右左みぎひだり)” の例文
一郭、中がくぼんで、石碓いしうすを拡げた……右左みぎひだりは一面のきり。さしむかひに、其でも戸のいた前あたり、何処どこともなしに其の色が薄かつた。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
道満どうまん晴明せいめい右左みぎひだりわかれてせきにつきますと、やがて役人やくにんが四五にんかかって、おもそうに大きな長持ながもちかついでて、そこへすえました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
程なく多くの足音聞ゆる中に、沓音くつおと高くひびきて、烏帽子ゑぼし七七直衣なほしめしたる貴人、堂に上り給へば、従者みとも武士もののべ四五人ばかり右左みぎひだりに座をまうく。
鼻緒の二本が右左みぎひだりで色が違ふ。それで能く覚えてゐる。いま仕事中しごとちうだが、ければあがれと云ふ小女こをんな取次とりつぎいて、画室へ這入はいつた。ひろい部屋である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うかめ大岡殿の仁心じんしんを悦びかんとぶが如くに馬喰町の旅宿りよしゆくもどれば友次郎お花は今日の首尾しゆび如何なりしと右左みぎひだりより問掛とひかけるに忠八は越前守殿の仁智じんち概略あらまし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『こゝまで来てうしたものだ。お城はもうすぐだ。』と、人々は右左みぎひだりからすかしたが、娘はもうかなかつた。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし、右左みぎひだり前後まえうしろと見まわしても、何も見えません。次に保君の目は洞穴の天井を見上げました。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして庄造は、首を右左みぎひだりへ揺さ振り揺さ振り、電車線路を向う側へ渡った。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
石は眉毛を右左みぎひだりひとしく碎き、其骨も
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
雨戸あまどけて欄干らんかんからそとると、山気さんきひやゝかなやみつて、はしうへ提灯ちやうちんふたつ、どや/\と人影ひとかげが、みち右左みぎひだりわかれて吹立ふきたてるかぜんでく。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をぎ一四六尾花のたけ人よりもたかく生茂おひしげり、露は時雨めきて降りこぼれたるに、一四七三つのみちさへわからざる中に、堂閣の戸右左みぎひだりたふれ、方丈はうぢやう一四八庫裏くりめぐりたるらう
隣の連中は余程世間が広い男達と見えて、右左みぎひだりかへりみて、彼所あすこにはだれがゐる、茲所こゝにはだれがゐるとしきりに知名な人の名をくちにする。なかには離れながら、互に挨拶をしたのも一二人いちににんある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして庄造は、首を右左みぎひだりへ揺さ振り/\、電車線路を向う側へ渡つた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ころしましたるおぼえは決して御座なく是は定めし人ちがひならんと種々いろ/\言解いひときけるそばより女房お節も取縋とりすがり九助は勿々なか/\人殺ひとごろしなど致す者では御座りませぬ何卒御堪忍かんにんなされて下されと倶々とも/″\泣詫なきわびる斯る處へ譜代ふだいの三五郎もはせ來り其所へ平伏ひれふし御役人樣九助儀は勿々なか/\人など殺す樣な者では御座りませぬと右左みぎひだりより取付わびるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ために、音信おとづれおこたりました。ゆめところがきをするやうですから。……とはへ、ひとつは、し、不思議ふしぎいろ右左みぎひだりひとはゞかつたのであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして庄造は、首を右左みぎひだりへ揺さ振り/\、電車線路を向う側へ渡つた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
玄関には美禰子の下駄げたがそろえてあった。鼻緒の二本が右左みぎひだりで色が違う。それでよく覚えている。今仕事中だが、よければ上がれと言う小女こおんなの取次ぎについて、画室へはいった。広い部屋へやである。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もんると、右左みぎひだり二畝ふたうねばかりなぐさみにゑた青田あをたがあつて、むか正面しやうめん畦中あぜなかに、琴彈松ことひきまつといふのがある。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かしこまつてさふらふと、右左みぎひだりから頸首えりくびつてのめらせる、とおめかけおもておほうたとき黒髯くろひげまゆひそめて
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
右左みぎひだりにしてつな引張ひつぱつたが、あしからをつけたごとくにぬつくとつててびくともせぬ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もつとみちのないところ辿たどるのではなかつた。背後うしろに、覚果さめはてぬあかつきゆめまぼろしのこつたやうに、そびへた天守てんしゆ真表まおもて差懸さしかゝつたのは大手道おほてみちで、垂々下だら/\おりの右左みぎひだりは、なかうもれたほりである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)