出掛でかけ)” の例文
けれどふ言ふのが温泉場をんせんばひと海水浴場かいすゐよくぢやうひと乃至ないし名所見物めいしよけんぶつにでも出掛でかけひと洒落しやれ口調くてうであるキザな言葉ことばたるをうしなはない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かへりもおそいが、かへつてから出掛でかけなどといふ億劫おくくふこと滅多めつたになかつた。きやくほとんどない。ようのないとききよを十時前じまへかすことさへあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
高田氏は鷹揚に訊いたが、いつも出掛でかけには夫人にさう言はれつけてゐるので、言葉の調子に何処か女らしいところがあつた。
二人して一もんもらひにでも出掛でかけしか歸り/\よくかせぐ男なりと大いにわらたる所へ長八夫婦は歸り來りしかば後藤は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何か仔細しさいの有そうな様子でしたが問返しもせず、徳蔵おじにつれられるまま、ふたりともだんまりで遠くもない御殿の方へ出掛でかけて行ましたが、通って行く林の中はさびしくッて
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
その慙恨ざんこんじょうられて、一すいだもせず、翌朝よくちょうついけっして、局長きょくちょうところへとわび出掛でかける。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ところあめだ。當日たうじつあさのうちから降出ふりだして、出掛でかけけるころよこしぶきに、どつとかぜさへくははつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝早く出掛でかけ間際まぎわに腹痛みいづることも度々たびたびにて、それ懐中の湯婆子ゆたんぽ懐炉かいろ温石おんじゃくよと立騒ぐほどに、大久保よりふだつじまでの遠道とおみちとかくに出勤の時間おくれがちとはなるなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
藩の小士族などは酒、油、醤油などを買うときは、自分みずから町に使つかいに行かなければならぬ。所がその頃の士族一般のふうとして、頬冠ほほかむりをしてよる出掛でかけて行く。私は頬冠は大嫌いだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
拠無よんどころなく夕方から徒歩で大坂おおさかまで出掛でかける途中、西にしみやあまさきあいだで非常に草臥くたびれ、辻堂つじどう椽側えんがわに腰をかけて休息していると、脇の細道の方から戛々かつかつと音をさせて何か来る者がある
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
あさつぱら出掛でかけつちやつてまあだ行逢えきやえもしねえから、どうするつちんだかわかんねえが、どうせうめ面付つらつきもしちやらんめえな、んで怪我けがなんぞさせてえゝ心持こゝろもちぢやあんめえな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『涼しいあひだにと云つてお出掛でかけに成つたの。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
すぐに野らへお出掛でかけなさい。
其日そのひはそれでわかれ、其後そのごたがひさそつてつり出掛でかけたが、ボズさんのうちは一しかないふる茅屋わらや其處そこひとりでわびしげにんでたのである。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
神經しんけいおこつたとき、わざ/\そんな馬鹿ばかところ出掛でかけるからさ。ぜにしてくだらないことはれてつまらないぢやないか。其後そのごもそのうらなひうちくのかい
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其夜そのよ慙恨ざんこんじやうられて、一すゐだもず、翌朝よくてうつひけつして、局長きよくちやうところへとわび出掛でかける。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
お一人で、お留守番ばかりしていらしッちゃおさむしいでしょう。わたくしなんぞも、女中はいませんし、そう一日針ばかりも持っていられませんから、時々人様のところへお邪魔に出掛でかけると、つい長尻ながっちり
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
きせたる奴はお前も知ての藪醫者やぶいしや長庵坊主ばうず相違さうゐ無しうばかりではわからぬがかぞへて見れば八年あと八月廿八日に寅刻なゝつおきして三日ゆゑいつもの通り平川の天神樣てんじんさまへ參詣に出掛でかけた處か早過はやすぎ往來ゆきゝの人はなしあめしきりにつよふりこまつたなれど信心しんじん參り少しもいとはず參詣なし裏門うらもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
せっかく来た者だから毎日はいってやろうという気で、晩飯前に運動かたがた出掛でかける。ところが行くときは必ず西洋手拭の大きな奴をぶら下げて行く。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また御出掛でかけですか。よござんす。洋燈ランプわたくしが気をけますから。——小母をばさんが先刻さつきからはらいたいつてたんですが、なにたいした事はないでせう。御緩ごゆつく
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「又御出掛でかけですか。何か御買物おかひものぢやありませんか。わたくしければつてませう」と門野かどのおどろいたやうに云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひまさへあれば下宿へ出掛でかけて行つて、一人一人ひとりひとりに相談する。相談は一人一人ひとりひとりかぎる。大勢おほぜいると、各自めいめいが自分の存在を主張しやうとして、やゝともすれば異をてる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助の懐中くわいちうは甚だ手薄てうすになつた。代助は此前ちゝつた時以後、もううちからは補助を受けられないものと覚悟をめてゐた。今更平気なかほをして、のそ/\出掛でかけて行く了見は丸でなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)