)” の例文
寺の門、町はずれから見たる日光群山、桑畑のとり、路傍の、うどんひもかわと書いた大和障子やまとしょうじなどの写生がだんだんできた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
この瓦版を柏原を振出しにして、さめ、番場、高宮こうみや越知川えちがわ武佐むさ、守山、草津と、大声をあげあげ呼売りをして歩きました。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
探険家はだれかというと、川上一郎君、すなわちポコちゃんと、やま万造まんぞう君、すなわちせんちゃんと、この二人の少年だった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
武蔵野にもようやく春の訪れが来た。遠くにみえる秩父ちちぶの山の雪も消えてかしらの梅はいま満開である。庭さきへうぐいすが来てしきりにさえずって行く。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
愛知川えちがわ、小野、四十九院、摺針すりばり番場ばんばさめ柏原かしわばら。そして、伊吹のふもとまで、つつがなければもう近い。しかし、遠いここちでもあった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子供をぶった見窄みすぼらしい中年の男に亀井戸たままでの道を聞かれ、それが電車でなく徒歩で行くのだと聞いて不審をいだき、同情してみたり
雑記帳より(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
の中のかわずという意味で、井蛙せいあと号する人はめずらしくないが、青いという字をかぶらせた青蛙せいあの号はすくないらしい。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
井戸は江戸時代にあっては三宅坂側みやけざかそばさくら清水谷しみずだにやなぎ湯島ゆしま天神てんじん御福おふくの如き、古来江戸名所のうちに数えられたものが多かったが
いや、最初に彼と一しょにかしら公園へ出かけた三重子もまだどこかものやさしい寂しさを帯びていたものである。……
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その次はかしらで、これはどちらかと云えば高級なのが多いらしい。但、夜は高級か低級か保証の限りでない。根津権現はその又次という順序である。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
東の方は手児名てこなやしろ、そのうしろかめより水が流れ、これより石坂を登ると、弘法寺の堂の前に二葉の紅葉もみじ、秋の頃は誠に景色のい処でございます。
私の顔を見つめて、中学生みたいなことをいっているうちに、空襲警報が出て、がしら線の電車がとまった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私の家の近くにかしら公園がある。私は朝と夕方、散歩かたがた、メリーをそこへ運動に連れてゆく。私とメリーがはじめて邂逅かいこうした場所も、この公園である。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
たままで通ってます」と、若い衆が灯火をつけながら教えてくれた。「浅草の方へ行ってますか?」ともう一度尋ねると雷門かみなりもんの前で止まると云うことであった。
貸家探し (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「私のほうでは、あなたをたびたび見てるんです。ときどき大学かどこかへ出掛けるでしょう? かしら線に乗って。私、同じ電車の箱の中にいたこともあるんです」
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
私情から申してもうらみがござる。公情から申せば主義の敵でござる。貴殿にたたかいを宣するしだい、ご用心あってしかるべくそうろう。——もも久馬きゅうまそく兵馬ひょうまより山県紋也やまがたもんや殿へ
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いわんや同君はすでに書生ではない、卒業の日は浅きにもかかわらず堂々たる一個の法学士で、物産会社の役員であるのだから吾輩の驚愕きょうがくもまた一と通りではない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
例えば粟津あわづくちの弘法の池は、村の北の端にある共同井戸でありますが、昔ここにはまだ一つの泉もなかった頃に、ある老婆が米を洗う水を遠くからんで来たところへ
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
家の近くの、かしら公園の森にはいった時、私は、やっと自分の大変な姿に気が附いた。
服装に就いて (新字新仮名) / 太宰治(著)
そればかりでなく、来年三月は、いろいろ都合があって、そでさんと、宿退りをしない約束をしてあるから、今度帰ってくるのは、来年の今ごろになるだろうなどと申しました
しの線に乗り替えて、姨捨おばすて田毎たごとを窓からのぞいて、泊りはそこで松本が予定であった。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さわと申される女子おなごも、その母親も、十数年前に死去致し、郡奉行、村役人とも、当時在勤の者がおりませず、ただ、近所の百姓共の申し分には、確かに、御落胤らしき小児しょうに
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
あの馬方三吉うまかたさんきちの芝居に出て来るおひとしげ、———立派な袿襠うちかけを着て、大名の姫君ひめぎみに仕えている花やかな貴婦人、———自分の夢に見る母はあの三吉の母のような人であり
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ある日、彼はすぐ近くにある、かしら公園の中へはじめて足を踏込んでみた。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
「それでもこの間歌舞伎座かぶきざの立見につれていってやったら、ちょうどしげの子別れのところだったが、眼を赤くして涙を流して黙って泣いていた。あれで人情を感じるには感じるんだろう」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「そりゃそうと、しげを久しくやらないね。」
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
かしら公園茶店。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
あっしは十時に店を閉めて、お由が留守だから久し振りでたまへ行って見る気になりました。今戸から橋場はしばをぬけて白鬚橋しらひげばしを渡ったんです。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
の中のかわず——おまえなんかに天下のことがわかるものか、この島をでたら、分相応ぶんそうおうに、人の荷物にもつでもかついで、その駄賃だちん焼餅やきもちでもほおばッておれよ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちょっと伺いますが亀井戸かめいどへはどう行ったらいいでしょう。……たまという所へ行くのですが」と言う。
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ある朝彼は山へ行く途中、ちょうど部落のはずれにあるの前を通りかかると、あの娘が三四人の女たちと一しょに、水甕みずがめへ水をんでいるのにった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一 たまたま柳里恭りゅうりきょうの『画談』といふものを見しに、次の如きくだりあり。曰く総じて世の中にはかわず多し梁唐宋元明りょうとうそうげんみんの名あるを見ることなき故に絵に力なし。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
伊増いますの明神とかいって、古来相当にうたわれないところではなかったけれど、番場ばんばさめ、柏原——不破の関屋は荒れ果てて、という王朝時代の優雅な駅路の数には
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
晩秋のる日曜日、ふたりは東京郊外のかしら公園であいびきをした。午前十時。
犯人 (新字新仮名) / 太宰治(著)
丁度五ツどきでございましたが、お光の方様へお仕え申して居ります、表使おもてつかいのお方とやらで、三十くらいのそで様と申すお女中衆と、鴎硯おうせきと申されるお坊主衆とが一しょでございました
ぐちさん。シッカリおやんなさいよ。名優の菱田新太郎君が昨日きのうからたった一人であの一番うしろの席に来ておられるのですよ、新太郎君は女嫌いと西洋音楽嫌いで有名な人なんですからね。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しげの子別れをやっていた。女の子の子役がやった馬追いの三吉におすぎは感心した。その子は自分の役が済んでからは、お河童髪かっぱがみの姿になって、花道のわきに行儀よく坐って芝居を見ていた。
夕張の宿 (新字新仮名) / 小山清(著)
場所は、たいがい、かしらのような処だと思っていただけばい。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
六月中、うみかわいけのほとりに、水の神をまつるしきたりはあるか。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かしら公園の旅館に行き次の夜は丸子園まるこえんあかして三日の後、市ヶ谷の貸間まで一緒に来てやっとわかれた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
都の中にも、空也の掘った井戸が幾つもあって、その井を、街の人々は“弥陀みだ”と、名づけたりした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は腹立たしそうにこう云うと、くるりと若者にせなを向けて、大股にから歩み去った。若者はしかし勾玉をてのひらの上に載せながら、あわてて後を追いかけて来た。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たった一度——というのは、すこし説明を要するが、この半平は元来、貞操堅固の男だったのを友人達が引っ張り出して、東都名物の私娼窟ししょうくつたまへ連れていったのだった。
幸運の黒子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
最初から、若い者たちの、やかましい品定めを冷淡にあしらって、何とも言わなかった中老のさめが、はてしのない水かけ論に、我慢のなり難い言葉で、こう言い出しました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それが人づてに、その不貞の妻がたまへんにいると聞いて、今それを捜しに出かけるのだと仮定してみる。帽子も羽織も質に入れたくらいなら電車賃がないという事も可能である。
蒸発皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ジャンパーに、半ズボンという軽装です。乳母車を押していますね。これは、私の小さい女の子を乳母車に乗せて、ちかくのかしら、自然文化園の孔雀くじゃくを見せに連れて行くところです。
小さいアルバム (新字新仮名) / 太宰治(著)
「それはわたしも、望んでいるんだが、お由利の便りでは、上役のそでさんとやらが、可愛がって下さるとかで、急いで退りたくはないとのこと。今時の娘の心はわたしにゃせないよ」
「みなさんみなさん、福岡博多で、釣り合いとれぬが何じゃいナ。トコトンヤレトンヤレナ。あれはぐち旦那と奥さん。中洲に(泣かずに)仲よく、暮すが不思議じゃないかいな。トコトンヤレトンヤレナア」
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
菊の花しおるるまがきには石蕗花つわぶき咲き出で落葉らくようの梢に百舌鳥もずの声早や珍しからず。裏庭ののほとりに栗みのりて落ち縁先えんさきには南天なんてんの実、石燈籠いしどうろうのかげには梅疑うめもどき色づきめぬ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
どこの宿屋にも公平に内風呂というものはないので、そのの字なりの町のまんなかにある三むねの大湯へ、四方の旅籠はたごのお客様がみな手拭てぬぐいをブラ下げて蝟集いしゅうしていた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)