
ありさま
)
、とても
在命
(
ながらえ
)
る身にしあらねば、臨終の際にただ一
事
(
こと
)
、
阿姐
(
あねご
)
に頼み置きたき
件
(
こと
)
あり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「野の菊は
妾
(
わらわ
)
の愛する花、師の君よ、師の君よ、この花をうつくしと思ひたまはずや」と書いてあった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「ああら、玉子とは丸いものかや。
妾
(
わらわ
)
は初めて拝見しまする」と、下情に通じさせながら、毎月のお買上げ金二万円也も、
可成
(
かな
)
り古いお
噂
(
うわ
)
さであるが、——その先祖以来
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
かつら 兵衛どのとやら、お身は
卜者
(
うらや
)
か人相見か。
初見参
(
ういげんざん
)
のわらわに対して、素姓賤しき女子などと、
迂濶
(
うかつ
)
に物を申されな。
妾
(
わらわ
)
は都のうまれ、母は殿上人にも仕えし者ぞ。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「駕籠の戸を笹尾が早う閉じたので、
妾
(
わらわ
)
だけは目を痛めなんだ。したが、皆の者、今宵は早う眠るが好い、左様致したなら
翌日
(
あす
)
は治ろう。
好
(
よ
)
う一畑の薬師如来を信仰せよ」
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
妾
(
わらわ
)
に
跟
(
つ
)
いてこっちへと、
宣示
(
のりしめ
)
すがごとく大様に申して、粛然と立って導きますから、
詮方
(
せんかた
)
なしに
跟
(
つ
)
いて行く。土間が冷く
踵
(
くびす
)
に障ったと申しますると、早や小宮山の顔色
蒼然
(
そうぜん
)
!
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
妾
(
わらわ
)
(お紺)は長崎の生れにて十七歳の時遊廓に身を沈め多く西洋人支那人などを客とせしが間もなく或人に買取られ
上海
(
しゃんはい
)
に送られたり上海にて同じ勤めをするうちに深く
妾
(
わらわ
)
を
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
【昨夜
妾
(
わらわ
)
は夢みたりき。山二つ響き高鳴りて
汝
(
な
)
が
頭
(
こうべ
)
に落ち、もはや汝が姿を見る
能
(
あた
)
わざりき】
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
わがやんごとなき父君、国王様には、只今、
長
(
なが
)
の旅路におわせど、そなた達を饗宴に
招
(
しょう
)
ぜよと、
妾
(
わらわ
)
に
御諚
(
ごじょう
)
下されしぞ。何じゃ、楽士共か。
六絃琴
(
ヴァイオル
)
、また
低音喇叭
(
バッスウン
)
を奏でてたもれ。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
女の弱き心につけ入りたもうはあまりに
酷
(
むご
)
きお心とただ恨めしく存じ参らせ
候
(
そろ
)
妾
(
わらわ
)
の運命はこの船に結ばれたる
奇
(
く
)
しきえにしや
候
(
そうら
)
いけん心がらとは申せ今は過去のすべて未来のすべてを
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
卿
(
おんみ
)
にもしものことあらば前夜よりしばしば誓いたる通り、
妾
(
わらわ
)
は必ず尼になりて、卿の
菩提
(
ぼだい
)
を弔わん、……さりながらかりそめにもかかる悲しきこと言わるるは、死にに往かるる心にや
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
優
(
やさ
)
し美しいとおしの、姿や
妖婉
(
あで
)
の
女郎花
(
おみなえし
)
、香ばしき口に
妙
(
たえ
)
の歌、いとも嬉しき愛の
主
(
ぬし
)
、住むふるさとの極楽に、まされる
妾
(
わらわ
)
の楽しみを、受け給わねば世の中に、これより上のおろかなし
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「
妾
(
わらわ
)
ことの姓名を問い給うか、父は元京都の産にして、姓は安藤、名は慶蔵、
宇
(
あざな
)
五光と申せしが、ある夜、母君、丹頂の鶴を夢見て、妾を胎み給いしかば、幼少の折は鶴女鶴女と申せしが——」
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
乞う事切なり。且つ此れは
妾
(
わらわ
)
が大に望む処なりと、
数回
(
すかい
)
促されたり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
出すねえッ。チョンチョン格子の彼女じゃアあるめえし、剣術大名のお姫さまが、わちきゃ、おまはんに、なんて、そんなこというもんか。
妾
(
わらわ
)
は、と
来
(
く
)
らあ。近う近う……ってなもんだ。どうでえ!
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「まことよ。仰せは
道理
(
ことわり
)
におじゃる。
妾
(
わらわ
)
とてなど……」
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
彼奴
(
かれめ
)
が
敵手
(
あいて
)
とならんこと
覚束
(
おぼつか
)
なし、
妾
(
わらわ
)
夜叉神
(
やしゃじん
)
に一命を
鬼桃太郎
(新字新仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
妾
(
わらわ
)
は死にたるに非ず、
住居
(
すまい
)
を変えたるなり。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
御
(
おん
)
ゆるしのほど願い参らせ
候
(
そろ
)
今は
二人
(
ふたり
)
が間のこと何事も水の
泡
(
あわ
)
と相成り
候
(
そうろう
)
妾
(
わらわ
)
は東京に参るべく候悲しさに胸はりさくばかりに候えど妾が力に及び難く候これぞ妾が運命とあきらめ申し候……されど妾決して自ら弁解いたすまじく候妾がかねて
想
(
おも
)
いし事今はまことと相成り候妾を
まぼろし
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「ホホホホホホ。何を
怯
(
おく
)
れていやるのじゃ、駕の中には
妾
(
わらわ
)
がおります。怖いと思うたら、先の者へぶつけた途端にそちたちは逃げるがよいぞ」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
汝
(
なんじ
)
の熱心に
賞
(
め
)
でて以後は
妾
(
わらわ
)
が教えて取らせん、汝
余暇
(
よか
)
あらば常に妾を師と頼みて稽古を励むべしと云い
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
妾
(
わらわ
)
は此の浜崎といふ処に、
呉
(
くれ
)
の
某
(
なにがし
)
といふ家の一人娘にて
六美女
(
むつみじょ
)
と申す者に
侍
(
はべ
)
り。
吾家
(
わがいえ
)
、代々此処の長をつとめて富み栄え候ひしが、満つれば欠くる世の習ひとかや。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「はい、不孝者でござります! それ故
妾
(
わらわ
)
はこのようにお詫びしているではござりませぬか!」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さればよ
殿
(
との
)
聞き給へ。
妾
(
わらわ
)
が名は
阿駒
(
おこま
)
と呼びて、この天井に棲む鼠にて
侍
(
はべ
)
り。またこの猫は
烏円
(
うばたま
)
とて、この
辺
(
あたり
)
に棲む
無頼猫
(
どらねこ
)
なるが。
兼
(
かね
)
てより妾に
懸想
(
けそう
)
し、道ならぬ
戯
(
たわぶ
)
れなせど。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
若し母と寧児さえ無くば
妾
(
わらわ
)
斯
(
かゝ
)
る危き所へ足蹈もする筈なけれど妾の如き薄情の女にも母は懐しく児は愛らしゝ一ツは母の懐しさに
引
(
ひか
)
され一ツは子の愛らしさに引されしなり
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ハーゲンよ、かつて
妾
(
わらわ
)
は、ジーグフリードのために、いうべからざる汚辱をこうむりました。王は、それを秘し隠してはいますが、そなたは、
妾
(
わらわ
)
にうち明けてくれましょうな。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
咎
(
とが
)
も
被
(
き
)
せまい、罪にもせまい。
妾
(
わらわ
)
が心で
見免
(
みのが
)
さうから、
可
(
よ
)
いかえ、
柔順
(
おとな
)
しく御殿を
出
(
で
)
や。あれを左へ
突当
(
つきあた
)
つて、ずツと右へ廻つてお庭に
出
(
で
)
や。お裏門の錠はまだ下りては
居
(
い
)
ぬ。
可
(
よ
)
いかえ。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
素
(
もと
)
より女ながら一死を
賭
(
と
)
して、
暴虐
(
ぼうぎゃく
)
なる政府に抗せんと志したる
妾
(
わらわ
)
、勝てば官軍
敗
(
ま
)
くれば
賊
(
ぞく
)
と昔より相場の
極
(
きま
)
れるを、虐待の、無情のと、今更の如く
愚痴
(
ぐち
)
をこぼせしことの恥かしさよと
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「あッ、又今度の若者も、
妾
(
わらわ
)
を付狙う黒姫の曲者よ」
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「お前様は、何で自害なされます? いいえ、その事情は大概分っておりますが、
妾
(
わらわ
)
という者を置いて勝手に死んでよいものでございますか」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妾
(
わらわ
)
に物を教えて下すった方と云うのは京のお人で、つね/″\申されましたのには、和歌の道はどんな恐ろしい鬼神をも和げ、なさけに疎い人をも動かし、佛も受納して下さる
三人法師
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
阿駒は苦しき息の下より、「いやとよ。猫にも追はれず、鼬にも襲はれず、
妾
(
わらわ
)
自らかく成り
侍
(
はべ
)
り」「さは何故の
生害
(
しょうがい
)
ぞ」「仔細ぞあらん聞かまほし」ト、また
連忙
(
いそがわ
)
しく
問
(
とい
)
かくれば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
そもじの手は、もう動きませぬか、この白い、美しい
臥床
(
ふしど
)
を選んで、いまこそ、そもじと
妾
(
わらわ
)
は(八字削除)、フローラ、私はこの手で、そもじの
灯火
(
あかし
)
を消すまいと、腕を回しているなれど……
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
決して
妾
(
わらわ
)
の一族では
是無
(
これな
)
く、赤松家の不頼の浪人であり、以前から妾に想いを懸け、『養由基』ともども奪い取ろうと、無礼にも心掛けて居りました悪漢、それをお討ち取り下されましたこと
弓道中祖伝
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
只今にては血縁の者残らず絶え果て、
妾
(
わらわ
)
、唯一人と相成りて候。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
わが
夫
(
つま
)
を殺した者は、辺洪ということになっているが、
妾
(
わらわ
)
は信じません。真の下手人は、
都督
(
ととく
)
嬀覧です。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
思いがけなき所にて思いがけなき君の姿を見申
候
(
そうろう
)
。たとい装いを変え給うとも、三年このかた
夢寐
(
むび
)
にも忘れぬ
御面影
(
おんおもかげ
)
を、いかで見逃し候べき。
妾
(
わらわ
)
は始めより頭巾の女の君なる事を承知
仕
(
つかまつり
)
候。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
木曽の大領義明に打ち滅ぼされた
西班牙
(
イスパニア
)
の司僧マドリド教主の
遺児
(
わすれがたみ
)
の
千曲姫
(
ちくまひめ
)
と申す者こそ、仮に
妾
(
わらわ
)
の娘となり、この篠井に住みましたなれど、今は行方を
眩
(
く
)
らまして、
窃
(
ひそ
)
かに敵を狙っている筈。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いまこそ、
妾
(
わらわ
)
の憎しみを知ったであろうのう。そもじを
十字架
(
クルス
)
に付ければとて、罪は
贖
(
あがな
)
えぬほどに底深いのじゃ。横蔵を
害
(
あや
)
め、慈悲太郎を殺したそもじの罪は、いまここで、
妾
(
わらわ
)
が贖ってとらせるぞ。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「オオ……
喊
(
とき
)
の声がする。敵が近づいて来るらしい。趙雲、何でそなたは、大事な若君を預りながら、なお迷っているか。早くここを去ってたも。……
妾
(
わらわ
)
などは見捨てて」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「此世の者ではござりませぬ。
妾
(
わらわ
)
は幽霊でござります」
稚子法師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「この中で今、誰やら、暗闇になったのを幸いに、
妾
(
わらわ
)
へみだらに戯れたご家来があります。はやく燭をともして、その武将を
縛
(
から
)
めてください。冠の纓の切れている者が下手人です」
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“妾”の解説
妾(めかけ、しょう)とは、婚姻した男性が、妻以外にも囲う女性のことで、経済的援助を伴う愛人を指す。
(出典:Wikipedia)
妾
漢検準1級
部首:⼥
8画
“妾”を含む語句
外妾
愛妾
洋妾
妾腹
寵妾
妾宅
妻妾
男妾
妾達
婢妾
妾狂
侍妾
蓄妾
御妾腹
妓妾
妾等
嬖妾
嬪妾
世間妾形気
側妾
...