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乳母
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うば
ふりがな文庫
“
乳母
(
うば
)” の例文
半蔵のところへは、こんなことを言いに寄る出入りのおふき
婆
(
ばあ
)
さんもある。おふきは
乳母
(
うば
)
として、幼い時分の半蔵の世話をした女だ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
えゝも、
乳母
(
うば
)
めは
跛足
(
ちんば
)
ぢゃ!
戀
(
こひ
)
の
使者
(
つかひ
)
には
思念
(
おもひ
)
をこそ、
思念
(
おもひ
)
は
殘
(
のこ
)
る
夜
(
よる
)
の
影
(
かげ
)
を
遠山蔭
(
とほやまかげ
)
に
追退
(
おひの
)
ける
旭光
(
あさひ
)
の
速
(
はや
)
さよりも十
倍
(
ばい
)
も
速
(
はや
)
いといふ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
旅よそおいをした若い娘を
乳母
(
うば
)
らしい老女と
下僕
(
しもべ
)
らしい男とが、守護でもするように前後にはさんで、入り込んで来た一組であった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
豊前
(
ぶぜん
)
の
乳母
(
うば
)
の娘が参ったと仰っしゃって下されば、きっと、殿様も覚えておいで遊ばすことと存じます。お取次ぎくださいませ」
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
御相談
(
ごそうだん
)
をおかけになりました。この
乳母
(
うば
)
は
大
(
たい
)
そうりこう
振
(
ぶ
)
った女でしたから、
相談
(
そうだん
)
をかけられると、とくいらしく
鼻
(
はな
)
をうごめかして
鉢かつぎ
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
▼ もっと見る
江戸の
小咄
(
こばなし
)
にある、あの、「誰でもよい」と
乳母
(
うば
)
に打ち明ける恋いわずらいの令嬢も、この数個のほうの部類にいれて
差
(
さ
)
し
支
(
つか
)
えなかろう。
チャンス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
向うの
樫
(
かし
)
の木の下に
乳母
(
うば
)
さんが小供をつれてロハ台に腰をかけてさっきからしきりに感服して見ている、何を感服しているのか分らない
自転車日記
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分は
幼
(
ちひさ
)
い時
乳母
(
うば
)
から、或お姫様がどう云ふ間違からか絹針を一本お
腹
(
なか
)
の中へ呑込んでしまつた。お医者様も薬もどうする事も出来ない。
海洋の旅
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
乳母
(
うば
)
の六条の
膝
(
ひざ
)
にのって、いつも院の
御所
(
ごしょ
)
に
出仕
(
しゅっし
)
する時と同じように、何もしらないで
片言
(
かたこと
)
を言ってわしに話しかけていました。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
余りの
煩
(
わずら
)
わしさと、富を目当の求婚のおぞましさに、茂は親切な
乳母
(
うば
)
に任せ、たった一人で、偽名をして、
気儘
(
きまま
)
な湯治に出掛けたのだが。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
柳行李
(
やなぎかうり
)
から云はれた物を出して居るのは妹の
乳母
(
うば
)
でした。私はまた
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか蚊帳を出て、
定七
(
さだしち
)
の火事装束をする
傍
(
そば
)
に立つて居ました。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
刑執行人は母たり
乳母
(
うば
)
たるその婦人に向かって、異端の信仰を去れ、と言いながら、小児の死か良心の死かいずれかを選ばせようとした。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
もぬけの
殼
(
から
)
なりアナヤとばかり
蹴
(
け
)
かへして
起
(
た
)
つ
枕元
(
まくらもと
)
の
行燈
(
あんどん
)
有明
(
ありあけ
)
のかげふつと
消
(
き
)
えて
乳母
(
うば
)
が
涙
(
なみだ
)
の
聲
(
こゑ
)
あわたゞしく
孃
(
ぢやう
)
さまが
孃
(
ぢやう
)
さまが。
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
登があれば
乳母
(
うば
)
がなければならない。おのおの、その様によって集められた人材は、用い方でみな無くてはならぬものになる。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
葉子の
乳母
(
うば
)
は、どんな大きな船でも船は船だというようにひどく
臆病
(
おくびょう
)
そうな青い顔つきをして、サルンの入り口の戸の陰にたたずみながら
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
京子さん。これで僕はまだ三十二歳です。あなたとは十一違いです。もっとも子供は一人ありますがね。女の子だし、
乳母
(
うば
)
を
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
少しでも明るいところへ
抱
(
かか
)
へ出すと、かれは火のつくやうに泣き立てるので、両親も
乳母
(
うば
)
も
持余
(
もてあま
)
して、よんどころなく彼女を暗い部屋で育てた。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
恐しかった。悲しかった。子供の時に
乳母
(
うば
)
に抱かれて、
月蝕
(
げっしょく
)
を見た気味の悪さも、あの時の心もちに比べれば、どのくらいましだかわからない。
袈裟と盛遠
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
人の橋を渡る気配がしたので、私はフト
背後
(
うしろ
)
をふりかえると、高谷千代子とその
乳母
(
うば
)
というのが今橋を渡って権之助の方へ行くところであった。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
乳母
(
うば
)
は、あくる朝、夜のあいだにだれかお
城
(
しろ
)
へはいってきたものはないかと、
番兵
(
ばんぺい
)
にたずねてみました。ところが番兵は
にいさんと妹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
里子
(
さとご
)
時代に、
乳母
(
うば
)
の家族と
狭
(
せま
)
くるしい一室で
暮
(
く
)
らしていたころの光景までが、おりおりかれの眼に
浮
(
う
)
かんでいたのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
佐兵衛夫婦はちょうど生れたばかりの総領を
喪
(
な
)
くして、悲歎にくれている時だったので、そのまま総領の
乳母
(
うば
)
を留め置いて弥三郎を育てました。
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
やっぱり、夢に
賑
(
にぎや
)
かな
処
(
ところ
)
を見るようではござんすまいか。
二歳
(
ふたつ
)
か
三歳
(
みッつ
)
ぐらいの時に、
乳母
(
うば
)
の背中から見ました、
祭礼
(
おまつり
)
の町のようにも思われます。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私を育ててくれた
乳母
(
うば
)
が
名古屋
(
なごや
)
に居まして、私が子供の内に
銀杏
(
ぎんなん
)
が
好
(
すき
)
で仕様がないものだから、東京へ来ても、わざわざ心にかけて贈ってくれる。
薄どろどろ
(新字新仮名)
/
尾上梅幸
(著)
祖父
(
じい
)
様には貞夫もはや重く抱かれかね候えば、
乳母
(
うば
)
車に乗せてそこらを押しまわしたきお望みに候間近々大憤発をもって一つ新調をいたすはずに候
初孫
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
嫡男万福丸どのゝ
乳母
(
うば
)
をお呼びになりまして、「さあ、
和子
(
わこ
)
から先にしょうこうをするのですよ」と仰っしゃるのです。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
してたもれと言れて
乳母
(
うば
)
は
實
(
げ
)
にもと思ひ
暫
(
しば
)
し工夫に
暮
(
くれ
)
居
(
ゐ
)
たり
折柄
(
をりから
)
媒人
(
なかうど
)
の富右衞門來りしにより
是
(
これ
)
幸
(
さいは
)
ひと乳母は彼の艷書を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
三年の
間
(
あいだ
)
私は彼女のあると云う事を、あなたには秘密にしていましたけれど、彼女が無事に育っていると云う事は
乳母
(
うば
)
から聞いて知っておりました。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
一方の女はその
乳母
(
うば
)
で髪の毛が赤く縮れていた。太郎左衛門の家では二人に食事をさして、一室へ入れて眠らした。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
乳母
(
うば
)
を雇わなければならなかった。初めはそれがたいへんつらかった——が間もなくそれは
安堵
(
あんど
)
の念をもたらした。もう子供はたいへん丈夫になった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
するとあの人が
先
(
せん
)
におよめに来るまえに
奉公
(
ほうこう
)
していたおくさんが、エジプトへ行くというので、そのおくさんにたのんで子どもの
乳母
(
うば
)
にしてもらった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
自分が一条家に仕えるようになったのは、そもそも母親が鶴姫誕生の折り
乳母
(
うば
)
に
上
(
あが
)
って以来のことであるぐらいの経歴なら、とうの昔に知り抜いている。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
チビ公は急になきたくなった、かれは自分が生まれたときには、この
邸
(
やしき
)
の中を女中や
乳母
(
うば
)
にだかれて子守り歌を聞きながら眠ったことだろうと想像した。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
芳年
(
よしとし
)
の三十六怪選の勇ましくも物恐ろしい
妖怪変化
(
ようかいへんげ
)
の絵や、三枚続きの武者絵に、
乳母
(
うば
)
や女中に手を
曳
(
ひ
)
かれた坊ちゃんの足は幾度もその前で動かなくなった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
その当時、お神さんが
乳母
(
うば
)
に行っていたので、彼女が自分のいる近所に、夫の職を見つけてやったのである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「坊やのお
乳母
(
うば
)
はどこへ行た、あの山越えて里へ行た。里のお
土産
(
みや
)
に何もろた。でんでん太鼓に
笙
(
しょう
)
の笛——」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
子を生んだことの無いという
乳母
(
うば
)
の乳房の先きは、赤く小さくて、お湯の
雫
(
しずく
)
がぽたりぽたりと滴って居る。
かやの生立
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
順造は
乳母
(
うば
)
のことを、頭の何処かにひっかかりながらも、いつとはなしに考えの外へ投り出しがちだった。所が或る日、桂庵の婆さんが不意に若い女を連れて来た。
幻の彼方
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
つい
乳母
(
うば
)
や子守を頼むような気になる。しからば教師たるものは何を標準として自己を
律
(
りっ
)
するか。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
中には、どこかの
役人
(
やくにん
)
のうちの入口のところに、かごに入れたまま
捨
(
す
)
て子にされて、こごえ
死
(
し
)
んだのもいるし、
乳母
(
うば
)
にそえ
乳
(
ぢ
)
をされながら、
息
(
いき
)
がつまって死んだ子もいる。
キリストのヨルカに召された少年
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
忠義な
乳母
(
うば
)
のお磯とを除いた村の人間の
中
(
うち
)
で、源次郎氏が金を隠している場所を発見する可能性が一番強いのは、誰でもない……その甥の当九郎という事になるのですからね
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そんなときにこの行燈が忠義な
乳母
(
うば
)
のように自分の枕元を護っていてくれたものである。
追憶の冬夜
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ちょうど上流社会で小児の
乳母
(
うば
)
を
田舎
(
いなか
)
から抱えて何でも滋養分を食べさせなければならんと肉や魚の御馳走を
無闇
(
むやみ
)
に与えると食物の変化で乳母の乳が出なくなるようなものです。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
新築後は以前から長くいたおだいという
乳母
(
うば
)
もいなくなった。二人までいた同居の人たちも
立退
(
たちの
)
いた。別れた母の代りには姉と叔母とが立働いている。これも家庭の改革であった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
寝床へ置いても泣出すので
膝
(
ひざ
)
の上で寝かせ、
高坏
(
たかつき
)
を灯台として膝の前にともし、自分は背中を
衝立
(
ついたて
)
障子にもたせかけて、百日の間は
乳母
(
うば
)
にも預けずに世話をしたなどとあるのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
母はまた赧くなり、そして女の子を生んだがその代り母はとられた。すぐ
乳母
(
うば
)
を雇い入れたところ、おりから乳母はかぜけがあり、それがうつったのか赤児は生れて十日目に死んだ。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
身のまわりのせわは松尾という
乳母
(
うば
)
がした。彼女は木下市郎右衛門という軽い身分のものの娘で、いちど物頭の屋代藤七へ嫁したが、二年めに子を産むとまもなく死別してしまった。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
千代は備前侯池田家に縁故のあつた人で、
駕籠
(
かご
)
で岡山の御殿に乗り附ける特権を有してゐたさうである。恐らくは
乳母
(
うば
)
ではなかつたかと、私は想像する。此夫婦の間に私の父は生れた。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「私の
乳母
(
うば
)
が
丹精
(
たんせい
)
して大事に大事に育てたのです」と婦人が
誇
(
ほこ
)
り
貌
(
が
)
に口を添えた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
上京の途中は大阪の知人を
尋
(
たず
)
ね、
西京
(
さいきょう
)
見物に日を
費
(
ついや
)
し、神戸よりは船に打ち乗りて、両親および兄弟両夫婦および東京より迎えに行きたる妾と弟の子の
乳母
(
うば
)
と都合八人いずれも打ち興じつつ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
“乳母”の意味
《名詞》
乳母(うば, おんば, ちうば, ちおも, にゅうぼ, まま, めのと)
子供の母親に代わってその世話をする女性。うばを参照。
(出典:Wiktionary)
“乳母”の解説
乳母(ちおも/めのと/うば/ちもち)とは、母親に代わって子育てをする女性のこと。
(出典:Wikipedia)
乳
常用漢字
小6
部首:⼄
8画
母
常用漢字
小2
部首:⽏
5画
“乳母”で始まる語句
乳母車
乳母子
乳母日傘
乳母神
乳母奉公
乳母車綺譚