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香
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かおり
ふりがな文庫
“
香
(
かおり
)” の例文
衣服を湿らせてしまったために、高い
香
(
かおり
)
はまして一つになって散り広がるのが
艶
(
えん
)
で、村人たちは高華な夢に行き
逢
(
あ
)
ったように思った。
源氏物語:49 総角
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
次第に、馬車は速力が衰えて並足となり、夏の夜のいろいろの甘い
香
(
かおり
)
の間をゆらゆらと揺れがたがたと音を立てながら登って行った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
「まさにその通り、この赤い酒の中には、
香
(
かおり
)
も匂いも何んにもない、恐ろしい毒が入っている、たぶん
昇汞
(
しょうこう
)
というものだろうと思うが」
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それから天皇はある年、
多遅摩毛理
(
たじまもり
)
という者に、
常世国
(
とこよのくに
)
へ行って、
香
(
かおり
)
の高いたちばなの
実
(
み
)
を取って来いとおおせつけになりました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
この間宿の客が山から取って来て
瓶
(
へい
)
に
挿
(
さ
)
した一輪の白さと大きさと
香
(
かおり
)
から推して、余は有るまじき広々とした
画
(
え
)
を頭の中に描いた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「そいつはありがたい。御幣餅とは、よいものをごちそうしてくださる。木曾の
胡桃
(
くるみ
)
の
香
(
かおり
)
は特別ですからね。」と香蔵もよろこぶ。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何を馬鹿なことを!……と起ち上った拍子に、隣室からにおって来た線香の
香
(
かおり
)
。開けてみたら、こうして首が
安置
(
あんち
)
してあったのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
尋
(
つ
)
いで師の教えを受け、各この薬を磨くに、竜樹
香
(
かおり
)
を
聞
(
か
)
ぎてすなわち
便
(
ただ
)
ちにこれを識る。数の多少を分かつに、
錙銖
(
ししゅ
)
も失うなし。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そして微かな身震いが彼女の
華奢
(
きゃしゃ
)
な体の周りに震える。ナポリの穏やかな空気が草地の
香
(
かおり
)
高い銀の
百合
(
ゆり
)
の周りに震えるように。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
父は夢だ、と云って笑った、……祖母もともに起きて
出
(
い
)
で、火鉢の上には、再び
芳
(
かんば
)
しい
香
(
かおり
)
が満つる、餅網がかかったのである。
霰ふる
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
秋はここにも
紅
(
くれない
)
に照れる桜の葉はらりと落ちて、仕切りの
籬
(
かき
)
に
咲
(
え
)
む
茶山花
(
さざんか
)
の
香
(
かおり
)
ほのかに、線香の煙立ち上るあたりには小鳥の声幽に聞こえぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
みちみち、新鮮な空気を飲み、健康な
香
(
かおり
)
を鼻いっぱいに吸いこむ。
猟具
(
えもの
)
も家へ置いて行く。彼はただしっかり眼をあけていさえすればいいのだ。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それは長く降り続いていた雨の空が
午
(
ひる
)
過ぎから
俄
(
にわか
)
に晴れて微熱の加わって来た、どこからともなしに青葉の
香
(
かおり
)
のような
匂
(
におい
)
のして来る晩であった。
萌黄色の茎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その前にも
逢
(
あ
)
ったかも知れないが、アンポンタンが意識した初対面の印象だった。彼の
身辺
(
まわり
)
は石炭酸の
香
(
かおり
)
がプンプンした。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
まろの頭にぼんやり残って居るものは、
生暖
(
なまあたゝか
)
いふところに垂れて居た乳房の舌ざわりと、甘ったるい乳の
香
(
かおり
)
ばかりだ。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
気がついたのは——
此際
(
このさい
)
呑気
(
のんき
)
な話であるが——なにかしら、
馥郁
(
ふくいく
)
たる
匂
(
におい
)
とでもいいたい
香
(
かおり
)
が
其
(
そ
)
の辺にすることだった。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
柚
(
ゆず
)
の中に餅を入れて作ります。形よく色よく、
味
(
あじわ
)
いよく
香
(
かおり
)
高く、それに長い月日によく
堪
(
た
)
えます。この町を
訪
(
おとな
)
うことがあったら忘れずに味って下さい。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
折しも
微吹
(
そよふ
)
く風のまにまに、
何処
(
いずく
)
より来るとも知らず、いとも
妙
(
たえ
)
なる
香
(
かおり
)
あり。怪しと思ひなほ
嗅
(
か
)
ぎ見れば、正にこれおのが好物、鼠の
天麩羅
(
てんぷら
)
の香なるに。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
実際、私たちが今近づいているのは島でも非常に気持のよい処であった。
香
(
かおり
)
の強い
金雀花
(
えにしだ
)
や、花の咲いている多くの灌木が、ほとんど草に取って代っていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
カザリン二世(十七世紀)頃の
香
(
かおり
)
があり、死体のかけていた椅子などは、背部の木部の飾りに、ロマノフ廃朝の紋章が浮き彫され、銀の象眼が、なされていた。
雪
(新字新仮名)
/
楠田匡介
(著)
その呼吸に「カナリヤの労働」——きな臭い煙草——の名の
香
(
かおり
)
が絡み、散乱する長調の音譜と、
澎湃
(
ほうはい
)
たるこの雑色の動揺と、
灼輝
(
しゃっき
)
する通行人の顔と動物的な興奮。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
戸数は九百ばかりなり。とある家に入りて
昼餉
(
ひるげ
)
たべけるに
羹
(
あつもの
)
の内に
蕈
(
きのこ
)
あり。
椎茸
(
しいたけ
)
に似て
香
(
かおり
)
なく色薄し。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
十一月の初めの、
時雨
(
しぐれ
)
の降った後の寒い日であった。たきまぜの御飯の
香
(
かおり
)
は
殊
(
こと
)
になつかしく思われた。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
春風のように、花や緑の
香
(
かおり
)
を乗せたそよ風が、三人のしめった髪や、着物をこころよく
撫
(
な
)
でて行く。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
だがそれをひとりでするときは心に流れるうらわびしさが、
硝子
(
がらす
)
の指先にふれる冷たさや、土のしめっぽい
香
(
かおり
)
や、美しい花の色にまでしみて
余計
(
よけい
)
さびしくなるのだった。
花をうめる
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
ホールで遊んでいる児童が立って敬礼をする。そのあとに煙草の煙の
香
(
かおり
)
が残る。煙は何ともいえぬ
好
(
よ
)
い
香
(
かおり
)
で香ばしいような酸っぱいような甘いような一種のかおりである。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
もう二度と振向かずに廊下を
摺足
(
すりあし
)
に歩いて、番茶の
香
(
かおり
)
が洩れる教員室にまた入ってしまった。
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼の死骸を磔柱から下した時、非人は皆それが美妙な
香
(
かおり
)
を放っているのに驚いた。見ると、吉助の口の中からは、一本の白い
百合
(
ゆり
)
の花が、不思議にも水々しく咲き出ていた。
じゅりあの・吉助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
暗中降雨を冒して進むこと数里、いよいよ人家の近付いたと思わるころ、風に
煽
(
あお
)
られて暗中に漂う湯の
香
(
かおり
)
プンと鼻を打った時には、足の痛みなぞはすっかり忘れて跳べ跳べ。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
室一杯に香料の匂が
咽
(
む
)
せ返える程満ちていることで、しかも其
香
(
かおり
)
は他でも無い、
曹達
(
そうだ
)
と
土瀝青
(
ちゃん
)
と
没薬
(
もつやく
)
とを一緒に
混合
(
あわせ
)
た香であって、即、それは、数千年の昔古代埃及の人達が
木乃伊の耳飾
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すがすがしい土の
香
(
かおり
)
も、既に全身に沁みつくして、彼の
嗅覚
(
きゅうかく
)
を刺激するようなことはなかった。美衣美食の生活者が、美衣美食を知らぬと同じ悲しさが梅三爺の上にもあった。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
門の入口に
甘
(
あま
)
い
香
(
かおり
)
がすると思うたら、
籬根
(
かきね
)
にすいかずらの花が何時の間にか咲いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ことによると肉の
香
(
かおり
)
ぐらいかげようかとおもって、さっそくさんせいしました。
ブレーメンの町楽隊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
はげ残った白壁に、朝日が赤々と照映えて、開放的な海の
香
(
かおり
)
が、ソヨソヨと鼻をうつ。凡てが明るい感じで、この土蔵の中に例の怪物が住んでいるなどとは、どうにも考えられないのだ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
今日は嬢の手料理に
飽
(
あ
)
かんよりもむしろ嬢の温情に飽かん。未来の我が妻、外に得難き良夫人と心はあだかも
春風
(
しゅんぷう
)
に包まれたる
如
(
ごと
)
し。春風は庭にも来にけん、梅花の
香
(
かおり
)
馥郁
(
ふくいく
)
として
室
(
しつ
)
に
入
(
い
)
る。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
次に開いた調査書類も同様で防虫剤こそ
施
(
ほどこ
)
してないが、パラパラと
頁
(
ページ
)
を繰って行くうちに、埃臭い
香
(
かおり
)
がウッスリと鼻に迫って来る。いずれにしても最近に人の手が触れなかった事は確かである。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
茶を熱く入れて
香
(
かおり
)
のよいところを御二人へ上げましたら、奥様も乾いた
咽喉
(
のど
)
を
霑
(
しめ
)
して、すこしは
清々
(
せいせい
)
となすったようでした。急に、表の方で
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「花であればこれだけの香気を持ちたいものですね。桜の花にこの
香
(
かおり
)
があればその他の花は皆捨ててしまうでしょうね。こればかりがよくなって」
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
続いて女が
胴
(
どう
)
の
間
(
ま
)
に乗り移った。その拍子に女の体にしみた香水の
香
(
かおり
)
が省三の魂をこそぐるように匂うた。省三は
艫
(
とも
)
へ腰をおろしたところであった。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「じゃあ、あの花壇のあるところへいってみません? いろいろとうつくしい花や、
香
(
かおり
)
のいい花が、たくさんあるのです。あなた、花おきらいですか」
爆薬の花籠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
宗助は小供の時から、この樟脳の高い
香
(
かおり
)
と、汗の出る土用と、
炮烙灸
(
ほうろくぎゅう
)
と、
蒼空
(
あおぞら
)
を
緩
(
ゆる
)
く舞う
鳶
(
とび
)
とを連想していた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この樟材の支那箱は絶えず内部に樟脳の
香
(
かおり
)
が満ちていて、ナフタリンなんか入れなくても虫を防ぐから、毛織物類を仕舞って置くには、家庭用として特に便利である。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
色が美しく、
擦
(
こす
)
れに強く、
香
(
かおり
)
が良く、洗いに堪え、古くなればなるほど色に
味
(
あじわ
)
いが加わります。こんな優れた染料が他にないことは誰も経験するところでありました。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
げにその
主
(
ぬし
)
は銅瓶の
下
(
もと
)
に梅花の
香
(
かおり
)
を浴びて、心臓形の銀の写真掛けのうちにほほえめるなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
お豆腐の上に、まっ青な、
香
(
かおり
)
の高い
紫蘇
(
しそ
)
の葉がきざんで乗せてあるのが私をよろこばせた。
旧聞日本橋:12 チンコッきり
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
法衣
(
ころも
)
や
袈裟
(
けさ
)
の青や赤がいかにも美々しく入り交って、経を読む声、
鈴
(
れい
)
を振る音、あるいは
栴檀沈水
(
せんだんちんすい
)
の
香
(
かおり
)
などが、その中から絶え間なく晴れ渡った秋の空へ、うらうらと昇って参ります。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
サア、味噌までにも及びません、と仲直り気味にまず予に
薦
(
すす
)
めてくれた。花は
唇形
(
しんけい
)
で、少し佳い
香
(
かおり
)
がある。食べると甘い、
忍冬花
(
すいかずら
)
であった。これに
機嫌
(
きげん
)
を直して、楽しく一杯酒を
賞
(
しょう
)
した。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
……別嬪の
香
(
かおり
)
がほんのりで、
縹緻
(
きりょう
)
に打たれて身に沁む工合が、温泉の
女神様
(
おんながみさま
)
が世話に砕けて
顕
(
あらわ
)
れたようでございましたぜ。……(逢いたさに見たさに)何とか
唄
(
や
)
って、チャンと句切ると
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ヘリオトロープの
香
(
かおり
)
は引き切りなしに湧き出して来る。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
夏の夜の甘い
香
(
かおり
)
は彼の周囲一面にたちこめた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
“香”の解説
香(こう、en: incense)とは、本来、伽羅、沈香、白檀などの天然香木の香りをさす。そこから線香、焼香、抹香、塗香等の香り、またこれらの総称として用いられる。お香、御香ともいう。
(出典:Wikipedia)
香
常用漢字
小4
部首:⾹
9画
“香”を含む語句
香花
香物
名香
香気
薫香
香油
香料
鬱金香
麝香
芳香
香水
茴香
香炉
沈香
涙香
香煎
香箱
香染
香具
香山
...